ドリフト走行(drifting)とは、自動車や二輪車における走行方法の一つ。ドリフト走行とは、コーナーリング中にタイヤが滑っている状態を積極的にコントロールして車を操る走行技術のことであり、ステアリングのみに頼らず、アクセルとブレーキの積極的な使用によりスライド状態を維持したまま進行方向を調整する複合的な操作が求められる。「ドリフト」とは英単語の"drift"(漂う)を語源としている。現在ではタイヤや車体性能の向上もあり、舗装されたサーキットでの派手なドリフト走行はタイムロスになると言われているが、ラリーなどのダート競技や峠道で行われるヒルクライム及びジムカーナ等では、速く走るために積極的にドリフトを行う必要があり、特にタイトコーナー(鋭角的なきついコーナー)や小さなヘアピンカーブなどでタイムを出すのに有効なテクニックである。また速さを競わないショー(見世物)としてのドリフトも行われている。これは日本がもっとも盛んであると言われ、海外にも愛好家が増えてきている。D1グランプリ、アメリカではフォーミュラDのように、ドリフトコントロールを競い合ったりドリフトの美しさを競う競技も存在する。ドリフトさせることにより、車体の向きを早く脱出方向に向けることが可能になり、アクセルを早く踏むことが出来るため脱出速度を速くすることができる。また、ブレーキングドリフトはブレーキングを開始した時点でリアタイヤのスライドにより車の向きを変えることが出来る。タイトなヘアピンカーブやジムカーナでのパイロンターンなどでは、グリップ走行よりも格段に小回りすることが可能になる。上手にコントロールすることにより、車のアンダーステアを消すことが出来、フロントタイヤの負担を減らすことが出来る。またクルマの動きが派手で操縦技術のパフォーマンスとして有効である。ドリフト時はスリップによる摩擦のためパワーロスが生じ、進行方向とは違う方向に駆動力が消費されてしまう欠点がある。また車が横向きになることによりウイングなどのエアロパーツは十分なダウンフォースを発揮しなくなる。タイヤの消耗は非常に激しくサーキットの1回の走行枠でダメになる事が多い。サーキットによっては、クラッシュが多いこととコースの劣化を嫌いドリフト走行を明確に禁止している場合もある。ドリフトはタイヤのグリップ力を意図的に失わせる行為であるため、技術が未熟なものが行えば大きな事故に繋がる可能性が高い。公道でドリフト走行を行うとスキールと呼ばれる大きな摩擦音が発生するため周辺に迷惑をかける行為になる。一部のドリフト愛好者は周囲への迷惑を考えずに一般公道で練習を行っており、大きな社会問題になっている(後述「#関連事象」参照)。ドリフト走行を行うと車に大きな負担が掛かり、タイヤ・シャフト・ブッシュ・ミッション・デフ等各部の消耗が早くなる。タイヤの損耗が大変激しい事からバーストの原因になることも多い。他に路面にタイヤ痕が付くため、アスファルトや白線等を傷めつけることになる。日本国内では路面にタイヤ痕をつけたことにより器物損壊罪で摘発された事例が存在する。ドリフト走行を行うためには、ステアリング、アクセル、ブレーキを適切に操作して、タイヤのグリップを意図的に低下させる技術が必要となる。車輪の角度と進行方向のずれ角度をスリップアングルと呼ぶ。スリップアングルは遠心力等の慣性力によるタイヤへの横力による変形で発生するものであるため、旋回方向に対して外側につき、グリップを維持している状態においても発生するが、前輪のスリップアングルより後輪のスリップアングルが大きい場合を一般的にドリフト状態と呼ぶ。前輪と後輪のスリップアングルおよびタイヤのグリップに差が発生することが多く、前輪のグリップやスリップアングルが後輪のそれを上回っている場合、舵角と比較して車体の進行方向は外へ膨らむ。このような車体特性をアンダーステアと呼ぶ。前輪と後輪のこれらの関係が逆になった場合、後輪が外側に出て舵角と比較して車体は内側へ巻き込む。このような車体特性をオーバーステアと呼ぶ。つまりカウンターステアを用いるドリフトをしている場合、車はオーバーステア状態にある。例えば左旋回時、進行方向に対して車体が左に30度の角度をつけて回転せずにそのまま滑りながら、右に10度(車体基準。つまり進行方向に対しては左に20度となる)の舵角を与えている場合、この自動車はスライドしているためドリフト状態である。