ブロッホの定理(ブロッホのていり、Bloch's theorem)は、物理学の法則の1つ。1928年に、フェリックス・ブロッホによって提出された。エネルギーバンドの計算をする場合に、結晶の並進対称性に関する重要な定理である。並進対称性とは、結晶が基本格子ベクトルだけ並進すると、自分自身と重なり合うことである。周期ポテンシャルformula_1 中の一電子の量子力学的なハミルトニアン演算子をformula_2とする。すなわち、このとき、格子が3方向に基本格子ベクトルformula_4, formula_5, formula_6を持ち、格子ベクトルformula_7 をformula_8 （formula_9, formula_10, formula_11：整数）とすると、formula_2 の固有関数として次のような形の関数を選ぶことができる。これがブロッホの定理である。また、ブロッホの定理を満たす関数をブロッホ関数といい、結晶中の電子の一電子状態を表すために用いられる。ブロッホ関数の一般形は、formula_14 を格子の周期性を持つ関数formula_15 として、と表される。簡単のため1次元で考える。電子の固有関数formula_17 に対するシュレディンガー方程式は、である。ここで、formula_19 は電子の運動量演算子、formula_20 は電子の質量、formula_21 は電子に対するポテンシャルエネルギー、formula_22 はエネルギー固有値である。結晶は原子間の距離formula_23 で規則正しく並んだ1次元の結晶を考えると、ポテンシャルは周期性を持ち、formula_24 であるので、formula_23 だけ座標をずらした波動関数も同じシュレディンガー方程式を満足する。ハミルトニアンは原子間の距離formula_23 だけの並進操作に対して不変であり、formula_28 となる。ここで、原子間の距離formula_23 だけの並進を行う操作を表す演算子をformula_30 とすると、となる。すなわちformula_30 とformula_2 は互いに交換することができ、同時固有関数を持つので、を満たすような固有関数を選ぶことができる。ここで、formula_22, formula_38 はformula_2, formula_30 の固有値である。1次元のとき、周期をformula_41 とする周期境界条件をつけると、formula_41 の並進で元に戻るので、となる。また、(1)式より、となる。ここで、(2)式と(3)式を比べると、となるので、と表せる。ここで、周期境界条件より、formula_48 （formula_49：整数）となり、formula_50 であるので、となる。この式を(4)式に代入すると、となる。よって、formula_38 の値を(1)式に代入すると、となる。3次元の場合も同様に、格子が3方向に基本格子ベクトルformula_4, formula_5, formula_6を持ち、格子ベクトルformula_7 をformula_8 （formula_9, formula_10, formula_11：整数）とすると、となり、ブロッホの定理が証明された。また、formula_64によって定義した関数formula_14 は、(5)式より、となり、格子の周期性を持つ関数であることが示される。このことより、ブロッホ関数の一般形は、formula_14 を格子の周期性を持つ関数formula_15 として、と表されることが証明された。バンド構造は、波数を変数としたときに、ある波数を持つ電子がどのようなエネルギー準位を持っているかを示すものである。とびとびの番号の指標formula_49 で指定されるエネルギー準位formula_71 は、波数ベクトルformula_72 に応じて連続的に変化し、そのとりうる値の領域をエネルギーバンドと呼ぶ。原子配列のようにポテンシャルが規則正しく周期的に変化する結晶では、エネルギーバンドが存在する。

出典:wikipedia