体癖(たいへき)とは、野口整体の創始者である野口晴哉がまとめ上げた、人間の感受性の癖を表す概念。身体の重心の偏り・腰椎のゆがみと個人の生理的・心理的感受性(体質、体型、性格、行動規範、価値観など)が相互に作用していることを野口は診療から見出し、その傾向を12種類(10+2種類)に分類した。野口は、整体の施術(整体操法)を行うにつれ、特定の病気を患っている人物は特定の心理的・体質的・運動傾向を示すことが多い、と気付いたことを契機としてさまざまな試行錯誤の末、昭和20年代後半に、身体の偏り傾向による10種類と、さらに過敏・遅鈍の2種を加えた計12種類の「体癖」の概念を確立した。以後、実際の整体指導の現場で応用されてきた。ユングやクレッチマーによる気質分類やエニアグラムなどにやや近いものを認めることができるが、体癖の概念が対象とする範囲は個人の感受性・嗜好といった心理傾向にとどまらない。顔の形や体型といった身体的特徴から体重の偏りのような姿勢・運動特性に至るまで一貫して、1番から5番までの5つの腰椎の状態と相関があり、これを調べることによって説明できると明確に主張している点が大きな特色である。個人がどの体癖を有しているかを知るためには、体重計を改良した「体量配分計」(台の部分が左右に分割され、さらにそれぞれが右前、左前と後部に分割されるため、6つの体重計の上に股がって立つような状態となる)というものを用いて、立位・前屈などさまざまな姿勢を取ったときに体重が足のどの方向へ偏るかを調べれば、運動特性から体癖を割り出すことができる。これはそれぞれの体癖によって、5つある腰椎のうち運動の中心となるものがそれぞれ異なるため、体勢のバランスの取り方に違いを生じるから、と説明されている。あるいは、特別な道具を使わなくとも体格や姿勢、動作の特徴、および心理的な感受性傾向を調べることからも体癖を推測することができる野口整体ではそれぞれの体癖に合わせて、偏りがひどいときのために、体癖修正用の体操をそれぞれ用意している。一般に成人してから以後は大きく体癖が変化することは稀であるが、各々の体癖と身体の状態に見合った整体法を行うことで、身体(体質や病なども含む)や心理的な状態を良好なコンディションへ移行し保つことが可能とされる。なお、提唱者の野口晴哉自身は、9種に捻れ体癖が混じっており(下記、「複合体癖」参照)、夫人の野口昭子は1種体癖であったという。1種、3種、5種、7種、9種、11種の奇数体癖は、主体的に余剰エネルギーを鬱散できるタイプとされている。2種、4種、6種、8種、10種、12種の偶数体癖は、自ら余剰エネルギーを鬱散することが少なく、周りの環境に左右されやすく、エネルギーが欠乏すると他人の関心を集めることを欲求するという。1種から10種までの体癖はそれぞれ特定の腰椎の運動特性と関係が深いとされる。11種と12種はやや特殊で、全体的な感受性の鋭さ、鈍さが特徴である。腰椎1番でバランスを取り、毀誉褒貶が感受性の中心である。直立している時もお辞儀するときも体重が足の前にかかる。太りにくく細長い体型で、首に特徴がある。非常に理屈っぽく、言葉に敏感であり被暗示性も強い。そのため、言葉やイメージからの思い込みだけで病気になったり健康になったりする。会話にリアリティがあり面白い。長い睡眠時間を要し、ストーリーのある夢をよく見る。前屈みの姿勢をとる場合は、首から上が前へ出ることが多い。大義名分や真理、ルールにこだわるため、当人が大義名分とみなせるだけの理由をみつけないと行動できない。上空から俯瞰するような視点で世界をとらえようとすることから、野口は上下型は最も野生味が少なく仙人のようだとも言っている。服装は地味なものを好むことが多い。腰椎2番でバランスを取り、生理的な好き嫌いの感情が感受性の中心である。左右のどちらかの足に体重が大きく偏る。したがって靴底は片足だけが減りやすい。消化器を中心にした空間感覚で、空間に対する対立感が弱く、やわらかいコミュニケーションを得意とするのが特徴だが、これはふつうの人が会食をすることで緊張をとろうとする効果とよく似ている。