中井 久夫(なかい ひさお、1934年1月16日 - )は、日本の医学者、精神科医。専門は精神病理学、病跡学。神戸大学名誉教授。甲南大学名誉教授。医学博士。笠原嘉、宮本忠雄、木村敏、安永浩らと共に、日本の精神病理学第2世代を代表する人物である。専門は統合失調症の治療法研究。中井が1969年に考案した風景構成法(Landscape Montage Technique)は、心理療法におけるクライエント理解の有力なツールとして、日本で独自に創案・開発されたものである。ロールシャッハテストのような侵襲性が高いものとは異なった視点から、クライエントの現況を推察できる。また中井は精神分析学者のナウムバーグのなぐり描き法や、英国の児童精神科医であるドナルド・ウィニコットのスクイグルを日本に紹介した。中井自身は1982年に色々な出てくるイメージの幾つかを限界吟味するという相互限界吟味法を創案している。中井が紹介したこれらの手法は日本で独自の発展を見せ、山中康裕によるMSSM法などが生まれる契機を作った。著作集の初期から中期にかけての難解とも言える統合失調症(精神分裂病)理論は、非常に高い水準に達していると評価されている。また米国の精神科医であるハリー・スタック・サリヴァン(H.S.Sullivan)の統合失調症理論を取り入れ、本邦の臨床場面に広く普及・浸透するのに貢献した。「関与しながらの観察(participant observation)」等の臨床家に対する箴言はその一端である。阪神・淡路大震災(1995年)に際して被災者の心のケアにあたったことを契機に、近年では、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の研究・紹介を精力的に行っており、米国の精神科医ジュディス・ハーマン(J.L.Herman)の「心的外傷と回復」の翻訳も行っている。中井は「医師が治せる患者は少ない。しかし、看護できない患者はいない」と、看護師を対象に記した『看護のための精神医学』で述べており、精神科医療に関わる看護師の教育にも尽力している。この本は、看護師のみならず臨床心理士やケースワーカー等の臨床に携わる者にも多くの示唆を与えている。ラテン語や現代ギリシャ語、オランダ語にも通じた語学力を活かし、詩の翻訳やエッセイなどで文筆家としても知られている。中井は、「ポール・ヴァレリーの研究者となるか科学者、医者となるかかなり迷った」と語っている。ギリシャの詩人カヴァフィスの全詩集翻訳により読売文学賞受賞。また歴史(哲学史)にも通暁しており、その一端は代表作『治療文化論』、『西欧精神医学背景史』などでもうかがい知ることができる。無類の軍艦好き・船舶好きでもある。子供のころから『ジェーン海軍年鑑』を読んでいたため、戦時中の日本軍の戦果発表が誇張されていることに気づいていたと語っている。
出典:wikipedia
LINEスタンプ制作に興味がある場合は、
下記よりスタンプファクトリーのホームページをご覧ください。