舵角どおりの回転が発生していないため一見アンダーステアと思えるが、後輪はそれ以上のスリップアングルであるためオーバーステアである。また、アンダーステア状態の車両は旋回限界で外へ膨らむ軌跡を描くが、オーバーステア状態の車両が旋回限界で内側へ巻き込む軌跡を描くとは限らない。むしろオーバーステアであっても限界状態ではスピンアウトするのは避けられない。全日本プロドリフト選手権では、カウンターが戻ってしまった時(舵角が0度~コーナー方向へ向いてしまった時)をアンダーステアと呼ぶ独自の定義を与えており、審査区間内で1度でもこの状態になってしまうと単走では0点、追走では大きな減点となる。一方、深すぎるドリフトのことをオーバーステアとは呼ばず、スピンと呼んでいる。二輪車のレースなどでも、ドリフトはよく見られる。スライド走法と呼ばれることもある。オフロードコースで行われるモトクロスやダートトラックレースなどでは、ドリフト走行が主体になる。舗装路と未舗装路が混在したコースで開催されるスーパーモタードレースは、舗装路であってもドリフト走行が基本である。WGPやスーパーバイクレースで用いられるような高出力マシン(ca.200ps/150kg)は、舗装路上といえども完全にグリップ走行するのは不可能である。ダートトラック出身のケニー・ロバーツ は自分がロードレースで最初にスライド走行をしたといっているが、マイク・ヘイルウッドなどは1960年代から前後輪ドリフトを行っていたという証言もある。またリヤのスライド自体は1960年代以前から多くのライダーが経験しているとする説もある。現在のMotoGPでは、コーナー進入時に両輪が滑っている状態から倒しこむこと、加速時にパワースライドしたままフロントを浮かせることも珍しくない。バレンティーノ・ロッシに至っては、ブレーキングでカウンターステアを当て、4輪ラリー車のように車体を斜めにスライドさせながらコーナーに進入するという荒技を見せる。ギャリー・マッコイは、派手なドリフト走行で知られている。一部のライダーは高速でリヤタイヤを空転させることで発生するジャイロ効果を利用しているとするが定かではないドリフト走行はWRCや富士フレッシュマンレースでの土屋圭市の影響で、一般的なグリップ走行の陰に隠れて少数ながら存在したが、頭文字Dの連載開始により爆発的に流行。特にドリフトのしやすいFR車が好まれるが、FFや4WD車も少数ながらドリフトを行っている。特にFFでのドリフトの場合、一般的なFRでのドリフトと区別するためにFドリと呼ばれることが多い。日本では、1970年代に流行した共同危険型暴走族と呼ばれる派手に飾り付けた車両で威嚇運転をする集団が、1980年代以降ファッショナブルではないとして次第に廃れる一方、峠道などで無謀な運転をするローリング族、またカーブの多い首都高速道路等においてはサーキット族(またはルーレット族)と呼ばれる違法競走型暴走族が多く現れるようになった。これらはある種の顕示欲から、より危険なドライビングテクニックを披露する傾向があり、ドリフト走行もそのテクニックの一つとして取り入れられた。なかでも、峠道のほか都市部の港湾地区や駐車場などにおいて、ドリフト走行を披露することを主にする者達のことは「ドリフト族」と呼ばれる。しかしドリフト走行特有のスキール音や排気音などの騒音が周辺住民の安眠を妨げるといった問題や、操作しきれずスピンなどを起こし、道路に面した民家や商店、ガードレール、あるいは通行している一般の車等に突入する事故も後を断たない。また峠道では崖下に、港湾地区では海に車ごと落下してドライバーが命を落とす場合もある。特に危険度の高い細い道ほど彼等の興味をそそりやすいことから、周辺住民がそれらの無謀運転に巻き込まれるのを恐れて、深夜の外出がままならない等の弊害を生んでいる。また救急車などの人命に関わる緊急自動車の走行を妨げ、場合によってはそれら車両と接触事故を起こす事例もあるため、もはや個人的な趣味の範疇を逸脱し、深刻な社会問題に発展してしまっている。その為、全国で警察による「ドリフト族」に対する一斉検問の実施が繰り返し実施されている他、「ドリフト族」が集結する道路などにおいて、自治体が対策として「スピードセーブ工法(路面にあえて波のような凹凸を作る)」や「グルービング舗装(路面に溝を掘り、滑りにくくする)」など、ドリフト走行のための後輪のスライドを物理的に不可能にする路面加工を行う事も見られるなど、「ドリフト族」がドリフト走行できないように封じ込めようという動きも見られる様になっている。