ベーシックインカム(basic income)とは最低限所得保障の一種で、政府がすべての国民に対して最低限の生活を送るのに必要とされている額の現金を無条件で定期的に支給するという構想。基礎所得保障、基本所得保障、最低生活保障、国民配当とも、また頭文字をとってBIともいう。フィリップ・ヴァン・パレースが代表的な提唱者であり、弁護者である。しかし少なくとも18世紀末に社会思想家のトマス・ペインが主張していたとされ、1970年代のヨーロッパで議論がはじまっており、2000年代になってからは新自由主義者を中心として、世界と日本でも話題にのぼるようになった。国民の最低限度の生活を保障するため、国民一人一人に現金を給付するという政策構想。生存権保証のための現金給付政策は、生活保護や失業保険の一部扶助、医療扶助、子育て養育給付などのかたちですでに多くの国で実施されているが、ベーシックインカムでは、これら個別対策的な保証ではなく包括的な国民生活の最低限度の収入(ベーシック・インカム)を補償することを目的とする。包括的な現物給付の場合は配給制度であり、国民全員に無償で現金を給付するイメージから共産主義・社会主義的と批判されることがあるが、ベーシックインカムは自由主義・資本主義経済で行うことを前提にしている。新自由主義論者からの積極的意図には、ベーシック・インカムを導入するかわりに、現行制度における行政担当者による恣意的運用に負託する要素が大きい生活保護・最低賃金・社会保障制度などに含まれる不公正や逆差別といった問題を解消し、問題の多い個別対処的福祉政策や労働法制を「廃止」しようという考えが含まれる。一方で、この考え方・思想に対しては古代ローマにおけるパンとサーカスの連想から「国民精神の堕落」など倫理的な側面から批判されることがある。所得給付の額次第では給付総額は膨大なものになり、国庫収入と給付のアンバランスが論じられたり、税の不公平や企業の国際競争力の観点が論じられることもある。賃金補助制度の歴史は、1597年のイギリスにおける救貧法にさかのぼる。人々から救貧税を徴収し、文字通り貧民を救済する制度である。1601年にはエリザベス救貧法が制定され、救貧は地方ごとに行うのではなく、国家単位で行われることになる。1795年〜1834年にはスピーナムランド制が実施された。この制度は、一定基準以下の賃金労働者に、救貧税として徴収した額の中から生活補助金を支出するというものである。この制度の背景には、ナポレオン戦争と凶作によって農民の窮乏が深刻となったという事情があり、補助金の額は食料品(パン)の価格と家族の人数によって算定された。この制度は人道主義的な政策ではあったが、労働意欲を低下させ、救貧税負担を増大すなわち労働者の賃金下落を引き起こす結果となり、やがて廃止となった。やがてBIの構想が18世紀末に出現した。BIの最初の提唱者は以下に挙げるトマス・ペインとトマス・スペンスの2人だと考えられる。トマス・ペイン (1737-1809)はイングランドの哲学者である。彼は1796年の著書『土地配分の正義』において、人間が21歳時に 15ポンド を成人として生きていく元手として国から給付(ベーシック・キャピタル)、50歳以降の人々に対しては年金として年10ポンド給付するという案を発表した。その案では、土地を持つ人間に地代として相続税を課し、財源を賄うとされた。BIに類似しているものとしては世界最古の案と言えるだろう。彼の次に出てきたBIの提唱者はトマス・スペンス(1750-1814)で、イングランドの哲学者である。彼は1797年の著書『幼児の権利』において地域共同体ごとに、地代(税金)を集め、公務員の給料などの必要経費を差し引いた後の剰余を年4回老若男女に平等に分配するという案を発表した。これは純粋なBIとしては世界最古の案と言える。彼ら二人が出現した後、19世紀にも断続的にBI構想が生じた。1848年に、ベルギーの思想家ジョセフ・シャルリエが、自著「自然法に基づき理性の説明によって先導される、社会問題の解決または人道主義的政体」において、地代を社会化・共有化しそれを財源するBIを構想した。また同年、J・S・ミルが自著「経済学原理」の中で、労働のできる人にもできない人にも、ともに一定の最小限度の生活資料を割り当てるという案を示した。シャルリエやミルがBIを主張した40年後の1888年には、米国の作家であり社会主義者のエドワード・ベラミーが、自著「顧みれば」の中でベーシックインカムに近いシステムを描いた。その内容は伊藤(2011)によると、以下のようだったとされる。“私企業に代わり、国家があらゆる財の唯一の生産者となった未来(二〇〇〇年)のユートピア社会のあり方として、毎年、国民の生産のうちの各人の分け前に相当するクレジットが公の帳簿に記入されるとともに、各人にそれに対応するクレジット・カードが発行され、それによって共同体社会の公営倉庫からなんでもほしいものを、いつでもほしいときに買うことができる様子を描いていた。”この中には引用部分の冒頭にあるように、社会主義的な発想も含まれているため、自由競争を否定しない制度であるBIと必ずしも一致しない側面もあるが、それぞれの人に富を分配するという点ではBIと共通する。