永野 護(ながの まもる、1960年1月21日 - )は、日本のメカニックデザイナー、キャラクターデザイナー、漫画家。京都府舞鶴市出身。拓殖大学中退後、アニメ制作会社サンライズに入社。1984年放送のテレビアニメ『重戦機エルガイム』のデザイナーに抜擢されて注目を集め、以後アニメ・マンガ等のメカデザインを中心に活躍している。代表作に漫画作品『ファイブスター物語』(FSS)など。現在、株式会社EDIT代表取締役。1983年にサンライズに入社。リアルロボットアニメ制作に参加し、いくつかの作品でゲストメカデザイン(ロボットまたは通常の兵器)を担当する。その後『機動戦士ガンダム』シリーズの監督として著名な富野由悠季による新作アニメのデザインコンペに出したロボットのデザイン画が富野の目にとまり、1984年放送のテレビアニメ『重戦機エルガイム』においてメインデザイナーとして抜擢される。『ヘビー・メタル』と作中で呼称される『エルガイム』のロボットデザインは、それまでのリアルロボットアニメのデザインとは一線を画した斬新なものであった。それまでのリアルロボットアニメは“リアル”と銘打ってはいても、本物の兵器らしく見えるデザイン要素(リベットやパネルラインなど)を記号的に人型ロボットのデザインに当てはめた感じのデザインに過ぎなかった。だが『エルガイム』のデザインは、『ムーバブルフレーム』と呼ばれる内部骨格をロボットの内部に想定し、その上に各ロボットの外部装甲を重ねてゆくという発想でデザインがなされたものだった。上述したように、1984年放送のテレビアニメ『重戦機エルガイム』のメカデザインとキャラクターデザインが出世作になる。富野にデザイナーに抜擢された時、永野は24歳、サンライズに入社してわずか4ヶ月に過ぎなかった。前番組である聖戦士ダンバインが終了した翌週の1984年1月28日の同時間帯、翌週から始まる『エルガイム』の宣伝も兼ねた特別番組において永野は初めてテレビ出演することとなった。同番組では、番組放送中に永野が透明アクリル板にホワイトマーカーで特大イラストを完成させるというパフォーマンスを披露したが、描き始めたところで富野へのインタビューを中心に進行したが、永野自身は放置されたまま番組が終了の直前に未完成の状態で一瞬だけ放送されたという逸話がある。『機動戦士Ζガンダム』においては、モビルスーツのデザインを担当する。永野は初代ガンダムに登場したモビルスーツのうち、ゲルググ・ザク・ザクレロ等といったジオン側のデザインを好んでいると発言している。実際に、永野が『Ζガンダム』においてデザインしたモビルスーツは、Ζガンダムを除くと、すべてモノアイを搭載しており、ジオン的な特徴が見られる。またリック・ディアスに関して、後年「自分は『モビルスーツとはこういう物』と思ってデザインしたのに、皆から『こんなのモビルスーツじゃない』と言われた」と語っている。また、モビルスーツ以外に、戦艦アーガマ・グワンバン、リニアシート、ノーマルスーツなどのデザインも手がけている。さらに『Ζガンダム』の続編・『機動戦士ガンダムΖΖ』において、監督の富野によりメイン・デザイナーに指名された。しかし、永野のデザインした主役機ΖΖガンダムがスポンサーからの「ガンダムに見えない」という苦情により降板することになった。永野はメイン・デザインには関わらなかったものの、メカデザインに関与し、永野のデザインしたモビルスーツのいくつかが作中に登場している。後に『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』においても、メイン・メカデザイナーとしての誘いがあった。しかし、永野が提示したモビルスーツのデザインが独自の観点で発展させたデザインだったこと、他のスタッフが要求するものとあまりに食い違っていた事などから、再び降板した。永野は、この時デザインしたモビルスーツを一切公表していないが、Hi-Sガンダム、ナイチンゲールはνガンダム、サザビーの原型デザイン元になっている。1994年頃、富野から『聖戦士ダンバイン』シリーズの劇場版デザイナーとしてオファーを受けるが、企画の頓挫により実現しなかった(その時のメカデザインは、後に『ファイブスター物語』に登場するロボット兵器「モーターヘッド」(MH)の一つである「ファントム」に流用された)。その後、富野作品では1998年のアニメ『ブレンパワード』で、金属板の積層をモチーフにした斬新なロボットデザインを発表した。大のミリタリーファンであり、戦車など現実の兵器にも造詣が深く、永野のデザインはそれらより強い影響を受けている(詳しくは後述)。また、ファッションデザインを学んでおり、登場キャラクターのファッションにも強いこだわりを持ってデザインをしている。『FSS』を始めとして、永野の作品に登場するキャラクターのコスチューム・デザインは、アニメ・マンガの世界を超えて高い評価を得ている。