シルクスクリーン()は、孔版画の技法の一種であり、インクが通過する穴とインクが通過しないところを作ることで版画の版を製版し、印刷する技法である。シルクを使うかどうかにかかわらず、孔版画の技法のうちメッシュを使うものは全て、この項目で説明する。孔版画の「孔」とは「突き抜けた穴」の意味である。孔版画にはたくさんの種類の技法が存在するが、特に歴史が長くよく知られているものは、ステンシルと、ここで説明するシルクスクリーンである。一般的には、透けて見えるような網目の布のことを、英語では または と呼び、日本語では「紗」と呼ぶ。しかし孔版画の世界の言葉では、英語でも日本語でも、版に使う網目の布のことをメッシュ(mesh)と呼ぶことのほうがスクリーン(screen)と呼ぶことよりも多い。昔は絹の布が孔版画のメッシュの材料として使われたが、現在ではさまざまな材質のメッシュが使われる。絹は耐久性に欠けるため、合成繊維が実用化された後は、ポリエステルやナイロンなどの合成繊維の布が孔版画のメッシュの材料として使われるようになった。ちなみにテトロンは商品名(商標名)であり、ポリエステルである。金属製のメッシュを孔版画のスクリーンとして使用することもある。糸と糸の間の隙間がある絹の布は英語で silk screen (シルクスクリーン)または silkscreen (シルクスクリーン)だが、silk screen を使った孔版画の技法は英語で silk screen printing (シルク・スクリーン・プリンティング)またはsilkscreen printing (シルクスクリーン・プリンティング)と言う。しかし、現代は絹は孔版画に使われないので、スクリーンを使う孔版画の技法は、英語で screen printing (スクリーン・プリンティング)または serigraphy (セリグラフィ)と言う。screen print または serigraph とは、 screen printing または serigraphy と呼ばれる版画の技法を使って作られた版画作品を呼ぶ言葉である。日本の印刷業界でも、「シルク」という言葉を取り除いて、スクリーン印刷と呼ぶ機会が増えている。もともとは、スクリーンの意味もメッシュの意味も網であるが、版画の世界では、メッシュを張った枠の全体をスクリーンと呼ぶことがある。1930年代に、National Serigraphic Society という芸術家の団体が Serigraphy という新しい言葉を作った。その造語の目的は、当時スクリーン印刷という技術が商業的・工業的な産業として扱われていて、スクリーン印刷は芸術作品を作る手段としては全く認知されていなかったため、芸術の表現としてのスクリーン印刷を Serigraphy と呼ぶためだった。Serigraphy の Seri はラテン語で絹を意味する言葉である。メッシュにインクが染みださない領域を作ることを、「目止めをする」と言う。典型的な印刷方法は、製版された版のメッシュと紙を密着させ、製版された版のメッシュの上にインクを置き、スクイージー(、日本ではスキージーと呼ばれることが多いが、それでは英語の発音とは違う)をメッシュの上に強く押し当てて、メッシュの全ての面に渡って、一定方向に動かすことで、インクがメッシュの穴を通して紙へ押し出される。枠に張ったメッシュの、印刷の対象物(紙や布など)と接する側の面を、英語で substrate side と呼び、日本語ではさまざまに呼ばれるようである。substrate には、「下層」、つまり下にある平らな物という意味がある。また、それとは反対側の、インクを置いたりスクイージーが接する面を、英語で squeegee side と呼び、日本語でスキージ面と呼ぶ。印刷の対象物を動かせる場合の、印刷時の物の配置は、紙や布などの印刷の対象物の上にメッシュがあり、その上をスクイージーが動く。これは、このように配置したほうが、手で力を入れやすいからである。印刷の対象物(紙や布など)を日本語で「支持体」と呼ぶ場合がある。これは恐らく substrate を昔の英和辞書で調べた日本語訳が語源だと思われるが、版画の場合は substrate の日本語訳として「下層」を選ぶほうが自然である。本項目の説明では、印刷の対象物を支持体とは呼ばない。英語の screen が多義語であり、衝立のような遮蔽物や、映像を映す機械が表示する画面をも意味する言葉であるのに比べて、mesh は網という意味以外に解釈される可能性が少ないため、本項目の説明では、版画で使う網目の布をメッシュと呼ぶ。メッシュの製品の説明でよく目にする、メッシュの数字は、メッシュの網目の細かさを表した数字であり、メッシュ数と呼ばれることがある。