また、その分配の方法として現金ではなく「クレジット・カード」を発想したことは極めて斬新であり、この発想はBIの実施方法を考えるうえで、現金給付特有の問題を排除したい場合 などに有用であると考えられる。やがて20世紀になるとBI構想を考える研究者が多く出現した。一般的な知名度は高くないが、BI構想の歴史を語るうえで欠かせないのがC・H・ダグラス (1879-1952)である。彼は、自らの著書で社会信用論というシステムを発表し、月5ポンド の国民配当を提唱した。その財源は貨幣発行益である。当初、これに対して正統派の経済学者であるケインズ は否定的であったが、のちに肯定的な立場をとっている。また、W・ベヴァリッジ(1879-1963)は『ベヴァリッジ報告』(1942年)で社会保険を中心としつつ、補足的なものとして公的扶助をおくモデルを提唱した。このモデルは、「稼得能力の喪失ないし稼得能力の不足に陥った時に所得を保障することによって、貧困を防止する」という彼の考えに基づいている。また、彼はケインズと共にケインズ=ベヴァリッジ型福祉国家 を提唱した。ケインズとベヴァリッジは、BIと直接の深い関係は無いが、社会保障の歴史を語るうえで欠かすことの出来ない二人であるので、ここに記した。20世紀半ばにBIについて具体的な数値を用いて提唱したのが、ジュリエット・リズ=ウィリアムズ(1898-1964)であり、イギリスの女性作家であり経済学者である。彼女は『新しい社会契約』(1943年)で社会配当(basic allowance)と呼ばれるBIに極めて近いものを提唱した。給付額は、週1ポンド かつ扶養する子供一人当たりに週0.5ポンドとした。財源を税とし、ミーンズテストを行わない点でBIと類似するが、就労の意思が無く、かつ家事労働に従事していない人を給付対象外とした点ではBIと異なる。財源として比例所得税を主張した点と労働インセンティブを高めるべきという主張が、のちのフリードマンらが唱えた負の所得税という構想に影響を与えた。続いてジェイムズ・E・ミード (1907-1995)は、社会保障のシステムにおいて、ベヴァリッジが提唱した社会保険方式ではなく税方式を提唱した。そして社会配当という呼称でBIを提唱した。彼はBIにより有効需要を創出かつ労働需要を減少させ、社会保障・経済・完全雇用のサイクルを循環させるという考えを持った。また著名な経済学者M・フリードマン(1912-2006)は、1962年の「資本主義と自由(Capitalism and Freedom)」で負の所得税を提唱した。先述のように、リズ=ウィリアムズの影響を受けたとされる。ベーシックインカムは、年金・雇用保険・生活保護などの社会保障制度、公共事業を縮小することにより、「小さな政府」を実現するのに役立つといわれている。また、最低限の生活を保障という点から、企業は雇用調整を簡単に行うことができるようになり、雇用の流動性が向上し、新産業創出などの効果があるという意見がある。ベーシックインカムの基本的な目標は一定の所得を無条件で保障することで、すべての国民が最低限以上の生活を送れるようにすることである。ワーキングプア問題への処方箋として期待する向きもある。ワーキングプアは、自己の年収が200万円を下回る貧困層の立場に置かれているものの、辛うじて生活保護を要するほど困窮した立場にはないとして、従来の社会保障制度では救済されない。日本にベーシックインカムを導入すれば、ワーキングプアにも社会保障を受ける機会を提供できるとされる。また生活保護のように、生活水準が著しく低下してから人々を救う「救貧」と異なり、「防貧」の側面がある。ベーシックインカムは負の所得税と異なり、世帯ではなく個人を単位として給付される。子供を増やすことは世帯単位での所得増加に繋がるため、少子化対策となりうるという考えがある。ベーシックインカムの給付額は生活に必要な最低限といわれることが多い。全国一律であると仮定した場合、物価の安い地方に生活する動機付けになるという意見がある。現在ある複数の年金制度、ハンディキャップを負った人のための保障、失業保険、生活保護など種々の社会保障制度のうち、失業保険、生活保護、および基礎的な年金などベーシックインカムで代替できるものは一本化し、他を補助的に導入することで簡素化されると予想される。これにより最近特に問題になっている生活保護の不正受給問題が解決できる。社会保障制度を簡素化する場合において、それらの運用コストは簡素化に応じて削減される。これはベーシックインカムの導入目的の一つでもある。さらにベーシックインカム実現への課題の一つである財源問題を(他の手段によることなく)同時に解決可能との意見もある。また、現行の生活保護や雇用調整助成金では働かない状態を維持するため受給の条件に合わせる人がいる、負の動機付けや、交渉や制度の利用の得手、不得手から、適切な可否判断が難しいという意見がある。現在の年金や生活保護の制度には所得制限があり、働いて収入を得ると年金や生活保護の減額や支給停止が行われ収入が減少するため労働意欲の低下をまねいている。