リシン (Ricin) は、トウゴマ(ヒマ)の種子から抽出されるタンパク質である。ヒマの種子に毒性があることは古くから知られていたが、1888年にエストニアのスティルマルク () が種子から有毒なタンパク質を分離し、リシンと名付けた。猛毒であり、人体における推定の最低致死量は体重1kgあたり0.03mg。毒作用は服用の10時間後程度(たんぱく質合成が停止、それが影響していくことによる仕組みのため)。リシン分子はAサブユニットとBサブユニットからなり、Bサブユニットが細胞表面のレセプターに結合してAサブユニットを細胞内に送り込む。Aサブユニットは細胞内のタンパク質合成装置リボゾームの中で重要な機能を果たす28S rRNAの中枢配列を切断する酵素として機能し、タンパク質合成を停止させることで個体の生命維持を困難にする。この作用は腸管出血性大腸菌O157の作るベロ毒素と同じである。吸収率は低く、経口投与より非経口投与の方が毒性は強いが、その場合の致死量はデータなし。戦時中はエアロゾル化したリシンが、化学兵器として使用された事もある。また、たんぱく質としては特殊な形をしているため、胃液、膵液などによって消化されず、変性しない。現在、リシンに対して実用化されている解毒剤は存在しない。ただし、米テキサス大学で2004年に開発されたワクチンの臨床試験がFDAの認可の下に行われ、2006年1月30日付の米国科学アカデミー紀要電子版において予防効果を確認したと報じられている。また、ニュー・サイエンティスト誌では2007年7月4日付で、リシン・コレラ毒素・ベロ毒素の吸収を阻害する分子構造がセントルイス・ワシントン大学医学部の研究により発見されたと報じている。タンパク質としては、糖鎖を持つ糖タンパク質のひとつ。RTAの259位のシステインとRTBの4位のシステインの間に形成されるジスルフィド結合により両鎖は結合している。1978年9月7日、ロンドンでブルガリア出身の作家ゲオルギー・マルコフが倒れ、4日後に死亡した。このニュースを聞いて驚いたパリ在住のウラジミール・コストフは何者かに傘の先端で突かれた2週間前の経験から直ちに病院で検査した結果、リシンが封入された約1mmの白金-イリジウム合金の弾丸が発見された(厚着をしていたため体内深くまで弾丸が打ち込まれなかった)。その後マルコフの体内からも同種の弾丸が発見され、被害者2名とも共産政権だったブルガリアからの亡命者であったことから、KGBかブルガリア秘密警察 (STB) による犯行と考えられた。リシン入りの弾丸を傘に偽装した空気銃により暗殺を行ったのである。2003年の11月にワシントンD.C.のホワイトハウス宛の手紙に封入されたリシンが検出された。その手紙はホワイトハウスから離れた郵送物を扱う施設で発見され、大事にはいたらなかった。手紙は細かい粉末状の物質を含んでいて、その後のテストによってリシンと確認された。この情報は、2004年2月3日に予備調査でアメリカ上院のビル・フリスト議員(当時の多数党院内総務)のオフィスの郵送物取扱室で同様の事件が発覚するまで公にされなかった。この事件によっていくつかの上院議員のオフィスが予備措置として閉鎖されたが、健康に被害が及んだという人物は現れていない。2013年の4月にアメリカでバラク・オバマ大統領宛の手紙の中にリシンが混入されているものをシークレットサービスが発見した。10年前の事例同様ホワイトハウス近くの郵便物を仕分ける施設で発見されたため、大統領の手元には届いていない。2013年の5月にニューヨーク市のマイケル・ブルームバーグ市長(当時)および彼が支援する団体「不法な銃に反対する市長たち(Mayors Against Illegal Guns)」のもとに送られてきた手紙からリシンが検出された。先のオバマ大統領の事件と同一犯として、2013年6月にテキサス州の女性が容疑者として逮捕された。2015年の11月、別居中の夫の焼酎に、ひまし油の原料となる「トウゴマ」から抽出した猛毒のリシンを混ぜ、殺害しようとしたとして、殺人未遂の疑いで、宇都宮市に住む妻が逮捕された。
出典:wikipedia
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