西名古屋港線(にしなごやこうせん)は、愛知県名古屋市中村区の名古屋駅から同市港区の金城ふ頭駅までを結ぶ、名古屋臨海高速鉄道の鉄道路線である。旅客線としてはあおなみ線(あおなみせん、英称は"Aonami Line")の愛称が付けられている。旅客案内上「あおなみ線」に呼称が統一されており、社名や「西名古屋港線」は使用されない。愛称はイメージカラーの青から「あお」、名古屋から「な」、港から「み」がそれぞれ採られている。名古屋市の中心部と鉄道空白地帯であった港区南部(名古屋港金城埠頭)を結ぶため、東海道本線の貨物支線である西臨港貨物線(西名古屋港線)を全面改良(複線電化・高架化)の上、旅客・貨物共用化した路線である。全線が立体交差であり、このうち小本 - 金城ふ頭間が高架線となっている。沿線には名古屋市国際展示場(ポートメッセなごや)、リニア・鉄道館、名古屋競馬場、イオンモール名古屋みなとなどの大型集客施設がある。旅客列車は、東海旅客鉄道(JR東海)から同路線を譲渡され、第一種鉄道事業者として保有している名古屋臨海高速鉄道が運行している。また、同路線のJR東海からの譲渡後も日本貨物鉄道(JR貨物)が第二種鉄道事業者として、名古屋 - 名古屋貨物ターミナル間において貨物列車の運行を行っている(同路線におけるJR東海の第一種鉄道事業免許は譲渡日で廃止)。線路は名古屋駅で東海道本線の貨物支線(稲沢線)と接続している。2010年(平成22年)度の輸送密度は約8,385人/日、2011年(平成23年)度は約12,867人、2012年(平成24年)度は約12,538人である。全駅でICカード乗車券manacaおよびTOICAに対応している。なお、全国交通系ICカード相互利用サービスには、まず2013年3月23日よりSuicaが、2016年3月12日より残りの7種への対応を開始し、全駅にて全国相互利用対応ICカード(manaca・TOICAやSuicaのほか、Kitaca・PASMO・PiTaPa・ICOCA・nimoca・はやかけん・SUGOCA)が利用できるようになった(リニモへのmanaca導入やゆとりーとラインと同時)。安全対策としてすべての駅のホームにホームドア(可動式ホーム柵)が設置された。金城ふ頭駅にはフルスクリーンタイプのホームドア、それ以外の駅には可動式ホーム柵を設置している。将来の輸送量増加に対応するため、各駅のホーム有効長は20 m車6両分が確保されている。ただし、開業から現在まで4両編成での運行のため、使用していない部分は金属製の柵で区切って立入禁止としている。また、バリアフリーに対応するため、全駅にエレベーターが設置されている。車内自動放送は、日本語が加藤純子、英語がクリステル・チアリの声である。どちらも駅名部分は日本語風に発音する。名古屋駅・中島駅・金城ふ頭駅を除く各駅は「巡回駅」となっており、時間帯によっては駅員が不在となる。すべて各駅に停車する普通列車でワンマン運転を実施している。快速運転は実施しておらず、1時間あたり朝夕ラッシュ時は平日6本(土曜・休日は朝5本・夕方4本)、閑散時は4本の列車が運転される。ほとんどが名古屋駅 - 金城ふ頭駅間の全線を運転する列車だが、朝には(平日は夕方にも)潮凪車庫からの出庫列車として稲永発名古屋行きの区間運転列車がある。お盆期間中の平日も、JRに合わせて平日ダイヤで運行される。大晦日から元旦の終夜運転は行わない。また公式には、2004年(平成16年)10月6日の開業時よりダイヤ改正を行っていないが、2013年(平成25年)12月1日からの毎日、23時半過ぎの通常の最終列車の後の23時台終わりに名古屋発稲永行きの臨時区間運転列車が運行されている。この列車は0時14分に終点に到着する。朝夕のラッシュ輸送を終えて車庫に戻る列車は金城ふ頭駅から潮凪信号場まで回送で運転される。2008年(平成20年)10月23日に発生した名古屋駅での脱線事故以降、名古屋駅での夜間滞泊を中止し、初発列車・最終列車は潮凪車庫との間で回送されるダイヤとなっている。