平面波(へいめんは、)とは、等位相面が波数ベクトルを法線ベクトルとする等値平面から成る周期関数のことである。平面波と呼ばれる関数には、「時間変数を持たない平面波」と、「時間変数を持つ平面波」がある。「時間変数を持たない平面波」は、周期関数のフーリエ級数展開や、フーリエ変換、時間発展のないシュレーディンガー方程式の計算に用いられる。「時間変数を持つ平面波」は、波動方程式の解として現れる。通常、「時間変数を持たない平面波」と、「時間変数を持つ平面波」は、区別されずに混同されて用いられるが、異なるものなので、曖昧さを回避する観点から区別が必要な場合には、用語を使い分けることにする。それぞれの用語の定義は以下に行う。また、本稿では、「時間変数を持たない平面波」と、「時間変数を持つ平面波」の総称として「平面波」という用語を用いることにする。実数または複素数に値を取る実"d" 変数関数Ψが時間変数を持たない平面波であるとは、周期 2π の実 1変数の周期関数"f" と、波数ベクトルと言われる"d" 次元実定数ベクトル"k" (但し"k" ≠ 0)を用いて、と表されることを意味する。時間変数を持つ平面波は、波動方程式の固有解に現れる。実数または複素数に値を取る関数Φが時間変数を持つ平面波であるとは、空間変数"x" ("d" 次元実数ベクトル)と時間変数"t" (実数)と、周期 2π の実1変数の周期関数"f" と、波数ベクトル"k" ("d" 次元実定数ベクトル、但し"k" ≠ 0)と、角振動数ω≠ 0を用いて、であることを意味する。尚、本稿では、時間変数と空間変数をX = (x , "t" ) のように分ける。つまり、変数の最後の成分を時間変数と考える。物理的には、空間変数x と時間変数"t" は異なるものであるが、数学ではどちらも単なる変数である。この意味において、"d" 次元の時間変数を持つ平面波は、"d" + 1 変数の時間変数を持たない平面波と見做すことができる。時間変数を持つ平面波に対して、新たにK を、空間成分k と、時間成分−ωを並べた"d" + 1 次元の実数ベクトルとする。即ち、とする。但し、"k" は、波数ベクトル"k" の第"i" 成分を意味する。又、formula_5とする。このとき、のように書くことが出来る。この意味において、"d" 次元の時間変数を持つ平面波は、"n" + 1 変数の時間変数を持たない平面波と見做すことができた。正弦平面波は、正弦波の多次元への拡張の1つで、代表的な平面波である。正弦平面波には、実正弦平面波と複素正弦平面波がある。正弦平面波のことを単に平面波ということもあるが、正弦平面波ではない平面波もある。実正弦平面波は、数学的には振幅"A"、波数ベクトルK、位相項δの3つの定数/定数ベクトルで特徴付けられる。一般に"d" 次元の実正弦平面波は、時間変数を持たない形で書くと時間変数を持つ形で書くとで表される。ここで、波数ベクトルや時間・空間変数は、それぞれである。実正弦平面波は重ね合わせの計算などが面倒であることから、計算上のテクニックとして、実正弦平面波の値域をオイラーの公式を用いて複素数域に拡張した複素正弦波が発案された。古典物理では、複素平面正弦波は実正弦平面波の重ね合わせを計算するための便宜にすぎないが、量子力学では複素平面正弦波を用いなければ説明がつかない現象があるため、計算上の便宜のためだけのものではない。複素正弦平面波は数学的には、振幅"A"(複素定数)、波数ベクトルK(実定数ベクトル)、位相項δ(実定数)の3つの定数/定数ベクトルで特徴付けられる。一般に、"d" 次元の複素正弦平面波は、の形で表される。"a" , θ ("j" = 1, 2, ... , "m" ) を実定数(ただし"a" ≥ 0)としたときに、重ね合わせを計算する問題を考える。オイラーの公式より、複素数をベクトルのように表記してと見なすことができる。式(2-1)の右辺に、ベクトルの平行四辺形則を適用するととしたときに、が成り立つ。従って、重ね合わせ(1)を計算する問題は、式(2-2)の2つの式を求める問題に帰着される。ここで、θ ("j" = 1, 2, ... , "m" ) は実定数なので、が成り立つ。は複素共役を意味する。このことに注意して、"a" の展開を行うとが成立する。式(2-3)と、条件"a" ≥ 0 を考え併せると、式(2-2)は、と変形できる。従って、重ね合わせを計算する問題は、式(2-2’)を求める問題に帰着される。計算上の便宜としての複素正弦波を持ち出す最大の理由は、式(2-2)から(2-2’)(特に振幅の関係式)が導き出せることにある。