最高裁判所は、1947年(昭和22年)4月16日に成立した裁判所法に基づき、同年5月3日の日本国憲法施行と同時に設置された、日本の司法機関における最高機関である。最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について最高裁判所規則を制定する権限(憲法77条1項)、また、下級裁判所裁判官任命における指名権(憲法80条1項)、司法行政監督権を持つ(裁判所法80条1号)。日本の裁判所における司法行政は法律上、簡易裁判所以外の裁判所の裁判官会議に基づき行われるものとされているが、下級裁判所は最高裁判所の下に置かれている。また最高裁判所は、日本国内の裁判事件の、上告及び訴訟法が定めている抗告について、最終的な判断を下す権限を持つ。そのうえで、違憲審査制における法令審査権を持ち、法令審査に関する終審裁判所となる(憲法81条)。このため、最高裁判所は「憲法の番人」と称されることもある。最高裁判所の最も重要な機能は、上告事件について法令の解釈を統一すること、および、憲法違反の疑いのある法令などについて最終的な憲法判断を下す(違憲審査制)こと(憲法81条参照)にある。ただし、日本では憲法訴訟を可能とするための違憲裁判手続法は未だ確立しておらず、憲法裁判所も存在しない。最高裁判所は、最高裁判所長官、大法廷・小法廷からなる裁判部門、また、司法行政部門で構成されている。司法行政部門は、最高裁判所事務総局、司法研修所、裁判所職員総合研修所、最高裁図書館、及び委員会・検討会等で構成されている。最高裁判所長官は、内閣の指名に基づき、天皇によって任命される。最高裁判所判事は内閣が任命し、天皇がこれを認証する。最高裁判所裁判官の定年は70歳である(日本国憲法第79条第5項、裁判所法50条)。裁判部門は、15名の裁判官を擁する大法廷と、5名の裁判官を擁する3つの小法廷で構成されており、司法権を行使する終審裁判所として、上告、上告受理の申立てについて判決を行い、特別抗告、許可された抗告許可申立について決定を行う裁判権を持つ(裁判所法第7条)。また、「当事者の主張に基いて、法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを判断するとき(意見が前に大法廷でした、その法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するとの裁判と同じであるときを除く)」、「前号の場合を除いて、法律、命令、規則又は処分が憲法に適合しないと認めるとき」、「憲法その他の法令の解釈適用について、意見が前に最高裁判所のした裁判に反するとき」については、小法廷では裁判をすることができない(裁判所法10条)。裁判官の報酬は、在任中減額できないと定められている(日本国憲法第79条第6項第2文、同80条2項第2文)。ただし最高裁判所は、公務員の中で最高裁判所裁判官の報酬だけを削減することは違憲とする見解であり、国家財政上の理由などで、公務員全体と足並みをそろえて一般的に報酬に関する法律を改正して在任中の裁判官の報酬を減額することは、「司法権の独立や裁判官の身分保障に対する侵害には当たらず合憲」とする見解を取って、2002年(平成14年)に裁判官報酬法を改正して憲政史上初の在任中の減額が行われた。最高裁判所の各裁判官は任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の際に最高裁判所裁判官国民審査(国民審査)に付され、審査から10年を経過した後の衆議院議員総選挙の際に再審査に付され、その後も同様とすると定められている(日本国憲法第79条第2項)。審査は罷免をしたい裁判官の氏名の欄に「×」を付けるという方式で行われる。しかし、これにより罷免された裁判官は1人も存在しない。また、最高裁判所裁判官の定年は70歳であるが、現在の最高裁判所裁判官は全て60歳以上で任命されているため、実際には国民審査の再審査が行われることもない。さらに、国会の裁判官訴追委員会が、裁判官弾劾裁判所において最高裁判所裁判官を弾劾した例もない。あらゆる事件を扱うために、民事、刑事、行政の各分野に分かれて法廷を補佐する最高裁判所調査官も配置されている。調査官は上告された裁判の記録を読み、最高裁判所判事に答申することを職務とする。