ロックオペラ“トミー” (Tommy) は、イギリスのロックバンド、ザ・フーが1969年5月に発表した通算4枚目のスタジオ・アルバム。全英2位、全米4位。「ローリング・ストーンの選ぶオールタイム・ベストアルバム500」において、96位にランクイン。ロックンロールとオペラを融合させた画期的な作品であり、ザ・フーのキャリアにおいても重要な位置に占める作品である。ロックオペラを確立したアルバムでもあり、また、その後の世界に多くの影響を与えた。このアルバムのヒットにより、ザ・フーはシングルヒットを量産するヒットソングバンドのイメージから脱却し、アルバムアーティストへ転換することに成功した。後述するようにオーケストラとの共演、映画、再結成ライブでの演奏、ブロードウェイ・ミュージカル化と、様々なメディアで何度も発表されている。三重苦の少年トミーを主人公にした物語は若者、またはピート・タウンゼント自身の孤独や苦悩を反映させたスピリチュアルなもので、タウンゼントが傾倒しているインド人導師ミハー・ババの影響が初めて作品に顕著に現れたものである。1969年から70年にかけてのツアーではライブの中盤に必ずほぼ全曲演奏され、その様子は『ウッドストック/愛と平和と音楽の三日間』『ワイト島ライヴ1970』といった映像作品で観ることができる。オペラの雰囲気を高めるために、リードボーカルは主人公であるトミーの心情を歌う曲ではロジャー・ダルトリーが、他の人物や語り部の役割の曲ではタウンゼントが担当している。ただし、「クリスマス」、「ピンボールの魔術師」、「鏡をこわせ」等、トミー以外の人物の台詞を歌う曲でもダルトリーがリードをとる場合や、逆に三重苦から解放されたトミーの喜びを表した「センセイション」ではタウンゼントがリードをとる等、パターン通りになっていない曲も多い。ジョン・エントウィッスルも自作曲2曲でリードボーカルをとっている。このアルバムから「ピンボールの魔術師」が先行シングルとしてリリースされ、全英4位の大ヒットとなった。また「シー・ミー・フィール・ミー」や「僕は自由だ」(アメリカのみ)がシングルカットされた。この他、1970年11月にはアルバムから4曲をカットしたEP盤もリリースされたが、当時はすでにEPというフォーマット自体が古くなっており、こちらは話題にはならなかった。カヴァーのデザインはマイケル・マッキナニーによる。LP盤のジャケットは3面開きになっており、歌詞カードも封入され、ザ・フーの作品中最も豪華な作りになっている。ジャケットには、オリジナル版ではメンバーの顔が写されているが、リイシュー盤ではメンバーが写っていないものもある。本作はタウンゼントの崇拝するミハー・ババに捧げられており、アルバムには彼の名が「アバター」としてクレジットされている。製作中は「"Deaf,Dumb And Blind Boy"」、「"Amazing Journey"」、「"Brain Opera"」といった仮タイトルがつけられていたが、最終的に主人公の名前がアルバムのタイトルになった。本作のレコーディングが始まったのは1968年9月19日であったが、当時のザ・フーの財政状況はかなり逼迫しており、ダルトリーも「アルバム自体出せるか不安だった」と後に語るほどであった。そのため、レコーディングは月曜から木曜にかけて行い、週末は資金捻出のために散発的にステージをこなした。また、製作が始まってもなお作品のコンセプトが定まらなかった事もあり、本来の発売予定日だった1968年のクリスマスまでには間に合わず、レコーディングは大きく延び、結局半年間にも及んだ。プロデューサーとしてクレジットされているキット・ランバートは、当時ザ・フーのマネージャーであり、元々は音楽プロデューサーではなかったが、有名なクラシック作曲家の父を持ち、オペラへの造詣も深く、様々なアイデアを提供した。だが、サウンド面での指揮はタウンゼントが執っている。ランバートは当初オーケストラの起用を望んだが、ライブで再現が出来るものでなくてはならないと考えたメンバーはこれを拒否し、必要最低限の楽器のみで、尚且つ交響楽団にも迫るサウンドを目指して製作は進められた。楽曲についてはほぼ全てタウンゼントによるものだが、トミーが性的虐待やいじめに遭う曲については、「自分には書けそうもないから」とエントウィッスルに託した。メンバーは更なるオーバーダビングを望んでいたが、本作のプロモーションのためのコンサートツアーが目前にまで迫っており、レコーディングは1969年3月7日に終了、約36000ポンドを費やした。アルバムは2枚組の大作であったが、それでも全英2位につける大ヒットとなり、このアルバムの成功によりザ・フーは解散の危機を乗り越えた。本作のオリジナルのマスター・テープは、後にランバートが破棄してしまい現存していないという噂があったが、実際にはレコード会社の倉庫の中に無傷のまま保管されていた。2003年以降の本作のリイシュー版は、このオリジナル・マスターから起こされた音源を使用している。