ホタテガイ(帆立貝、学名:)は、二枚貝綱- 翼形亜綱- イタヤガイ科の"Mizuhopecten" 属に分類される軟体動物の一種(1種)。通称、ホタテ(帆立)。食用としても重要な貝類の一つ。日本語では、標準和名「ホタテガイ」の元となっている帆立貝が古くから呼称としてあり、これは、約10~15cmぐらいの貝殻の一片を帆のように開いて立て、風を受けて水上を帆走する帆掛舟(ほかけぶね。"cf." 帆船)さながらに海中あるいは海上を移動するという俗説に由来し『和漢三才図会』においても記載が見られる。俗語的略称として、「貝」を省略した帆立(ほたて、ホタテ)の名でも呼ばれることも多く、「ほたて○○」「ホタテ○○」「○○ほたて」「○○ホタテ」といった連結語的用法も目立つ(用例:ほたてウロ、ほたてタイル、ホタテマン)。その他、板屋貝や、殻の形からそれを扇に見立てた海扇(うみおうぎ)との雅称もある。また、武家・久保田佐竹氏(久保田藩は「秋田藩」とも言う)の家紋に似ていることから秋田貝(あきたがい)とも呼ばれる。まれに車渠とよばれることもある。なお、日本に限っては、この貝から取れる主たる食材が貝柱であることから、代名詞的用法をもって貝柱と俗称されることがある。中国語では、ホタテガイ類を扇に見立てて「(簡体字:)」と言う。ただし、 を特定する呼称は確認できない。英語では scallop (イタヤガイ類)の一種である を と呼ぶ。また、日本で「ホタテガイ(帆立貝)」と翻訳されることも多い scallop は生物学的には「イタヤガイ類」(おおよそ、イタヤガイ科)であって、その一種である「ホタテガイ」とは異なる。キリスト教圏では英語で言うところの scallop (特にその一種である"Pecten"属["genus Pecten"])の貝殻は、中世以来、聖ヤコブの象徴物とされており、フランス語では「聖ヤコブの貝」を意味する "coquille Saint-Jacques [仮名転写例:コキーユ・サンジャック]" の名で呼ばれている(#文化の節も参照のこと)。殻径は20cmほどになる大きな二枚貝である。貝殻はふくらみが強い殻と弱い殻とが合わさっているが、ふくらみが強い方が右殻である。殻の中央には大きな閉殻筋(貝柱-断面円形の横紋筋とその傍らに断面三日月形の平滑筋)がある。また、外套膜(ヒモ)の周囲には、およそ80個の小さな眼点(眼)があり(■テンプレート上の画像を参照のこと)、明るさを感じることができる。生息に至適な海水温は +5~+19℃の冷水であるが、−2~+22℃の間なら生きていける(稚貝はさらに4℃ほど高温でも耐えられる)。浅海の砂底に生息し、自然分布の日本での南限は、日本海が能登半島、太平洋が東京湾とされているが、大規模な商業的漁業が可能なのは東北地方の三陸海岸以北である。中華人民共和国やアメリカ合衆国の一部でも養殖され、乾物に加工されて流通しているが、養殖場はいずれも日本以上に水温が高い海域であるため、イタヤガイなど、別の種であると考えられている。天敵はヒトデ、オオカミウオ、ミズダコなどである。ただし、ヒトデに襲われると閉殻筋で力強く殻を開閉させて海水を吹き出し、泳いで逃げることができる。代表的な漁業形態は、以下の2つである。小型底びき網漁には、区画漁業権に基づき、稚貝を海底にまいて育てる、地撒き(じまき)養殖の物を捕る方法も併用されている。小型底びき網による漁獲は、地撒き養殖用の1年貝(稚貝)を放流後3- 4年自然成長する貝と、自然発生する4- 5年貝を併用して漁獲されるので「天然物」と称している。しかし、養殖用といっても人工飼料を与えているわけではなく、あくまで外敵に襲われないように保護しているだけとも言えるので、天然物と養殖物の境界線は区別をつけられない。2009年には北海道の噴火湾周辺から三陸沿岸にかけて、ザラボヤ、イガイ、フジツボなどが大量に発生し、養殖ホタテの生育を阻害したり、垂下式養殖のロープが切れるなどホタテ漁に深刻な影響を与えており問題となっている。食用として多く漁獲されるが、現在では養殖もされている。うま味成分であるアミノ酸、グルタミン酸、コハク酸やタウリンなどが豊富に含まれている。ホタテガイ特有の甘味はグリコーゲンによる。調理方法にもよるが、近年日本では生後一年程度の稚貝から、3- 4年ほどかけて大きくしたものまで、幅広く流通している。北海道や東北地方北部のスーパーマーケットでは、貝が生食(刺身)用か否かを区別して売られていることも見られる。貝柱は肉厚で淡白だがほぐれやすく、舌触りと風味がよい。刺身や煮込み、バター焼き、スープなど様々な料理で使用される。