多島海（たとうかい）は、一定の範囲に多くの島々が点在する海域のこと。アーキペラゴ（）に対する訳として用いられることがあるが、 には「多数の島からなる海域」（多島海）を指す用法と、「多数の島嶼」（諸島・列島・群島）を指す用法の双方が存在する。アーキペラゴ（）は、もともとエーゲ海を指していた固有名詞 / が一般名詞化したもので、英語で語頭を大文字とし定冠詞を付した は、エーゲ海のことを指す。日本語で に対して「多島海」の訳が宛てられることがあるが、もともとの 自体には「島が多い」という意味は含まれない。 はギリシャ語の （、「主要な」）と （、「海」）からなり、「主要な海」を意味する。土地が沈降するなどして、海水が陸地に浸入してできた複雑な海岸地形を沈水海岸という。この沈水海岸において、更に沈降が進んだり、海面が上昇したりすると、かつての山の頂上部分だけが海面に頭を出し、多くの島ができる。このようにして多くの島々ができた海域を多島海という。ギリシアのエーゲ海をはじめ、地球上には多くの多島海が存在する。多島海で構成された国としては、インドネシア、日本、フィリピン、ニュージーランド、イギリスがあげられる。そのうち最大の多島海がインドネシアである。島嶼部性（海岸線の距離を陸地の面積で割ったもの）の観点からは、7000以上の島からなるフィリピンが島嶼部性1位で、次いで6000以上の島からなる日本が2位である（島嶼参照）。また、狭い地域に集中する2つ以上の島嶼の集まりを島嶼群、島嶼群の集まり、もしくは大規模な島嶼群を諸島、諸島のうち列状に並ぶものは列島、塊状の形状をなすものは群島と呼ばれる。エーゲ海は、地中海の東北部にある海域で、ギリシャ半島、アナトリア半島に面し、約 2,500 の島々が浮かぶ。主要な島としては以下が挙げられる。バルト海は、ヨーロッパ大陸本土とスカンジナビア半島に囲まれた海域。とくに、フィンランドにはとも呼ばれる多島海域（）がある。ブリテン諸島で構成される多島海国家。グレートブリテン島とアイルランド島の2つの大きな島と、その周囲の大小の島々から成る。スコットランドは本島の周囲に700もの島がある。カリブ海は、カリブ諸島（西インド諸島）、フランスやオランダではアンティル諸島とよばれる多島海である。アメリカ合衆国のフロリダ半島南端、および、メキシコのユカタン半島東端から、ベネズエラの北西部沿岸にかけて、少なくとも7000の島、小島、岩礁、珊瑚礁がカーブを描くようにして連なる。西インド諸島の主要部分は、次の3つの諸島に分けられる。日本も多島海国家である。日本は6,852の島で構成される島国である。日本の領土はすべて島から成っている。ここでは多島海景観で有名なものを挙げる。大小合わせて7109の島々から構成される多島海国家である。世界最多の島嶼を抱え、1万8,110もの大小の島により構成される。経済史家の川勝平太（現静岡県知事）は、『文明の海洋史観』や『文明の海へ』といった著書において、近代文明の勃興には海洋国家（ヴェネツィア、ポルトガル、スペイン、オランダ、イギリス）が大きく関与したとし、「海洋史観」を提唱している。そのなかで、「多島海文明」という概念を提出し、世界史は「陸の文明」から、「海洋への離陸期」の近代を経て、「多島海文明」に向かっているとした。また「西太平洋世界は多島海である」とする「西太平洋の多島海文明」についても言及した。フィクション作品においても『ゲド戦記』の「アースシー」や『アタゴオル』の「銀しぶき海」など、架空の多島海を舞台にしたり、架空の多島海が登場したりする作品がある。

出典:wikipedia