さらに真面目に働くより、全く働かず生活保護に頼るほうが収入が多くなる逆転現象が発生するため、現在の年金や生活保護の制度は更なる労働意欲の低下をまねいている。一方ベーシックインカムは所得制限がないため、働けば働くほど収入が増える。そのため労働意欲が向上するという意見がある。ベーシックインカムは貨幣を国民に直接給付する形式の景気対策という考えもある。税金を財源としたとき、高所得者より低所得層の方が財を購入する傾向が高いという仮定において、高所得者の貯蓄から消費に回される貨幣の割合を増やすことになる。ベーシックインカムにおいて、労働は、最低限度の生活を起始点として、必要な分だけ賃金を得る方式であるという考えがある。この前提では仕事と余暇の割り当てを自由に行えるという点から、多様な生き方を認めるという思想とも取れるという意見がある。景気刺激策という観点では、余暇を楽しむ選択をした人々がさまざまな財を購入してくれる場合に、その効果は高いという意見がある。生産力の上昇を見込んだ上で、資本主義経済において、常に需要を確保する必要があると仮定すると、マクロ経済的にはよい状態になるという意見がある。公共投資は景気刺激効果をもたらし、GDP上昇に繋がる。ベーシックインカムはこれらの景気刺激効果と変わらなくても、国民総幸福 のような指標では差が生じるという意見がある。#景気刺激策としての効果参照。ワークシェアリングによって、同時に雇用の形式も多様化している方が制度的な整合性がよいという意見がある。正社員という制度が、同じ労働を行う非正社員との間の、賃金や社会保障における格差を生んでいるという考えがある。例えば、非正社員等のワーキングプアは正社員とは違って給与が比較的安い上、国民健康保険や住民税について、前年の年収に基づいた査定がなされて支払う金額が乱高下する。また、ワーキングプアの多くは雇用が不安定であることから、正社員のように給与所得控除など各種の減免措置を受ける機会が乏しい。そのため、比較的裕福な正社員に比べ、ワーキングプアの方がより高い税率で課税されかねない悲惨な現状がある。これを是正する方策として、ベーシックインカムの導入は有効である。また、企業の体力という視点から、現実的には雇用の流動性、生活保障という2つの側面を切り離し、ワークシェアリング、ベーシックインカムという形で組み合わせた場合、正規雇用を増やす政策よりも、企業の負担を軽減するという効果が期待されるという意見がある。確かに、企業側も社員の生活のための無理な雇用継続をする必要がなくなるために、企業の経営効率が良くなる。このことによって、職場環境や雇用環境が向上し、周りの労働者にも便益が生じる。仕事を辞めてもBI給付によって生活を送れるため、不本意な労働をしている人々が仕事を辞めることができる。それに伴い、劣悪な労働環境下で働く労働者に支えられてきた、いわゆるブラック企業が淘汰されていく。所得が保証されれば劣悪な労働環境で無理に奴隷労働する必要がなくなるため、違法行為やグレーゾーンを含む劣悪な労働環境で労働者を働かせているブラック企業の悪しき企業文化を矯正できるという意見がある。所得が保証されれば最低賃金の必要が無くなるので、最低賃金制度を撤廃でき、その結果、海外の安い労働力にも対抗できるようになり、産業空洞化を防ぐ事ができるという意見が有る。ベーシックインカムを導入することによって消費税の逆進性が解消される試算がある。試算によると高所得者(年収1億円、年間支出2000万円)と低所得者(年収300万円、年間支出200万円)では高所得者から低所得者に年間90万円の所得移転がなされると同時に、ベーシックインカムを導入によって消費増税をしたにもかかわらず低所得者の所得が増えていることがわかる。現在の社会制度の下では起業に失敗すると経済的に困難な状況に陥るが、ベーシックインカムが導入されていれば、もともと最低限の生活は保障されているため失敗を恐れる必要がなくなるという意見が有る。また学生が、生活していくため或いは小遣い稼ぎのためにアルバイトにあてている時間を学問・研究に回すことにより日本の学生の質を上げる)。BIを導入すれば政府の管理者・提供者としての側面が強くなり、人々の消費習慣までもが政府に管理・統制されてしまう可能性がある。BIの権利を主張した者が給付された現金をギャンブル、タバコ、アルコールなどの必需品でないもの、または法律に反する物品を手に入れるために使用するような事態になれば、これを防ぐために政府が新たな規制を導入すると考えられる。これは政府が国民に対して「BIを使ってあれを買えこれを買え、それは買ってはダメだ」などと国民の消費生活に統制を加えることと同義である。BIを無条件で導入し社会保障を削減しない場合は、既存の社会保障制度(例えば低所得者層へのフードスタンプや住宅手当て)を利用して、企業が従業員の人件費を抑制する可能性がある。経済学者らは言う。「賃金相場の底値は労働者の日々の生活にかかるコストで決まる。すなわち雇い主は、従業員に最低でもその従業員が食と住居を毎日得られる程度の給料を支払う。」この論理的帰結は、たしかにBIによって国はすべての人に最低限の生活を提供するが、労働は熟練労働であっても低賃金になる可能性があることだ。