フリーエージェント(Free Agent)とは、所属チームとの契約を解消し、他チームと自由に契約を結ぶことができるスポーツ選手のことである。FAと略す。広義には自由契約選手を指すが、近年は狭義として特別な自由移籍の権利を持つ選手を指す言葉として使われる。また、無制限フリーエージェント(Unrestricted Free Agents、略称UFA)と制限付きフリーエージェント(Restricted Free Agents、略称RFA)の2種類が存在し、リーグによってはUFAのみの場合と、両方が併存する場合がある。北米プロスポーツにおいてフリーエージェント制度が誕生した背景には、19世紀から保留制度に基づく条項()によって選手側の自由意志による移籍が厳しく制限されていた事実がある。これは、かつてシーズン中に選手の移籍が横行し、流出過多に伴う不均衡の発生によってファン離れが起こり、興行が成り立たなくなる状況に陥ったことを受け、オーナーたちの間で競業避止の協定が結ばれたことに由来する。後に保留条項が強化され、契約期間満了後もチーム側に選手の保留権が認められるようになると、選手の引き止め目的などに伴う年俸の高騰は抑制されたが、一方で選手が移籍する手段はチームが保留権を放棄する(自由契約)、チーム間による保留権の取引(トレード)、あるいは条項の効力が及ばない他の競技団体への移籍に限られることになった。この結果、選手は「奴隷条項」とも称されたこの保留条項のもと特定のチームに拘束され続け、不利な立場での契約交渉を強いられ、あるいは物のように取引される状況が長きにわたって続いたことから、選手たちは制度の撤廃や改善を訴え、幾多の司法判断や労使交渉を経て、にまずMLBとNBAでフリーエージェントの権利を勝ち取ることになる。一方、保留制度に一定の妥当性を認める意見も少なからず存在し、選手の獲得や育成に費やされた資金の回収や、新しい戦力の補充・育成などを考慮に入れて、権利獲得までの期間や移籍に伴う補償などが設定されている場合もある。無制限フリーエージェント(UFA)とはチームに所属していない選手を指す。チームから解雇された選手、契約期間が満了した選手、ドラフトで指名されなかった選手などが該当する。通常こうした選手はいずれのチームとも新たな契約を結ぶことができる。制限付きフリーエージェント(RFA)とは選手はいずれのチームからも新たなオファーを受けることができるが選手の所属チームが同等以上の条件で引き留めを行ったり、選手を手放す代わりにドラフト指名権や移籍金などを補償でもらうことができるようルール化されているものがある。北米のメジャースポーツのうち、NFL・NBAではUFAとRFAが明確化されており、単にフリーエージェントと呼ぶ場合、通常は前者を指すことになる。日本においては自由契約=UFA、フリーエージェント=RFAとほぼみなされる。フリーエージェント制度の起こりは、メジャーリーグベースボール(MLB)においてである。にモントリオール・エクスポズのデーブ・マクナリー投手とロサンゼルス・ドジャースのアンディ・メサースミス投手が球団側から提示された契約条件に不満を持ち、契約書にサインしないまま(保留条項に従い)同チームで1シーズンをプレーした後「以降、球団側に自身を拘束する権利はなく、他球団との契約交渉は自由にできる」と主張したことに始まる。1975年12月21日に第三者による調停委員会の主任を務めるピーター・ザイツによる仲裁で、2人は「自由契約選手である」という裁定が下った。翌1976年2月13日にジョン・オリバー連邦地裁判事もこの裁定を支持した。経営者側が野球選手を縛ってきた制限事項が廃止されることになり、MLB機構側とMLB選手会との話し合いの結果、フリーエージェント制度が生まれた。選手は、MLB在籍期間(MLS = Major League Service)が6年間に達するとFA権を得る。MLSはレギュラーシーズン中、その選手がアクティブ・ロースター(故障者リスト登録中期間や各種出場停止期間も含む)に登録されていた日数をもとに算出され、172日間でMLS1年(MLS=1.000)換算となる。