『BEST GUY』(ベストガイ)は、1990年12月15日に公開された日本映画。航空自衛隊の撮影協力で日本版『トップガン』を目指して作られたスカイアクション。航空自衛隊千歳基地を舞台に、パイロットに与えられる最高の栄誉とされるBEST GUYの座を賭けて特別強化訓練に臨むF-15J イーグルのパイロットたちの姿を描く。日本版『トップガン』を目指したが、興行成績は振るわなかった。空中戦シーンは特撮だけではなく、自衛隊の実機による実際の飛行撮影が行われた。領空侵犯(いわゆる「東京急行 (ロシア空軍)」)によるスクランブル出動のシーンでは、ツポレフTu-16とスホーイSu-27が特撮で登場しているが、実機の迫力と特撮場面との間に乖離があり、本作の評価を落とす一因ともなっている。―――それは人格・技量など全ての面において優れる、飛行隊の模範となるパイロットに与えられる最高の称号である。航空自衛隊千歳基地の第2航空団に属する第201飛行隊では、特別強化訓練を通じて3年前の選考では選出できなかったを再び誕生させようという機運に包まれていた。そこへ宮崎県新田原基地の第5航空団から転任してきた梶谷が現れる。彼は幹部候補生学校ではドンケツの成績でかろうじて任官した劣等生で、新田原では3度も飛行資格を取り消されかけたほどの破天荒な男だが、こと飛ぶ事に関しては天性のものを持つF-15パイロット=イーグル・ドライバーだ。指定の着任時間に遅れ、ロッカールームで会った隊員達には軽い態度で接する梶谷だったが、飛行隊の班長を務める吉永に会うなり挑発的な態度を取る。二人の間には、梶谷の兄・哲夫にまつわる確執があった。哲夫は小松基地のとして知られるF-4パイロット=ファントム・ライダーだったが飛行中の事故で死亡しており、吉永は事故の際哲夫の操るF-4の後席にいながらも生還した過去があったのだ。そのため梶谷は、吉永に一方的で不条理ともいえる敵意を向け続けていたのである。梶谷は転任直後の飛行からハイレート・クライム(急上昇離陸)を行って訓練幹部の屋敷や航空管制官を慌てさせるヤンチャぶりを発揮するが、射撃訓練では防衛大学校出身のエリートで最もに近い位置にいるといわれる名高にも引けを取らない腕前を見せる。そして隊を山本隊長率いるフォックスチームと吉永率いるベアーチームに分けて戦技を競う、3週間に渡る特別強化訓練が開始された。梶谷はフォックス、名高はベアーに分かれた事で二人の凌ぎ合いは熾烈さを増すが、名高へのライバル心に逸った梶谷はあわや互いの僚機までも巻き込んだ空中正面衝突という危険な飛行で名高の怒りを買った上に、編隊を組んでいた中川からウイングマンを降りるといわれてしまう。己の過剰ともいえる自信や名高への対抗心、そして吉永への怒りや憎しみにも似た思いが渾然となった、やり場のない感情を持て余す梶谷。彼は人気歌手シェリーのプロモーションビデオに使うF-15の映像を撮影するため時を同じくして基地にやって来たビデオディレクターの深雪に、そんな自分の感情をバーティゴ(空間識失調)に例えて話す。ある日、基地にスクランブルのサイレンが響き渡った。ソ連の偵察機が日本の領空を侵犯したのだ。アラート任務に就いていた梶谷と名高は侵犯機の飛行する空域へ急行、編隊長の名高が警告を行うがその直後に現れたSu-27が名高の機体をロックオンする。あからさまな恫喝をされてなお積極的な攻撃行動は行えないという不利な状態ながらも、梶谷と名高は巧みにサポートし合ってSu-27と偵察機を追い払う事に成功する。生死が隣り合わせの任務を終え、二人は初めて何のわだかまりもなく互いの腕を認め合い、笑顔で帰途へと就いた。だが、ここで思いもよらない事態が発生した。雲の中を飛行中、梶谷がバーティゴに陥ったのだ。名高は必死に誘導を試みるが、混乱の末恐怖心に駆られた梶谷は機体を捨てて脱出。幸いにも海上に出ていた梶谷機は民間に被害を与える事無く海中へと没し、梶谷自身も大きな怪我をする事無く救助される。バーティゴに慌てふためき、機体を意識的に安全なところへ運んでから脱出するというマニュアルすら守れなかった失態に自信を喪失する梶谷。名高は編隊長である自分の責任と謝罪するが、そんな誠意も梶谷には辛いだけだった。そこへ現れた吉永に、自棄になった梶谷は自分が死の恐怖に己を見失った最低のパイロットであると吐き捨てた。それに対し吉永は「お前の兄貴も、生きていればそういったはず」と語る。その言葉に激昂し、殴りかかる梶谷。吉永は、尊敬する哲夫の死の真実を積極的に知ろうとせずにいた梶谷の気持ちを慮り、あえて彼の怒りや憎しみを受け止め続けていた。しかし今ここで真実を知らせなければ梶谷は一生兄の影を引き摺り続け、パイロットとしても立ち直れなくなる―――そう考え、吉永は哲夫と自分が遭遇した事故の全てを語った。兄の死の真相に衝撃を受けた梶谷は飛ぶ事への意欲まで失い、抜け殻の様になってしまう。九州へと赴いてかつての恋人に会い慰藉を求める梶谷だったが、彼女はもう既に新しい恋人との生活を始めていた。次に梶谷が赴いたのは、突然基地から姿を消した深雪の住む東京だった。深雪はスポンサーの撤退でビデオの撮影が頓挫してしまい、募るばかりの仕事への思いにもがき苦しんでいた。己の無力さに苛立ち、梶谷との言い争いの中で感情を爆発させる深雪。梶谷はそんな深雪を言葉少なくも励ましながら、自分が今望んでいるものをはっきりと認識して彼女の部屋を後にする。いよいよ訓練最終日。基地には自分の思いに従って、最後まで戦いを見届けようと一人撮影機材を抱えて再びやって来た深雪の姿もあった。ここまでの成績トップの名高と、それに続くスコアの梶谷によるACM(空中格闘戦技・空中戦)で結果が決まるはずだったが、時間になっても梶谷の姿は見えない。今回もの座は空席に……誰もがそう思いかけた時、梶谷は現れた。彼もまた己の意思に正直に、求めるものを手に入れようと戻ってきたのだ。梶谷は名高へと語りかける。「イマジン……俺はになる事に決めた」最高のライバルの復活宣言に、名高は笑顔で応えた。「待っていたよ」二人のイーグル・ドライバーの、意地と誇りをかけた戦いの幕が上がった。互いに相手の得意技までも駆使し、ブラックアウトを起こす程の、技量と体力の限界を超えた激しいドッグファイトが蒼穹に繰り広げられる。果たして<最高の男>の称号はどちらが掴むのか。本家『トップガン』と共通する設定が複数存在する。主題歌・挿入歌には、近藤房之助、坪倉唯子、生沢佑一が起用された。1991年公開の映画『ゴジラvsキングギドラ』の中盤で第2航空団のF-15Jがキングギドラを要撃するシーンに本作のフィルムが流用されている。本作に登場した垂直尾翼と水平尾翼にオレンジの識別塗装が施されたF-15Jがそのまま登場するため、流用箇所の判別は容易である。
出典:wikipedia