天ぬき・天抜き(てんぬき)は、天ぷらを載せたかけそば(天ぷら蕎麦)から蕎麦を抜いたもの。東京の蕎麦屋でも使われる江戸っ子言葉の一種。単に「ぬき」ともいう。天抜きが注文される背景としては、たとえば蕎麦屋で酒(日本酒など)のつまみに天ぷら蕎麦を頼むと、飲んでいるうちに蕎麦がのびてしまうため、打ち立ての旨さを味わえないという具体的な理由に加え、「酒を飲んでいる時には腹にたまるものは食べたくない」という酒飲み独特の美学的要素が考えられる。天ぬきを頼むことを「通家」の象徴とする見方もある。また、「鴨抜き(鴨南蛮の蕎麦抜き)」、「台抜き(丼物のご飯抜き)」などもある。しかし、汁ものを酒のつまみとする習慣は日本各地にみられるもので、たまたまそれが蕎麦屋で行われているため、「汁とそばを分離する」という点に注目が集まるだけのことである。ただ、酒のみがのんびりと汁をすすりながら燗酒を飲み(天ぬきに冷酒は野暮であるという)、最後に蕎麦を三口、四口でたぐって帰るという様子は、趣味人の間では風情のあるものとされている。なお「天ぬき」という言葉は全国的に通じる言葉ではなく、地域・店によっては「天ぷらそばから天ぷらを抜いた蕎麦」(=かけそば)が提供される場合もあるため、関東地方以外では注文の際に注意が必要である。蕎麦屋と天ぷら屋では、天ぷら用の粉に違うものが用いられることがある。天ぷら屋では素材の食感を表現するために薄力粉で衣をつくり、蕎麦屋ではつゆの染みがいいように強力粉でつくるという考え方がある。ただし、それは蕎麦屋が天ぷらを「莫」で供している場合のことであり、高級店ではその限りではない。揚げ方も異なるともされ、蕎麦屋では汁を吸ってうまくなるように工夫して汁を十分に吸ったものが、燗酒に合うともされる。俗に同じ蕎麦屋に10年は通って主人と顔なじみにならないと、「蕎麦を抜いて」とは言いにくいためにできた言葉とされる。天ぬきを頼んでやっとその店の常連である、というのはいかにも通ぶった感があるが、蕎麦喰いにつきまとうスノッブさを誇張した表現としては適切である。ただし2015年現在は、通常メニューに「天ぬき」を載せている蕎麦屋も増えてきているほか、富士そばなど一部の立ち食いそばでもレギュラーメニューとして「天ぬき」を提供するようになっているため、「天抜き十年」という表現は死語化しつつある。天ぬきと同様に、天ぷらそばの天ぷらから種を抜いたものを「たぬき(つまり種ぬきが転じて」)といううえ、同様にそれらのたぬき(揚げ玉)を入れたかけそばを「たぬきそば」という。酒を飲みながらの天ぬき食文化は江戸に近い関東地方だけではなく、他の地方にも伝わった。関西方言では、これを「天ぷらの吸い物」という意味から「天吸い(てんすい)」と呼ぶことがある。また、「すは(素は)鎌倉」の語呂から「かまくら」と呼ばれることもある。
出典:wikipedia
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