地母神(じぼしん、ちぼしん)、母なる神(ははなるかみ)は一般的な多産、肥沃、豊穣をもたらす神で、大地の豊かなる体現である。「大地の母」として描かれる。日本神話においては国土を産みだしたイザナミがそれに相当するが、各国の前文明期の母権社会で形成された絶対的な地母神ではなく、男性であるイザナギと協力し国産み、神産みを成すが、火の神を生み落とす時に火傷を負い死亡してしまったとなっており、後の父権社会からみた母権社会への評価のような構造となっているのが変則的である。母なる神は多くの社会において深く崇められてきた。ジェームズ・フレイザー(金枝篇の著者)や彼に影響された人々(ロバート・グレイヴズや マリヤ・ギンブタス)は論を進め、全ての欧州とエーゲ海沿岸地域の母神信仰は新石器時代に遡る、先インドヨーロッパの (Pre-Indo-European) 母系社会を起源とするというところまで行った。父なる天を信仰する遊牧民が母なる大地を信仰する農耕民を力ずくで征服したとする説である(→天空神#概念の歴史)。メソポタミアの各地で、起源を同一とするとみられる一連の地母神がみとめられる。すなわちなどである。イシュタル、アシュトレト、アスタルテは、祭祀の上と言語学の上から、同一の神格がそれぞれの地方で信仰されたものとみられる。彼女らは月神であり、また神々の母と呼ばれた。フェニキアのアスタルテは、ギリシアに伝わり、アプロディーテーとなり、キプロスを中心として信仰された。端的な地母神として世界と神々の母であるガイア(ゲー)が認められる。また小アジアのキュベレーやクレタ島のレアーも代表的な地母神である。小アジアのアルテミス祭祀はおそくギリシア人の神話体系に入り、そこでは狩猟を好む処女神とされたものの、本来は森の女神として地母神性格をもっていたと推察される。小アジア、エペソスに伝わった多数の乳房をもつ神像がそのことを示唆する。神話においてゼウスの妹にして妻とされるヘーラーは、おそらく先住民族の地母神であったという説がある。この説にしたがえば、ゼウスの愛人とされる人間の女やニュムペーなども、本来はそれぞれの地方の地母神となる。こうした原初的な地母神や狩猟と深く結びついた地母神に対し、デーメーテールとその娘ペルセポネーの神話は、農耕文化の周期的な季節の交代に特徴付けられた大地観をあらわしている(デー・メーテールとは「母なる大地」の意。死と再生の神参照。)。エーゲ海沿岸、アナトリア、古代中近東の文明圏では母なる神はキュベレー(ローマではマグナ・マーテル、「大いなる母」)、ガイア、レアーとして崇拝された。古典ギリシアのオリュンピアの女神達も母なる神としての性格を多分に備えていた。ヘーラー、デーメーテール、アテーナーもそうである。クレータ島では母なる神の一属性として「百獣の女王」(Potnia Theron。キュベレ#外部リンク参照)があげられる。その性質は時として女狩人アルテミスに属されることもある。エペソスで作られた古代のアルテミス胸像はこの点をある程度とどめている(→#ギリシアの地母神)。スカンディナヴィアでは女神は青銅器時代 (Nordic Bronze Age) から崇拝されていた。後にゲルマン神話のネルトゥスとして知られることになる。ほかにも地母神と見られる女神が神殿に祭られている。しかしネルトゥスのほうはニョルズという男性神に変化している。ヒンドゥーの文脈では、母性への崇拝は初期のヴェーダ文化かそれ以前まで辿れるだろう。今日では、種々の女神(デーヴィ)がみられる。それらは世界の創造的な力を表現している。マヤやプラクリティのように、神々の大地をおさめる力である。その場所から宇宙全体の存在が投影される。よって、この女神は大地であるばかりではない。地母神という側面はパールヴァティーが補っている。ヒンドゥー教の姿の一つであるシャクティ主義はヴェーダーンタ、サーンキヤ及びタントラ教ヒンドゥー哲学と密接な関係がある、徹底した一元論である。バクティ・ヨーガの伝統も深くこれに関係している。シャクティという女性的なエネルギーがヒンドゥー教における現象宇宙のあらゆる存在や動きの背後にある。宇宙そのものはブラフマンであり、これは不変の、無限の、内在的であり超越的な、「世界精神」である。男性的な能力は女性的なダイナミズムによって実現され、そのダイナミズムは様々な女神によって体現され、その女神は元を正せば一人の母神である。鍵になる文書がデーヴィー・マーハートミャである。これは初期のヴェーダ神学、新興のウパニシャッド哲学、発展中のタントラ教をまとめて、シャクティ教を賞賛する注釈としたものである。自我、蒙昧、欲望といった悪魔が魂をマーヤーに呪縛する(心霊的にも、肉体的にも)。それを解き放てるのは母マヤ、シャクティ彼女自身だけである。このため、内在する母Deviの焦点を強力に、愛情を持ち、自己を溶かし込むような集中力をもって絞り込み、"シャクタ"(シャクティ信徒をこう呼ぶこともある)を集中させると、時空と因果律の奥に潜む真実を知る事ができ、輪廻からの解脱ができるのである。聖母マリアを母なる神であると考える人々がいる。彼女は母性的な役目を果たしているだけでなく、人を護る力をふるい、神との仲裁役を果たしているからである。プロテスタントはカトリックを「マリアを女神として見ている」と非難するが、カトリック側はそれを否定している。地母神の典型例はケルト神話に見られる。ダヌはケルトの神殿トゥアハ・デ・ダナーン(古アイルランド語でダヌの民の意)の神々の先祖であり、その名の元になった古い女神である。生命の源であり、火、竈、命、歌といったものの神である。母なる神は豊穣の女神、戦いと破壊の女神といった性格で定義されるが、生命を産み、奪うという性質が日本神話のイザナミと同様一般的な要件となる。ケルト神話では、女王メズヴ (Medb) がその性格を持っている。メズヴは戦を能くし、『クアルンゲの牛捕り (Táin Bó Cuailnge) 』の中で指導的な役割を果たす。この点で、戦の女神の性質を継いでいる。メズヴは後に豊穣神としても扱われるようになった。エウヘメロス的な豊穣神としての性格は常に「親しい腿達」(friendly thighs) と妥協している点に示され、また浮気な性格でも有名だった。さらに妖精の女王マブと混淆していった。メイヴ(メズヴの英語読み)の名はウィリアム・シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』にも、夢にからんだマキューシオの独白の中に現れる。そこではメイヴは処女を妊娠させる一種のフェアリーとしての役割を負っている。彼女が小人と妊娠に関係していることは重要である。ケルトの神話の中では、小人を飲み込むと妊娠するという話が何回か出現する。現在、過去を問わず、世界中の文明で「母なる神」は女性の像と融合し、結びついてきた。母なる神は現代のウィッカ(Wicca)らや復興異教主義者(Neo-Paganism)らによっても崇拝されている。これらのグループでは地母神は母なる大地と捉えられている。
出典:wikipedia
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