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トリパノソーマ科

トリパノソーマ科(トリパノソーマか、学名: )は、キネトプラスト綱に属し1本の鞭毛を持つ原生生物からなる分類群である。全てが寄生虫であり、基本的には昆虫を宿主としているが、生活環の中で脊椎動物や植物などの中間宿主に寄生するものが知られている。この1科をもってトリパノソーマ目 Trypanosomatida またはトリパノソーマ亜目 Trypanosomatina を構成する。トリパノソーマ科には人間や家畜に深刻な感染症を引き起こす病原体が知られている。トリパノソーマ "Trypanosoma" はトリパノソーマ症(アフリカ睡眠病、シャーガス病)を、リーシュマニア "Leishmania" はリーシュマニア症を引き起こす。トリパノソーマ科の原虫は時期によって形態を変化させるものが多く、主に鞭毛の形態(位置や波動膜の有無)によって以下の6タイプに弁別される。このうちいずれの形態を取りうるかは属によって異なり、属を識別する際に用いられてきた。全ての原虫に共通しているのは無鞭毛型のみである。トリパノソーマ科 Trypanosomatidae Doflein, 1901 は早い時期から独自の科として扱われ、伝統的には鞭毛の数が少ないことによって鞭毛虫綱原鞭毛虫目に所属させられてきた。1961年にボド科とともにキネトプラスト目(のち綱に格上げ)にまとめられ、さらに1990年代になってユーグレノゾア門への所属が受け入れられるに至っている。一方で、トリパノソーマ科の内部の分類体系は目下再検討中であり、充分に整備されているとは言い難い。長らく形態のみに着目した分類が行われていたことと、分子系統解析の導入が医学的に重要な原虫に偏っていたことが主な理由である。2006年までに分子情報があった9属のうち、単系統的なのはトリパノソーマ属、リーシュマニア属、"Phytomonas" 属のみであり、残り6属は全て整理を必要とする状況である。古い文献ではトリパノソーマ科の学名を Trypanosomidae としているものがある。これは1901年にドフライン () が記載した際の綴りだが、学名の正書法上の誤りがある。タイプ属 はギリシャ語由来の属名なので、後半の を に書き換えて(の属格は)、その後に統一語尾の を付けなければならない。したがって現在の国際動物命名規約のもとでは が正しい。トリパノソーマ科の共通祖先がどのような生物だったかは長らく議論があった。例えば、魚類寄生性の (パラボド目)のような生物から進化して昆虫へと宿主域を広げたとする説などがあった。現在得られている分子系統解析の結果によれば、逆に昆虫寄生性の原虫が吸血昆虫に媒介されて偶然脊椎動物へ宿主域を広げたと解釈される。ミャンマー産のコハクに封入されていたサシチョウバエ類の体内からトリパノソーマ科と思われる原虫化石が観察され、 と命名されている。コハクの産出した地層から、少なくとも白亜紀初期にはトリパノソーマ科の原虫が昆虫を宿主としていたことが示される。

出典:wikipedia

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