つまりMLS=6.000に相当する1032日間のアクティブ・ロースター登録実績が必要になる。FA選手はMLB選手会から公表され、ワールドシリーズ終了翌日から5日後に全球団との契約交渉が可能となる(それまでの5日間は、選手の前所属球団に独占交渉権が与えられる)。また、『マイナーリーグFA』という制度もあり、40人枠に入れなかった期間(つまりマイナー契約期間)が1032日間に達した選手が権利を得る。マイナーリーグFAとなった選手とメジャー契約しても構わないため、マイナーリーグでの飼い殺しを防ぐ役割も果たしている。MLBで言うフリーエージェントは、言葉の指す意味合いが日本プロ野球とは異なる。現球団との契約期間を満了した選手や、解雇やノンテンダー(後述)で契約解除となった選手も全て『FA(フリーエージェント)』と表現される(そもそも「Free Agent」を日本語訳したものが「自由契約」である)。また、日本プロ野球でみられる『FA権を得ながら、権利を行使しない選手』は基本的に皆無である。このためシーズンオフにFAとなる選手は多く、FAによる移籍は日本プロ野球と比べて盛んである。近々にFAとなる主力選手を抱えている球団は、FA後に他球団との獲得競争にさらされ、選手の保有権を失うリスクを背負っている。その対策として、更なる即戦力補強を必要としている球団へその選手をトレードし、見返りに選手や金銭を獲得する場合がある。特にシーズン途中で事実上ポストシーズン出場争いから脱落した下位球団では、FAの近い自軍主力選手をトレード要員として利用し、どれだけ有望な若手選手を引き抜いて来られるかがGMの腕の見せ所ともいえる。初めてMLBと契約した選手は原則、上記のようにFA権取得まで少なくとも6年間を要する。しかし、特別に契約年数が切れた時点でFAになる条項を契約に盛り込む場合がある。日本プロ野球からMLBに挑戦する多くの日本人選手も、そのような条項を盛り込むことによってFA権の条件を満たさずにFAとなっている。ただし、あくまで日本など海外のリーグで実績を残した選手に対する慣例にすぎず、契約時にそのような条項を盛り込んでいないと、原則通りFA権を得るまで最低でも6年間かかる。そのような条項を入れておらず、契約満了後にFAにならなかった例として岡島秀樹がいる。また、そのような条項を入れない契約を不満として入団しなかった例として中島裕之がいる。年俸調停権を持つ選手に対し、期限(概ねウインターミーティング開始前となる12月上旬頃)までに球団が来シーズンの契約年俸を提示しなかった(Non-tender)場合、球団は保有権を失いその選手はFAとなる。これを『ノンテンダーFA』と呼ぶ。調停権は原則MLS3年で取得できるため、これによりMLB在籍6年未満の選手もFAとなる可能性がある。年俸調停権を持つ選手の年俸は成績にかかわらず上昇しやすい傾向にあるため、球団側が年俸に見合わない選手との調停を避ける目的でノンテンダーとされるケースも多く、その後改めて契約条件の交渉を行い再契約・残留に至るというケースも少なくない。FAとなった選手が他のMLB所属球団と契約した場合、一部のFA移籍に関しては、補償として流出元球団にドラフト指名権が与えられる。この点は現在まで変わらないのだが、その補償規定は2012年オフから大きく変更された。以前は、スポーツ統計専門会社イライアス・スポーツ・ビューロー()のランク付けで「タイプA」「タイプB」に分類されたFA選手が他のMLB球団と契約し、且つ流出元球団がその選手に対して事前に年俸調停を申請していた場合、選手のタイプと獲得した球団の順位に応じて移籍先球団からドラフト指名権を譲渡されたり、1巡目指名後(2巡目指名前)の補完指名権を与えられていた。2012年以降、選手のタイプ分けは廃止され、代わって補償対象となるのは「所属していた球団からクオリファイング・オファー(メジャーリーグ全体の上位125選手の平均年俸と同額の1年契約)を提示された選手」となっている。クオリファイング・オファー(以下QO)は、当シーズン中に所属チームを移籍しておらず、且つシーズン終了後にFAとなる自軍選手に対して球団が提示することができる。