『アグネス白書』(アグネスはくしょ)は、日本の作家氷室冴子による、札幌の女子校寄宿舎を舞台にした少女小説シリーズである。『クララ白書』および『クララ白書ぱーとII』の続編にあたる。この続編に『アグネス白書ぱーとII』がある。主人公の中等科時代を扱った『クララ白書』に対して、『アグネス白書』は高等科時代を扱っている。一つ一つが独立したエピソードの集まりであった『クララ白書』に対し、『アグネス白書』は前半は新しいルームメイトとの関係、後半は友達以上恋人未満の関係である光太郎との関係が大きなストーリーの柱となっている。前作の主要登場人物もほぼ全て再登場し、さらに前作では名前だけであった上級生も含め、新たなスターの上級生達も登場する。集英社からコバルト文庫版が1981年、1982年(ぱーとII)に、単行本(Saeko's early collection)が1996年に刊行されていたが、現在は絶版である。札幌のカトリック系女子校、徳心学園の高等科に進学した桂木しのぶ(愛称しーの)、マッキー、菊花たちだが、アグネス舎は2人部屋であるために、誰と誰が同室になるかを決めかねていた。そんな時、新アグネス舎長の哀しみの歌子姫がやってきて、学園に慣れたしーのに外部からの編入生の1人と同室になって欲しいと頼まれ、断れない。しかしそのルームメイトである及川朝衣は初めから女子高にも寄宿舎にも、そして"しーの"にも、あからさまな反感の色を隠さないのであった。そしてついに"しーの"は、あなたと似たような人を知っているが、好きになれなくて苦労している、と告げられ、バラ色のはずの学園生活は一転して冷戦状態に突入してしまうのであった。アグネス舎では4年次は2人部屋であり、希望者は同室になれるために"しーの"たち3人は誰が同室になるかを話し合い、菊花は漫画を描くために"しーの"かマッキーのどちらかがあぶれることになった。ジャンケン勝負のその瞬間に"しーの"はアグネス舎長哀しみの歌子姫に頼まれ、編入生と同室になることになってしまった。編入生は及川朝衣といい、マッキーと同郷で旭川出身であった。しかも中学2年ながらも全国模試で50位に入るという市長以上の有名人。しかし、なぜわざわざ進学校でもない徳心に編入してきたのかは謎で、編入試験が500点満点で499点という成績からスランプ説も否定されてしまった。夢見と三矢からのお礼のクッキーなどの女子高らしい習慣に反感を隠さず、全く誰とも仲良くなろうという気がない様子であり、しかもトラブルの連続で"しーの"もかばいきれない。それどころか逆に知り合いにあなたのような人が居て、好きになれないでいる、などとまで言われ、2人は冷戦状態に陥ってしまう。マッキーが高等科に上がったらやろうと決めていたことに、お茶会と西藤さんへの告白があった。当然"しーの"たちも毎回のように同席する羽目になる。そしてマッキーはある日、理想の便箋(自分の美意識に沿った特注品)が完成したことを祝いお茶会を開く。"しーの"は光太郎といつものようにデートらしきものをしていたが、朝衣が姉の雪ちゃんと会っている所に偶然出くわす。無視されるかと思いきや、お世話になっているとまで姉に自分を紹介される、光太郎の指摘で「好きになれない」という人が朝衣の姉であったことに気づき、部屋に戻った後にそのことを指摘すると、初めてある程度腹をわって話を朝衣がしてくれた。一方、ふとしたことから西藤さんの教え子から西藤さんに彼女がいることを"しーの"が知り、成り行きで朝衣に相談したところ、朝衣はその好きな人に彼女が居るかもしれないというのを"しーの"自身が光太郎に対して思っていることと勘違いし、親身になって協力してくれる。そのために2人が和解したことがあっという間に伝わり、皆の朝衣を見る目も変わったことから、朝衣も少しずつ素直になれ、打ち解けて行くのであった。しかし西藤さんに彼女がいるのは事実であった。