フーガ(伊: fuga、遁走曲)は、対位法を主体とした楽曲形式の1つ。ウィキペディア英語版では「形式か書式か」で異論がある。フーガの大きな特徴は、カノン同様、同じ旋律が複数の声部に順次現れるということである。この部分を主題提示部、または単に提示部、主部と呼ぶが、これには次のような原則がある。このようにして、提示部が形成される。提示部は一つのフーガの中に異なる調で数回現れる。提示部と提示部の間には嬉遊部(ディヴェルティスマン)と呼ばれる自由な部分が挟まれる。多くの場合、主唱や対唱、結句などの素材が用いられる。提示部 - 嬉遊部を繰り返し、最後に追迫部(ストレッタ)が置かれる。追迫部では追迫(主唱が終わらないうちに応唱を導入する)という手法が用いられる。典型的なものを示せば次の通りである。この提示部ないし追迫部と嬉遊部の関係だけを見ると、リトルネロ形式と非常に似ている。フーガでは各提示部において、上記のように各声部が同じ旋律を定められた変形を伴って順次奏するのが特徴であるが、普通、回ごとに各パートが違う順序で導入される。上述のものはあくまでも典型的な例であって、標準的でないもの(主題が複数あるものや、ストレッタを欠くものなど様々)もありうる。フーガは声部の数によって二声のフーガ、三声のフーガ、四声のフーガ、五声のフーガ……などと分類される。声部数によって、当然作曲に求められる技法は変化する。複数の主題を持って構成されるフーガをその数に従って二重フーガ、三重フーガと呼ぶ。普通のフーガでは対唱の主題性は主唱に比べて低く、2つの旋律が同時に演奏されるにしても主題は1つであると言って良いが、これらのフーガでは同等の主題性を持つ旋律が複数並び立つこととなる。このようなフーガでは、しばしばそれら複数の主題が曲頭から順に提示される(4声の二重フーガの場合は第1主題→第2主題→第1主題(属調)→第2主題(属調)となる)。フーガの主題は時として上下転回された形で模倣される。上下転回された主題を、主題の反行形と呼ぶ。最初の提示部での応答が転回されたり(結果として主音と属音が入れ替わる)、第2、第3…の提示部において主題が転回されるなど、反行形の主題の提示位置は様々である。こうした反行形の主題が示されるフーガを反行フーガと呼ぶ。フーガの中で、主題がその音価を整数倍に拡大して示される場合、これを拡大フーガと呼ぶ。例えば2倍の拡大であれば、四分音符→二分音符、八分音符→四分音符のように、主題の全ての音符が比例拡大される。同様に主題が音価を縮小されて示される場合、これを縮小フーガと呼ぶ。拡大ないし縮小された主題はしばしば曲の途中から示され、効果的に用いられる。小さなフーガの意味である。また、上記の要件を満たさない、フーガ様の楽曲をフゲッタ (fughetta) と呼ぶことがある。交響曲などの一部に現れるフーガ様の部分は、フーガの提示部やストレッタなどの様式・技法を用いて作曲されているが、フーガとしての要件を全て満たしているわけでもなく、また独立した曲ではなくて一つの曲や楽章の部分を成す。こうしたものはフガート (fugato) と呼ばれる。バロック初期にはリチェルカーレ、ファンタジアなど様々な対位法的な器楽曲が存在したが、後にそれらは一括してフーガと呼ばれるようになった。また前奏曲やトッカータなど即興的作品の一部として挿入されていた対位法的な部分が次第に拡大され、1つの楽章として確立したものもフーガと呼ばれるようになった。古典派以降のフーガは、その多くがバッハの影響の下に作られている。このことは、時としてフーガの主題にバッハの名B-A-C-H(シ♭-ラ-ド-シ)が用いられていることからも明らかである。バッハを踏襲した『24のプレリュードとフーガ』の作曲者には、次の人物が並ぶ。旧ソ連邦ではソ連崩壊まで「ピアノ(またはオルガン)のためのプレリュードとフーガ」の作曲が必修であった。ドミートリイ・ショスタコーヴィチは、バッハの平均律の解釈をマリア・ユージナからプライヴェートレッスンで教わった。その結果生まれたのが『ピアノのための24のプレリュードとフーガ』である。かつて20世紀の音楽学校ではフーガは必修科目であったが、戦後は対位法学習の旧弊な点が指摘され、徐々にカリキュラムから減らされていった。ルチアーノ・ベリオは「パリベニのクラスで対位法をやっていたが、たびたび二人きりの授業になった」と語っている。また、ナディア・ブーランジェが目指した最も高い指標に「即興でフーガを作曲すること」がある。日本においては、戦後からフーガによる学習が作曲科における主要なカリキュラムとして定着した。近年、唯一学部の入学試験で事実上のフーガを書くことを求められていた東京藝術大学作曲科でも2014年度入試から廃止されることになり、日本の大学においてフーガ学習の機会は主に入学後のシラバスに組み込まれるのみとなった。
出典:wikipedia
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