混合診療(こんごうしんりょう、Mixed billing)とは、国際的に明確な定義はないが、厚生労働省は日本国内での「保険診療と保険外診療の併用」としている。日本医師会によれば『保険診療と保険診療外の診療行為自体の混在ではなく、日本の国民皆保険体制の公的医療保険制度の主幹システムである「医療の現物給付」の中での「費用の混在」(一部負担金を含む保険給付と保険外の患者負担との混合)を指す』とされる。 なお、がんなど、命を脅かされ他の治療手法では見込みがない疾患に対し、患者本人の要望と自己責任において未承認薬を使用する場合は、コンパッショネート使用制度(Compassionate Use、人道的救済使用、緊急避難的限定使用、CU制度)といった例外措置制度があり、これはEU圏では普及している。イギリス、カナダ、日本では混合診療の禁止を前提とする法律規定があるが、それ以外の国では法律規定はない。ただし、日本の混合診療解禁論で懸念されている危険医療実施や医師の儲け主義については、コンパッショネート使用制度、医薬分業、データ共有・公開、医師間相互チェック・第三者チェックなど医療・医薬品制度や規制によって実質的に抑制されている。日本の医療制度においては、保険医療機関において保険給付外診療(自由診療)を併用した診療は認められない。通常であれば、公的医療保険が適用される診療内容にそれ以外の保険外診療が加わった場合、その保険医療機関での一連の治療費について保険診療として認可された部分も含めて、保険医療機関よりの請求に対して保険者は支払義務を免除される(医療機関の全額負担となるが、患者に支払義務はない)。そのため、保険医療機関は私費診療(自費診療、保険給付外診療)として当初より受け付て自由診療を行い、医療費は全て患者負担とさせる。日本では公的医療保険は1911年に健康保険法の制定により国民の一部のみを対象として誕生し、1961年に国民健康保険法が制定されたことによりユニバーサルヘルスケアが実現していたが、1984年に保険医療機関及び保険医療養担当規則第18条が規定されるまで、混合診療の禁止を解釈できる法令上の明文規定は存在しなかった。それゆえ混合診療の禁止に法的な根拠があるのかには議論があるが、後述するように最高裁判所は保険医療機関及び保険医療養担当規則第18条の規定により混合診療が原則禁止されていると判断した。OECDは、この制度は患者が公的保険で認可されていない新しい医薬品・治療法を選択することを高価にし、それらへのアクセスを遠ざけていると指摘している。日本の皮膚科では痤瘡(ニキビ)の治療において、適応を有している外用薬と、適応を有していない(公知申請にも該当していない)内服薬の同時処方が推奨されている。なお歯科については伝統的に混合診療が認められて来たが、患者の希望により一連の治療行為の中途よりの私費診療への変更が政策的に認められている。国際医療福祉大学元大学院長(故人)の開原成允は保険範囲内と範囲外の診療を同時に行う場合を仮に混合診療とした場合は以下の5つに分類されるとした。2004年(平成16年)12月15日、厚生労働大臣と規制改革担当大臣とが合意した「いわゆる混合診療問題に係る基本的合意」の中で文書化された「いわゆる混合診療問題について」という解説で、いわゆる混合診療で注目される保険外診療として以下の3つを挙げた。この扱いについて、東京地裁は2007年11月7日、混合診療における保険給付を求める訴訟の判決のなかで「健康保険法などを検討しても、保険外の治療が併用されると保険診療について給付を受けられなくなるという根拠は見いだせない」とし、国による現状の法解釈と運用は誤りであるとの判断した。一方で、同判決は、「法解釈の問題と、混合診療全体のあり方の問題とは次元の異なる問題」とも述べ、混合診療自体の是非についての言及は避けた。しかし控訴審の東京高裁は2009年9月29日、保険医療機関及び保険医療養担当規則第18条規定が「混合診療を原則として禁止したものと解するのが相当」と判断を示し、混合診療の禁止を適法として原告患者側の請求を退ける判決を言い渡した。最高裁も2011年10月25日、「保険外併用療養費制度は、保険医療の安全性や有効性の確保、患者の不当な負担防止を図るもので、混合診療禁止の原則が前提。