不正軽油(ふせいけいゆ)とは、軽油に課せられる軽油引取税の脱税を目的として、軽油に灯油や重油をまぜた混和軽油や、灯油と重油をまぜて、濃硫酸や苛性ソーダなどの薬品により脱色・クマリン除去処理を行って製造した燃料などをいう。原則として、軽油引取税は軽油にのみ賦課されるものであり(例外については軽油引取税の項目を参照)、軽油と性状の類似するA重油や灯油に対しては通常賦課されていない。しかも、ディーゼルエンジンの燃料としては必ずしも軽油の性状を満たしている必要はなく、A重油や灯油等でも稼働には問題がないとされる。このため、軽油引取税の古典的な脱税手法として、軽油とA重油・灯油を混和したもの・A重油と灯油を混和したものなどを軽油代替の燃料として用いることがしばしば行われる。このような燃料を混和軽油と言い、A重油・灯油等を単体でディーゼル車に給油する場合等をも含めて不正軽油と呼ぶ。不正軽油の検出・摘発を容易にするため、A重油や灯油には、識別剤としてクマリンが添加されている。クマリンの紫外線に対する蛍光反応により、A重油・灯油の混入を判別するためである(灯油やA重油が混ざっていれば、ブラックライトで照らすと黄色く光る。純粋な軽油だけなら絶対に光らない)。この検出を避けるために、クマリンを硫酸により分解した上で、不正軽油を製造・密売する脱税手法が近年増加している。脱税自体が違法行為であるが、このクマリン分解時に排出される硫酸ピッチと呼ばれる廃棄物が、未処理のまま密造現場付近に不法放棄されることも社会問題化している。硫酸ピッチは、クマリンと反応しきれなかった硫酸を含有するため強酸性であり、また石油由来の有害成分を含む。このことから、2004年(平成14年)税制改正で、不正軽油に対する脱税取締体制の強化が図られる一方、廃棄物処理法の改正等により、硫酸ピッチの廃棄に関する規制・罰則も強化された。また、硫酸ピッチの問題以外にも、不正軽油を用いた場合にディーゼルエンジン内部で不完全燃焼が発生しやすくなり、排気ガスの環境負荷が大きくなること、ディーゼルエンジンの損傷を招くことも指摘される。こうした手段で製造された粗悪な燃料が、「軽油」と偽って市中で格安で販売されることがある。仕入れた不正軽油を早期に売り切るために、近隣の給油所より大幅に安く販売されている例が多い。安価であることがただちに不正軽油であることを意味するわけではないが、石油販売元売会社と連帯しての品質を保証する旨の表示がない場合には疑わしい。なお一般に、販売店が不正軽油の仕入れ元を明かすことはない。不正軽油の流通は、その目的である軽油引取税の脱税を生じるばかりでなく、製造時の副産物として生じる硫酸ピッチの不法投棄や、その劣悪な品質から生じる不完全燃焼による大気汚染など環境面での悪影響をも生じる。不正軽油(特に重油を混ぜたもの)は、ディーゼル車の排気ガス中の有害物質を増加させ、環境や、人体の健康を損なうとされている。いずれも日本においては軽油引取税の脱税行為にあたり、税務当局の取り締まり対象となる。不正軽油の品質管理はずさんである場合が多い。従って不正軽油の使用によって金属製のエンジンに損傷が生じ、不正軽油の使用で得られる経済的利益を、修理などによる経済的損失が上回ることもある。例えば、正規の軽油を使用する前提で設計されているディーゼル・エンジンにとって、不正軽油は硫黄分・炭素分・粘性度・セタン価・水分・酸・アルカリなど設計上想定外の性状・成分から成る燃料であるため、とりわけ燃料ポンプ、燃料フィルターの不調を招きやすい。各地方運輸局や各都道府県が不正軽油対策協議会を設置し不正軽油の取り締まりに当たっている。また環境保護の観点からも不正軽油に対する取締りが行われている。
出典:wikipedia
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