ヨハン・ハインリヒ・フォン・チューネン(Johann Heinrich von Thünen、1783年6月24日 - 1850年9月22日)は、ドイツの経済学者・地理学者。代表的著作『孤立国』(原題『農業と国民経済に関する孤立国:穀価、土地肥力及び租税が農業に及ぼす影響に関する研究』"Der isolierte Staat in Beziehung auf Landwirtschaft und Nationalökonomie : Untersuchungen über den Einfluß, den die Getreidepreise der Reichtum, des Bodens und die Abgaben auf den Ackerbau ausüben."、1826)によって、経済地理学における先駆的な業績を残し、フェルナン・ブローデルに「19世紀の最も偉大な経済学者として、マルクスと並ぶ位置を占める」と評せられた。チューネンは北ドイツのメクレンブルクの地主であり、『孤立国』の第1巻では、地代理論に関連させて、空間の経済学の最初の重大な論法を開発した。その分析的なアプローチに比べれば、土地利用のパターンの予言は、それほど重要ではない。チューネンは数学的に厳密な方法で限界生産力理論の基礎を開発した。公式に要約すれば、R=Y(p-c)-YFmである。ここでRは地代、Yは土地1単位当たりの生産量、cは生産物1単位当たりの生産費、pは生産物1単位当たりの価格、Fは運送費、mは市場への距離を表す。工業化の前に作られたチューネンの農地モデルは、以下の単純化の仮定を設けた:1つの土地の利用法は、市場への輸送費と、農民が支払いうる地代(これは収穫(ここでは一定に保たれる)によって決定される)との関数である。モデルは農業活動の4つの同心円の輪を作り出した。都市に隣接した酪農業および集約農場。野菜、果物、牛乳やその他の乳製品は市場で速やかに取引を行わなければならないため、これらは都市に隣接して生産されるだろう。材木や薪は、燃料や建築資材のために、第2の輪の中で生産されるだろう。木材は暖房や調理の燃料のために非常に重要だが、非常に重く、輸送が難しいため、都市に近接したところに位置する。第3の帯域では、穀物のような広範囲の畑作物から成る。穀物は乳製品より長持ちし、燃料より遥かに軽く、輸送費を減少させるため、都市からより遠い所に位置することができる。牧場は最後の輪に位置する。動物は自己輸送できるため、都市から遠くても飼育することができる。動物は、販売や屠殺のために中央の都市まで歩くことができる。第4の輪の外には荒地が横たわるが、これは、いかなる種類の農業生産にとっても中央の都市からの距離が大き過ぎる。チューネンの輪は、産業革命が地面の上のパターンを汚す前の欧州の経済史と欧州の植民地主義を解明することで、フェルナン・ブローデルの『文明と資本主義』のような経済史に対して特に有用であることを示した。経済学では、チューネンの地代は資源の空間的変化や位置によって生み出された経済的地代である。それは「生産の限界で得られる物の上に得られる物」である。彼の「孤立国」の理論の中で、彼はアダム・スミスの「経済人」、即ち農民は彼の農場から上がる利益(「経済地代」)を最大化することを期待する、という着想から出発した。チューネンは地主として、そのような収益は土地の表面の最適な利用法と輸送費とに依存することを知っていた。利益に対するこの2つの変数の影響に専念するとき、他の要因を取り除くことは、均質な--そして孤立した--国、即ち中心にあるただ1つの支配的な市場を持った、国際関係の無い、円形の、全く拡大することの無い平面に帰着する。穀物は、固定した市場価格を持つ唯一の農産物である。周囲の田園地帯の経済は、各産業がそれによって最適な利益をもたらすようなやり方による経済行動に応じて再配置されなければならない。輸送費は市場からの距離および生産物の重量に正比例する。1単位面積の農場から生じる収益(位置地代)は市場からの距離の増加につれて減少する。商品の最低価格は位置地代、輸送費および固定生産費によって計算される。利益はこのとき、費用と固定市場価格との差額である。位置地代とはチューネンによって彼の議論の中で用いられる用語だが、土地の価値と等価であると理解されている。それは、農民が損失を出すことなく、土地を使用するために支払うことのできる最大量に相当する。それは以下の方程式で定義できる:L = Y(P - C) - YDFここで、例えば、1,000t/km²の生産量、市場において100DM/tの固定価格での生産物の位置地代を取り上げよう。生産費と輸送費はそれぞれ、50DM/tと1DM/t/kmとする。位置地代は市場で50,000DM/km²、市場から10kmで40,000DM/km²、市場から30kmでは20,000DM/km²にしかならない。市場からの距離が増大するにつれて位置地代は下落するので、各農民が農地に対して自発的に支払おうとする金額は縮小し、土地の価格は結果として下落するだろう。チューネンは、作物の作付けは都市からのある距離内においてのみ有益である、と結論を下した。それを超えると、距離の増大により輸送費もまた増加するか、または、他のより大きな生産量やより低い輸送費を持った生産物があったならば、土地のコストがあまりに高くなる。市場(都市)からある距離に達すると、穀物の生産は利益を上げられなくなる。異なった生産性を持つ生産物(牛、木材、穀物、卵、牛乳など)についてチューネンが計算したように、利益がゼロへ落ち込むか、他の作物によって得られる利益が高くなるからである。各生産物にとって、その生産が有益であるような市場からのある距離が存在する。チューネンは輸送費を直接市場に帰したので("Luftlinie" = 空中線)、環状の土地利用帯--チューネンの輪--が発生する。これらの生産物を作る農民は、互いに競争し、彼ら自身の作物の位置地代曲線に従って、市場の周りに彼らの作物を同心円状に植える。その重量のために、その重量や距離に関連して高い価格と高い輸送費を持った低い生産量の生産物は、より低い輸送費を持った生産物に比べて、市場に近くより高い位置地代を持つだろう。位置地代は、ある耕作のための土地の使用に対して人が払い得る量の最高であり、市場におけるその競争の相対的な指標である。地理学における他の多くのモデルのように、チューネンのモデルはその限定的性質から頻繁に批評された。しかし、そのモデルの基礎的条件は、それぞれの場合の現実のわずかな修正により近似させることができた。円形のパターンはただ1つの市場と中心から走る排他的な輸送費の勾配に帰することができるが、これは多くの考え得る幾何学的な初期状態のただ1例に過ぎない。もし他の自然の風景や輸送ルートが存在したならば、土地利用帯は縞状に形成されるだろう。もしいくつかの市場が存在したならば、利用帯のグループが各市場の周囲に形成されるだろう。この論に対する正当な反論は、いかなる生産利潤もないことに対しての論及である。チューネンの理論では、異なる農業的利用は、その生産物特有の供給/支出関係から生じる最適な位置をめぐって競争する。競争力は位置地代を通じて間接的に測定可能になる。しかし、生産費とその位置特有の輸送費を控除した後は、市場利益はもはや残らない。チューネンのモデルは農民たちの間での完全な自給自足という考えに通じる。チューネンの「経済地代」という着想は--他の特性を無視して--専ら経済的に合理的な知覚に支配された、帯域の利用を説明することを試みた。可能な消費者が最終的に、位置の選択について決定的な役割を演ずる。それと同時に、可能な提示の利用域分割に通じる、すべての潜在的位置の評価が解き放たれる。しかし、この単純に展開された空間・レストラン・モデルは、費用に打ち勝つ空間の変化に敏感に反応する。しかしそれにもかかわらず、これは地理的な問題や方法論において、その普遍性により高い価値を持っている。
出典:wikipedia
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