所得税(しょとくぜい)とは、担税力の源泉を、所得、消費及び資産と区分した場合に、個人の所得に対して課される税金のこと。所得税は広義の所得税と狭義の所得税に分類できる。ここでは、主に上記2.の狭義の所得税について記述する。所得概念論とは所得とは何かという議論である。所得税導入以来、様々な展開を見せてきた。所得税の課税対象となる所得のとらえかたには次に掲げる通りいくつかの考え方がある。今日では、次の3つのうち、包括的所得概念が有力であるが、一方で、ヨーロッパ諸国では制限的所得概念の考え方も根強く、たとえば、ドイツやフランスでは株式譲渡益が非課税とされる。また、北欧諸国では、主に包括的所得概念の非効率性に着目して、投資所得と勤労所得とを区分して前者には比例税率課税を行い、後者には累進税率を適用する二元的所得税が採用されている。課税所得は、反復継続する活動から得られるものに限定し、偶発的・一時的なものは課税しないとする考え方。いわゆる取得型所得概念の一つ。産業革命以降、資本の自立的運動(資本の循環)の結果として賃金・利潤・利子・配当・地代など、継続的・反復的利益が生み出されるようになっていった。それらは確実・安定的な税源であり、把握も容易だったため所得税の成立を促した。このような背景を元に、利益を生み出す源泉に着目して反復継続する活動から得られるもののみを所得とする学説(所得源泉説)が生まれる。この所得源泉説は国民所得論を基礎理論として19世紀から20世紀初頭のドイツ(ドイツ帝国)を中心に唱えられた。制限的所得概念を前提とした所得税には、所得を源泉によって分類し各所得ごとに異なった税率・税額を課税する分類所得税(イギリスなど)と所得の源泉別に純所得を算出しそれらを合算して課税する一種の総合的所得税(プロイセンやそれを参考にした戦前の日本など)がある。課税所得は、所得の内、消費により効用の得られた部分とする考え方。所得は人の一定期間の消費の総額によって測定される。貯蓄を所得から除外する一方、借入金による消費も所得に含まれる。ジョン・スチュアート・ミルやアーヴィング・フィッシャーの理論によるもので、フィッシャー、カルドアにより提唱され今でも経済学者の間には根強い支持があるなど、理論的には一定の有用性が認められている消費型所得税概念を採用する所得税(消費型・支出型所得税、支出税)はインドやセイロン(現スリランカ)で短期間実施されたこともあるが定着しなかった。貯蓄除外に起因する不公平、消費の把握・貴族判定の困難性、一般常識からの乖離などが原因である。ただし、支出税は内容的には一般消費税に類似するため、一般所得税としての付加価値税によって代替されているとも見ることができる。ドイツの財政学者シャンツ(Georg von Schanz)が唱えた純資産増価説にはじまり、アメリカのヘイグ(Robert M. Haig)とサイモンズ(Herry C. Simons)によって発展した概念。シャンツ=ヘイグ=サイモンズ概念、ヘイグとサイモンズの頭文字をとってH-S概念ともいわれる。課担税力を増加させる経済的な利得はすべて純資産の増加であり、所得であるとする考え方で、「所得=蓄積+消費」という定式であらわされる。いわゆる取得型所得概念の一つである。一時的・偶発的な利得も所得となり、相続も所得としてみなす(相続税参照)。包括的所得概念は公平負担の要請(担税力に応じた負担の原則)に適合し、20世紀の福祉国家に適した所得概念であったため、広い支持を集めることとなった。包括的所得概念を採用する総合累進所得税は全所得を1つの累進税率表で適応し課税することが可能になり、国家財政調達機能・再分配機能や景気調整機能・資源再配分機能を高めることができる。他方、問題点もあり、本来であれば、未実現の利得や帰属所得も課税の対象とされるべきであるが、捕捉ないし評価が困難であり、課税の対象とならない場合が多く、たとえば未実現の利得の一つであるキャピタル・ゲインは、実現されなければ課税されない。また1970年代の経済停滞期のアメリカにおいて、包括的所得税の概念は、理論的には明快だが、現実の課税把握においては、概念の曖昧さを払拭できず、課税当局が所得の把握が困難であり、限界があるとして批判された。例えば、地下経済における所得などに対する把握は困難を極め、アメリカ社会において所得課税の不公平感が広がった。1980年代以降は、税率を一律にし、また税務上の手続きを簡素化かつ明瞭にするものとしてフラット・タックスという税案に関する議論が高まった。ここでは所得税の歴史について記述する。当初の所得税は、年間所得が300円以上の者に対して課税した。しかし、個人課税ではなく、世帯合算課税で、戸主が納税義務者とされた。プロイセンの制度を参考として、所得の多寡を5段階に区分し、最低1%(所得300円以上)から最高3%(3万円以上)の低い税率の累進課税方式を採用していた。