ポケットコンピュータ(ポケコン)は、1980年代に広く使われた携帯用の小型コンピュータである。ポケットコンピュータは、その名の通りポケットに納まる程度の外形寸法であり、BASICなどの高級言語でユーザがプログラムを作成することができた。小型軽量化と当時の技術水準のため、表示能力や記憶容量は限定されていたが、電池により長時間の駆動が可能であった。日本ではシャープが1980年に発売、これをカシオが追い上げる形で続き、他にも数社が参入して多くの製品が販売された。当時はパーソナルコンピュータ(パソコン、PC)が高価だったので、コンピュータに関心を持つ層が、ポケットマネーで買えるコンピュータとして歓迎した。コンピュータとしての処理能力は貧弱であったが、簡単なゲームを作って楽しむなど、趣味の分野で盛んに利用されただけでなく、高性能プログラム電卓として工事現場での構造計算から学術研究フィールドワークにおける計算など、様々な分野で活用された。最盛期であった1980年代には、他にもラップトップパソコンやハンドヘルドコンピュータと呼ばれるような可搬型コンピュータが存在した。しかし、これらが産業用・業務用機として小さな市場を奪い合っていたのに対し、ポケコンは安価で扱い易いなど様々な理由により、産業・商業・教育ないし趣味といった企業から個人までの幅広いユーザを獲得していた。『I/O』『PiO』(工学社)や『マイコンBASICマガジン』(電波新聞社)などのパソコン雑誌に投稿プログラムが多数掲載され、専門誌『ポケコンジャーナル』(工学社)も刊行されていた。『ポケコンマシン語入門』(工学社)ではシャープのPC-12シリーズでマシン語プログラムを組む際に使える多数の内部ルーチンや、液晶画面を直接制御する方法などが解説されていた。ポケコンもラップトップもハンドヘルドも、それぞれ機能的に不満な点が多かったため、やがて高性能で汎用性の高い「ノートパソコン」へと収斂していった。一部の機種では専用のメモリカードや別売りのディスクドライブが利用できたが、当時はカセットインタフェースを介して接続されたカセットテープレコーダを用いてプログラムをオーディオカセットに保存するのが一般的であった。このような用途に特化したデータレコーダと呼ばれる製品も存在したが、カセットもマイクロカセットも既にほとんど使われなくなっている。中期以降の機種ではカセットインタフェースではなく、SIO(RS-232C)が装備されるようになったが、このインタフェースもあまり使われなくなったため、ほとんどのノートパソコンには直接接続することができない。RS-232CとUSBの変換ケーブルを用いてもよいが、初期のカセットインタフェースしか持たない機種も含めて直接USBポートに接続できる周辺機器を製作しているメーカもあるので、こうした製品を利用する方法もある。プログラミング言語BASICは、簡単な英語の単語を基本としており、プログラミングの入門用に適している。機種間で細かい文法の違い(方言)は多いが、実際の数式に近いフォーマットで記述できる上、プログラムを逐次解釈して実行するインタプリタ型なので、無限ループなどで応答が無くなっても、プログラムが破壊されることはなく、確実に止めることができる。作りかけのプログラムを動かしながら、さらにプログラムを追加していくこともでき、プログラムの作成・改良が容易である。ポケコンの用途は関数電卓の延長上にあることも多く、現場で必要に応じて即座にプログラムを組む際にもBASICは使いやすかったため、単なる入門者用としてでなく、技術者や科学者が現場で利用する専門分野でも役立った。しかし、旧来のBASICは一般に構造化命令(→構造化プログラミング環境)を備えていないので、追加に次ぐ追加でプログラムに手を入れていくと構造が煩雑になり、ついには作った本人でさえプログラムが理解できなくなることがある。画面が小さく編集機能が貧弱だったこともあり、いつの間にか訳の分からないものになりがちであった。このため末期の機種では、教育に於けるプログラミング演習や他の環境に親しんだ利用者のニーズも取り込むべく、ソフトウェア開発で主流となっていた構造化プログラミングへの対応が図られたが、この頃になると携帯用コンピュータはWindowsノートPCが主流となり、ほどなくポケコンはその役割を終えることとなった。しかし、Windows上で動作するインタプリタ型BASICもフリーウェアとして公開されているので、今でも「携帯用コンピュータで昔ながらのBASICを使う」ことは、ポケコンに頼らずとも可能ではある。
出典:wikipedia
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