対象選手にQOを提示するかどうかは球団側に選択権があるが、前述の通り契約期間は1年のみで年俸も固定であり、球団や選手(代理人)側がこれらの契約条件を変更することはできない。球団がQOを提示できるのは、ワールドシリーズ終了から5日以内。QOを提示された選手はワールドシリーズ終了から12日以内に、QOの契約条件を受け入れて残留するか、拒否するかを決めなければならない。拒否すればFAとなり全球団と交渉可能になるが、拒否したうえでFA元球団と再契約することも可能。2015年までに延べ54人の選手がQOを提示されたが、2014年までは全選手が拒否。2015年に初めてコルビー・ラスムス、マット・ウィータース、ブレット・アンダーソンの3名がQOを受け入れ、規定額で契約延長した。QOを拒否してFAとなった選手が翌年ドラフト会議までに他のMLB球団と契約した場合、そのドラフト会議で指名権の補償が発生する。流出元球団は補完指名権(1巡目指名終了後に指名可能)を得て、獲得球団は持っているうちで最も順位が高いドラフト指名権を喪失する(流出元球団には譲渡されず、以降全体のドラフト順位が繰り上がる)。ただし、全体10位以内の指名権は保護されていて、10位以内の指名権を持っている時は、11位以降で最高順位の指名権を失う。2人以上のQO提示選手と契約した球団は順次、次に高い指名権を喪失し続ける。日本プロバスケットボールではbjリーグで導入しており、bjリーグが定める条件を満たした選手で前所属球団も含めていずれの球団とも選手契約を締結する権利を持った選手をフリーエージェントと称し、その権利を与える制度を「フリーエージェント(FA)制」という。残留を前提としつつ移籍の可能性に含みも持たせて権利を行使するケースが多いが、権利行使に伴い契約満了(解雇)に至るケースも存在する。よって、日本プロ野球とは違い、必ず雇用先が保障されるわけではない。あるシーズンのレギュラーシーズンにおいて80%以上の試合に出場選手登録(ベンチ登録)され、そのシーズンの数が累積で3シーズンに達すると選手はフリーエージェントの権利が発生する。ただし、出場選手登録試合数がレギュラーシーズンの80%に満たないシーズンがある場合は、それらのシーズンの出場選手登録試合数をすべて合算し、80%に達したものを1シーズンとして計算される。また、移籍(トレード)された場合、移籍元球団及び、移籍先球団での実績を通算する。レギュラーシーズン終了後、権利を取得した選手はbjリーグによって公示され、その公示された選手は、プレイオフ終了後から宣言期間内(ドラフト会議の約1週間前)に、所属球団を通じてbjリーグにFA権行使を宣言した上で翌日より交渉が可能になる(2008年はドラフト会議の直前までと規定されていた)。FA宣言選手として公示された選手のFA権再取得には、残留・移籍問わず2シーズン、80%以上の出場選手登録が必要。権利を行使しなかった場合は翌年に持ち越される。2009-10シーズンからは外国籍選手の仮保有権も認められたため、日本人選手同様のFA権が認められるようになる。FA宣言選手には年俸の他にサラリーキャップ対象外の一時金の支払いが認められる。前年基本報酬の50%が上限となる。直前のシーズンまで他の球団に在籍していたFA選手と翌年度の選手契約を結べるのは各球団10名までである。FA宣言前からその球団に所属していた選手はこれに含まれない。FA選手を獲得した球団は、移籍元に対して補償金を支払う。金額は移籍元での在籍シーズン数に基づき算出され、移籍元における基本報酬、または、移籍先での基本報酬に下表の係数を乗じて、高いほうの金額とする。2008年は一律で前年基本報酬の50%を支払っていた。NBAの場合他のリーグとは異なりFA権取得年数というシステムは存在しない。契約終了やNBAの権利放棄ウェーバーの手続きに従って解雇された場合、あるいはNBAドラフトの資格を有していたにも関わらず指名されなかった選手を総称してフリーエージェントと呼ぶ。新人の場合最長4年、新人以外も最長7年でFAとなる。