だがふとしたことから西藤さんが彼女を連れているところをマッキーが目撃していることを3人は知り、マッキーに問いただしたところ、マッキーはみんなに心配をかけまいと、ほとぼりが冷めるまで待っていたのだという。しかしこれがきっかけで、朝衣は"しーの"たち3人組に新たに加わる形になった。"しーの"は菊花の漫画の材料とするのに協力するため、光太郎に連れられて北海大学へ向かった。そこで光太郎は友人に"しーの"を「いも」、つまり恋人と紹介する。光太郎が佳子女史に捕まっている間に光太郎の友人に案内されて、その友人の所属するオーケストラ部の練習を見学する。そこで理想が服を着て歩いてきたような里崎さんと出会い、夢中になってしまう。"しーの"はどうしても里崎さんが忘れられずに、光太郎には内緒で菊花と共に再び北海大学のオーケストラ部の見学へ出かける。里崎さんは助っ人であるためにその日は不在であり、また彼女がいるということも知らされるが、"しーの"はそういう意味で夢中になったわけではなかった。その代わりに偶然、部員の恋人の差し入れにやってきていた朝衣の姉の雪ちゃんと再会し、その恋人の前田さんと楽しい時を過ごす。同時に朝衣を含めた3人の関係の一端を知り、帰舎後には朝衣により詳しい説明を受ける。同時に理想は理想で現実の光太郎を大切にしろといわれるが、"しーの"にはピンとこない。だが光太郎はもちろん"しーの"が里崎に会いに内緒で大学に来たことを快く思わず、挙句の果てに「恋人となんて紹介されて迷惑なんだから」などと"しーの"が言ったことに対し、「じゃ、これで、さようなら」と立ち去ってしまう。しかし強情な"しーの"は謝る事もできず、朝衣とまたも北海大学のオーケストラ部の見学へ向かうのであった。夏休み明けすぐ、白路さんがお腹を壊して急に高城さんとの約束を守れなくなったため、外出のついでに伝言を伝えに言った"しーの"。図らずもその日一日を高城さんにエスコートされ、楽しいデートをした形になった。しかし当然、大奥が黙っていないことは想像でき、奇跡の高城さんとデートしたことに嫉妬した夢見の「ドミナ玲子が黙っているでしょうか」の一言で戦々恐々の日々を10日間も過ごすことになった。しかし高城さんはしっかりと大奥に釘を刺してくれていたため、無事であったのだが。一方でハンサムな男が最近"しーの"のことを調べているらしく、夢見が偶然その御影という男性に聞かれ、「男なんかに渡さないんだから」などと憤慨する。そして"しーの"に説明を求め、悪い虫が付くよりはと光太郎との仲直りを迫る。郵便事情で送れて届いた暑中見舞いのおかげで光太郎は折れたが、しかしそのデートの当日、待ち合わせの喫茶店で"しーの"の前に御影が座り、色々と探りを入れてくる。光太郎はそれを見て帰ってしまい、ますます仲がこじれてしまったばかりか、御影とのことを高城さんが聞いてきた上にやきもちを焼いているらしいその様子に"しーの"はますます落ち込んでしまう。夢見の仲介でようやく光太郎との仲直りデートにこぎつけ、光太郎は納得がいかないながらも里崎さんは単にファンなだけだという説明に理解を示す。しかしそのデートに突然御影が割り込んでくる。そこへ高城さんが何故か現れ、「しのちゃんはその人ともつきあっている」などと誤解を招くような発言をした上に抱きしめるものだから、御影は高城さんが本当に"しーの"が好きなのだという計略に引っかかり、立ち去る。そこへしてやったりと現れる虹子女史と白路さんは、呆気にとられる光太郎を残して"しーの"を連れ去ってしまう。実はこれは御影を追い払うために2人が仕組んだ計略で、"しーの"は利用されたのであった。それでも奇跡の高城さんの恋人として利用されたのだから、などと幸せだったのはつかの間、光太郎は電話をしてもだんまりで、しかもドミナ玲子からの怒りに震えた呼び出しが来るのであった。週末に実家に戻ったマッキーが、門限を過ぎても戻らないどころか、翌日になっても戻らない。