最高裁は裁判官が15人と少ないため、調査官はその人的リソースを補う効果を有するが、法律によって最高裁判所への上告が制限され、最高裁判所において実質的に審理を行う必要性がないと判断される事件をスクリーニングし、速やかに棄却させる役割を果たしていることから、最高裁判所の裁判官ではなく調査官によって上告審の裁判がなされていると批判されることもある。最高裁判所の司法行政権及び規則制定権は、法律上は、裁判官会議の議決により行使されるが、これを補佐し、最高裁判所の庶務を執行する機関として、最高裁判所事務総局が置かれている。各委員会の審議に基づき、裁判所における訴訟手続や司法事務処理に関する事項等について、最高裁判所規則を定める権限も有している。ただし規則の公開は、一部分に限られている。実質的には、日本国内の下級裁判所を統制する司法行政部門である。法令や最高裁判所規則に基づき、委員会・研究会・検討会・懇談会が設置されている。公開されている限りでは、2015年9月現在、次のとおりの委員会等が存在する。裁判官・検事・弁護士の法曹三者を養成する機関である。裁判官以外の裁判所職員の研修を行う機関である。国立国会図書館の支部図書館であり、国内外の法律関係の書籍を蔵書している。最高裁判所庁舎の4階、5階、及び屋根裏階に位置する。特別利用者(弁護士、法律学を担当する大学教授、裁判所に設置された委員会の委員、司法修習生等)と一般利用者との区別があり、2015年9月現在、一般利用者に許可されているのは閲覧と謄写のみであり、利用するには予約も必要である。最高裁判所の判決文には、判決となった多数意見と別に、傍論として、裁判官それぞれの個別意見が表示されることがある。意見には一般に、補足意見、意見、反対意見がある。英米法の概念では、判決文の中の判決理由において示された意見のうち、判決理由の核心部分に含まれない傍論には判例法としての法的拘束力は認められないが、日本においては、反対意見のみが後の判決文に引用されることがある。日本では、判例集の編纂は、最高裁判所自身が判例委員会によって行っている。原則月1回出版されており、最高裁判所民事判例集、最高裁判所刑事判例集等がある。ただし、訴訟法に関する判例集や解説集・索引は、裁判所からも法学会からも殆ど出版されていない。裁判所ウェブサイトでは、最高裁判例集、高等裁判所判例集。下級裁判所判例集、行政事件裁判例集、労働事件裁判例集、知的裁判判例集を検索することができる。裁判所法6条の「東京都にこれを置く」という条文により、所在地が規定されている。現庁舎は建築家岡田新一によって設計され、1974年(昭和49年)に竣工した。建物は、日本建築学会賞を受賞している。「最高裁判所」の漢字表記は通例常用漢字を用いるが、最高裁判所庁舎に掲げられている銘板には、「最髙裁判所」と、はしご高で書かれている。略称は、一般には「最高裁」が通用するが、法曹界ではさらに簡略化し「最高」とも呼ばれる。また、庁舎が三宅坂(みやけざか)に面していることから、所在地より「三宅坂」という通称もある。この他、庁舎の特徴的で威圧的な外観や、行政権力者側に片寄った裁判の運営方針などから、法曹関係者や法律学者からは揶揄的・否定的な意味合いを込めて「奇巌城」「奇岩城」などと呼ばれることもある。最高裁判所に接する三宅坂交差点の区立三宅坂小公園の「平和女人像」は、日本電報通信社が建立したものである。最高裁判所は、他国の裁判官や学者などとの交流を盛んに行っている。かねてから、アメリカやヨーロッパ諸国に裁判官などを留学させて他国の法制度を調査・研究させたり、それら国の裁判官などの訪問を受け入れたりしてきたが、近年ではアジア諸国からの訪問も増えている。これは、アジアで最初に近代的な司法制度を確立した日本に学びたいという各国の意向を反映してのことであり、日本による法整備支援活動への協力という枠組みで行われることも少なくない。また、法整備支援への協力の一環として、現役の裁判官を、法整備支援の長期専門家としてベトナム、カンボジアといった国に年単位で派遣することも行われている。なお、アジア太平洋地域の国や地域の最上級裁判所のトップが一堂に会し、司法に関する共通の諸問題を話し合うことを目的とするアジア太平洋最高裁判所長官会議が2年ごとに開催されており、日本の最高裁判所もこの会議に参加している。2015年には、アメリカ合衆国最高裁判所長官が34年ぶりに来日した。
出典:wikipedia
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