また、乾燥して干貝(干貝柱)にも加工し、一部は日本から輸出もされ、具材や調味料として利用される。また、ヒモ(貝ヒモ)と呼ばれる外套膜も生食したり、燻製や塩辛などにして食べる。貝殻以外はほとんどの部位が食べられるが、「ウロ」と呼ばれる中腸腺は食べても美味しくない上、生物濃縮により、貝毒や重金属(主にカドミウム)が集中するため、健康に影響を与える可能性があり、食べない方がよい。ウロは黒緑色で目立つため、素人でも手で容易に取り除くことができる。代表的な加工品は冷凍貝柱、ボイルホタテ、干し貝柱である。日本料理のほか、フランス料理や中華料理の食材として日本国内で消費されるだけでなく、日本国外にも盛んに輸出される。乾燥品は近年中国での需要増により価格が生鮮品の数倍に跳ね上がる。対して生鮮品は庶民でも気軽に買える程安い。貝殻は日本などの料理店等で野趣を演出する鍋代わりに使用されることも多い。日本の青森では居酒屋で貝焼き味噌(ホタテガイの貝柱やヒモ、刻みネギ、削り節を味噌で煮て玉子で綴じる)と言えば一般的な料理である。貝焼き味噌用に大型の貝殻も販売されており、刺身の盛りつけや、なかには灰皿などにされることもある。また、カキの垂下式養殖にも使われている。秋田県の内陸の鉱山地域で生まれ育った作家、松田解子(1905-2004)は、ホタテの貝殻で馬肉を煮て食べるのは当時(19世紀末から20世紀はじめにかけて)下賎なものとして扱われていたと、小説『おりん口伝』ほかで書き残している。スキャロップ・パール(scallop pearl)と呼ばれる天然の真珠を産することがある。アコヤガイなどのような真珠層ではなくカルサイトによる葉状構造が特徴。主にカリフォルニア沖などで採取されているが、養殖されているものではない天然の真珠のため非常に珍しく貴重でありほとんど市場に出回らず、市場に出回っている物も小さい物や形のいびつな物がほとんどである。しかし普通の食用のホタテの中に産するため、おやつや酒肴のホタテの中に入っている場合がある。ホタテガイの加工により発生する産業廃棄物の処理は、生産地域の課題として重くのしかかる。ホタテガイの殻は、カルシウムに富むことから、学校で使うチョークやトラックラインを引く粉に加工されるが、高価なことがネックとなり需要の拡大には至っていない。また、粉砕して、主成分の炭酸カルシウムを精製し、酢酸を加えた酢酸カルシウムは環境に全く影響を与えない融雪剤として注目されてはいるが、コストが数倍になるため主要道路や国道などの一部道路に利用されるに留まっている。しかし近年、青森県の八戸工業大学の研究により、貝殻を粉末にして特殊な熱処理を施すと殺菌、消臭、除菌等の様々な機能があることがわかってきており、幅広い応用が期待されている。工業利用は、ホタテセラミックや、ホタテタイルなど粉砕したものを特殊な処理にて固めて歩道のタイルなどに利用する。このタイルは水を通すので歩道が水浸しにならない優れた素材である。粉砕した粉は石灰の代わりの土壌改良剤としても利用できる。しかし、コストの面からまだまだ一般的な利用には至っておらず、多くは産業廃棄物として埋め立てなどの方法により処理されている。過去に、海に向かって練習ができるゴルフボールを貝殻の粉末から作製したアイディアマンもいたが、廃棄物処理法に抵触する恐れがあるとして製造を差し止められている。近年では殻を土壌改良剤やセラミックやセメント等の工業原料として使用する技術が開発されつつある。堆肥などに加工されていたが、最近、最終処分場に持ち込めないほどの重金属(主にカドミウム)や砒素を含有する例が発見され、堆肥としても使えず、産業廃棄物としても処分が難しい状況になっている。焼却法による回収では重金属類が気化し外部に排出される為、近年では電気分解や化学処理によって重金属を回収する方法が開発されつつある。ヨーロッパではホタテガイ類(ヨーロッパホタテ[学名:]を主とする近縁種群)は豊穣の象徴としてギリシア神話の女神ウェヌス(ヴィーナス)とともに描かれる(■画像-1/-2)。また、聖ヤコブの象徴(■画像-3)としても知られ、この聖人の聖地であるサンティアゴ・デ・コンポステーラ(スペイン)へ向かう巡礼者たちは、ホタテガイ類の貝殻(■画像-4)を身に着ける風習を中世以来現代まで続けている。フランスではヨーロッパ産のホタテガイ類を「聖ヤコブの貝 ()」と呼ぶ(#フランス語名の節も参照のこと)。
出典:wikipedia
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