鍵盤ハーモニカ（けんばんハーモニカ）は、楽器の一種。ハーモニカと同じく金属のフリーリードを呼気で鳴らす鍵盤楽器である。ピアノのような鍵盤が並んでいるが、ハーモニカの一種である。鍵盤と連動したバルブの開閉によって、特定のリードを確実に演奏することが出来るが、ハーモニカと違い吸気で鳴らすことは出来ない。「ピアニカ」「メロディオン」などはメーカーの商標名であるが、通称として一般的に普及している。略して「ケンハモ」「鍵ハモ」「鍵ハ」などと称する場合もある。息を吹き込み金属製のフリーリードを鳴らして演奏する鍵盤楽器は、1829年にイギリスで発明されたシンフォニウム(コンサーティーナの原型)など、19世紀から存在した。現代に近い形状をもつ鍵盤ハーモニカは、1950年代末にドイツのホーナー社が開発した。日本では1960年代初頭から普及した(詳しくは「メロディオン」と「ピアニカ」を参照)。当初は教育楽器として広まったが、1970年代にキーボード奏者であるオーガスタス・パブロがこの楽器を本格的に取り入れて以来、世界各地のプロの音楽家の演奏でも使われるようになった。鍵盤楽器なので、初心者でも安定した音程を出すことができ、旋律も和音も演奏できる。またハーモニカと同様、息づかいを加減することでメリハリのきいたダイナミックな音楽表現が可能である。アコーディオンなど他のフリーリード鍵盤楽器と比較すると、鍵盤ハーモニカは、蛇腹の機構がないぶん、軽小で取り回しが楽であり、習得も容易で、価格も安く作ることができる。また座奏や立奏、独奏や合奏など、使えるシーンも幅広い。日本では、鍵盤ハーモニカと言うと、幼稚園や小学校低学年の一斉授業や鼓笛隊などで使う教育楽器というイメージが強いが、実は豊かな表現力をもち、大人の奏者やプロの演奏家も使う本格的な楽器である。鍵盤の形状による分類　その他、音域による分類(アルト、ソプラノ、バスなど)や、鍵数による分類(24鍵、27鍵、32鍵、37鍵、44鍵など)などもある。また、手に障がいをもち普通の鍵盤を弾けない子供のために、楽器メーカーが世界で1台だけの特注品の鍵盤ハーモニカを作ることもある。。　なお、鍵盤ハーモニカは全て｢右利き」用であり、「左利き」用のモデルはほとんどない。専用の吹き口（唄口、パイプ）から楽器の本体に息を吹き込みつつ、手の指で鍵盤を操作して演奏する。演奏の姿勢は多様である。「平置き演奏」は、楽器を横向きにして机や膝のうえに置く。オルガンやピアノと同様、目で鍵盤を見ながら両手で弾くことができる。「立奏(片手弾き)」は、楽器を縦向きにして、左手で楽器の本体を持ち、右手で鍵盤を弾く。「両手弾きの立奏」は、熟練した演奏家の一部が得意とする高度な演奏技術で、楽器を縦にしてストラップで体に固定し、左右の手で鍵盤を自在に弾く(左手は逆手)。。その他、「立奏の両手弾きで1人で2台の鍵盤ハーモニカを同時に演奏する」、「メロギター(1人で鍵盤ハーモニカとギターを同時に演奏する)」、「手ではなくおでこを使って弾く」など、演奏家が独自の工夫をこらしたユニークな演奏スタイルも多い。楽器本体と奏者の口の距離の関係上、平置き演奏では卓奏用パイプ（ホース状）を、立奏では立奏用パイプ（I字状あるいはS字状）を用いることが多い(立奏でも卓奏用パイプを使用する奏者もいる)。鍵盤ハーモニカのメーカーは、少なくとも10ヶ国20社以上にのぼる。日本でよく見かけるのは、以下のメーカーの製品である。鍵盤ハーモニカでは商標の普通名称化が顕著であり、楽器メーカーの登録商標にすぎない「ピアニカ」や「メロディオン」などが、あたかもこの楽器全体を指す普通名称のように使われてしまう傾向がある。例えば、鈴木楽器製作所の製品である「メロディオン」を指して「ピアニカ」と呼ぶのは誤りだが、一般人が使う日本語ではそのような誤りがまかり通っている。Jタウン研究所が行った都道府県別アンケート調査（総投票数606票、2015年9月29日 - 10月20日）の結果によると、全国的には、「ピアニカ」派が71％で圧倒的多数、「鍵盤ハーモニカ」派が16.5％、「メロディオン」派が11.6％、その他が1パーセントであった。この比率は地域により差があり、新潟県では「メロディオン」派が80％を占め、沖縄県では「鍵盤ハーモニカ」派が100％を占めた。NHKの番組では「商品名はNG」という原則がある。「ピアニカ」は特定の企業の登録商標であるため、なるべく「鍵盤ハーモニカ」と言い換えられる。1996年、演奏家の「ピアニカ前田」氏がNHKの番組にゲストで登場したときは、司会者も前田氏もぎこちなく「鍵盤ハーモニカ」という呼称を使った。また芸名の「ピアニカ前田」については、「鍵盤ハーモニカ前田さん」とは呼べないため、やむなく「ピアニカさん」と呼んだ。ただし近年は、NHKの公式サイト内でも「ピアニカ」という名称を楽器名として使用する例も散見されるので、NHK内の自主規制は以前よりゆるんでいる可能性もある。「ピアニカ」という商標は、普通名詞としても使われるため、芸名に「ピアニカ」を含む鍵盤ハーモニカ奏者がヤマハのピアニカ(商標名)を使用しているとは限らない。例えば、鍵盤ハーモニカ奏者の「ピアニカ彩」氏はヤマハのピアニカを愛用しているが、スズキの「バスメロディオン　B-24C」や、スズキの鍵盤笛「アンデス25F」等も使用する。「ピアニカ前田」氏は、主にスズキのメロディオン(商標名)を使用している(2016年現在)。英語では、ダイアトニック・ボタン・アコーディオン(押引異音式の小型の手風琴)を指して「メロディオン」melodeonと呼ぶ。鈴木楽器製作所の商標「メロディオン」melodionは、日本語のカナ表記では同じになってしまう。そのため、日本のmelodeon奏者は、しばしば「私の楽器は鍵盤ハーモニカではありません」と説明することを余儀なくされる。クラシック音楽の指揮者は、楽団の全種類の楽器を弾ける必要はないが、全ての演奏家の気持ちを理解する必要があるので、管楽器の演奏家の気持ちを理解するため鍵盤ハーモニカを愛用する指揮者もいる。鍵盤ハーモニカの演奏は、高齢者の介護予防や認知症予防に著効があるという説があり、音楽療法や健康福祉の現場などでも使われている。2015年12月、福岡県古賀市は、鍵盤ハーモニカ400台（211万円）を導入し、市の健康づくり拠点施設に配備し、ニュースとなった。2013年3月3日、静岡県で行われたイベントで、鍵盤ハーモニカを全員で5分以上演奏するギネス世界記録に挑戦し、「鍵盤ハーモニカ同時演奏の最多人数」を更新した。日本(海外で活躍する日本人も含む)海外

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