もし労働者が低賃金でも生活できるようになれば、国からの既存の社会保障に頼ることになり、企業は(人件費を抑制することで)収益を拡大させるだろう。これは本当に公衆が望むことだろうか。BIはユートピアに見えるのだが、国家と国民の関係を公衆にとって望ましいものにはしないだろう。その他、財源の確保や、「はたらかない生き方」を許容できるのかといった課題があげられているベーシックインカムはその莫大な財源をどこに求めるのかという点がつねに議論の的となる。これについては#財源案を参照。山崎元の試算によれば年金・生活保護・雇用保険・児童手当や各種控除をベーシックインカムに置き換えることで、1円も増税することなく日本国民全員に毎月に4万6000円のベーシックインカムを支給することが可能であるとする。具体的には日本の社会保障給付費は平成21年度で総額99兆8500億円であり、ここから医療の30兆8400億円を差し引くと69兆円となる、これを人口を1億2500万人として単純に割ると月額4万6000円となる。小沢修司も月額5万円程度のベーシックインカム支給ならば増税せずに現行の税制のままで可能と試算している。ベーシックインカムの支給額は日本では月額5万〜10万円程度で議論されることが多く、様々な財源案が提起されている。一方で多くの提案の背景には租税徴収確保主義("集めれば良い")があり、民主主義と財産権の観点から課税の正当性を記述する必要がある(目的税)。たとえば受益が課税の正当性の根拠だと安直に短絡している議論もあり、公的分配の背景に財産権の公的侵害があるばあい、公平・公正の観点から、慎重かつ明確に政策目的とその限界が記述されるべきものである(租税法律主義・租税公平主義)。「所得税」、「消費税」、「環境税」、「相続税」などが挙げられる。ゲッツ・W・ヴェルナーは、ベーシックインカムを導入するとともに所得税や法人税を廃止し、消費税に一本化すべきと主張している。BIの財源を消費税のみで賄おうとする場合、現行の消費税率8%を27.8%引き上げた35.8%にする必要がある。これは諸外国で高い税率を課しているハンガリー、アイスランド、スウェーデン各国それぞれの消費税率27%、25.5%、25%よりはるかに高く、やはり消費税のみで財源を賄うことは非現実的である。消費税の引き上げだけでなく、他の税の増税も組み合わせて考えた場合を考える。例えば、相続税の税率 を100%に引き上げた場合を考える。国税庁によると2011年の相続税の課税価格は10兆7,299億円であり、税額(税収)は現在1兆2,520億円である。税率を100%にした場合すなわち、課税価格と税額がイコールとなった状態では、当然税額は10兆7,299億円である。この額と消費税増税分でBIの財源を賄うとすると、先述の計算方法のように試算すると消費税率は5%から約26%引き上げた31%で済む。しかしながらこの税率の設定は現行の税制においては非現実的である。なぜなら、相続税率だけをむやみに上昇させる場合、生前の贈与いわゆる節税が何らかの形で横行することが予想されるからである。すなわち、相続税率を引き上げ、税収を増加させるには贈与税率も同時に引き上げる必要がある。しかし贈与税収の上昇を図ろうとする場合、贈与の実態をすべて把握できるとは限らないため、安定的な税収増は望めない。その際監視を強化する手段もあるが、それに伴い監視のコストがかさむこととなり、行政コストを削減するというBI本来の存在意義に反する。そのため、相続税をBIの主たる財源とするのは非現実的であり望ましくない。所得税率を現行より引き上げた場合、壮年層から税収は得られても退職した高齢者からは税収は得られない。日本が少子高齢化の国家である以上、安定した税収を目指す場合、高齢者から税収を得られにくい所得税の税率引き上げは望ましくない。なぜなら税収増の効果が薄いうえに、今後も少子高齢化が進み、所得税による税収確保がますます難しくなるからである。次に法人税の場合を考える。法人税をBIの財源と考える場合、経営者たちの合意を得る必要があるが、BIが労働意欲の減退を招き、労働供給が減少する可能性がある以上、経営者たちにとってBI導入にはデメリットが伴う。したがって、財源までをも経営側に要求するのは非現実的である。仮に要求する場合は、社会保険の法人負担部分を免除するなど、経営側への配慮が必須となるであろう。ただ、経営側の理解を得られたとしても、法人税率を引き上げることは望ましくない。なぜなら、日本は他国に比べ、法人税率が既に高い水準にある からである。その状態で税率を更に引き上げると、日本の企業が拠点を海外に移し、産業の空洞化に陥るため、経済成長に負の影響を及ぼしてしまう。またよく言われているように、法人税は、景気変動の影響を受けるため、安定した税収が望めない。やはり法人税をBIの財源として考えるのは、様々な理由で困難を伴う。ベーシックインカムの導入は納税者番号制度(あるいはSocial Security number)を前提としており、従来の家計単位での所得申告方式ではなく個人単位での包括的な所得把握が前提となる。