電話を入れてみても、入院したらしいことしか分からず、要領を得ない。ただよらぬ様子に、"しーの"、菊花、そして今や完全に親友となった朝衣の3人はマッキーに手紙を送る。"しーの"はドミナ玲子からの呼び出しも重なったこともあって取り乱し、朝衣は冷静に状況を尋ね、菊花にいたっては想像たくましく妊娠したのか、などと書いて送るが、やがてただの盲腸であったことを3人は知り、安堵すると共に、日曜日に見舞いに行くとそれぞれ書いてよこすのであった。しかしマッキーからの返事によると、ことはそう単純ではなかった。マッキーは髪型にこだわったおかげで、男道酒造80周年記念の式典に遅刻したばかりか、会場を間違えて峰岡病院の跡取りの結婚式に紛れ込んでしまい、挙句に石鹸を変えたのが肌に合わなかったのと急性虫垂炎が同時に襲い掛かり、食中毒の疑いまでかかり、ホテルに大迷惑をかけたばかりか、病院の医師の結婚式で他の病院に回すことなどできないと、披露宴と新婚旅行を中止にしてまで新郎に診察をさせてしまうことになってしまったのだ。さらに新婦は怒って実家に帰ってしまったとのこと。招待客でもないのに間違った会場に通したホテルにも原因があるものの、マッキーは自分が迷惑をかけた自覚は全くなく。ホテルと峰岡病院の両方に対する面目を大いに失った家族からの見舞いなどろくになく、"しーの"たちの見舞いを楽しみにしていると結んで手紙は終わる。もちろん家族でさえ避けるような見舞いに行けるはずもなく、3人は諸事情で見舞いには行けないという返事を送るのであった。光太郎は相変わらず"しーの"の電話にはだんまりを決め込み続ける。しかしある日光太郎が里崎指揮のコンサートのチケットを送ってきた。しかしその日は徳心最大のイベントである文化祭の2日目であったのだ。なんとしてでも仲直りしたい"しーの"は、光太郎に万障繰り合わせて行くと伝えたところ、とたんに光太郎の機嫌はなおったのであった。一方で、中高合同文化祭実行委員会では大変なことになっていた。高等科生徒会長の成田志津子が昨年の雪辱を果たそうと、中等科に対して高等科がごり押しで日程などを押し込み、中等科は極端に不利な状況になってしまったのだ。しかも昨年の中等科の主勢力であった現高等科4年生たちは高劇などからも排除されていた。かつての仲間である中等科生徒会会長である律子に頭を下げられ、三巻は会長に対する反感もあり、中等科に協力することを約束する。三巻は憧れの丸井さんをはじめとする生徒会に反感を持つ高等科のスター達を集め、協力を要請したのであった。その肝は、最大の目玉である中劇を2日目の夕方に持ってくることにし、その前に中劇出演者を囲む会を開催して客を事前に集めてしまおうというものであった。そのために高等科の有名人でもある"しーの"とマッキーに集客のためのサクラとなることを三巻は命ずるが、それはまさに光太郎との約束の時。本来は文化祭を抜け出すことが違反であることもあり、三巻に押し切られた"しーの"は慌てて光太郎に電話をかけるが、それと察した光太郎のだんまりが始まり、"しーの"は何もいえなくなってしまった。中劇は大成功に終わり、それ以外にも高等科スターを動員した三巻の計画も功を奏し、文化祭は近年ないくらいの中等科圧勝となった。"しーの"は三巻達に拘束され続けてコンサートには行けず、最終日に女性を連れてやって来た光太郎からは「恋人はじき他人になるが、友人は一生涯友人」といわれ、そっけなくされてしまう。そしてしーのは最後まで三巻のいうままに動き続けてしまうのであった。菊花が読みきりで商業誌デビューを果たし、結果を出したことにより父親からも漫画を描くことを認められる。そしてこのデビューの情報は学園内を駆け巡り、菊花は一躍クリスマス・バザーを前に徳心スターに躍り出る。一方で"しーの"はクリスマスバザーの準備で大わらわの三巻やマッキーたちからはもちろん、夢見からもそっけなくされ、光太郎との仲直りの道も閉ざされた上に孤独感を強めるのであった。