名古屋市国際展示場で大規模なイベントや国家試験などが行われる場合は列車を増発することがある。また、通常行われない快速運転を実施することもある。過去に沿線でアーティストの無料ライブ・コンサートがあった際には、通常は通勤時間帯でも最小10分間隔のところを7分間隔まで短縮して臨時運転したこともあった。2005年日本国際博覧会(愛・地球博)の開催期間中にささしまサテライト会場「デ・ラ・ファンタジア」が開設され、あおなみ線はその利用客で混雑したが、その混雑緩和のために名古屋駅 - ささしまライブ駅間で臨時列車が運転されたことがあった。この臨時列車は本来金城ふ頭駅から回送で潮凪車庫に入庫する列車を名古屋まで回送し、折り返しささしまライブ駅までをピストン運転するものだった。終点のささしまライブ駅には折り返し設備がないため、一度JR東海名古屋工場の側線に入り、貨物列車を待避してから折り返す、特異な運行形態が取られていた。同年3月下旬の週末と祝日に運転されていたが、翌4月上旬には運転されなくなってしまった。駅の時刻表や公式サイトなどで運転が発表されることはなく、非常にひっそりとした臨時列車であった。なお、ささしまライブ行きの列車は2004年9月20日に実施された試乗会でも運転されたことがあり、この時は名古屋駅 - ささしまライブ駅間は回送扱いであった。2011年7月1日、名古屋市長の河村たかしは市議会本会議において、あおなみ線の魅力アップのため、蒸気機関車 (SL) を走らせる方針を明らかにした。運転区間は名古屋駅 - 名古屋貨物ターミナル駅間(途中よりJR貨物の貨物線に転線)で、軌道強度の関係から車両は西日本旅客鉄道(JR西日本)からC56形蒸気機関車160号機と12系客車3両、そして起終点とも転車台がないため折り返し用に最後尾に連結するディーゼル機関車を借り、2013年2月16日・17日に1日3往復「SLあおなみ号」として実験運行が行われた。各列車に200人、2日間で計1,200人の試乗者を募集した。保安装置(自動列車停止装置)はC56形にATS-P対応装置が搭載されていないため、走行予定区間に従来のATS-STを残しての対応となった。名古屋市内での蒸気機関車の運行は1986年に東海道本線・武豊線名古屋駅 - 武豊駅間と東海道本線名古屋駅 - 木曽川駅間にC56形160号機牽引で運行された「SL一世紀号」以来、27年振りのこととなった。当初、名古屋市港区南部方面への鉄道整備は名古屋市営地下鉄東山線を延伸することが考えられていたが、西端は高畑駅まで開業したにとどまり、以南は近傍を通る既設の東海道本線の貨物支線である西名古屋港線を活用することとなった。国鉄分割民営化の際には、将来の旅客線化のために東海旅客鉄道が西名古屋港線を第一種鉄道事業者として承継した。1992年(平成4年)の運輸政策審議会答申第12号で名古屋 - 稲永 - 金城ふ頭間が2008年(平成20年)までに整備することが適当である路線として位置付けられ、事業主体として名古屋市を筆頭に愛知県、名古屋港管理組合といった公共団体、日本政策投資銀行、東海旅客鉄道を始めとする民間企業複数社の出資により第三セクター会社の名古屋臨海高速鉄道が1997年(平成9年)に設立された。同年に第一種鉄道事業免許を取得し、1999年(平成11年)に着工、2004年(平成16年)10月6日の名古屋 - 金城ふ頭間開業を迎えることになった。なお、審議会では名古屋貨物ターミナル駅 - 笠寺駅 - 大府駅間のバイパス線として建設が行われたものの、国鉄末期に貨物輸送量の激減で工事が凍結された東海道本線貨物支線(南方貨物線)の旅客化も検討されたが、こちらは実現せず、2002年(平成14年)よりすでに完成していた高架橋の撤去・跡地の売却が進んでいる。西名古屋港線の旅客化構想が出始めた1986年10月10日から12日にかけて、団体イベント列車として「おもしろ列車かたつむり号」が同線に運行されたことがあった。列車の概要は以下の通りであった。「かたつむり号」の列車名は、西名古屋港線内の線路規格が低かったため自転車並みの速度で走ったことが由来である。