税務上、あるいは福祉給付の観点では、データ処理が一元化され非常に扱いやすく制度の簡素化をもたらす。この際に税制の方の簡素化も同時に唱えられることがある。消費税(売上税)については課税の逆進性が最大の論点であり、所得税や相続税については最高税率にいたるまでの税率の高さの略奪性が論点となる。一般に消費税は年間所得額の少ない中低額所得者に高額所得者と同じ税率を求めるため担税応分が多くなる。一方で年間所得については所得税の段階で高額所得者との間ですでに社会的再分配や社会的公正の議論が達成されているとも言える。高額所得者の場合、消費性向が低所得者より低いとされ、日本の2002年の総務省「家計調査」にもとづく勤労者世帯の所得階級別消費税負担率と所得税負担率の計測によれば、所得がもっとも低い分類階層においては所得の2.8%にあたる消費税を負担しており、これは最高所得分類階層のそれが2.1%であったことから逆進性の存在が確認できる。所得税については負担率が4%に対し最高所得階層では12%であり累進的である。もっともこの種の議論は一時点での所得を念頭にしていることが多く、少子化時代における税負担の衡平性を考えるさいにはとくに生涯所得に対する負担の公平性に気を配る必要があり、引退して勤労所得がない人の担税能力が勤労世帯より貧しいとは限らず、消費税を社会保障財源として考えるさいには逆進性を一時点の所得水準で計測することには問題があるともいえる。資産への課税を考える。その手段として例えば貯蓄税 の創設を考える。課税対象は個人の貯蓄すなわち個人金融資産である。日本銀行の資料によると2013年6月末の個人金融資産残高は1590兆円である。これに税率1%の貯蓄税を課税した場合、15.9兆円である。この分と先ほどの相続税増税分、消費税増税分をBIの財源にあてるとすると、消費税率は25%で済む。また、貯蓄税率を2%にした場合は消費税率19%、3%にした場合は12%でそれぞれ賄える。そして、貯蓄税率を4%にした場合は消費税率5%と、現行のままでよい。すなわちBIの財源への消費税増税による拠出が不要となる。ただ、これはあくまで表面的な計算であり、貯蓄税を課税する場合、課税対象である個人金融資産の額の減少が予想されるために、上記のような計算は必ずしも成り立たない。もっとも、貯蓄税の目的の一つとして貯蓄の減少すなわち消費の拡大による景気の刺激があるため、個人金融資産の減少はむしろ歓迎すべきことであるとも言える。富裕層の貯蓄投資にかかわる別途収入については収入の問題であり消費税の議論とは無関係である。また不動産取得税や株式・債券などからの配当や賃料など、あるいは売買差益に対する課税により補正されている。日本の場合、譲渡益税や配当課税については総合課税方式が本則(所得扱いとして累進税率が適用される)であるが、対象により20%の分離課税も可能であり、また上場株式(持分量による)や公募株式投信などの場合さらに軽減税率が適用されている。高額受贈者や相続人には贈与税・相続税が課せられる。資産格差の是正を目的に相続・贈与税の極端な強化がしばしば提言されるが、現在の社会経済体制を前提とすれば、公平性のあくなき貫徹というだけではなく他の税との差はあれども効率性その他の要因を配慮する余地がある。とくに自営業の再生産が維持できるインセンティブは必要である。社会主義では遺贈が法的に存在していないかのような誤解があるが旧ソビエト、ベトナム、中国でも相続権は存在しており、土地所有形態や課税体系と税率の問題である。とくに中国では2012年現在でも相続税(遺産税)は存在しない。課税についてはさまざまな節税策や租税回避、脱税行為などが不公正としてしばしば論じられる。中央銀行とは別に政府紙幣を発行する案。いわゆるヘリコプターマネーの一種。通貨は本来、市中の要請に対して中央銀行が貸し出しているものであり、貸し出し残高が市中流通量、また通貨の価値は「借り手側の信用」(すなわち市中の信用力)により保証されている。政府紙幣は「政府の信用」(徴税権や国庫財産)を担保として政府みずからが紙幣を作り使用するものである。これをベーシックインカムの財源に充てよとする主張である。事例としては軍票など過去に事例があり、徴税権や国庫財産に見合う程度の流通量を適切に管理できれば問題ないが、消費や投資に回らない場合、景気刺激効果は通常の通貨発行と同等となってしまうため、使用期限付き政府紙幣の提案などが行われている。歴史上しばしば発行された軍票は戦争の終結とともに必ず現金通貨で回収されており、恒常的な財源として政府紙幣の継続的な発行政策が成功した歴史的事例はない。しかしながら、通貨のもつ本質的な機能の一部(貯蓄性)を巧妙に回避し消費を刺激するために「期限付き紙幣」を導入することは経済学的に魅力的な提案と評価されている主な反論としては、結局のところ長期国債の日銀引受(財政法5条違反)を巧妙に回避しているにすぎず、税収と給付の本質的なアンバランスの解決になっていないとするものがある。また、貨幣発行益を財源としベーシックインカムを実施せよとの主張もある。これは1920年代のC.H.ダグラスによる「社会信用論」を起源とし、現在の日本では関曠野や白崎一裕が提唱している。