バージニア級原子力ミサイル巡洋艦(; CGN-38 class)は、アメリカ海軍の原子力ミサイル巡洋艦の艦級である。本級は、アメリカ海軍が新規に設計・建造した2艦級目の原子力推進の誘導ミサイルフリゲート (DLGN)であり、原子力推進の戦闘艦としては5艦級目に当たる。カリフォルニア級に続いて、新鋭の艦隊防空システムであるターター-D・システムを搭載しており、イージス艦の登場までの間、最有力の防空艦として、艦隊防空を支えた。原子力推進で燃料を必要としない為、航行距離に制限がなく、またNTU改修されたターター-D・システムを搭載することから、非イージス艦としては極めて強力な戦闘能力を備えていた。しかし、その性能はイージス艦には及ばず、また、原子炉の保守管理のコストもかかることから、冷戦の終結と共に全艦が退役することとなった。本級の計画は、駆逐艦の建造計画であったDX/DXG計画から派生する形で開始された。DX/DXG計画は、第二次世界大戦型の駆逐艦を代替するため、システム工学のアプローチを大胆に導入し、対潜駆逐艦と対空駆逐艦を共通のファミリーとして整備することを狙ったものであった。そしてまた、原子力空母のニミッツ級の大量整備に伴い、対空駆逐艦をさらに強化した原子力推進の強力な防空艦としての原子力ミサイル駆逐艦 (DXGN) の整備も検討された。この当時の試算では、原子力推進とした場合は通常推進の1.5倍の取得コストを要するが、通常推進型6隻に対して原子力推進型4隻で済むことから、運用コストで有利であるとされていた。1970年、DXGN計画はDX/DXG計画から切り離され、23隻の建造が予定されることとなった。このDXGN計画が、最終的にCGN-38計画として、本級の建造に至ることとなる。CGN-38計画は1968年より正式に開始された(のちにDLGN-38計画に改称)。なお、DX/DXG計画はのちにスプルーアンス級駆逐艦として結実することとなるが、防空艦としてのDXG計画は、最終的に放棄された。アメリカ海軍において、ターター-D・システム搭載艦の建造は、本級およびキッド級ミサイル駆逐艦で最後となり、防空艦の整備計画は、次世代の防空システムであるイージスシステム搭載艦へとシフトしていくこととなる。イージス艦としては、当初は本級を原型としたCGN-42計画なども検討されていたが、コスト面の問題を克服できず、結局は、スプルーアンス級駆逐艦をベースにしたタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦で決着することとなり、DXG計画の後を継いだアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦も通常推進(COGAG方式)で建造され、アメリカ海軍の原子力水上戦闘艦の整備は本級で打ち切られることとなった。この背景には、本級の建造中より、議会において、航空母艦に比べ艦齢が短く規模も小さい水上戦闘艦に建造費高騰の原因となる原子炉をわざわざ採用することへの批判がなされたことがある。アメリカ海軍は、従来より使用されてきたターター・システムを全面的に改良し、海軍戦術情報システム(NTDS)との連接に対応した新しい防空システムとしてターター-D・システムを開発し、カリフォルニア級原子力嚮導ミサイル・フリゲートに搭載した。しかし、同級においては、発射機は従来通りのMk 13が使用され、また、システム統合にかなりの困難を経ることとなった。本級は、その経験を踏まえて、システム工学的なアプローチをより大胆に導入して開発されたほか、新型のMk 26 連装発射機が採用された。さらに、本級の建造中より就役を開始した新型のスタンダードSM-2ミサイルにも対応するように改良された。これにより、本級は極めて強力な防空能力を具備することとなり、また、その防空システムは、同時期に建造されていたスプルーアンス級駆逐艦とともに、イージスシステム登場前夜にあって、統合戦闘システムの嚆矢となり、のちには、ほとんど同一の構成でキッド級ミサイル駆逐艦にも搭載された。本級とキッド級ミサイル駆逐艦は、1980年代末より本級はNTU改修の対象となり、武器管制システムの換装などにより、限定的ながらも同時多目標対処を可能とするなど、その性能はさらに強化された。また、カリフォルニア級はターター-D・システムの搭載に重点が置かれ、防空力以外はやや貧弱なきらいがあった。このことから、本級においては対潜戦闘能力の強化にも意が払われ、新型のSQS-53ソナーを搭載したほか、艦載機として、SH-2 LAMPS Mk Iヘリコプターを1機搭載した。原子力推進設備とターター-D・システムがかなりの容積を要したことから、このSH-2ヘリコプターは、やや変則的な方式で搭載された。格納庫は上部構造物ではなく船体内に設置されており、その天井がヘリコプター甲板を兼ねていて、着艦した機体はエレベーターによって艦内に収容される。これにより、より小さな容積で艦載機の搭載を可能としたのである。ただし、天井部分の設計に問題があり、密閉が不十分で漏水が多発するなど、運用に当たっては問題が続出した。このため、のちにヘリコプターの搭載は中止され、ヘリコプター甲板前方はトマホーク巡航ミサイル用のMk 143 ABLの設置スペースに転用、エレベーターなどの設備は撤去され、格納庫のスペースは倉庫として活用された。これにより、本級は、対潜戦闘能力はやや低下したものの、トマホーク武器システムによる対地精密集中攻撃能力を備え、さらに、弾薬やその他の消耗品の搭載量増加により、より長期間の戦闘航海が可能となった。
出典:wikipedia
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