一般には、これ以上簡単な形に変形することは難しいが、いくつかの特殊な場合には振幅の項あるいは位相項の片方あるいは両方がより簡単な形になる。例えばのときには、のように級数展開可能である。前述の"c" は"y" を固定するごとに定まるので、"c" は"y" についての関数と考えることが出来る。"c" の定義により、"c" もまた、"y" について(1変数の意味で)周期1の周期関数である。実際、"F" ("x" , "y" ) は、周期"E" を持つため、"F" ("x" , "y" ) = "F" ("x" , "y" + 1) である。従って、である。実は、"c" ("y" ) もまた"L"関数であるため、"c" ("y" ) も1変数関数の意味でフーリエ級数展開可能である。すなわちとすると、となる。式(3-1)に式(3-2)を代入すると、を得る。"F" を実数値あるいは複素数値の実"d" 変数関数とし、τを"d" 次元の実定数ベクトルとする。このとき、τが"F" の周期であるとは、任意の"d" 次元実数ベクトル"x" に対し"F" ("x" + τ) = "F" ("x" ) であることを意味する。ここで、τが"F" の周期であったとしても、formula_24τやτ/2 が"F" の周期であるとは限らない。定理1から帰納的に以下の定理2が示される。前節の定理1と定理2は、周期が格子状の空間(Z-加群)をなすことを主張している。以下、格子について補足を行う。"d" 次元標準正方格子formula_25を、以下のように定義する。即ち、"d" 次元標準正方格子は、成分全てが整数となるような"d" 次元実数ベクトルを全て集めることによって出来た集合である。formula_27は、formula_28の標準基底"e" , ... , "e" のZ結合で生成される。即ち、formula_25の点"z" は、"n" 個の整数"z" , ... , "z" によって、のように展開することが出来る。この展開は、一意的である。又、"d" 次正則行列"A" に対し、formula_31を、と定め、"d" 次元正則行列"A" によって生成された格子空間と呼ぶ。formula_33は、"A" の列ベクトル"A" , ... ,"A" のZ結合で生成される。即ち、formula_33の点は、"n" 個の整数"z" , ... , "z" によって、のように表すことが出来る。即ち、標準格子空間formula_25上の点"z" は、行列"A" によって、必ずformula_33 に移すことが出来る。但し、"A" は、"A" の第"j" 列ベクトルである。即ち"A" = "A e" である。さらに、ユニットセルの概念を定義する。"T" , ... , "T" が、"d" 次元実数ベクトル空間formula_38の基底とする。このとき、を、"T" , ... , "T" が張る"d" 次元平行六面体、あるいはユニットセルという。特に、"d" 重周期関数"F" に対し、"T" の列ベクトル全て、即ち"T" , ... , "T" が"F" の周期となるような"d" 次正則行列が定まる。本稿では、このような"T" を、"F" の周期行列と言うことにする。また、formula_41を、"F" の周期格子という。簡単な計算から以下の定理が判る。この定理により、周期行列が存在するような"d" 重周期関数の問題は、すべて、標準正方格子を周期格子として持つような周期関数の問題に帰着されることが判る。平面波の周期性について、以下の命題が成り立つ。即ち、命題1は、"K" の直交補空間の点は皆、波数"K" の平面波Φの周期であることを主張している。以下の定理より、"d" 重周期関数"F" と同じ"d" 重周期を持つ平面波を沢山作る方法が与えられる。波動関数は、基底関数で展開した形で記述することができる。この時に用いられる基底の1つに平面波基底(Plane wave basis)がある。バンド計算における表式化が比較的簡単で(それ故、プログラムも構築し易い)力やストレスの計算も他の基底(局在基底など)を使った場合より容易に実現が可能である。また、平面波基底では、Pulay補正項の問題が回避できることも利点のひとつである。欠点は、例えば波動関数や電荷密度を、s、p、d 軌道毎に分けたい場合や、ユニットセル内の特定の原子の電荷を求めることが、困難になることである。
出典:wikipedia
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