この主張は文字通り、信用の裏づけなく政府紙幣を発行し所得給付に充てよとするものである。貨幣発行益を財源としてベーシックインカムを実施する場合、新たな増税が必要ないという考えであり、また同時にインフレーションが起こるという意見である(インフレーション税)。インフレーション税の場合わざわざ政府紙幣を発行する必要はなく、恒常的に長期国債を累積的に発行し、それを中央銀行に引き受けさせても良い。国宗浩三によれば、通貨発行益の増大を行政府がはかったばあい、誘惑に負けて巨額の貨幣発行を行うことの経済的帰結は明らかであり、インフレの発生、インフレ率の高騰、それに伴う経済社会の混乱である。またインフレは貨幣需要をへらすため(通貨保有による「課税」を逃れるため)、結局は通貨発行益を減らすことになるとする。一方で、とくに開発途上など持続的な経済成長をともなく経済においては、経済の成長に伴う貨幣需要に見合っただけの通貨を追加的に供給することにおいては、通貨発行はインフレの要因にはならず税源としての通貨発行益が期待できるとする。経済にはタダ飯(フリーランチ)は無いのが普通であるが、経済成長に伴う通貨発行益は数少ない例外であり、通貨発行益を主な財源としてあてにするのは大きな間違いであるが、経済成長が続くかぎり(とくに発展途上国にとっては)安定的な補助的財源としては優秀なものだとする。中国の経済構造はこの点で特筆すべきものがあり、中国政府の財政における通貨発行益は非常に高く、GDP比5%を超えている。しかしインフレ税に頼る比率は約3割にすぎず、7割は成長にともなう果実としての通貨発行益である。ただしこれが今後も続くかどうかと言う点については慎重であるべきで、経済システムが成熟するにしたがって貨幣選好は低下し相対的な貨幣発行益は減少する可能性がある。松下幸之助の提唱した無税国家方式。現行の財政予算使いきり方式ではなく各年度「貯蓄」してゆき、その貯蓄運用により税を補填するとするもの。たとえば政府系ファンド方式はこれにあたる。マクロ経済の観点では他国(外部)利害を前提としており、国益論における貿易黒字政策にあたる。また外部を想定しない経済においては課税方式の「名づけ方」の差異であって、例えば議会が企業の株式を40%取得することと、同企業に対して純利益の40%に法人税を課することは純利益の分配の観点からは同値である。この場合、「税率が高い国(領域)が豊かである」との命題と同等の主張を含んでいる可能性がある。また基金の市中での運用が成功することを前提とした議論であり、公的年金基金や外国為替資金特別会計などの運用状況から課題が容易ではないことが推測される。鉄・銅・ボーキサイト・ウラン鉱・石油・石炭等天然資源売却,收益の国民分配。ベーシックインカムの導入による景気刺激効果が期待できるという意見がある。高所得層よりも低所得層の方が消費性向が高く、所得を消費に回す率が高いため国民経済全体としての消費需要が高まり、景気が活性化するとする。累進課税方式の場合は、所得の再分配機能から高所得層から低所得層への所得移転が起きるため、この効果はより大きくなる。売上税(消費税)を財源とする場合、各所得階層間の再分配機能はより緩やかになり、消費性向による刺激効果も限定的となる。このため所得制限つきベーシックインカム論や品目別売上税率の設定などが提案されている。前者については制限水準近傍での勤労者のモラルハザードが発生する可能性がある。貨幣発行益が財源の場合、高所得層も低所得層も所得が増大するので、どちらの消費需要も高まるという意見がある。しかし日本のように高度に金融資本の発展した経済ではインフレ税(信用の裏づけの無い通貨による景気刺激策)そのものは荒唐無稽な思考実験に近い論述であり、一部の論者の経済学的思考実験にとどまっている。インフレ税採用の宣言により従来の発行済み国債の価値は経時的に低減してゆくことになるため、信用秩序に与える影響は予測できない。インフレ税導入論の背後には日本経済破局論や根拠のない略奪税(租税徴収確保主義)の主張が含まれている可能性がある。ただし、類似の論調としては、政府短期証券を累次発行し為替介入を続け、円売り外債買いをつづけることで恒常的な通貨売り(インフレ)をもたらし、かつ外債運用益を財源にすべしとの案も提案されている(政府系ファンド論)。もっとも2009年現在での外貨準備運用はせいぜい年2.9兆円程度であり、しかも受け取りは外貨建てであり財源として期待できる規模は限定的である。また恒常的な自国通貨売りは典型的な近隣窮乏化策であるため、IMFを始めとする従来の国際自由貿易体制に許容される可能性は低い(ないしは対象国から対抗介入され無効化される可能性がある)。ケインズ経済学の知見では、技術進歩や資本蓄積によって、生産力が十分に高まった先進国の経済では、潜在的な供給量が常に過剰であり、需要不足ゆえの失業が常に生じる。この場合、消費の呼び水となるベーシックインカムは雇用拡大の有力な手段に成りうる。日本でベーシックインカム導入をマニフェストに盛り込んでいる政党は生活の党と山本太郎となかまたち、緑の党グリーンズジャパン、新党日本である。