RFAあり。制限付きフリーエージェント(Restricted free agent)。RFAの選手は、他球団が提示したオファーシートと同額の契約を、元球団が提示した場合、契約の優先権は元球団になる。元球団がRFA選手を引き止める事を一般に「マッチ(match)」と言う。選手をRFAにするには、球団は6月30日までに「クオリファイング・オファー」を提示する必要がある。他球団のオファーシートにサイン後、3日以内に所属していたチームがオファーシートと同額を提示すれば「マッチ」となり、元球団と選手は契約することになる。「マッチ」しなければ、サインした球団へ移籍となる。ドラフト1巡目選手が結ぶルーキー契約を4年終了した場合の5年目、またはリーグ所属3年未満の選手に制限が認められる。NFLの場合、FA権取得年数経過後に契約が切れた時点でフリーエージェントとなる。UFA(アンリストリクテッド(無制限)フリーエージェント)・RFA(リストリクテッド(制限付)フリーエージェント)の他に、球団側に拒否権のある「フランチャイズプレーヤー」「トランジションプレーヤー」という制度もある。また、契約満了前に契約更改をまとめたり、現契約を破棄して新しい契約を結ぶ等して、フリーエージェントにならないようにすることも可能である。NFLに4年以上在籍するとUFAの資格を取得する。契約が切れるとどの球団とも自由に契約ができ、それ以降は契約が切れるたびに何度でもFAになる。UFA選手は、7月22日までは自由に交渉ができる。しかし、6月1日に元球団が「テンダー・オファー」を提示していて7月22日までに新球団と契約しなかった場合、7月23日以降は元球団が独占交渉権を持つ。「テンダー・オファー」を提示されていなければ、完全に自由な交渉ができる。NFLに3年在籍し、チームとの契約が切れるとRFAの資格を取得する。RFAの場合、元球団に残留を実現するための権利が与えられる。まず、RFA選手は元球団から「クオリファイング・オファー」という1年契約を提示され、移籍の際に元球団への補償金額が決まる。「クオリファイング・オファー」がない場合、その選手はUFAとなる。そのRFA選手の獲得を希望する球団の「オファー・シート」にRFA選手がサインした場合、元球団は7日以内に、その「オファー・シート」と同等以上の契約を提示することで、移籍を阻止できる。この権利を「第一拒否権(Right of First Refusal)」と呼ぶ。もしそれを提示せずに移籍を許可した場合、「クオリファイング・オファー」次第で元球団は移籍先球団からドラフト指名権を受け取る。RFA選手が他球団と交渉できるのは、NFLドラフトの8日前まで。所属球団が第一拒否権を行使する期限はその1週間後、すなわちドラフトの前日である。「クオリファイング・オファー」分の金額は、サイン前であってもサラリーキャップに加算される。チームは1名のフランチャイズプレーヤー、2名のトランジションプレーヤーを指定することができる。チームは選手に対し、フランチャイズプレーヤーは同じポジションでの前シーズンの年俸トップ5選手の平均額またはその選手の前シーズンの年俸の120%、トランジションプレーヤーはトップ10の平均または前年俸の110%のうちの多い方の額でオファーを出し、他チームからのオファーに対して、7日以内に同じ条件を提示することで拒否権を発動できる。これらは、中心選手、人気選手をチームに引き留めるために利用される。NHLでは、選手のFA権取得可能年齢があり、これまでは31歳だったが、2007-08年のシーズン終了後に27歳に引き下げられる。新人選手は入団7年後、それ以外は4年後にFA権取得可能となる。RFAの場合、前年年俸の75%(クオリファイング・オファー)を提示することにより、元チームはその選手の権利を保有することができる。契約期限は12月1日とし、この期限までに契約できなかった選手は、同シーズンのNHLでプレーすることはできない。
出典:wikipedia
LINEスタンプ制作に興味がある場合は、
下記よりスタンプファクトリーのホームページをご覧ください。