混合診療を全額自己負担とする解釈は、健康保険法全体の整合性の観点から相当」として混合診療禁止を合法と初判断を下して上告を棄却した。保険外併用療養費制度とは、保険診療外の部分については全額自己負担(定価なく自由料金)となるが保険診療の部分については保険適用とする医療サービスのことである(健康保険法第86条)。#2004年前後の動向を受けて、従来の特定療養費制度を再編する形で制定された。保険外併用療養費制度では保険対象外と保険対象が混じった費用の扱いになるが、あくまで国民皆保険の堅持を前提とするものであり、混合診療を無制限に解禁するものではない。しかしながら、保険診療において保険外診療(自由診療)との併用が認められているため「混合診療」と説明されることがあるので注意を要する。健康保険法第64条で保険医療機関において健康保険の診療に従事する医師は保険医でなければならないとされ、保険医療機関及び保険医療養担当規則第18条で保険医が行なう保険外診療は原則禁止されているが、保険医以外の医師が行なう保険外診療を禁止する法的根拠はない。つまり、患者としては、保険医療機関で保険診療を受けながらの別の自由診療機関で保険外診療を受けることで保険外診療も受けながら保険医療機関における保険診療により健康保険からの給付を受ける形を取ることで混合診療を受ける時と同様の恩恵を受けることが可能である。以下のような手法で事実上の混合診療が横行しているとされる。1950年代の国民皆保険黎明期には、医師らは保険医療を「制限医療」だとして強く忌避し、患者に自由診療を勧めていた。当時の医師にとって保険医療とは「医師という専門職における自由な創造性に基づく裁量権」を制限するものであり、追加費用を支払って自由な医療を受けようとする患者の、任意に選択した医療を受ける機会を奪うものであると医師らは主張していた。1961年には日本医師会が主導する全国一斉休診や、保険医指定の辞退運動も起こっていた(全国保険医団体連合会#連絡会の成立)。2004年、小泉純一郎首相(当時)が混合診療解禁を指示し、これを受けた規制改革会議では混合診療の緩和が提言され、賛否分かれての大きな議論となった。その結果、混合診療は全面解禁せず、保険収載された新薬の適応外投与が追加される等、特定療養費の範囲を拡大することで政治上の合意がなされた。それを受け、2005年の厚生労働白書においては、特定療養費制度を廃止し、保険導入のための評価を行う「保険導入検討医療(仮称)」および保険導入を前提としない「患者選択同意医療(仮称)」に再編成する案として述べられており、これは後の保険外併用療養費制度となった。2009年のOECD対日審査では、この制度は日本独自のものであり英国でのかつての同様制度は現在撤廃されていると報告し、また改革案には厚生労働省と日本医師会が主に平等位の面から強く反発していると記載されている。OECDは「患者ニーズの多様化と医療技術の進化を考慮し、自由診療との混合が認められる請求範囲を拡大する必要があり、それによって先進的な治療・医薬品へアクセス可能となり、医療の質が向上する」「これによって医療機関間の競争が活性化する」と勧告している。また医療製品の認可ラグ(ドラッグ・ラグ)の長さについて、平均1,417日間である状況(2004年)を他国並みに改善すべきと勧告されている。2011年からは、日本医師会などが、2010年末から米州太平洋アジア10か国近くで提唱されている環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉において、日本の医療自由化が議題となる可能性を指摘している。日本医師会は、TPPから公的医療保険制度を除外することと混合診療の全面解禁を行わないことを約束するよう政府に求めている。西村康稔衆議院議員は、アメリカ合衆国通商代表部(USTR)日本担当のウェンディ・カトラー代表補が日本の皆保険制度については何も要求しないと明言したとしている。健康保険法改正により、2016年4月からは患者申出療養が解禁された。
出典:wikipedia
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