メッシュ数とは、メッシュが、縦糸と横糸がどちらも等間隔で配置されている平織りで織られていると仮定して、1インチ(約25.4mm)あたりの縦糸または横糸の本数である。インクが通過しない部分が動かないように保持することが、メッシュを使う本来の目的である。もしメッシュがなかったら、インクが通過する穴の中にインクが通過しない部分を作り、その位置を保持することができない。例えば、数字の0の字を印刷するための、ステンシルの版を作る場合を考えると、本来はインクが通るべきなのは二つの大小の楕円で囲まれた領域である。しかし、中にできる一つの「島」の位置を保持するために、他の部分と結合する「橋」と呼ばれる部分が版に必要である。ステンシルのこの橋の部分は、インクをつけたローラーで印刷したり、またはスプレーで印刷すると、橋の部分が印刷の対象物に現れる。橋の部分が印刷の対象物に現れないようにするために、メッシュがそのような橋の役割を担うのが、スクリーン印刷である。下記のいずれの技法においても、まず原画(下絵とも呼ばれる)を制作してから、製版を行なうのが普通であるが、そうでない場合もある。例えば、謄写版またはガリ版では、原画を用意せずに謄写版の原紙に直接鉄筆で文章を手書きすることがよく行なわれた。光が当たると固まる性質を持つ特殊な化学物質である感光剤と乳剤を使って、製版する。販売されている乳剤に、あらかじめ感光剤が混ぜられている場合もあれば、使用者が感光剤と乳剤を混ぜる場合もある。20世紀初頭に、光が当たると固まる性質を持つ化学物質があることが分かっていたので、そのことを版画に初めて応用し、一応成功を収めたが、使う化学物質が毒性の強い物だったので、後に毒性の低い化学物質でもできるように、改良が加えられていった。写真製版法を行なう手順の概略は次の通りである。コロジオン版画は、毛筆謄写版とも呼ばれる。コロジオン版画の原理は、ゼラチンなどを塗布したメッシュ(メッシュの材料に和紙が使われることがある)に、希硫酸の一種の液を筆につけて書くことにより、液のついた部分のゼラチンがなくなり、メッシュだけが残るというものである。プリントゴッコは、理想科学工業が1977年から2008年まで製造・発売していた家庭用小型印刷器具のブランドである。プリントゴッコを使った版画は、新孔版画とも呼ばれる。直接法では、まず透明なフィルムを用意し、インクを通したい部分だけが光が通らないように、図柄を描いて、このフィルムを原画とする。光が当たると固まる性質のある乳剤、または光が当たると乳剤を固まらせる感光剤が混ぜられている乳剤を、メッシュ上に薄く塗る。原画をメッシュに密着させて、光を当てて露光する。すると、光が当たった部分の乳剤は硬化し、光が当たらなかった部分は硬化しない。メッシュを洗うと、硬化しなかった部分の乳剤だけが除去されて、直接法による製版が完了する。乳剤の輪郭部分を理想的な形状に仕上げるのが難しい欠点があると言われる。乳剤の輪郭部分が理想的な形状から乖離すると、印刷の対象物にインクの輪郭のにじみのような物が見えることがある。間接法では、光が当たると固まってメッシュに定着する性質を持つ感光材を薄く塗った感光性フィルムを購入して用意しておく。枠に張ったメッシュを使わずに、感光性フィルムにポジを合わせて光を当てて、露光させる。感光性フィルムから、光が当たらなかった部分だけを除去する。感光性フィルム上から、メッシュに移す。乳剤の輪郭部分を理想的な形状に仕上げることが、直接法よりは実現しやすい。印刷の対象物にインクの輪郭のにじみのような物が見えることは、直接法よりは少ない。直間法は、直接法と間接法の良い点を取り入れた方法である。直間法では、薄い樹脂のフィルムに、感光材を一定の厚さで塗った直間法フィルムを、枠に張ったメッシュに合わせて、露光させる。すると、光が当たった部分は硬化し、メッシュに付着する。ブロッキング法では、油性の特殊な描画剤(ツーシェ)を、インクを通したいメッシュの部分に、筆で塗ったり特殊なマーカーで描いた後、描画剤を乾燥させる。乾燥が終わったら、目止めをするために、ヒラーと呼ばれる水性の乳剤をメッシュ全体に塗布する。すると、水性の乳剤は油性の描画剤が塗られた部分を避けるようにして、メッシュの上で固まって定着する。乳剤が固まった後、メッシュに付いている描画剤の部分に、油性の「洗い油」と呼ばれる液体を塗ると、描画剤が溶けて、除去できる。描画剤が除去された部分にはメッシュのみが残り、描画剤を塗らなかった部分にだけ、乳剤が残る。これにより、製版が完了する。ブロッキング法は、水と油が混ざらない性質を利用した技法である。この版画の技法を日本ではブロッキング法と呼び、まるで元は英語だったかのような名前だが、英語を話す国では、この技法をブロッキング法とは呼ばない。