オリジナルの歌詞は散文的で抽象性が高く難解であり、アルバムリリース後のタウンゼント自身による解説においてもストーリーは一貫しなかった。ケン・ラッセル監督作の映画版やミュージカル化によって脚本が補強された結果、具体的で整合的な理解が可能となった箇所もある。本項で述べるあらすじは、英語版の記述を元にする。1969年5月からスタートしたコンサートツアーでは、『トミー』のほぼ全曲をノンストップで演奏した。ツアー期間中に出演したウッドストック・フェスティバルでも演奏され、映画版では「シー・ミー・フィール・ミー」の場面が収録された。この一連の「トミー・ツアー」は1970年12月で終了したが、その後も「ピンボールの魔術師」や「すてきな旅行」、「シー・ミー・フィール・ミー」といった曲はザ・フーのコンサートにおける重要レパートリーとして演奏され続けた。コンサートでもリードボーカルの分担はレコードとほぼ同じであったが、タウンゼントが歌った「1921」はダルトリーがリードを取り、またタウンゼントやエントウィッスルが単独で歌った楽曲は、コンサートではダルトリーもユニゾンで歌った。1989年には、『トミー』発売20周年を記念したツアーが敢行された。このツアーではサポートメンバーが加わり、総勢15名の大編成での再演となり、かつてのツアーよりもシンフォニックな仕上がりとなった。このツアーでは、'69年〜'70年のツアーでは演奏されなかった「従兄弟のケヴィン」や「歓迎」も演奏されている。コンサートにおける『トミー』の音源や映像は、長らく断片的にしか視聴出来なかったが、1996年、1970年のワイト島ライブでの模様を収めた『ワイト島ライヴ1970』がCD、VHSでリリースされた。CDではコンサートの全編が収録されたが、VHSでは『トミー』のパートがかなり割愛されている。また、2001年にリリースされた『ライブ・アット・リーズ・デラックス・エディション』でも、1970年のリーズ大学公演のほぼ全編が収められている。1984年に初CD化。この時は2枚組でリリースされた。1990年版より1枚組となる。1996年にはリマスター、リミックス版がリリースされる。2003年発表の「デラックス・エディション」には、アウトテイクバージョンやデモバージョンを追加収録、さらに5.1chサラウンド音声も含めたCD/SACDのハイブリッド盤でリリースされた。ステレオ音声は先述の盤とは異なるオリジナル・マスター音源が使用され、飛躍的な音質向上がなされた。また同時にDVDオーディオ盤もリリースされている。2013年には、アウトテイク集のほか、未発表の1969年のライブを収録したCD3枚組にブルーレイを追加した「スーパー・デラックス・エディション」がリリースされた。1972年10月、ロンドン交響楽団を伴奏に起用したオーケストラ版『トミー』がリリースされる。ザ・フーからはキース・ムーン以外のメンバーが参加。その他、ロッド・スチュワート、リンゴ・スター、スティーヴ・ウィンウッド等豪華ゲストが参加した。同年12月にはロンドンのレインボウ・シアターでオーケストラを従えたコンサートが行われた。このオーケストラ版が、一度は暗礁に乗りかかった『トミー』の映画化を前進させるきっかけとなった。『トミー』の映画化は、レコーディングを開始した1968年当時から構想にあった。映画会社から十分な出資を得ることができず、映画化の話は途中で保留となるものの、上記のオーケストラ版の発表やそれに伴うライブが評判を呼び、1973年にようやく『トミー』の映画化が決定する。この映画で主演を務めたダルトリーは、その演技を高く評価され、彼はその後本格的に俳優業をこなすようになる。だが、映画では監督のケン・ラッセルの意向が強く出ており、本作の持つ精神性が損なわれてしまい、またザ・フーファンからも批判が起こり、タウンゼントは深く失望したという。しかし、これまで内容を把握するのが難しかった『トミー』のストーリーを初めて明確化した本作の意義は大きい。映画化に当たっては、オリジナル版からいくつもの改変がなされ、またオリジナル版にない新たな曲も追加されている。"詳細は『トミー (映画)』を参照。"1993年4月、ニューヨークのブロードウェイ・ミュージカルで『トミー』の上演が開始。オリジナルや映画版でも明確にされてこなかった結末を明確にしたが、このストーリーについては古くからのファンの間では賛否両論あった。だが一般的には高い評価を受け、トニー賞5部門を受賞する。1996年には、オリジナル版、映画版、ミュージカル版の音源や映像をまとめたCD-ROMも発売された。ミュージカル版では、以下の点がオリジナル版と異なる。なお、タウンゼントは、このミュージカル版のラストを「最もリアリスティック」と評している。"詳細は『The Who's Tommy』を参照。"作詞作曲は、特記なき場合全てピート・タウンゼントによる。
出典:wikipedia
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