こうしたファッションへのこだわりについて、永野はデザイン集『F.S.S. DESIGNS1』において、実家が呉服関係の仕事をしていたため幼少時より布地に囲まれて育ったという原体験を語っている。「FSSのデザインは1980年代ファッションを引っ張ってきたという自負がある」とも語っている。アニメーション以外のキャラクターデザイン等も手がけており、例えば、NHK教育テレビの番組『天才てれびくん』に登場した1995年におけるCGキャラクター・玉三郎をデザインしている。番組プロデューサーからのリクエストは、「いままで誰も見たことのないキャラを」であった。漫画家としても活動しており、その代表作は1986年よりアニメ誌『月刊ニュータイプ』で連載の始まった『ファイブスター物語』である。以後、20年以上にわたって断続的に連載が続いている。本作は驚異的な遅筆で知られ、本編単行本よりもイラスト集・設定集の冊数の方が遥かに多い。物語の進行が遅い上に、度々連載が(しかもいきなり読者に予告抜きで)休載となる。この遅筆の理由の一つには作画手段へのこだわりがある。作中でのメカの描写には相当な時間をかけており、一ページに大写しにモーターヘッドが出てくる場合などは2・3日も時間をかけて描き込むという。カラーイラストでは主にアクリルガッシュを用いているが、イラストボードに鉛筆で下絵を描いて彩色するという手法もあり、単行本の表紙画などには制作に1ヶ月以上かかると言われている(単行本第12巻の表紙イラストには1ヵ月半を費やしている(『F.S.S. DESIGNS2』によれば、アクリルガッシュを使い出したのは1991年頃からで、以前は透明水彩、のちにアクリル水彩を使用していた。アクリル水彩に変えたのは肌の色が確実に出せるのと着色後の安定感から、アクリルガッシュに移行したのは自分の絵に対する理想が固まる中でアクリル水彩の透明感が気に入らなくなったからだという)。また、公式に設定画を公表したMHも気に入らなくなれば手を加えて直してしまうため、作中で登場するたびに微妙に細部のデザインが変わることもある。デザイン画の公表から年月が経ち古くなってしまったMHは、大幅にリファインがなされることもある。その場合、元のイメージを多少残した他は、デザインがまるっきり別物に変貌してしまうことも多い。MHのみならずキャラクターのファッションも同様で、こうしたデザインに対するこだわりの強さも遅筆の一つの要因であると考えられる。「デザイン画のために『FSS』本編が存在する」とまで発言したこともある。一時期『FSS』の執筆には、Macintoshを用いた2次元コンピュータグラフィックスが多用されていた。しかし永野は、「やはり自分の求める表現はデジタルでは無理」と考え、以後基本的にマンガ制作ではコンピューターを使用していない。もっとも、アニメ製作におけるコンピュータを使った作業については否定的ではなく、『F.S.S. DESIGNS2』において「原画のベクタライズにかかるコストさえクリアされれば、2Dセルアニメーションでも高度なコンピュータでの作業が必須となってくる」と述べ、自身による劇場アニメ『花の詩女 ゴティックメード』の制作では、ベクター画像を用いた動画の導入を試みている。永野はロックに通暁し、作品中の固有名詞などには、バンド名(主にプログレッシブ・ロック)やその作品名、メンバー名をオマージュとしてしばしば借用している。例えば、アモン・デュール、アトール、アシュ・ラ・テンペル、モーターヘッド等が挙げられる。また、楽器や機材にも精通しておりフォーカスライト、SSL、インタシティ、Neve Electronics等、楽器・機材メーカー名を借用する事もある。学生時代、バンドを組んでおり、ベースを担当していた。一時期は本気でミュージシャンになろうかと考えていたこともあるという。米軍キャンプで演奏をしていた経験もある。自身が執筆するマンガのイメージアルバム「THE FIVE STAR STORIES」を自ら手がけたこともある。かなりの痩身であり、『ファイブスター物語』単行本第1巻あとがきに掲載されているプロフィール(1987年時点)によれば、身長175cmに対して体重46kg、ウエスト60cmとなっている。レディースの服でも問題なく着ることができるという。妻はアニメ『重戦機エルガイム』のガウ・ハ・レッシィ/リリス・ファウ役(二役)や、アニメ版『ファイブスター物語』でラキシス役を務めた声優・川村万梨阿である。彼女と永野との結婚に際しては、富野由悠季夫妻が仲人を、ガンダムの登場人物であるギレン・ザビ役の声優・銀河万丈が披露宴の司会を務めた。川村以外の家族は非公開だが、夫婦仲は良好らしく、『Tales of Joker』8号のインタビューでロボットデザインの話題になった時、とある事で川村と夫婦喧嘩になった時、川村から「お前なんかロボットが描けなかったらただのクズ男だよ」と言われて「あったりまえじゃん。オレはロボットが描けるから今の地位があるんだぜ」と言い返した逸話を披露している。