アスキーアート(ASCII art)とは、プレーンテキストによる視覚的表現技法のこと。テキストアート、活字アート、絵文字などとも呼ばれる。しばしばAAと略される。ASCIIでない文字コードのテキストアートも日本語では「アスキーアート」と呼ぶ。「ASCII art」とは本来、英語コミュニティにおいて「ASCII文字コード(図形文字領域0x20 - 0x7E)に含まれる文字・記号を用いた表現」のことを指した。日本語の入力環境ではASCIIコードでなくシフトJISやEUC-JPなどが主流だが、これらを用いたテキストアートも一般に「アスキーアート」と呼んでいる。一方、英語ではこれらは「シフトJISアート()」と呼んで、ASCII artとは明確に区別する。アスキーアートは1行(数文字〜数十文字)の顔文字から、複数行(数百〜数千文字)に及ぶ大掛かりなものまで様々である。古くはタイプライターやテレタイプ端末で同様の表現を試みた者もいたが、この語が普及するようになったのは、パソコン通信の電子掲示板が知られるようになってからである。インターネットの普及とともに一般人がコンピュータ文字を多く扱うようになり、誰でも日常的にアスキーアートを見たり、コピーペーストして使ったり、ツールを使ってアート表現を行ったりすることが可能になった。SNSやオンラインゲーム(MMORPGなど)の普及によって、日本独自だった顔文字を海外の非日本語母語話者が目にする機会が増えた。例えばファイナルファンタジーXIにおいては、チャットウィンドウに表示される日本語は外国言語版ソフトウェアでもそのまま表示される。日本語フォントによるアスキーアートでは、アート表現で余白を表すための全角スペースの間隔を揃えるために等幅フォントを使うことが多かったが、サイトによっては表示にプロポーショナルフォントが指定されているため、これを考慮して半角ピリオド等で調整されることも多い。アスキーアートの表現手法には大きく分けて2通りある。活字によるアート表現の起源は19世紀の古いタイプライター時代に遡る。現在知られている最も古い活字アートは、1898年(明治31年)にフローラ・ステイシー "Flora Stacey" という女性が蝶を表現したものである。1918年(大正6年)にはキュビスム先導者の一人であるギヨーム・アポリネールが活字で絵を描いた『カリグラム』 "Calligrammes" を刊行し、1922年にはホバート・リース "Hobart Reese" が「活字だけで描いた人物画」を発表して注目された。入力環境として当初は大文字だけをサポートする3列キーボードが主流だったが、遠隔地への文字送信の研究が進むと改良が加えられた。1931年(昭和6年)には5ビットの文字コードであるBaudot Code(ボー符号)が国際テレグラフ・アルファベットNo.2として承認され用いられた(当時はビットと言わず、「5単位」と呼称した)。ボー符号はShiftキーでアルファベットモードと数字・記号モードを切り替える機能をもったが、通信回線の品質が不安定だったため切り替えがうまく行かずにしばしば「文字化け」が起きた。通信速度が非常に遅くまた高価であったこと、用途が限られていたこと(軍用や警察用、新聞社用)などのため、1960年代までテキストアートは用いられなかった。1960年代から70年代にかけてはアマチュア無線の遠隔文字送信手段であるラジオテレタイプ(RTTY)が隆盛し、文字でイメージを描いた文字絵が頻繁に用いられた。1963年頃に7ビットの文字コードASCIIを用いるページプリンタ「ASR-33」がテレタイプ社から発売されると、5ビットのボー符号は種類の少なさから次第に使われなくなり、ASR-33が標準的なページプリンタとして定着するに伴ってASCIIコードが普及した。ASCIIコードによるテキストアート(狭義の「アスキーアート」)として最古の例は1966年、当時ベル研究所に勤務していたがレオン・ハーモンとの共著『Studies in Perception I』に掲載したもの(実物)が知られている。1974年にマイクロプロセッサが登場すると、個人でも所有できる価格とコンパクトさをもったパーソナルコンピュータ(パソコン)の時代が到来した。1990年代初頭までほとんどのパソコンはネットワーク機能を標準搭載していなかったが、愛好家たちはネットワークを構築し、メッセージを電子掲示板(Bulletin Bourd System, BBS)やパソコン通信のコミュニティで交換していた。最初の電子掲示板は1978年2月16日にイリノイ州シカゴでが開設したである。