ドービニーの庭（どーびにーのにわ）とは、1890年7月にフィンセント・ファン・ゴッホによって描かれた絵画。オーヴェル＝シュル＝オワーズでシャルル＝フランソワ・ドービニーの未亡人が住んでいた家の庭を描いたものである。同名同構図の作品が2点、同名異構図の作品が1点の計3点あることが認められている。1890年6月半ばにこの庭を初めて描いたとされる正方形の作品がゴッホ美術館に所蔵されている。同名同構図の作品のうちの1枚目とされるものはスイスのバーゼル市立美術館に収蔵されている。これを模写したと思われる2枚目の作品はひろしま美術館に収蔵されている。1890年7月23日付の弟テオ宛の手紙で、本作（ひろしま作品）について言及していると思われる箇所とスケッチが描かれていることから、7月20日頃に描かれたと考える説があり、ゴッホの絶筆である可能性もあるが、少なくとも7月下旬に描かれた最晩年の作品であることには間違いない。本作は1929年にベルリンの国立美術館が収蔵したが、ナチスによって1937年に美術館の近代部門は閉鎖され、この絵は退廃芸術とされて押収された。後にオランダのコレクターの手に渡り、さらに競売にかけられ広島にたどり着いた。バーゼル市立美術館蔵のものに見られる画面左下の猫は、ひろしま美術館蔵のものでは一見して欠けている。これについて、1900年にオークションにかけられた際に撮影された写真には猫が確認できること、該当部分が周囲と色合いがやや異なることなどから、後日エミール・シェフネッケルによって補修のため塗りつぶされたと考えられている（彼は他のゴッホ作品にも加筆した疑いが持たれている）。この説をとる者に圀府寺司（現大阪大学文学部教授）がいる。小林英樹（現愛知県立大学美術学部教授）は著書「ゴッホの遺言」で、後の作品のほうに猫がないことにゴッホのメッセージが込められているという説を述べている。「ゴッホの遺言」は第53回日本推理作家協会賞「評論その他の部門」(2000年)を受賞している。

出典:wikipedia