生活の党と山本太郎となかまたちは2016年参院選公約にて「最低保障年金のあり方を含め、生活をしっかり支えるベーシックインカム制度の導入を進めます」と記載している。また2013年参院選公約にて「税財源の最低保障年金と社会保険の所得比例年金の構築により、年金制度一元化を図る」「社会保障制度を見直し、公平・公正な所得再分配を行い、貧困、低所得層への給付を適切化する。また、ベーシックインカム制度の導入を検討する」と記載している。また前身政党である旧国民の生活が第一は2012年11月25日に発表した第2次基本政策検討案にて「ベーシックインカムの導入を検討する」としていた。緑の党グリーンズジャパンは2013年参院選公約にて「最低賃金・生活保護・基礎年金の拡充で年間200万円の最低所得保障を実現し、将来的なベーシック・インカムの導入に向けた制度設計に取り組む」と記載している。新党日本はベーシックインカム導入を公約にしている。なお新党日本はベーシックインカムに関する公約の量が多いため詳細は新党日本#ベーシックインカムを参照。維新の党は基本政策にて「給付付き税額控除制度の導入を通じた最低生活保障(ミニマムインカム)の実現。」と記している。また維新の党に合流した旧結いの党は主要政策にて「「給付付き税額控除」によりミニマムインカム(最低生活保障)を担保。」と記されており旧結いの党の主張が概ね維新の党に引き継がれた形となっている。また関連政党である大阪維新の会は維新八策の最終案にて「ベーシックインカム的な考え方」の検討と記されておりベーシックインカムそのものの導入ではなく「資産・所得制限のある年金制度」と「現物支給中心の生活保護」を導入するとしている。橋下代表も「現金を一律に給付するわけではない」と明言しており本項で解説するベーシックインカムと大阪維新の会のベーシックインカムは大きく異なっているため注意が必要である。なお関連政党である旧日本維新の会の2013年参院選公約にはベーシックインカムに関する記述はない。みんなの党は2013年参院選公約にて「年金は積立方式への移行を検討」「低所得者層への給付つき税額控除方式を導入。また生活保護制度の不備・不公平、年金制度との不整合等の問題を段階的に解消し、最終的には基礎年金と生活保護を統合したミニマムインカムを創設する」と記載しているが、このミニマムインカムはベーシックインカムとは異なり全国民に無条件で現金を支給することが記載されていない。みんなの党所属議員も「ミニマムインカムとベーシックインカムは違います」と述べている。2010年の第22回参議院議員通常選挙に立候補した候補者に対して、ベーシックインカムに関する意識調査が行われた。この調査から同じ政党にベーシックインカム賛成派と反対派の両方が所属していることがわかる。民主党と共産党は検討中などの理由でどちらともいえないと回答する候補者が多い。選挙結果はベーシックインカム賛成派が16人当選(うち民主党5人、自民党2人、公明党4人、みんなの党3人、社民党1人、たちあがれ日本1人)、反対派が18人当選(うち民主党4人、自民党12人、公明党1人、みんなの党1人)となりほぼ同数となった。どちらともいえないと回答した候補者は11人当選(うち民主党7人、公明党1人、みんなの党1人、共産党2人)した。新党日本はこの選挙には参加していないため今回の調査対象となっていない。元新党日本副代表で、民主党比例代表で立候補し1位当選となった有田芳生は以前からのベーシックインカム推進論者である。ベーシックインカムに類似した給付を実施している国は少数だが存在する。ただし、そのいずれも天然資源の輸出による外貨収入を配分・給付するものであり、勤労所得で財政収支を均衡させている先進国および中進国で恒常的に制度化している例はない。以下の制度は年齢制限があったり、支給される金額が多すぎるまたは少なすぎるなど新党日本や緑の党グリーンズジャパンのベーシックインカムと異なる点があるが、ベーシックインカムに近い制度が実際に導入されている。以下の4つの制度は天然資源を財源にしているため持続可能性は低い。そのため資源の枯渇と同時に制度の維持が困難になる。グローバルグリーンズに加盟している環境政党がベーシックインカムを支持していることが多い。日本の緑の党グリーンズジャパンもグローバルグリーンズに加盟している。各国の海賊党がベーシックインカムを支持していることが多い。韓国では民主労総、進歩新党、旧社会党、旧民主労働党などの左派勢力がベーシックインカムを支持している。これは日本の連合、日本共産党、社民党などの左派勢力がベーシックインカムに反対していることとは対照的である。日本の政党の動向は負の所得税もベーシックインカムと似たような効果を持つ政策であり、実施に当たっては単位が個人ではなく、世帯ごとと構想されることが多い。所得を低く申告して給付を受けようとするインセンティブが働くため、所得申告の際の不正行為を防がなければならない分、行政コストはより掛かるという意見がある。低所得者に税の還付をする制度。負の所得税から派生した所得再分配政策とも言える。給付付き税額控除は、負の所得税と違い、勤労所得がゼロの場合、全く金銭を得ることが出来ない。