BBSや電子コミュニティは単なる情報伝達だけでなく会話・コミュニケーションの場であったため、感情を表す顔文字が多く生み出された。顔文字の起源も19世紀に遡るが(→顔文字)、現在の顔文字の直接の起源としては1982年9月19日11時44分のタイムスタンプがあるIBM社の(Scott Fahlman)による顔文字『:-)』(笑い)と『:-(』(真剣な)の提案がある。日本においては縦置きの顔文字が早くから考案され、1986年6月20日0時28分の若林泰志によるパソコン通信アスキーネット上の顔文字『(^_^)』が確認できる。当時は日本語文字を表示できるパソコンがそもそも少なく、以下のログも半角カタカナで書かれたものである。若林によると、同じくアスキーネットで「binbou」と名乗っていた人が同時期に『(‾_‾)』を使用しており、どちらが先に使用し始めたかは分からないとしている。1995年のWindows95発売を境にインターネットを介した情報交換が社会に一般化し、「IT革命」「インターネット社会」と呼ばれる情報化社会が到来した。膨大な量の情報が従来よりもはるかに安価・容易に「伝達」「コピー」「移動」できるようになったことで、文字によるアート表現は大きく隆盛することになった。人々はウェブ上のフォーラムや掲示板、コメント欄等に「入力可能な文字によるアート」を盛んに投稿し、あるいはメールで顔文字を送りあった。顔文字と同様に感情を伝える手段として拡張フォントとしての「絵文字」も隆盛したが、機種やデバイス環境に依存しない(文字化けしない)プレーンテキストベースの顔文字はコミュニケーションの補完手段として現在も多く用いられている。アスキーアートそのものを楽しむ文化もインターネット普及とともに大きく広がった。日本においては大型匿名掲示板「2ちゃんねる」を中心にして「アスキーアート(AA)文化」とも呼べるものが隆盛した。「顔文字板」(1999年開設)、「モナー板」(2000年開設)、「AA長編板」(2002年開設)からは多くの「名作AA」「AAキャラ」が生み出され、ニュースや専門用語などを連続のAAで「解説」するといった新しい楽しみ方も現れた。これらは現在も2ちゃんねるの「AAカテゴリ」を中心に多くの閲覧・投稿がある。インターネット以前の文字アートとの大きな違いとして、著作権の所在が不明確なことが挙げられる。2005年には、元々掲示板で生まれたとされる「のまネコ」というキャラクターに自社の著作権表記を付した商品を販売したとして音楽制作大手のエイベックス・グループが大きな批判にさらされる事件もあった(→「のまネコ問題」)。古くから愛好者が多く、専用のニュースグループもある。またANSIエスケープシーケンス (カーソル移動や色・反転表示を記述することができる) を使ったアニメーションも存在する。ここで使用しているアスキーアートは半角\が半角¥に置き換わって表示される場合あり。最もシンプルなアスキーアートは、2-3文字を組み合わせた感情を表現するためのもの。スマイリーとも言う。多くのものは90度回転した状態(左が上)で感情が表されている。QWERTY配列のキーボードであればIMEを問わず利用できる(例えば日本語IMEでも半角入力状態にすればよい)ため、全世界的に用いられている。日本人同士ではあまり用いられないが、これは日本ではシフトJISによる顔文字文化が発達しているためである。より大きく、より複雑な図形を書くためには、複数行を使用。日本語環境でのアスキーアートの状況はやや特殊である。日本語は一般に2バイト文字で記述されるため、コンピュータ上においてもシフトJISのようにひらがな、カタカナ、漢字、英字、数字、記号といった多彩な文字種が混在して用いられるが、このことが微妙な感情をテキストアートで表すことを可能にした。このため世界的に主流の1バイト文字アートでなく、2バイト文字アートが発達した。日本における特徴としてはこの多彩な文字の他、位置合わせに適した全角スペースの存在、文字幅の設定が挙げられる。日本語アスキーアートは、環境に非常に依存するという弱点がある。WindowsかMacかによっても見え方が異なる上、Windows VistaバージョンからはMS Pゴシックとは文字幅も字体も違う、メイリオフォントが導入された。また、MS Pゴシックなどのフォントも一部の字体が変更されており、一部のアスキーアートを正常に表示することができないことが判明している。その他にも、フォント設定が正常に反映されない等の不具合も多い。顔文字はフェイスマークともいい、シンプルなもので4-8文字程度からなる。感情を表すためにメールの本文・チャット・電子掲示板・メーリングリストなど、さまざまな場所で使用される。