文化祭の出来事によって、三巻にとって自分は下っ端の駒でしかないのだと実感させられたのである。その上"しーの"はバザーの売り物の製作を拒否し、バザーには協力しないと宣言したために、あまりに中等科に勝たせすぎた文化祭での汚名返上とばかりに学年ごとの売り上げで首位に立とうとする三巻や有馬皇子たちとはますます溝を深めるのであった。そんな時、「イブに第九を」というコンサートのチケットが届く。何の手紙も付いていないが、間違いなく光太郎がいつも使う宛名と筆跡であり、仲直りの最後の機会に間違いない。3時開演であるために、光太郎と会うためには、バザーをサボらなければならない。"しーの"は悩むものの、誰にも言わずに抜け出す決心を固めた。命じられていた売り子も代わりを頼み、3時より随分と早く会場についた"しーの"だが、時間に遅れたことのない光太郎は来ない。それでも"しーの"は待ち続けると、4時20分頃に光太郎が来る。3時のはずだと問いただすと、光太郎のチケットは5時開演のものであった。どうやらこのチケットは光太郎が送ったものではなく、逆に光太郎は"しーの"が送ってきたものだと考えていたらしい。光太郎はそれを知って帰ろうとするが、"しーの"は仲直りをしたいという気持ちを必死に伝え、2大行事の1つであるクリスマスバザーを自分のために抜けて来てくれたこともあり、無事に仲直りに成功するのであった。学園に戻った"しーの"が想像したとおり、これは光太郎との仲がこじれてしまったことに責任を感じた三巻たちによる企みであった。"しーの"は3時と5時の別の時間のチケットを送る辺りが手が込んでいるというが、実はそれは単なるチケット購入を頼んだ朝衣の姉の雪ちゃんの手違いであり、チケットが逆に渡っていたら、と一同はぞっとするのであった。冬休みも明け、親しい上級生がたくさんいる現高等科6年生が卒業目前であることを実感し、寂しさを感じる"しーの"。一方で次期高等科生徒会長に立候補する三巻は、当然のように片腕として"しーの"に書記として立候補するように言うが、せっかく光太郎と仲直りをしたばかりなので、行事や生徒会の仕事で同じ轍を踏まないよう、断固として断わる。三巻に煮え湯を飲まされ続けた成田会長は、一矢を報いようと息のかかった者を次期生徒会に入り込ませようとするが、三巻を初めとした現4年生の立候補メンバーには直接太刀打ちはできず、"しーの"を諦めきれない三巻によって敢えて自派の候補者を立てなかった書記に成田派が立候補する。ある日、"しーの"は光太郎に、両親の結婚記念日のホームパーティーに招待される。両親に紹介されるということは、とか嫁姑関係は初対面での印象が、などと早まった想像をしてしまう"しーの"。当日、光太郎の父とは最初ギクシャクしてしまうが、母親が気さくな人で、いつの間にか夢見と一緒に台所を手伝ったりし、無事に楽しい時を光太郎や夢見と過ごすのであった。ところが翌日、光太郎に迎えに来てもらったところを成田一派に写真に取られており、校内にばら撒かれていた。もちろん問題となり、シスターに呼ばれるが、夢見の機転で事なきを得る。成田一派の仕業だと知った"しーの"は書記に立候補し、成田一派の刺客を蹴落として苦戦ながらも当選した。電話で光太郎は経緯を知り、ため息を漏らすが、理解を示す。しかし"しーの"が泣いていたのは、単に上級生のお姉さまがたが卒業してしまうからであった。それに対し、光太郎は上級生が卒業しても代わりに"しーの"たちの代の子たちが後を埋め、何も変わらない、と慰める。私は誰の替わりなのかという"しーの"に対して、「しーのは、未来永劫、しーのだな」といわれ、不思議と納得するのであった。
出典:wikipedia
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