飛鳥II(あすかツー)は、日本郵船の子会社、郵船クルーズが所有・運航している外航クルーズ客船。2006年2月に売却された「飛鳥」の後継船にあたる。1990年6月、「クリスタル・ハーモニー(Crystal Harmony)」(バハマ船籍)として三菱重工業長崎造船所で竣工し、アメリカのクリスタル・クルーズ社(日本郵船の子会社。2015年にグループ離脱)に就役した。三菱重工業長崎造船所で大型客船を建造するのは実に50年ぶりであり、知識ゼロの状態で設計・建造された。建造期間は契約後2年間であり、通常の大型客船の3年前後と比較すると短期間で建造された。2006年1月に郵船クルーズが本船を買い取り。日本市場向けの改装を施し、2月末よりの習熟航海を兼ねた日本各地でのお披露目を経て、3月17日に正式デビューした。日本籍では最大の客船である。1991年10月に就航した「飛鳥」は、1990年代中盤より順調にその集客を伸ばし、21世紀に入る頃には、特に夏場のハイシーズンにおいては満船の状態が続くようになり、「予約が取れない」と乗船希望客の不満が募るようになった。運営する側としてもこれはビジネスチャンスを逃していることに他ならず、キャパシティの増大が必須となり、第二船の投入や、より大型の新造船の建造等が検討されたが、結果として、同じ日本郵船グループのクリスタルクルーズ社が運航する「クリスタル・ハーモニー」を日本向けに改装し、「飛鳥II」として代替投入、これに伴い「飛鳥」は売船されることとなった。これは当時、「クリスタル・セレニティ」の投入(2003年6月就航)により、3隻体制となったクリスタルクルーズ社の集客が伸び悩んでおり、減船(=日本郵船グループ内の船腹交換、飛鳥の売船)により体制を整えるという目的もあった(日本郵船の2006年度第一四半期決算によれば、客船事業部門の収支は前年同期比、大幅に改善されており、この船腹交換の効果が現れた)。日本郵船の草刈会長と郵船クルーズの松平社長は、第二船の投入については「現状、そこまでの市場の広がりがない」とし、また新造船の投入を見送った理由については、折からの海運好況で「船価が高止まりしていること」、並びに「造船所の船台が相当先まで埋まっており、その間お客様をお待たせしてしまうことになる、ビジネスチャンスを逸する」旨、述べている。「クリスタル・ハーモニー」は建造から15年目の2005年11月25日、ロサンゼルスにてその運航を終了、同月末よりカナダの Victoria Shipyards にて改装工事にかかった。12月下旬に出渠、年末年始にかけ太平洋を横断し、2006年1月5日に三菱重工業横浜製作所に入渠、更に改装工事を続けた。船舶登記上は同年1月5日までが「クリスタル・ハーモニー」、1月6日からが「飛鳥II」である。2月11日には、売船準備のために「飛鳥」が同製作所に入渠、その後数日間、岸壁の両側に「飛鳥」と「飛鳥II」が並ぶ光景が見られた。改装工事を終えた「飛鳥II」は2月22日夕刻に横浜港大さん橋に着桟し、2月26日に命名記念式典が実施された。あいにくの雨天であったが、中田宏横浜市長らの出席の下、岸惠子がゴッドマザーとして本船を「飛鳥II」と命名した。その後、2月末から3月半ばにかけ、習熟航海を兼ねた、日本各地での「お披露目」を実施。3月17日に正式デビューとなった。「飛鳥II」の船籍港は横浜港であり、郵船クルーズの本社所在地は横浜市である。横浜港の大桟橋改築が完成し2000年代に入ってクルーズ客船の寄港数が増加基調に入った。しかし横浜港を船籍港とする客船が無くなって久しくなっており、横浜港の再活性化には港の象徴的存在となる横浜港船籍船が求められた。また横浜港と歴史的に繋がりの深い海運業界との関係深化も必要とされた。飛鳥IIの就航に当たり、中田宏市長が自ら日本郵船に同船を横浜籍とするよう依頼し、郵船側も「旧『飛鳥』の発着港の多くが横浜港であること」や「横浜港と日本郵船が歴史的にも深い繋がりを持つこと」等を理由にこれを受諾、2005年10月5日に合意・発表に至ったものである。「クリスタル・ハーモニー」から「飛鳥II」への主な改装箇所は次の通り。改装費用について、郵船クルーズの松平社長は、2005年10月5日(=実際に改装に着手する前)の記者会見で、「概算で30~50億円」と発言している。本船の料金(二名一室使用の一人一泊当り金額)設定は以下のとおり。(料金の内訳については「サービス」の節を参照のこと)上記の他にもクルーズ毎による差異があるので、詳細は郵船クルーズないしは取扱い旅行代理店に当たられたい。郵船クルーズは「飛鳥II」は「飛鳥」のサービスを継承する、としており、以下の説明も「飛鳥」の項とほぼ同じである。主要目の通り、本船の乗客定員は940名であるが、パンフレットでは872名と謳われている。理由は以下の三点である。郵船クルーズとしても空き部屋を遊ばせておくつもりは無く、集客が順調で且つ乗組員の雇用、教育が進めば、早い機会に乗客定員を増やしていきたい旨、明言している(2008年のA-styleクルーズでは 850名以上が乗船し、ラ・ベットラ・ダ・オチアイの落合シェフが850人前以上のパスタを1人で作ったと公言している)。"船内組織についてはクルーズ客船の同節を参照願う。"乗組員約440名中、3分の1弱が日本人、3分の2強が外国人の構成である。外国人の大半はフィリピン人が占めるが、他にもアジアや欧米各国の出身者がおり、国籍数は20を超える。