『河童のクゥと夏休み』(かっぱのクゥとなつやすみ、英題:"Summer Days with Coo")は、2007年の日本のアニメーション映画。文部科学省特別選定作品及び日本PTA全国協議会特別推薦作品に選ばれた。現代社会に蘇った河童の子供「クゥ」と、少年・康一との友情、そしてそれを取り巻く人間模様を描く。環境問題、いじめ、マスコミの報道過熱など日本の社会問題を風刺しながら、大量消費社会へ不変性を以って対抗する家族の物語でもある。作中では、変わり続ける社会や人が変わらないものを虐げる悲劇性も含んでいる。変わるものと変わらないものの対比という構図は、小津安二郎の『東京物語』と共通している。原作は木暮正夫の児童文学『かっぱ大さわぎ』『かっぱびっくり旅』。製作発表時の仮題は『河童のくれた贈り物』だった(絵コンテでのタイトルは『河童おおさわぎ』となっている)。アニメーション制作は『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』等で知られるシンエイ動画が手がけているが、本作は同社の現社名変更後初めての劇場オリジナル作品となる。これまではTVアニメの劇場版が中心だった。監督は『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』などを監督した、原恵一。『戦国大合戦』以来5年ぶりとなる原監督の新作として注目され、第11回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞のほか、第81回キネマ旬報ベストテンにも選出された。原はこの原作を20年もの間、アニメ化したいと願っていたという。1980年代後半、漫画原作のアニメ化が隆盛となり、「このままでは漫画作品しかアニメ化出来なくなるのではないか」という危惧を抱いた。そこで児童文学作品を読み漁り、出会ったのが本作の原作の一つである『かっぱびっくり旅』であった。原はアニメ化の許可を得るために木暮の許へ訪れた際、内容を大幅に脚色したいという旨を伝えた。木暮は「クゥが再び世に出るのなら、どんな形でも」と、アニメ化を承諾した。原作は「ヒガシタチバナ市」という設定で、群馬県の架空の都市となっているが、本作の舞台は東京都東久留米市に設定された。これは、原が木暮邸を訪れた際に市内を流れる黒目川の橋などを気に入り、舞台として導入したためである。完成の10年程前に、エニックス(当時)が募集するアニメ企画に応募し、佳作までに至っているが、それ以降の進展はなかった。原は『クレヨンしんちゃん』のテレビシリーズと劇場版を演出や監督として手掛けていた頃、本作をアニメ化することが実現出来ないと思っていた。そこで、本作でやりたいと思っていたアイデアを小出しにしていたという。さらに許可が出れば「クレヨンしんちゃん」の劇場版でクゥを登場させる事まで考えていた。しかし原のこの作品のアニメ化に対する熱意は変わらず、その後「しんちゃん」の成果を見た関係者から「やってみましょう」と言われ、遂にゴーサインが出された。そして、5年に及ぶ制作期間(原曰く、実質的な作業期間は2年間)を経て、世に示す運びとなる。原作者の木暮は、完成を目前にした2007年1月に死去。原は木暮への謝罪と感謝の弁をコメントしている。先述の通り、原作を大幅に書き換えたため、アニメではストーリー展開や舞台設定が異なる。そして登場キャラクターも増え、各々の心情もより緻密に描かれたものとなっている。東久留米の町並みや田園風景、黒目川周辺、遠野にロケハンも施行し、美術設定もよりリアルなものとなった。また、絵コンテの時点で3時間分、約800ページの量があり、そこから不要なシーンを10分程カットした。初号ラッシュフィルムの時点で2時間50分の尺があり、そこから更に周囲からの提案で約30分ものカットされたシーンが存在する。原はこれについて「僕としては相当つらい作業でした」と語っている。声優のキャスティングでは、子役とタレントがメインに起用されている。声優を本業としているプロには脇を固めてもらった。キャスティングは原が自ら選考した。プロの声優のいわゆるアニメ声やオーバーな演技が苦手という原は、芝居のうまさよりも子どもの声のリアリティを求めたのだと語っている。アフレコでは子役のスケジュールが週末しか取れないこともあり、またやり易い様に大人役は大人のみで、子供役は子供だけで固めて別々に録音されている。クゥの訛った言葉は、木暮や原の出身地でもある群馬県付近の方言である群馬弁に近いものとなっている。クゥの父役のなぎら健壱は、既に東北風の訛りでの演技で作って来たが、原から「関東の田舎のような言葉で」とNGを出されている。松竹系の101スクリーンで上映され、興行収入は3億6千万円だった。2007年の日本映画の興行収入では50位の成績となる。劇場公開前に数多く試写会が行なわれたほか、国内外の映画祭でも上映され、2007年7月に台湾で行なわれた第9回台北映画祭では子供映画部門オーディエンス・チョイス・アワードを受賞。11月に韓国ソウルで開かれた日本映画祭ではオープニング作品として上映された。2008年9月にはフランス国内でも公開された。2013年7月には、高校生になった主人公・康一の回想と後日談とで構成されたノベライズ的作品で、原にとって初の小説となる『河童のクゥ 6年目の夏休み』(共著:丸尾みほ)が、双葉社より発売された。東久留米市に住む普通の小学生・上原康一は下校途中、川の辺に埋もれていた大きな石を見つけた。好奇心から割ってみたところ、中から化石のように干からびた生物が出てくる。それは、長い間地中で仮死状態になっていた河童の子供であった。康一は河童を家に連れ帰り、「クゥ」と名付け共に生活を始める。当初は人間に対して警戒心を抱いていたクゥだったが、元来の好奇心と康一の厚意に徐々にほだされ、信頼を寄せるようになる。夏休みに入った康一は、クゥと共に岩手県の河童伝説の残る地方を旅したり、クゥの存在を知ったマスコミのスクープ騒動に巻き込まれ、クゥと家族揃ってのテレビ出演を経験したりする。その中で、クゥの古風な言動や考え方から影響を受けることで、以前より少し物事を深く考えることができる少年へと成長して行ったが、その一方でクゥは、自然からはあまりにもかけ離れた生活や、マスコミの取材攻勢などの中で、少しずつ生気を失いつつあった。そんなクゥのもとにある日、奇妙な葉書が届いた。それは沖縄に住むキジムナーからのもので、テレビ番組に出演したクゥを見て心配したキジムナーが、沖縄で一緒に暮らそうと誘うものだった。戸惑う康一たちだったがクゥの決心は固く、クゥを沖縄へと送り出すことに決め、別れの晩餐をし、みんなで記念写真も撮った。その翌日、クゥの姿を捉えようと待ち構えるマスコミを警戒しつつ、電車でひと駅行った清瀬のコンビニエンスストアで、康一は宅配便の荷物に偽装したクゥを託送する。宅配便業者のトラックが集荷に訪れ、クゥが中に入った荷物がトラックに運び込まれたその時、康一の心の中にクゥの言葉が聞こえ、二人は「別れの言葉」を交わす。走り出したトラックを追いかけた康一は力尽きて立ち止まり、クゥを運ぶトラックを、小さくなるまで見送った。やがてクゥは無事に沖縄に到着し、キジムナーと暮らし始めた。少し成長した康一は、夏休みの明けた学校で、新しい日常を迎えるのだった。
出典:wikipedia
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