


著作権表示(ちょさくけんひょうじ)は、著作物の複製物につける著作権者や著作物の発行年等に関する表示である。著作者が著作権を取得するため、著作物の創作のほか、何らかの手続き等(方式)が必要な法域においては、著作権表示は重要な意味があるが、現在は、ほぼ全ての法域で著作権は、著作物の創作とともに発生するので、重要性は失われている。著作権の発生要件については、無方式主義と方式主義の二つの法制が存在するが、前者は大陸法圏に由来する法制であるのに対し、後者は英米法圏に由来する法制であるといわれる。無方式主義は、著作権を著作者の自然権としてとらえる大陸法系の思想に合致する。ヨーロッパ諸国は無方式主義を採っており、それらの国々は1886年にベルヌ条約を締結した。ベルヌ条約は無方式主義と内国民待遇を定めており、加盟国は他の加盟国の著作物も、自国の著作物同様に(当然、無方式主義でということになる)保護しなければならない。日本など後発加盟国も、これらに従うことになる。これに対し、著作権の保護目的を功利主義的にとらえる英米法圏の思想からは、著作権を発生させるために、官庁への登録などの手続を求め、方式主義を採ることは自然である。アメリカ合衆国などアメリカ大陸のいくつかの国は方式主義を取っており、1902年にパンアメリカン条約を締結し、加盟国間で方式主義による著作権を保護した。こうして、著作権の国際的な保護について世界に二つの陣営が並立し、相手陣営では著作権の保護が受けられなくなった。この問題を解決するため、1952年に万国著作権条約が締結された。この条約の3条1項により、加盟国間ならば、無方式主義国で作られた著作物は方式主義国内では著作権表示が方式とみなされ、著作権表示があれば保護されるようになった。なお、逆に、方式主義国の国民が無方式主義国で保護を受けるには、著作権表示は必要ない。万国著作権条約も内国民待遇を定めているので、加盟国間ならば自国の著作物同様、無方式主義に基づき保護される。条約では、万国著作権条約3条1項に著作権表示に関する規定があり、その内容は、1952年条約、1971年改正条約とも同一である。万国著作権条約に基づく著作権表示には、次の3つの表示が必要である。順序は定められておらず、この順序でなくてもいい。慣習的に「©」を最初に書くことが多いが、氏名と年の順序はさまざまである。使用する文字や紀年法も特に定められていないが、国外での著作権保護のためという目的上、ラテン文字と西暦を使うのが普通である。ベルヌ条約加盟前のアメリカ合衆国の国内法では、「©」以外に「Copyright」や「Copr.」も認められていた(現在も米国著作権法第401条に規定がある)。ただし、国際的に通用することが万国著作権条約で保障されているのは「©」のみである。コンピュータやタイプライターの文書では、文字として登録されていない場合があるので、慣習的に「(c)」や「(C)」も使われる。著作者ではなく著作権者の氏名を表示する。つまり、著作者が著作権を譲渡・売却等した場合は、譲渡等された者の氏名を表示する。氏名は、周知の変名(ペンネーム等)でもかまわない。ただし、周知でない変名(著名でないということではなく、誰のことかわからないということ)は認められない。複数の著作権者がいる場合は、全ての名を書く。法的にはどんな順序でもいいが、慣習的に、二次著作物に原作者と二次著作物の作者を表示する場合は、原作者を先に書く。複数のバージョンがある著作物は最初のバージョンの最初の発行年を表示する。例えば、1990年に最初のバージョンを発行し、2000年に改定したバージョンにつける著作権表示では「1990」となる。これ以外を表示してはいけないということはないので「1990-2000」は問題ないが、「2000」だけでは間違いである。著作権表示は、国内での著作権保護に対しては、本国が方式主義か無方式主義か、相手国が方式主義か無方式主義かに関わらず、不要である。必要なのは、万国著作権条約に加盟している無方式主義国の著作物が、方式主義の国で著作権保護を受けたい場合である。かつてはアメリカ合衆国や一部の中南米諸国が方式主義の万国著作権条約加盟国であり、著作権表示はそれらの国で著作権保護を受けるために必要であった。しかし、アメリカは1988年10月31日に著作権法を改正して無方式主義に切り替え、1989年3月1日に改正が発行し同日にベルヌ条約に加盟した。中南米諸国もまもなくそれに倣った。その後は、方式主義のサウジアラビアが1994年7月13日に万国著作権条約に加盟したが、2004年3月11日にはベルヌ条約にも加盟した。