所有権移転登記(しょゆうけんいてんとうき)は登記の態様の1つである。本稿では日本の不動産登記法における所有権移転登記について説明する。不動産(不動産登記法においては土地及び建物)の所有権が現在の登記名義人から他人に承継された場合、第三者に対抗するためには原則として所有権移転登記が必要となる()。その方法は一般承継か特定承継かによって一部手続きが異なる。なお、所有権の登記のない不動産については、まず所有権保存登記(ないし、)を行わなければならない。説明の便宜上、次のとおり略語を用いる。一般承継とは、前所有者の有する権利・義務の一切を承継することである。包括承継とも言う。前所有者が不動産の登記名義人であった場合、当然に所有権の承継が行われる。自然人については相続が、法人については合併があてはまる。なお、会社分割も一般承継ではある(2001年(平成13年)3月30日民二867号通達第1-3)が、登記手続きは共同申請で行う(同通達第2-1(1))。よって、本稿では便宜特定承継の項目に含めている。登記の目的(5号)は、不動産が前所有者の単独所有であった場合、「登記の目的 所有権移転」とし(記録例187・196)、前所有者Aと他人Bの共有であった場合、「登記の目的 A持分全部移転」とする(記録例188)。登記原因及びその日付(令3条6号) は、相続の場合は前所有者(被相続人)の死亡の日を日付として「原因 平成何年何月何日相続」とし(記録例187)、合併の場合はその効力発生日を日付として「原因 平成何年何月何日合併」とする(記録例196)。登記申請人(令3条1号)については、相続又は合併による所有権移転登記は、登記権利者による単独申請で行う(2項)。その記載方法は、相続の場合、(被相続人 A)のように記載し、その下に相続人の住所及び氏名を記載する(法務局、法定相続の申請書の書式、別紙1参照)。合併の場合も同様に、(被合併会社 株式会社B)のように記載し、その下に記載すべき申請人の資格は「権利承継者」・「承継会社」等分かるように記載すればよい。なお、申請人が法人であるので、以下の事項も記載しなければならない。添付情報(1項6号、一部)は、登記原因証明情報(・1項5号ロ、後述)、住所証明情報(添付情報ロ)である。合併の場合は更に代表者資格証明情報(不動産登記令7条1項1号)も原則として添付しなければならない。一方、既述のとおり単独申請で行うので、登記識別情報の添付は不要である(本文参照)。また、登記義務者が存在しないので、その印鑑証明書の添付も不要である(2項・1項4号及び3号ホ、2項・2項4号及び規則48条1項4号並びに規則47条3号ホ)。登録免許税(1項前段)は、不動産の価額の1,000分の4である(登録免許税法別表第1-1(2)イ)。 なお、端数処理など算出方法の通則については不動産登記#登録免許税を参照。共同相続人全員のための相続登記を、そのうちの1人から申請することができる(ただし書)。一方、共同相続人中一部の者の申請により、その者の相続分についてのみ相続登記をすることはできない(1955年(昭和30年)10月15日民甲2216号回答)。前所有者(被相続人)の生殖能力があると考えられる年齢以降死亡までの戸籍謄本・除籍謄本等が必須である(1959年(昭和34年)12月14日法曹会決議、登記インターネット68-185頁参照)。また、相続人となるべき者の戸籍謄本も添付しなければならない。相続人に修正があった場合、それを証する書面(相続放棄申述受理証明書など)を添付する。相続分に修正があった場合、それを証する書面(特別受益証明書など)を添付する。法定相続分(・)と異なる相続をした場合、それを証する書面(遺言書や遺産分割協議書など)を添付する。原則として、法人の登記事項証明書である。会社の合併の場合、合併の記載がある新設会社又は吸収合併存続会社の登記事項証明書である(2006年(平成18年)3月29日民二755号通達1-(1)及び1953年(昭和28年)8月10日民甲1392号電報回答参照)。合併契約書ではない。特定承継とは、前所有者の有する権利・義務のうち一定部分を承継することである。不動産の所有権も契約等により承継できる。売買が典型例である。一般承継の場合の登記事項のほか、相対的事項として権利に関する消滅の定めも登記することができる(5号)。具体的には「特約 買主Aが死亡した時は所有権移転が失効する」のように記載する(記録例203)。この特約を登記するには所有権移転登記と一括で申請しなければならない(11号ニ)。また、この特約は付記登記でされる(6号)。一般承継の場合と異なり、所有権又は持分の一部の移転も可能である。その場合、「登記の目的 所有権一部移転」・「登記の目的 A持分一部移転」のように記載する(記録例200・206)。複数の共有者それぞれの持分一部を移転する場合、「登記の目的 A持分何分の何、B持分何分の何移転」のように記載する(登記研究546-152頁参照、記録例208)。共有者全員の持分全部を共有者以外に移転する場合、「登記の目的 共有者全員持分全部移転」と記載する(記録例209)。共有者のうち1人を除く全員の持分全部を移転する場合、「登記の目的 Aを除く共有者全員持分全部移転」のように記載する(記録例214)。ただし、移転する持分のうち一部の共有者の持分を目的とする第三者の権利が登記されている場合、一括して申請することはできない(1962年(昭和37年)1月23日民甲112号通達)。複数の共有者のそれぞれの持分全部を移転する(ただし、共有者全員の持分全部の移転ではない)場合、「登記の目的 A、B持分全部移転」のように記載する(記録例213)。