外国人(特にフィリピン人)の起用はもっぱら人件費の安さを目的としたもので、男性は主としてレストラン・バーのウェイターや在庫部門で、女性は客室係といった末端で起用されているが、初代飛鳥より長期で勤務しているウェイターの一部には敬語を含めた日本語を話し、アシスタントヘッドウェイターに昇格している人もいる。サービス部門の長たるホテルマネージャーや、クルーズディレクターといった要職にも外国人を起用している。日本人に客船サービスのプロフェッショナルが不足していること、及び外国客船のノウハウを吸収するために、客船経験者を雇用したものである。「何代目船長」と称しているが、実際には2名が3~4ヶ月毎に交代で乗船する形を取っている(浅井船長と増山船長が交互に乗船する)。郵船クルーズのサイトでは増山船長について、飛鳥と通算しての10代目船長という表記がなされていた。なお2010年8月、俳優の加山雄三が「名誉船長」に就任している。毎年夏に行われる若大将クルーズに乗船している。2013年度の様子は若大将のゆうゆう散歩で4回にわたり放送された。 乗船する側のメリット(予約が取り易くなる)と運営する側のメリット(事業の拡大)が一致して、実現した大型化であるが、ここではデメリットについて述べる。大型化のデメリットの最たるものは、喫水が深くなることにより、寄港できる港が制限されることである。例えば屋久島は、「飛鳥」では特に秋口には毎週のように寄港するほどの人気の寄港地であったが、「飛鳥II」では喫水オーバーにより、岸壁に接岸することができなくなった。2006年以降の「飛鳥II」のスケジュールには屋久島が組み込まれていない 接岸できない寄港地でも、地元の船とないところでは本船付属の「テンダーボート」(救命艇を兼ねた渡し舟)により通船で上陸できるのだが、その運航は天候の影響を受け易く、悪天候の場合は上陸不可→抜港に至る可能性が高くなる。通船での乗下船は、タラップやボーディングブリッジによる乗下船に比べ、どうしても時間を要することとなり、寄港地での時間の有効利用の点で劣ることとなる。高さが増えたことで、飛鳥ではコースに含まれていたキール運河も通行できなくなった。また、全長が200mを超えるため航行制限を受けるようになった。例えば備讃瀬戸航路などでは狭視界時における航路入航制限や夜間の通航が出来ない通航時間の制限がある。大型化により船内の移動距離が長くなったことも挙げられる。船首付近の客室に当った場合、船尾の施設に行く(あるいはその逆)には、かなり負担を感じることと思われる。2006年5月20日、朝日新聞(大阪版)の夕刊一面に『豪華客船ため息航路』の見出しで、本船上のトラブル(排水の逆流、自動ドアの不具合、大浴場の湯温が上がらない、エレベーターの不具合等)を報じる記事が掲載された。のちに、旅行業界では「クレーマー」として知られる男性が朝日新聞に告発したところ大きく取り上げられてしまったものであり、実際には他の乗客はそれほど問題としていなかったといわれている。トラブルは無いに越したことは無いが、大新聞が一面で取り扱うほどのことであったのかは意見が分かれるところである。もっとも、2月の「飛鳥」運航終了から3月の「飛鳥II」デビューの際のマスコミの取り上げ方も別の意味で凄まじいものがあった。特にNHKでの扱いは、これらが純然たる営利企業の船であることに鑑みれば、異例ともいえるものであった。報じられた不具合はいずれも事実であり、4月からの世界一周クルーズでもこれらの一部は解消されなかった。ソフト面でも一定のレベルが確保できなかったとして、郵船クルーズは最終的に客室単価の2泊分のクレジット(船内でのみ使用可)を「お詫び」として乗客に提供している。飛鳥IIに限らず、ホテルや客船といった宿泊施設において初期トラブルはつきものであり、「開業当初、就航当初の施設はあえて避ける」という利用客も少なくないようである。アスカクラブは、「飛鳥」ないしは「飛鳥II」に一度でも乗船することにより入会資格を得られる会員組織。客室にブルーの入会申込用紙が置いてあり、これに必要事項を記入し、レセプションに提出すると、事後に会員証が送付されてくる。会員特典は次の通り。会費は無料であり、会員資格については特に有効期限は設けられていないが、3年間乗船しないと、休眠会員の扱いとなり、クラブ誌や各種招待状が送付されなくなる。アルバトロス・ソサエティは、アスカクラブ会員の中でも、飛鳥・飛鳥II 通算で下記のいずれかの条件を満たしたヘビーリピーターを対象とした組織。(これらの条件は2007年12月までであり、以降は改定が見込まれる。)アルバトロス・ソサエティー会員は乗船時も優先乗船口からの乗船ができたり、終日航海日があるクルーズ中のアルバトロスソサエティー・パーティーへの招待、船内での飲食・クリーニング・飛鳥コレクションでの販売商品(一部を除く)を5%割引が受けられる。その他、年1回程度のアルバトロス・ソサエティー・パーティー(有料)や、船が定めるアルバトロス・ゲスト・デーに4名まで同伴して訪船ができる。累計1,000泊を超えたアスカクラブ会員は、6デッキライブラリー隣にあるクルーズデスクの壁に名前が刻印されたプレートが掲示される。最多宿泊者は 1,700泊を超え、なお記録を更新中である。ヘビーリピーターの暮らし振りは、2004年1月6日の朝日新聞朝刊にて紹介された。
出典:wikipedia
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