沿岸警備隊(えんがんけいびたい、)は、主として、沿岸海域において法令の執行・警備活動・捜索救難活動などに従事する組織。武装船舶を必要とする任務の性質上、準軍事組織として設立されるか、海軍が任務を遂行している国もある。そのため、指揮系統や行政区分について国際的に一定の傾向はない。国によって、細かな差異はあるが、沿岸警備隊の基本的な任務は次のようなものである。第二次世界大戦後、旧大日本帝国海軍の残余艦艇と人員をもとに初期の海上保安庁が創設された。連合国軍による日本の非武装化政策により、当初の人員は1万名以内、船舶は125隻5万トン以下、武装も小火器のみに限られている。創設直後には掃海活動も重要な任務の一つとされ、その一部は朝鮮戦争に出動しており、作業中の事故で1名が殉職している。1952年(昭和27年)4月26日に将来的な分離独立までの臨時的措置として海上保安庁内に旧海軍軍人主体の海上警備隊(Maritime Safety Security Force)が創設され、同年8月1日には掃海部隊も含めて保安庁の警備隊(Safety Security Force)となり、1954年(昭和29年)7月1日の防衛庁設置に伴い海上自衛隊に改編された。このとき、「海上公安局」へ再編される予定であった海上保安庁の本体部分(海上警備隊系統を除く部分)は、組織移行を免れそのまま海上保安庁として存続することとなった。その後の海上保安庁(Maritime Safety Agency of Japan)は、運輸省の外局を経て、2001年の中央省庁再編後には国土交通省の外局となり、日本の領海および排他的経済水域上においての警察権を有する法執行機関となった。現在では"JCG = Japan Coast Guard"と、準軍事組織であるアメリカ沿岸警備隊("USCG = United States Coast Guard")を連想させる英語名を称しているが、沿岸警備隊の分類の中では海上警察機関系(海上保安庁職員のうち海上保安官は、海上保安庁法に基づく特別司法警察職員である)に分類される。海上保安庁法第25条により軍隊としての活動を認められておらず、準軍事組織として運営されている他国のコーストガードとは法制上は一線を画しているが、一方で自衛隊法80条により有事の場合は海保組織の全部または一部を防衛大臣の指揮下に置くことを認めている。海岸線の長さは世界第6位、領海と排他的経済水域の合計面積も世界第6位、さらにG7の一角を担う世界第3位の経済大国であるなどという国状から組織の規模も大きく、2010年時点の人員は約12,000名、400隻を超える船艇と70機以上の航空機を保有している。諸外国との共同訓練も積極的に行っており、その任務の遂行能力は高く評価され「世界有数のコースト・ガード」と評される。現在は、不審船問題などから高速で重装備の巡視船の配備、海上自衛隊との様々な面での連携強化などが課題となっている。アメリカ沿岸警備隊 (USCG = United States Coast Guard) は国土安全保障省の傘下にある組織である。連邦の法執行機関であり、警備及び捜索救難等を任務としている。アメリカ軍の第五の軍(Armed Forces)であるが、戦時には海軍の指揮下に入ることがある。隊員は軍人として統一軍刑法の適用を受け、海軍と同等の階級呼称を使用している。第二次世界大戦やベトナム戦争はもちろん、合衆国が参戦した全ての戦争に派遣され、臨検活動、船団護衛等の任務を遂行した。保有する船舶(警備艦)には76mm砲やCIWSなどを装備し、構造も抗堪性の高い軍艦構造となっている。有事には対艦ミサイルランチャーを装備可能な艦艇もある。(日本の巡視船の場合、ほとんどは商船構造。)海外で行なわれる合同軍事演習では海軍の参加艦艇としてハミルトン級カッターの姿を目にする事がある。平時の船舶数こそ日本の海上保安庁に劣るものの、長距離の海岸線を保有する事から航空機の整備に力を注いでおり、早期警戒機の能力を有するC-130やP-3を装備して麻薬密輸に対する警戒に充てている。このほか、運河や航行可能な河川・湖沼が多いため、こうした内水における救難ボートや測量ボート、ブイ設置船を数多く保有する。海岸・河川・湖水の護岸や港湾の整備に関しても沿岸警備隊が責任を持っており、専門の工事・管理部門を保有する。イギリスにおいては、コーストガードを統括する行政機関として海事沿岸警備庁が置かれ、沿岸警備隊(HM Coastguard)は、沿岸での海難事故の捜索救難活動を任務にしており、これらに使用する小型船舶と救難ヘリコプター等を装備するのみである。また、必要な場合はイギリス空軍も海難救助に参加しており、海事沿岸警備庁がこれらの調整を行なっている。領海警備や海上の治安活動などは、イギリス海軍が、大型哨戒艦(OPV)を用いて沿岸警備を行なっている。韓国では国土海洋部(省)の下に海洋警察庁(KCG = Korea Coast Guard)が設置され沿岸警備に当っている。本庁は仁川広域市に置かれ、釜山、仁川、束草、東海、泰安、群山、木浦、莞島、麗水、統営、浦項、蔚山、済州、西帰浦の14か所に海洋警察署が設置されている。