腰椎5番でバランスを取り、利害得失が感受性の心である。直立している時は体重が足の前にかかるが、お辞儀をするときにお尻が飛び出して足の後ろに体重が移動する。合理的で、損得計算が得意。肩に特徴があり、前屈み姿勢になることが多い。前屈み姿勢は、常に一歩先のことを意識しているとも言え、時間軸上の緊張感と関連がある。団塊の世代はじっとしていることが我慢できない前後型が多いという指摘がある。腰椎3番を中心とした捻る動きに特徴があり、勝ち負けが感受性の中心である。体重のかかり方が捻れていて、左足が前方に体重をかけているなら、右足は後方に体重をかけている。背骨を捻る動きがやりやすい。負けず嫌いの闘争型でつねに誰かと勝負をしている(ただし、他人と比較されることは嫌いである)。文字を書く時にはまっすぐ書くことができず、身体を斜めにして書くか、紙を斜めにして書く。机や椅子に対して斜めに座る人は捻れ体癖の可能性が高い。天の邪鬼であり、人から言われたことには無意識に反発する。「〜は君にやってほしいけど、無理だろうな」というような逆説的な言い方で挑発されるとかえって反発心が湧いて、結局言うことを聞く。エネルギーが鬱滞すると、後先を考えずに衝動的な行動に出てしまう傾向が強い。武術家、格闘家には圧倒的にこの体癖の人が多いという。身体を捻る動作に関連して、疲れは腎臓に出やすく、汗をかきにくく湿気に弱かったり、尿意を急に催したりする。腰椎4番でバランスを取り、愛憎の情が感受性中心である。世話好きで人の面倒を見たがるが、自分が人に世話になるのは好まない。原始的・野性的で直感が冴えているタイプ。1種から10種が偏り傾向の種類であるのに対して、遅速型については身体の反応のしかたの敏感度や速度に注目しており、著しく過敏なタイプと遅鈍なタイプをそれぞれ特に11種および12種体癖と呼んでいる。2つまたは3つの体癖が個人の中に混じっていることはめずらしくないとされる。その場合に、顔と胴体がそれぞれ別の体癖の特徴を表していたり、体型から分かる体癖のほかに別の体癖が隠れていたりする。また高潮時つまり元気な時に奇数体癖が表れ、低潮時つまり元気の無いとき偶数体癖が表れて、体癖が交互に周期的に入れ替わるということも珍しくないという。こうしてひとつの個人の中に互いに矛盾したような性質が両立する。野口の著作の中では明記されていないようだが、文献によると、たとえば1種と2種のように、同じ上下型の中の奇数体癖と偶数体癖が混ざる事は無い、としている。複合体癖については文献の下巻に詳しい。身体の重心の偏りは、前述の体重配分計で測ることが可能である。しかし、体癖を判断したい対象の人々にみな体重配分計で測定してもらうことは難しい。実際には前述のように体格や姿勢、動作の特徴を観察して分析・推測する機会が多くなるが、素人であれば当然のこと、プロフェッショナルといえども観察者自身の体癖によって多少なりとも対象者の観察眼と分析結果に偏りが生じてしまう点に留意する必要がある。体癖論をまとめあげた野口自身は9種体癖であるが、9種体癖は3種体癖を苦手とする傾向があり、野口の著書にさえ3種体癖を執拗に論う内容が散見されるとの指摘がある。分析力を鍛えていくときには、最初に自分と人間関係の薄い(先入観や利害関係が少ない)人物からはじめ、次第に自分と関連の深い他人へ、最後に自分自身を分析してみるとうまく上達するとされる(自分自身は、認めたくない体癖であってほしくないものである)。また、他人や自分について体癖を理由に性格や生き方などを決めつけることは野口整体の本意ではなく、活元運動や整体法(操法)によって、好ましくない面を健康的で良好な状態に保ったり、自らの体癖の長所をうまく生かして良好な人間関係を構築したりすることが重要とされる。
出典:wikipedia
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