ただし、この場合において、移転する一部の共有者の持分(例えばA持分)を目的とする第三者の権利が登記されているときは、「A持分全部移転」と「B持分全部移転」をするべきである(記録例210)。前所有者が数回に分けて所有権を取得している場合、順位番号を指定して特定の一部についての移転も可能である(1983年(昭和58年)4月4日民三2252号通達、記録例211・212)。その場合、「登記の目的 所有権一部(順位3番で登記した持分)移転」などと記載する。これは、特定の持分について抵当権が設定されている場合などに実益がある。なお、この事例の登記記録の例は以下のとおりである。抵当権などの担保物権の目的たる持分とそうでない持分を相続した場合、相続人が担保物権の目的でない持分を第三者に移転したときは、「登記の目的 A持分一部(順位3番から移転した持分)移転」などと記載して持分一部移転登記を申請することができる(1999年(平成11年)7月14日民三1414号回答)。なお、この事例の登記記録の例は以下のとおりである。民法又は民法の特別法に根拠があるものを原因とすることができる。具体例を、根拠条文と共に示す。なお、この項目に限り、特記がない場合、条文は民法のものである。売買()、贈与(・・)、遺贈()、交換(1項)、共有物分割(1項本文・)、代物弁済()、和解()、財産分与(・・)、時効取得()、遺留分減殺()、持分放棄()、解除(ないし・1項)、買戻し()、会社分割(ないし)、現物出資(1項)、出資(1項6号参照)、収用(土地収用法2条など)、信託(信託法3条など)。他に、以下のようなものがある。譲渡担保は条文には存在しないが、判例で認められている。また、特殊な原因として「真正な登記名義の回復」がある。これは、本来抹消登記をするべきであるところ、利害関係人の承諾証明情報()を添付すべきなのに承諾が得られない場合、所有権移転登記によって登記名義を得る手続きである(1961年(昭和36年)10月27日民甲2722号回答)。一方、寄託(登記研究326-71頁)、譲渡(登記研究491-107頁)、錯誤(登記研究541-137頁)、財産分割(1959年(昭和34年)10月16日民甲2336号電報回答)は登記原因としては認められない。ただし、錯誤については抹消登記や更正登記の登記原因とすることはできる。共同申請による場合、所有権又はその持分を得る者を登記権利者とし、失う者を登記義務者として記載する。なお、法人が申請人となる場合、以下の事項も記載しなければならない。一方、民法第958条の3の審判の場合は特別縁故者の単独申請により(1962(昭和37年)6月15日民甲1606号通達)、審判や調停による離婚の場合は登記権利者の単独申請により(共に1項)、登記をすることができる。なお、遺贈及び死因贈与の場合、それぞれについて遺言執行者を記載する説と記載しない説が存在する。共同申請による場合、登記原因証明情報(不動産登記法61条・不動産登記令7条1項5号ロ)、登記義務者の登記識別情報(不動産登記法22条本文)又は登記済証及び書面申請の場合には印鑑証明書(不動産登記令16条2項・不動産登記規則48条1項5号及び同規則47条3号イ(1)、同令18条2項・同規則49条2項4号及び同規則48条1項5号並びに同規則47条3号イ(1))、登記権利者の住所証明情報(不動産登記令別表30項添付情報ロ)である。法人が申請人となる場合は更に代表者資格証明情報(不動産登記令7条1項1号)も原則として添付しなければならない。上記のうち印鑑証明書については、遺贈及び死因贈与並びに「所有権者死亡」の場合、登記義務者が生存しないので、相続人又は遺言執行者のものを添付する。なお、「所有権者死亡」の場合、登記義務者が生存しないので、申請人が相続人であることを証する情報(不動産登記令7条1項5号イ)を添付しなければならない。具体例は#死因贈与の場合と同じである。原則として、不動産の価額の1,000分の20である(登録免許税法別表第1-1(2)ハ)。ただし、2011年3月31日まで土地の売買については1000分の10(租税特別措置法72条1項1号イ)、2011年3月31日までに取得した住宅用家屋につきその取得の日から原則として1年以内に所有権の移転の登記をする場合は1000分の3(同法73条)の軽減税率が適用される。なお、端数処理など算出方法の通則については不動産登記#登録免許税を参照。例外として、遺贈及び共有物分割の場合は不動産の価額の1,000分の4となる場合がある(2003年(平成15年)4月1日民二1022号通達1-2、登録免許税法別表第1-1(2)ロ)。詳しくは遺贈及び共有物分割を参照。また、遺留分減殺については相続に準ずるとされているので、不動産の価額の1,000分の4である(登録免許税法別表第1-1(2)イ)。民法上の組合における出資等の登記原因については、先例(1991年(平成3年)12月19日民三6149号回答)が詳しく述べている。事例ごとの区分は以下のとおりである。遺贈、共有物分割、時効取得についてはそれぞれの項目を参照。また、持分放棄については共有を、委任の終了については権利能力なき社団を参照。所有権移転登記は主登記で実行される(参照)。なお、登記官は、権利消滅の定めにより所有権移転登記をするときは、当該権利消滅の定めの登記を抹消しなければならない()。
出典:wikipedia
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