永野の自称・愛称は「クリス」である。これは、イエスのベーシストであるクリス・スクワイアに因んだもので、ベースを演奏するようになったのもスクワイアに影響を受けたものである。親交のあるアニメーター兼漫画家・佐藤元の漫画『おやすみ!わたしのサイボーイ』(1985年)の作画に協力した(この作品は他に安彦良和らも作画している)。『巨神ゴーグ』や『機動戦士Ζガンダム』などで親交のある安彦良和は、雑誌『ガンダムエース』での対談を経て、永野の考え方を堅実で合理的、「クールなおたく」であると評した。ゲームデザイナーの遠藤雅伸とも交遊があり、『ファイブスター物語』の雑誌掲載版再録を行なっていた雑誌『Tales of Joker』に、遠藤が「Otaku of Chris」と題したエッセイを寄稿していた時期もある。モデラーを自認しており、模型を趣味で制作している。腕前はかなりのもので、模型雑誌のプロモデラーと比較してもあまり遜色がないほどのもの。ミリタリー模型ファンであり、田宮模型が主催する1/35ミリタリーフィギュアの改造コンテスト「タミヤ人形改造コンテスト」に18歳の時に入賞した経験があり、同社が発行する作品集にも掲載された。タミヤがMMタイガーIおよびキングタイガーをリリースした際は、『月刊ニュータイプ』誌の模型コーナーに作例を提供したり、『FSS』の連載のトビラで同キットを紹介した事がある。また、自らデザインしたモビルスーツ「リック・ディアス」の改造作品「シュツルム・ディアス」の作例が模型専門誌「モデルグラフィックス」に掲載された事がある。後にシュツルム・ディアスは明貴美加のクリンナップを経て『機動戦士ガンダムΖΖ』の劇中に登場した。また『FSS』のモーターヘッド造形やWTMの原型で知られる谷明は、ワンダーフェスティバルにて、永野に見い出され、海洋堂に入社した経緯がある。学生時代から、「トミノコ族」の中心的存在として知られ、1981年2月22日に新宿アルタ前で行われた、富野由悠季主催の『機動戦士ガンダム』劇場版公開前のイベント「アニメ新世紀宣言」に、シャア・アズナブルのコスプレをして現れた。ちなみに同イベントでは、川村万梨阿もララァ・スンのコスプレで登場している。2000年7月23日に幕張メッセで行われた、東京キャラクターショー2000・角川書店ブースでの『Schell Bullet』トークショーでは、著者である幾原邦彦とともに、「厄落とし」と称して、『セーラームーン』(講談社作品)に登場するキャラクターの女装コスプレでムーンライト伝説にあわせてダンスを披露し(永野はセーラーヴィーナスの、幾原はセーラーマーズにそれぞれ扮した)、観客の度肝を抜いた。この時、川村が振り付けを担当した。既述のとおり、ミリタリーファンであり、兵器の造形・デザイン面の様々な分野に造詣が深く、実在のメカの中では第二次世界大戦時のドイツ軍やソ連軍の戦車への愛好が強い。その嗜好は、『パンツァーフロント』でのオリジナル戦車デザインや、『ファイブスター物語』における戦車戦の描写に反映しているほか、「バストーニュ」「トブルク」「マエッセン」「ケーニヒ」など、『FSS』に登場する地名や人物名もその分野に因んだものが見られる。そのためミリタリー色の強いアニメ『装甲騎兵ボトムズ』のファンでもある。また、『ボトムズ』の作画監督の谷口守泰とは、実家が呉服関係の仕事をしていたという永野のプロフィールと谷口の西陣織図案デザイナー出身という異色の経歴とのつながりや、同じ京都人として、永野との親交が知られている。航空自衛隊第204飛行隊がノーズアートに永野のイラストを採用した(「#作品」の「その他」の項も参照。他にも園田健一、貞本義行、出渕裕らが採用された)際、その御礼で、当時第204飛行隊が駐屯していた百里基地を訪問。その時の興奮を『Takes of Joker』13号に綴っている。TVゲームに非常に熱中しやすく、スーパーファミコンのソフトが全盛期だった頃は、親交のある佐藤元とよくソフトを交換し合い、それが部屋中に散乱していたという。特にオンラインゲーム『ファンタシースターオンライン』には熱中し、著名人プレイヤーとしても知られている。続編『ファンタシースターユニバース』においてもファンサイトと自身専用ロビーを立ち上げてプレイしたとされる。また、彼がデザインした武器が同ゲーム内に登場する。『ファンタシースターオンライン2』においても彼がデザインした武器およびキャラクターが登場し、キャラクターの声優は妻である川村万梨阿が担当した。『バーチャファイター』全盛期には、印税を投げ打って筐体を購入した事を、川村がラジオで語っている。ドリームキャスト版『ソウルキャリバー』に熱中した際には、同ゲームの攻略本にて『アイヴィ』の攻略記事を執筆した事がある。永野護が関係した主な作品には、以下のようなものがある(括弧内は関与形態)。
出典:wikipedia
LINEスタンプ制作に興味がある場合は、
下記よりスタンプファクトリーのホームページをご覧ください。