近江鉄道220形電車(おうみてつどう220がたでんしゃ)は、近江鉄道の通勤形電車である。2015年(平成27年)3月限りで定期運用から引退、その後は予備車となっている。1991年(平成3年)から1996年(平成8年)までの6年間にわたって自社彦根工場で1両ずつ製造された両運転台の電車で、6両が登場した。近江鉄道の電車としては初の冷房車である。製造当時、本線八日市駅 - 貴生川駅間は合理化のため、電車線への送電を止めてレールバスLE10形で運用されていた。しかし、LE10形は二軸車で収容能力も小さかったことからラッシュ時には早々に輸送力不足に陥り、2両連結での運用が恒常化して合理化の企図を削ぐ結果となっていた。そこでレールバス2両を電車1両で置き換えて本質的な合理化を図るために製造されたのがモハ220形である。この車両の登場により、LE10形や在来の両運転台の電車であるモハ100形・モハ200形の運用を置き換えた。車籍はモハ100形101 - 103、モハ200形203・205、モハ131形132のものを引き継いでいる。本形式は様々な流用部品を利用して車体を新造した車体更新車であるが、その過程では彦根工場が蓄積してきた車両改造ノウハウが縦横に活かされ、結果、モダンなデザインと新旧の技術や機器が入り交じったキメラのような電車となった。車体の全長は17 m弱で、白地に赤・緑・青のいわゆるライオンズカラーに塗られている。前面は前照灯と尾灯を腰部配置とした三面折妻で、中央に非常用の貫通扉を備えており、貫通扉の有無以外は後続の800系に類似する。また、貫通扉には埼玉西武ライオンズのマスコット「レオ」が描かれている。本系列はワンマン運転設備を備える。台枠は、モハ200形など戦前・戦中製造の在来車から流用された古典的な形鋼通し台枠で、これを土台に構体部分を構築したが、側扉や初期の車輛の側窓など側構体の一部には西武701系の廃車体を切り継いで現代風の両開き3扉の両運転台車体を仕立てた。この鉄道模型の切り継ぎ改造さながらの技法は、1950年代以前には私鉄車両で散見されたが、近年ではほとんど他例がない。主電動機は在来車の1形や500系などでも使用されていた、鉄道省戦前標準形の吊り掛け駆動・MT15(端子電圧675 V時出力100 kW)4基を搭載する。主制御器はやはり鉄道省が昭和初期に開発した古典的な電空カム軸式自動加速制御器・CS5を在来車から流用して搭載した(詳細は国鉄30系電車などを参照。)。何れも開発後60年以上を経過した旧式機器であるが、近江鉄道では在来車で長年使い慣れており、実用性能も十分であるため、費用節約の見地もあってこれで済まされた。対して格段に近代的なのは台車とブレーキである。台車は、西武鉄道の低年式吊り掛け駆動車からの廃車発生品である住友金属工業FS40で、軸ばねこそ簡略なペデスタル支持式ではあるが枕ばねには空気ばねを備え、経年も少ない近代的な台車である。またブレーキは、従来の自動空気ブレーキに代わり、次段階の電磁直通ブレーキをも飛び越して大手私鉄に比肩する水準のHRD電気指令式ブレーキを採用、メンテナンスフリーと作動の迅速性を実現している。制動自体は一般的な踏面ブレーキ方式で、制御装置の構造上、発電ブレーキは装備しない。この車両は両運転台式に加えて車体長が短いため床下スペースに余裕がなく、電車用冷房装置の標準的な電源である三相交流電源を供給する補助電源装置の大容量電動発電機ないし静止型インバータの搭載が困難だったが、本形式は架線電圧そのままの直流1,500 Vで駆動する冷房装置を開発して搭載し、補助電源関連の機器を不要として問題を解決した。このコロンブスの卵的な合理化の着想は低圧の600 V電源車では先例があるが、1,500 Vの高圧電源では珍しい事例で、以後他社で追随する例も生じた。落成当時でも日本では数少なくなっていた吊り掛け駆動方式ながら、両運転台式の機動力を活かし、本線の八日市駅 - 貴生川駅間や多賀線の区間運転を中心に全線にわたって使用されてきたが、1両ということもあり収容能力に限界があることと、当形式に使用されている機器は半世紀以上前の設計であることから老朽化も進んでいるため、晩年は運用が減りつつあった。2013(平成25)年度より後継車両である900形・100形が投入され、2014年(平成26年)春ダイヤ改正より平日のみの運用となった。また運用は1本のみで、運転される区間も本線の米原駅 - 高宮駅間と多賀線のみに縮小された。2015年(平成27年)3月5日に車両老朽化のため定期運用を終了することが公式ホームページにて発表され、3月13日の定期運転終了後に臨時列車『アンコール号』が運転され、彦根駅で「卒業式」と題した引退記念イベントが行われた。2015年5月時点では6両とも彦根駅構内に収容され、一部は同駅に隣接する近江鉄道ミュージアムで保存展示されている。2015年(平成27年)5月31日にラストランが行われ、220形は営業運転を終了した。
出典:wikipedia
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