今村陽一や高橋邦明らD1グランプリに当初から参戦しているドライバーは、ドリフト族出身者が多い。近年ドリフト走行は、活動の場がストリートからサーキットへと移行しつつある流れの中でそれ自体が単独のモータースポーツカテゴリーの一つとして確立しつつある。遅くとも1990年代末期頃からは上述のようなストリートドリフト追放対策の強化、いわゆるサーキット走行会の普及・充実、ドリフト専用のコースを設置したサーキットの登場と言った環境整備もあり健全なアマチュアモータースポーツとしてクローズドコースでドリフトを楽しむ人も出てきた。これらのイベントや施設は、サーキット使用料などが掛かるため、決して安い参加費用ではないが、専門のドライバーによる模範演技や講習も開催され、プロドライバー・レーシングドライバーの指導を受けることができ、安全なサーキットで思う存分運転技術を試せるとあって、最近ではサーキット走行が主流になりつつある。ただしサーキットでのドリフト走行にも問題はある。通常のスポーツ走行では発生しない派手なスキール音や、路面にブラックマークが残ってしまう問題(ドリフト用の滑りやすい非ハイグリップタイヤのゴムが路面に溶け残り、グリップを低下させてしまう)などが挙げられる。さらにドリフト走行と通常のスポーツ走行ではライン取りや走行パターンが異なるため、両者が同時に走行するのが難しい(危険)と指摘する向きもある。前述の通り、サーキットによってはドリフト専用コースを設けている例もある。また一般のスポーツ走行枠では、意図的なドリフト走行は禁止されることも多く、場合によってはドリフト専用の時間枠が設けられることもある。2001年からは全日本プロドリフト選手権(通称D1GP)が開催されている。シリーズ制で行われており、近年ではお台場フジテレビ前特設サーキットや、アメリカGPも行われている。2006年からは下位カテゴリーとしてD1ストリートリーガルも発足している。さらに2004年からはアメリカでもSCCA(スポーツカー・クラブ・オブ・アメリカ)の主催でフォーミュラ・ドリフト(通常は「フォーミュラD」と呼ばれることの方が多い)の名称でシリーズ戦がスタートしているほか、2008年現在ニュージーランド・オーストラリア・イギリス・アイルランドなどでドリフト走行のシリーズが開催されている。2008年にはこれら各国のドリフト戦シリーズの上位入賞者を一堂に集め、レッドブルの主催で世界ドリフト選手権()が開催されるなど、ドリフト走行そのものをスポーツ興行とする動きは世界的に広がっている。スポーツとしてのドリフト走行の最大の特徴は、他のモータースポーツが原則として全て「一定のコースをいかに速く走るかを競う」のに対し、「速さもさることながら、ドリフト走行中の姿勢など美しさを総合的に競う」採点競技である点にある。そのため競技者の優劣の判断は審判による判定により行われるのが一般的であり(D1GPなど一部機械式の採点を導入しているシリーズもある)、その意味で他のモータースポーツをスピードスケートに例えた場合のフィギュアスケートになぞらえられることがある。ただしスポーツとしてのドリフト走行が確立してまだ日が浅いという事情から、今のところ審判の採点基準はシリーズによって大きく異なっている。また国際自動車連盟(FIA)はドリフト走行を管轄対象としておらず、代わって国際的に競技を統括する統括団体も今のところ存在しない。このためドリフト走行に関するモータースポーツライセンスも、現在は各地のシリーズ主催団体が個別に発行する状態が続いている。今後ドリフト走行をより一層スポーツとして普及させるためには、採点基準やライセンスの国際的な統一・国際的な競技統括団体の設立などが課題となる。実際2013年より日本自動車連盟(JAF)がドリフト競技を公認競技会の対象に追加するなど、既存のモータースポーツ統括団体がドリフト競技を管轄下に収めようとする動きも見られつつある。特にAE86やシルビア、180SXといった車種がドリフトの代名詞とされることが多いが、稀にベンツやシーマ、セルシオなどの高級車、さらにはエスティマ等のミニバンをドリフト仕様にする者もいる。
出典:wikipedia
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