現在では、ほとんどの国はベルヌ条約加盟国(したがって無方式主義)である。わずかな非加盟国もほとんどは、そもそも万国著作権条約にも加盟しておらず、著作権表示は(著作権が認められるか認められないかはともかく)意味がない。なお、双方に非加盟の国(地域)として台湾が有名だが、TRIPS協定加盟国なのでベルヌ条約相当の条約義務を負っている。著作権表示が有効な国があるとしたら、ということになるが、現在も存在するかどうかはっきりしない。そのため現在は、本来の目的とは異なる、次のような副次的目的が主となっている。もちろん、著作権表示は著作権という財産権の帰属主体を示しているので、必要がないからといって事実と異なる表示をすると違法行為となる可能性がある。アメリカ合衆国では、著作権者による著作権表示が全く無意味というわけではない。1988年の改正著作権法は、ベルヌ条約に従い著作権表示の有無に関わらず著作権を認めてはいるが、著作権表示がない場合の「善意の侵害者 (innocent infrigers)」も認めている。この「善意」とは法律用語であり、「ある事実を知らずに何かをすること」を意味する。善意で著作権を侵害した、つまり、著作権があることを知らずに侵害してしまった場合、法的責任を問われない。つまり、損害賠償責任がない(利益は返還を要求されることがある)。しかし、著作権表示があった場合、善意の侵害者であるとは認められない。そのため、著作権表示をしていたほうが法的には無難である。通常著作権表示と言われるのは、万国著作権条約で定められた「©」表示だが、他の著作権表示や類似の表示もある。なお、「®」(マルR)はその直前の語が登録商標であることを示す表示で、著作権とは無関係である。「℗」(マルP)表示は、「許諾を得ないレコードの複製からのレコード製作者の保護に関する条約」(レコード保護条約)第5条で定められている「原盤権」による保護を受けるための表示である。なお、「レコード」には、CD、カセットなどのあらゆる音楽用メディアが含まれる。原盤権とは、著作権法上の用語では「著作隣接権」のうちの「レコード製作者の権利」であり、いわゆる「マスター音源」の製作者が有する権利である。著作権とは異なる内容の権利である(ただし、アメリカ合衆国著作権法には著作隣接権という概念はなく、原盤権は copyright として扱われる)が、日本では著作権法の中でその権利内容が規定されている。「©」同様、無方式主義国のレコードが方式主義国で保護を受けるための表示である。ただし、原盤権についても現在ではほとんどの国が無方式主義である。「℗」記号と、最初の発行年を、レコードまたはその容器包装(ジャケットなど)に表示する。「©」表示と違い、レコードまたはその容器包装の表示から原盤権者が明らかなときは、「℗」表示自体に名前は必要ない。著作権者と原盤権者が同一である場合には、「℗&© ……」とまとめて表示することもある。しばしば著作権表示に書かれる「」は、著作権の保護を受けるための「著作権表示」ではあるが、万国著作権条約とは無関係である。1910年にアメリカ合衆国など方式主義諸国が調印した第3条で、と定められていたことによる。この表示により、ブエノスアイレス条約加盟国間で著作権が保護される。そのため、アメリカのような万国著作権条約加盟国かつブエノスアイレス条約加盟国では、「© 権利者名 発行年 All rights reserved」などという著作権表示がされる。これにより、万国著作権条約加盟国とブエノスアイレス条約加盟国の双方で著作権の保護が受けられる。ただし現在では、ブエノスアイレス条約加盟国も全てベルヌ条約に加盟しており、無方式主義により一切の著作権表示なしで著作権が保護される。したがって、「All rights reserved」は現在では意味がない。もちろん、日本などブエノスアイレス条約の非加盟国の著作物には、過去・現在とも意味がない。日本の版権法(明治26年法律第16号)5条で定められていた表記。版権法では、版権(現行の出版権に相当)について保護を受けるためには、内務省に対する登録とともに、出版する複製物に「版権所有」の文字を記載する必要があった。旧著作権法(明治32年法律第39号)により、著作権の発生要件に関して無方式主義に移行したため、この表記の意味は失われた。
出典:wikipedia
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