英語では、スクリーン印刷の用語としてのブロッキングという言葉は、単にメッシュにインクを通らない部分を作る、つまりインクをブロックすることを意味する。新日本造形株式会社のサン描画スクリーン技法は、この技法である。カッティング法では、インクを通さないシートを用意し、そのシートを図柄の形に切り抜き、メッシュに接着剤で貼ることにより製版する。乳剤は使わない。カッティング法におけるシートとして、油性の原紙や、水性のフィルムなどが使われる。完成した版を使って刷る作業は、プリントゴッコを除き、どの製版の技法を使っても、ほとんど同じである。スクイージー()は、ゴムまたはウレタン製の箆(へら)であり、スクリーン印刷専用の物が売られている。プリントゴッコを使った印刷では、スクイージーやローラーは不要である。ステンシルでは、スプレーを使って刷ることもできるが、スクリーン印刷ではスプレーをメッシュにかけてもインクがメッシュを通過しないので、使えない。揮発性の有機溶剤を用いる油性インク、水を溶剤とする水性インクがあり、水性インクは乾燥後耐水性となる。紙の他に布、金属、樹脂など様々な素材に対応したインクがあり、熱を加えることで発泡するインクなど、特殊印刷向けのものもある。また、プラスチゾルインクというある一定の熱(摂氏130℃ - 160℃程度)を加えないと半永久的に硬化しないインクがある。これは一般的にアメリカンラバーといわれる。プリントゴッコ以外の孔版画は、基本的には1版につき1色のインクを使う。しかし特殊な方法では、版の上で異なる色のインクを混ぜ合わせてスクイージーを動かすことにより、グラデーションの効果を出した作品を作ることができる。しかし、スクイージーによってインクが攪拌されるので、複数の回数の刷る作業で、同じ結果にならない欠点がある。プリントゴッコではスクイージーを使わないので、グラデーションの表現を使う場合の、複数の回数の刷る作業で出る結果の違いの度合いが、スクイージーを使う方法で出る違いよりも小さい。商業印刷ではなく芸術作品としての版画作品の中で、グラデーションを効果的に使用した作品の例が多数ある。版画作品の場合は、作品の下部に鉛筆でエディションナンバー(限定番号)、作家サインなどを記入することが通例となっている。シルクスクリーンは、20世紀初頭に芸術の表現方法としての可能性をさぐるように実験的に芸術作品として使われ始めるより以前は、主に商業印刷の目的で広く利用されていた。1950年代後半以降、シルクスクリーンを使った作品を発表した作家の先駆者として特に有名な作家として、アメリカのロバート・ラウシェンバーグとアンディー・ウォーホルがあげられる。この2人は、ともにアメリカのポップアートの作家でもある。ロバート・ラウシェンバーグはキャンバスにシルクスクリーンの技法で写真を転写した。アンディー・ウォーホルは1960年代に、ポップアートのシルクスクリーン版画作品を積極的に発表した。そのような先駆者の作品の影響で、シルクスクリーンによる表現方法が、芸術の表現方法の一つとして確立し根を下ろしたと世間に認知されるようになった。日本人作家では、木村光佑が1970年代以降、国際的な版画のコンクールや展覧会などで版画を取り入れた作品を発表し、受賞するなどして注目を集めた。木村秀樹は1974年に開催された第9回東京国際版画ビエンナーレで京都国立近代美術館賞を受賞し、注目を集めた。横尾忠則は、シルクスクリーンやリトグラフなどの版画作品を発表した。美術商の視点からは、複製可能なシルクスクリーン版画は油絵や水彩画などの一点物の絵画よりも希少価値が低いため、比較的安価で売買されることが多い。ポストカード等で誘引されたギャラリーや展示会の会場などにおいて、美術品の相場価格を知らない人に対して絵画を市場価格と比べて高額な値段で販売しようとする、いわゆる絵画商法が悪徳商法の一つと言われている。若者に被害が集中し主に駅前(繁華街)の路上で通行人に「絵の展示会やってます」等と声をかけ店舗に誘い出し高額な絵を強引に購入させるもので2011年には「若者に高額な絵を強引に買わせた」として秋葉原駅前や銀座に店舗を構える企業と卸売り業者4社が東京都に行政処分された。そもそも優良な美術館や画廊の従業員が路上で客引きするのはあり得ないことなのでそういう者を見掛けたら「悪質な企業」と判断し相手にしないのが一番。もし被害に遭っても「3000円以上の品物」など一定条件を満たせばクーリング・オフ制度が利用出来るので直ちに消費生活センターに相談して指示に従うこと。
出典:wikipedia
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