韓国と日本は竹島(韓国名:独島)領有問題を抱えており、日本漁船を拿捕することがある。そもそも、韓国海洋警察が発足した際の主任務は、竹島周辺の日本船舶(漁船や巡視船等)の駆逐による実効支配の強化であった。一方的な李承晩ラインの設定直後から、竹島周辺で300隻以上の日本漁船を不法に銃撃、拿捕し、それにより4,000人近い日本人漁師が韓国側に拉致され、44人が死亡している。日本へ帰国できた者の中には、拉致後に不当な扱いを受け病気になったり、韓国側の拷問によって重症を負った者までいたが、1952年のサンフランシスコ平和条約発行によって日本の主権が回復される前に発生した事案も多く、当時は徹底した追求ができなかった。ただし、これらの日本漁船への不法行為は、海洋警察のみではなく、韓国海軍や民間義勇組織である独島義勇守備隊によるものも含まれている。また、韓国海洋警察による不法行為は竹島周辺だけでない。1961年には、済州島周辺の公海上で韓国の警備艇が日本の漁船を不法に銃撃、拿捕するという事件が複数発生している。たとえば、1961年3月15日には第二進栄丸が、同年3月20日には第二秋田丸が、韓国警備艇に追跡され、警備艇は漁船を攻撃、両船とも拿捕されている。また、これらの事件の際、海上保安庁の巡視船や水産庁の漁業取締船が漁船からの緊急連絡を受けて現場に急行し、漁船を追撃する韓国警備艇に警告を行ったが、警備艇は巡視船と監視船に対し一方的な銃撃を繰り返し、漁船を拿捕、韓国側へ連行している。ちなみに、韓国海洋警察の任務には、北朝鮮ゲリラの浸透阻止や、海洋環境保全のための海洋汚染監視も含まれている。歴代庁長は警察庁出身者が任用され、人事的には陸の警察と交流が深い。2014年4月16日に発生したセウォル号沈没事故の海洋警察での救助対応が批判にさらされたことを受け、5月19日朴槿恵大統領は、海洋警察庁の解体と政府組織を刷新することを国会に提案すると発表した。中華民国(台湾)では、2000年1月に行政院海岸巡防署(Coast Guard Administration, Executive Yuan)が組織された。この組織は2004年には19,680名を擁し、日本の海上保安庁に勝るとも劣らない規模をもつ。また、単独で省に相当する国家機関であり、責任者の署長は大臣である。国防部海岸巡防司令部、内政部警政署水上警察局を統合し、さらに財政部関税総局の密輸取締船舶(一部)や農業委員会の漁船保護船舶(一部)も統合した組織である。主な内局として、海岸巡防総局(国防部から移行)と海洋巡防総局(水上警察から移行)がある。海岸巡防総局の下に、4つの地区巡防局が設けられている。北部地区巡防局は、日本と係争している尖閣諸島も形式上管轄する。南部地区巡防局は中国や東南アジア諸国との係争地である南沙諸島(スプラトリー諸島)および中国との係争地である東沙諸島を管轄に含む。このほか、中部、東部地区巡防局が設置されている。いずれも島嶼や海岸を陸上から防衛するため、陸軍出身者によって構成されている。中国の海洋行政は、公安部が海上公安、国家海洋局が海洋資源、農業部が漁業管理、海関総署が税関業務の戦略を企画・立案し、国家海洋委員会が各機関の戦略を調整し、国家海洋局が公安部の指導を受けながら一元的に中国海警局の名称の下で公船や航空機を運用する体制がとられている。2013年3月に、初代の中国海警局の局長 兼 国家海洋局副局長に公安部の次官を兼務する孟宏偉が就任した。2013年7月に中国海警局の本格的な運用が開始された。ただし、船舶からの汚染物質流失への対応、水路業務などを担当する交通運輸部海事局(船体表示「海巡」)は独立して公船の運用を行う。交通運輸部には捜索救助を専門とする救助打捞(救助サルベージ)局(船体表示「海救」)も存在する。2013年3月までは、公安部辺防管理局(Border Control Department of Ministry of Public Safety)が所管する中国公安辺防海警部隊(CHINA COAST GUARD、船体表示「中国海警」)、国土資源部が所管する中国海監総隊(船体表示「海監」)、農業部漁業局(船体表示「漁政」)が、別々に公船や航空機の運用を行っていた。同年3月から7月にかけて漸進的に組織の統合が行われた。トルコにおいては、内務省の所属機関であるトルコ沿岸警備隊が、海上警察・遭難救助・海路保全などの任務にあたっている。これらの任務のため、本部のほか、地中海方面司令部・エーゲ海方面司令部・マルマラ海方面司令部・黒海方面司令部・教育センター司令部・航空司令部がおかれている。準軍事組織ではあるが、陸海空の3軍およびジャンダルマと比較して、国家安全保障評議会に司令官が参加しないなど格下の扱いを受ける。有事には海軍の指揮下に入るものとされている。ただし、もっとも重武装の艦艇ですら機関砲程度の武装であり、大半は小型で非武装の艦艇である。また、哨戒・救難任務のために固定翼機・ヘリコプターを保有しているがこれらも非武装である。
出典:wikipedia
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