もう一つの違いは給付付き税額控除は、所得ゼロの状態から勤労収入を得た場合に、ある程度まで、手取り額が負の所得税に比べ大きく増えていく点である。米国においてEITC(Earned Income Tax Credit)という名称で実施されている。また、EITCという制度は25 歳以上 65 歳未満の勤労者を対象とし、就労のインセンティブを促進するため、勤労所得の増加に合わせて税額控除が逓増する部分を設定し賃金を補助する仕組みである。例えば、子供が2人の勤労者の場合、所得$12,570までは所得が1ドル増えるごとに0.4ドル税額控除額が増加する。その後、税額控除額は所得$16,420まで一定額$5,028で、それ以上の収入に対しては、収入1ドルの上昇につき 0.21ドルだけ税額控除が減少し、収入が $40,295 になった時点で税額控除はゼロになるという算出方法である。低所得の人々に優しく、実現が現実的な制度とも言える。みんなの党のアジェンダに記載されている政策で具体的な内容はアジェンダには全く記載されていないが、みんなの党衆議院議員の柿沢未途の発言によると「最低生活費をまず算定し、収入との差額を給付する形」「無条件での一律の現金支給であるべきではない」としており生活保護や負の所得税に近い主張をしている。2013年秋、スイスでベーシックインカムの導入を訴える10万人の署名が集まり、その可否を問う国民投票が行われる予定であると報道されたが、その一連の報道の中ではミニマムインカムとベーシックインカムは同じ意味で用いられた。しかし結いの党ではミニマムインカムと給付付き税額控除を同じ意味で用いられておりミニマムインカムがどのような政策を指すかは定まっていない。下の表はベーシックインカムとの類似点を、相違点をで表記している。子ども手当が次第にベーシックインカムからかけ離れた制度になっていく様子がわかる。なお表のベーシックインカムは新党日本および緑の党グリーンズジャパンの公約、ミニマムインカムはみんなの党の公約の内容である。※はみんなの党衆議院議員の柿沢未途の発言を基にした内容基本的人権、生存権といった自然権がベーシックインカム配布の根拠とされる。たとえば経済的自由主義者のフリードリヒ・ハイエクは「組織化されたコミュニティの内部で自らを養うことができない人々に助力の手を差し伸べることは、全員の道徳的義務と感じられるかもしれない。最低所得がなんらかの理由で市場で十分な生活費を稼げなかった人々すべてに対して【市場外】から提供される場合、これは自由の制限にいたることもないし、法の支配と対立することもない。」とし法の支配との整合性の観点から最低限度の生活保障を提唱した。ハイエクは具体的な市場過程への政府の介入については終始一貫して拒絶し続けたが、市場過程の前提となるノモスの法(部族社会的な法)型のルール設計についてはその晩年において許容するようになった。ベーシックインカム賛成者には一般的に中道右派政党が主張する新自由主義派と中道左派政党が主張する福祉重視派の両者がおり、右派と左派の両方にベーシックインカム賛成者がいる。実際に、日本の2010年の参院選において、最右派政党であるたちあがれ日本の議員や右派政党である自民党の議員、左派政党の社民党の議員がベーシックインカム賛成派として右派左派関係なく当選している。社会学者の大澤真幸によれば、ベーシックインカムは「修正版功利主義」を体現する原理とみなすことができるという。功利主義とは、「最大多数の最大幸福」を目標として社会設計を行う思想であるが、「最大多数」と「最大幸福」という2つを同時に達成しようとすると「幸福の総和さえ大きくなれば個人の権利は軽視される」という難点が生じる。そこで目標を「最大多数の一定幸福」というように切り替えた修正版の功利主義を考えれば、最低限の生活水準をおくれるだけの資金(=一定幸福)を無条件に国民全員へ(=最大多数)給付するベーシックインカムの思想と結びつくことになる。ワークシェアリングは人々の間で労働を分け合う制度であるが、ベーシックインカムとワークシェアリングを組み合わせる提案も見られる。個人から見ると働き方の自由化、企業から見ると雇用の多様化を実現できる。個人(雇われる側)がワークシェアリングに反対する理由は主に収入である。仕事をシェアすることで労働時間は減るが、それだけ一人一人の収入も減ることになる。しかし、ベーシックインカムで収入が下支えされれば、仕事をシェアしてもよいと考える人は増えるであろう。一方、企業(雇う側)の反対理由の一つは、雇用者を増やすことで社会保障費がかさむことである。これもベーシックインカムによりクリアできる可能性がある。ワークシェアリングを社会全体に普及させるには法による制度化が必要であるが、制度を適用するに当たっては個人の意思を尊重すべきである。できるだけ多くの人に仕事を分け与えようとフルタイムで働きたい者にまでワークシェアリングを強制される可能性もある。ベーシックインカムは自由主義・資本主義経済の下で行うことを前提としている。
出典:wikipedia
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