携帯端末でも多用される。シフトJISの文字セットは漢字や欧文・記号・罫線など数万種類もの文字をもつため、これらを組み合わせて微妙な感情表現が可能になる反面、ほとんど使わないような文字を顔文字のために呼び出すことが必要になる。このため、よく使う顔文字をIMEの辞書機能に登録して使用することも一般的である。例えば携帯電話においてはiPhoneなど海外メーカーのものでも初期設定で顔文字がいくつも登録されている。欧米では、1バイト文字のみで構成されているものが日本のサブカルチャーに興味を持つ人々の間で使用されている。orzは中国・台湾にも輸出され、独自のアスキーアートが作り出されている。(例: 老人の顔)。3-25行程度を使用する、より大きな文字アート。大がかりな作品も多い。ディスプレイ上の制約からパソコンやタブレット機器などでの使用を前提としたものも多いが、携帯機器でもずれないで見られるよう横幅を調整したものもある。擬古猫(現在ギコ猫として広く知られているものの原型)Internet Explorer5.0での表示を基準としたMS Pゴシック16ピクセル(12ポイント)、行間2ドットを標準として作られている。数行〜十数行であることが多いが、巨大なものでは50行に達する場合もある。W3C勧告のCSSを利用してアスキーアートに適した表示を行う場合は、以下のように指定することが望ましい。MS PゴシックがプリインストールされていないWindows以外では正しく表示しにくい。その欠点を解決するため、利用がフリーなフォント「モナーフォント」が開発された。このモナーフォントは、Linuxを始めとする他のオペレーティングシステムでも利用可能であることから、この問題点は既に克服されている。モナーフォントには、IPAモナーフォント、M+IPAモナーフォントなど数種の派生フォントが存在する。MS Pゴシックのアスキーアートには作成上の制約が2つある。どちらもInternet ExplorerやGeckoを使用したWebブラウザでは、省略されてしまい表示されない。最近ではこの制約を逆手に取ったアスキーアートが作られている。ある種の騙し絵であり、アスキーアートの中にわざとダブル半角スペースを仕込み、Webブラウザ上とそれ以外での表示を別物にするものである。HTMLタグでフォントのサイズや色を変えたりすることはない。文字を大きくしたい場合は、アスキーアートで大きな文字を作ったり、(下図参照)色を付けたい場合には画素とする文字の濃淡を利用し、マンガにおけるスクリーントーンのような効果(下図参照)で濃淡を表すようにする。プロポーショナルフォントのアスキーアートは、作風によって大きく3種類に分けられる。制作の場でもある2ちゃんねるの板名をつけて呼ぶことが多い。イラスト、写真などをトレースしたアスキーアートで、20行以上に渡る巨大なものが多い。大抵は漫画やアニメ、ゲームの一枚絵を元に作られている。簡単なものでも制作にはある程度の技術が必要。このタイプのアスキーアートはオートトレースツールを用いて機械的に制作することも出来るが、精度は低く雑然とした文字の固まりにしかならない。オートトレース後に修正するなど、手書きの工程省略には使われる。漫画のように大きくデフォルメされたアスキーアートが分類される。顔部分が1行分の顔文字、全身が(通常の等身では)5行程度に収まる。2ちゃんねるのアスキーアートキャラクターと言えばこのタイプである。単純なものであれば顔文字系アスキーアートより遙かに制作が簡単である。すでに作られたアスキーアートがあればそれを改変することで、「コピペ改変」として新たに作り替えることも出来る。2ちゃんねるの1レスを漫画の1コマとして作り上げるストーリーAAは、ほぼ全てがモナー板系列で作られ、長いものでは3000コマを越す。クマーややる夫に代表されるアスキーアート。大きくデフォルメされているのはモナー板系と同じだが、目鼻口の顔部分だけで5行、全身が10行を越す。顔だけで5行を利用しているので、顔文字板系同等な多彩な表情を表現できるが、デフォルメされているためモナー板系並に制作のハードルが低い。顔文字板系、モナー板系の中間と言うべきタイプであり、どちらともに親和性が高い。2002年頃までは顔文字板で最も作られていた。日本では既存キャラクターをアスキーアート化するだけでなく、アスキーアートそのものから発生したキャラクターも現れた。ここでは代表的なもののみ記述する。
出典:wikipedia
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