『神聖喜劇』(しんせいきげき)は、大西巨人の代表作とされる長編小説、および、その派生作品。1960年から70年にかけて『新日本文学』に連載、1978年から80年にかけて刊行。戦前の日本軍を舞台とした作品である。凄まじい記憶力を誇る主人公の陸軍二等兵・東堂太郎が異常な軍隊世界の中で過酷な新兵訓練を受けるが、その超人的な記憶力を武器として軍隊内部の不条理に抵抗する。本作は連載当時から反響を呼び、筑摩書房や講談社から刊行の声がかけられていた。松本清張が、光文社の社長・神吉晴夫に、同作を光文社から刊行するよう薦めたことを契機に、光文社が大西に接触、花田清輝も、大西に「光文社でやるのがいい」と発言した。連載時、大西は原稿料が出るだけでいいという状態であったが、神吉は大西の生活費をバックアップして支えた。担当編集者となった光文社の市川元夫は、連載時から本作を愛読していたが、大西に会うと、その記憶力・正義感・ユーモアにいつも圧倒された、と振り返っている。カッパ・ノベルスから3冊が刊行されたが、その後、大西は前の章の書き換えを主張、ハードカバー版で書き直される形での刊行となり、1980年にようやく全5巻が完結した。完結にあたり、埴谷雄高・松本清張・大岡昇平・井上ひさしらが本作に賛辞を寄せた。岩田和博脚色・のぞゑのぶひさ画により10年がかりで漫画化され、2006年より刊行された。2007年に第36回日本漫画家協会賞大賞受賞。『シナリオ 神聖喜劇』は、荒井晴彦によるシナリオ。大西巨人の長編小説『神聖喜劇』をシナリオ化したものである。2004年末に太田出版から刊行された。400字詰め原稿用紙にして750枚分の長大なシナリオ。 反戦活動で逮捕され九州帝大法学部を中退した東堂太郎は新聞記者になった後に従軍する。そこで、法的知識をバックに上官に対抗する。冬木という、新平民で前科者と噂される男に惹かれ、友情で結ばれる。冬木は、湯浅という兵の銃剣のホルダーをすり替えた事件で嫌疑がかかってしまう。そこで、東堂は、法的知識を駆使して、またしても、上官に対抗する。その甲斐あって、冬木は難を逃れることができたが、すり替え事件の真犯人についてはウヤムヤになってしまう。 正真正銘のガンスイと呼ばれる馬鹿が、窃盗を犯した件で擬似死刑のような目にあっている時に、死刑反対論者であった東堂は我慢ができなくなってしまい上官を制止する叫びを発してしまう。冬木や仲間の兵たちもそれに同調する。この件に対しては、何人かが軽い処分を受けることによって決着がつく。 今まで東堂は法的知識によって上官をやり込めてきたが、たった一度軽い規則を破ったために、大前田に法的に追い詰められ罰を受ける。その大前田は女性問題で逮捕される。方言や軍隊用語や隠語など、さまざまな知られざる言葉が飛び交うのがこの原作の特徴で、荒井も難儀したと後書きで述懐している。 太田出版の高瀬幸途からの「笠原和夫は庶民の立場から戦争を描いたが、荒井さんはインテリの立場から描いたらどうだ?」との誘い文句に乗せられて、原作を未読の段階でシナリオ化を引き受けたと、著者は後書きで振り返る。著者は、仕事を引き受けた時点で、高瀬が「映画化はおまけ」と考えていたと、忖度している。 映画化を持ちかけられた澤井信一郎の(付録小冊子における)解説によると、当初から映画化に先駆けてシナリオを出版する計画であり、なおかつ撮影用シナリオはその書籍を基に新たに書く予定であったらしい。つまり、本書は、映画製作とはとりあえず独立した出版用のシナリオであるから、レーゼシナリオであると言える。また、主要登場人物に、島田紳助や松本人志がイメージ・キャスティングされていたこともあるらしい。井土紀州と澤井監督との対談で、澤井ははっきりと、このシナリオを「レーゼ・シナリオ」だと言っている。 荒井の妻が、書店員に「(映画関連書コーナーの棚ではなく)文学書コーナーに本を置いて」と頼んだというエピソードもある。 2010年現在で、具体的な映画化実現の話は無いが、企画が頓挫したとの情報も無い。 南カリフォルニアとラスベガスに拠点を置き、脚本形式に「文学最後のフロンティア」を見出すウェブ雑誌『スクリプト・ジャーナル』編集長クインビー・メルトンは『製作の曖昧な優位性』という論稿の中で本書に触れた。2009年10月に日本大学芸術学部の学生らによって初の舞台化がされた。この作品は演劇祭にも招待され、2010年3月に両国の劇場にて演出を変えた短縮版が再演された。出演者は綾乃/他。
出典:wikipedia
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