年間300円以上所得のある世帯の家長である戸主に限って課税の対象としたため、所得税を納税することがいわばステータスシンボルとなり、「富裕税」、あるいは「名誉税」との別名で呼ばれていたという説もある。なお、大部分の一般国民は所得税の課税対象外で、新税の対象とされたのは当時の全戸数(戸主の総数)の1.5%にあたる12万人が対象となり、納税額も国税収入のうちの0.8%程度であった。この新税導入の動機としては、清に対抗して海軍の増強・整備が急がれたこと、地租や酒造税などにかたよった租税負担のあり方が自由民権運動によって反政府側から批判されたこと、大日本帝国憲法によって設置が予定されていた帝国議会の衆議院に納税額による制限選挙が導入されたために大規模土地所有者(地租の納税義務者)以外の資本家に対しても選挙権を保障して政治参加を認めるための環境整備のためなどが挙げられている。3年後の1890年(明治23年)に行われた日本最初の国政選挙である第1回衆議院議員総選挙においては満25歳以上の男性で直接国税15円以上を納めている者に選挙権が付与された。所得を3種類に区分し、第1種を法人所得、第2種を公社債利子所得、第3種を300円以上の個人所得とした。法人税法の制定によって従来の第1種が所得税から分離されて法人税となった。また、分類所得税と総合所得税の2本立てとなり、前者において所得種類別に異なった税率を適用するとともに勤労所得への源泉徴収制度が導入され、後者において所得合計が5,000円以上の者に10-65%の高度の累進課税をかけた。申告納税の導入によって所得税の一本化(総合所得合算申告納税制度)が図られる。また、その後の改正で最高税率が75%とされていたが、インフレ利得者等へ重課するためとして85%にあげられた。1949年(昭和24年)のシャウプ勧告は、このように高い所得税率は勤労意欲にマイナスがある等の理由で、所得税の最高税率を下げ、それを補うための補完税として富裕税を導入することを勧告した。この結果、1950年(昭和25年)の改正で所得税の最高税率が55%に抑えられ、同時に累進税率で富裕税が導入された。しかし、富裕税は日本に定着せず、3年後の1953年(昭和28年)に廃止されることとなり、代わりに所得税の最高税率が65%に戻された。日本の所得税は、課税標準として総所得金額・退職所得金額・山林所得金額の3つを設けている。これは、総合所得税課税を基本としながら、退職所得及び山林所得については分離所得税課税を実現するものである。以下にあげる10種類の所得について、それぞれの計算方法が定められている。従って、その計算方法の結果が、所得税額となる。以下、所得税法を「法」と表記する。これらの内、利子所得、配当所得および不動産所得は資産性所得であり、給与所得、退職所得は勤労性所得である。事業所得および山林所得は、資産性所得と勤労性所得が結合したものといわれる。資産性所得と勤労性所得は、ともに恒常性所得に該当する。さらに、譲渡所得および一時所得は、臨時所得に該当する。そして雑所得は、これら9種類の所得のいずれにも該当しない所得をいう。所得税金額を求める計算は、下の通りである。(納税者の1月1日から12月31日までの1年間に得た全ての所得) - (所得控除額) = 課税所得金額(課税所得金額) × 所得税の税率 - (税額控除額)=納付所得税額所得税の控除は、次の態様に分けられる。控除の種類を、主に所得控除と税額控除に分類した(便宜上住民税について併記した)。例えば「課税される所得金額」が700万円の場合には、求める税額は次のようになる。 700万円(総所得)×0.23(税率) - 63万6,000円(速算控除額)=97万4,000円(所得税)最高税率の変遷は、以下のとおりである。財務省によると、2007年(平成19年)現在の申告者の実際の所得税負担率は、所得が1~2億円の納税者(26.5%)がピークになっている。それ以上の高額納税者は逆に下がり、所得100億円以上では14.2%となっている。これは、山林所得、土地建物等の譲渡による譲渡所得、株式等の譲渡所得等は、他の所得と分離して納税する分離課税が選択できるためである。分離課税は通常の納税(総合課税)に比べ税率が低い物が多く、また高額所得者は、分離課税が適用できる所得の割合が高いことが多い。その結果、高額所得者の実質税負担率は低くなるのである。たとえば株式等の譲渡所得は、金融機関などを通した上場株式は2011年(平成23年)分までは7%(他に住民税3%)、2012年(平成24年)分以降は15%(住民税5%)。それ以外は2011年分までは20%(所得税6%)、以降は上場株式と同等の税率が設定されている。上場株式の場合、2011年(平成23年)分までは所得が195万円を超え 330万円以下の納税者に適用される税率10%より低くなっている。所得税は、大きな増減を繰り返しながらも上限が減少傾向にある。
出典:wikipedia
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