2005年6月6日に、当線の応援歌としてCD化された。地元住民にとっても念願の鉄道であり、また沿線には名古屋競馬場などの娯楽施設・商業施設があり、また愛・地球博サテライト会場である「デ・ラ・ファンタジア」へのアクセス路線であることから、この路線が大いに期待された。しかし、開業直前の1日乗降客数が66,000人と予想されたのに対し、実際には27,000人弱にとどまるなど乗客数が予想を大きく割り込んでおり、当初の需要予測の甘さに対する指摘や、事業計画そのものを疑問視する声が挙がっていた。2004年の開業以来赤字が続き、2008年度の決算において累積赤字は135億円弱にまで達し、損失の大部分を減価償却費が占めていた。その後も赤字が解消されることはなく、2009年度の決算において固定資産の減損処理を行った結果413億円もの特別損失を計上し、約415億円もの債務超過に陥ることになった。そのため、2010年7月5日に運営会社の名古屋臨海高速鉄道が事業再生ADRを翌6日に申請し、名古屋市などから400億円の追加支援を受け、当線の運行を続行させつつ経営再建を目指すことが発表された。報道によれば、現在の資本金157億円は全額減資。名古屋市・愛知県からの借入金計約307億円は資本金に振り替え(債務の株式化)、事実上返済を免除。日本政策投資銀行からの借入金約107億円は債権放棄を受ける。名古屋市が第三セクター救済のための特例の市債を発行し同行へ損失補填する。利用者の伸び悩み最大の要因として、名古屋市は三大都市圏の中では公共交通機関より自動車利用率がやや高く、自動車通勤者を公共交通機関であるあおなみ線に転換させるのが難しいことが理由の一つとして挙げられる。市営バスからの旅客の移行もある。また、トランパス対応カードによる名古屋市営交通との乗継割引制度や、連絡定期券割引制度など、市政による支援も大きい。開業当初と比較して早朝・深夜における運行時間帯は拡大し、少しずつではあるが乗客は増えている。2008年10月23日に発生した脱線事故による運休時において、路線の大部分をカバーできる名古屋市交通局(バス・地下鉄)をはじめとする他の交通機関への振替輸送は行われなかった。この時には、代替バス等も用意されず定期券利用者であっても自己負担で他の交通機関を利用することを強いられた。その後の補償については往復乗車券の支給となったため、名古屋 - 南荒子、名古屋 - 名古屋競馬場前など、市バス複数路線または市バスと地下鉄の乗り継ぎを要する区間の利用については、他の交通機関を使用するために要した額に見合わない補償内容となったケースもある。2011年3月14日に開館したJR東海の鉄道博物館「リニア・鉄道館〜夢と想い出のミュージアム〜」および、2012年にささしまライブ24地区に開設した愛知大学名古屋キャンパスによる乗客増や資産圧縮、人件費の節減により、「あおなみ線経営改善第二次 5 カ年計画」において2013年度の黒字転換を目指すとし、2011年および2012年には計画目標を達成し、2013年度に黒字化の見込みが立った。しかしながら、鉄道施設の維持や出向社員・OB社員の高齢化による若手社員への技術継承での経営維持から、第二次 5 カ年計画の期間中ながら「あおなみ線第三次 5 カ年計画」へと転換することとなった。また、筆頭株主の名古屋市から外郭団体に対する自立経営維持としても次期計画としての「あおなみ線第三次中長期 5 カ年計画」が別に策定されている。当線は、1992年(平成4年)の運輸政策審議会答申第12号において、同答申で計画が示されている市交東部線(笹島地区と日進市岩崎地区を結ぶ路線)との相互直通運転を検討するとあるが、事業化の予定の見通しは今のところない。また、建設前に中部国際空港方面への延伸の検討もされていたが、建設費が当時公表で推定総工費2,000億円と大きくなるため撤回された。その後、名鉄常滑線新舞子駅までの延伸が再検討され、事業費は約800億円と試算されている。名古屋駅からは、物理的には、折り返しなしで貨物線(稲沢線)を利用して枇杷島駅に向かい、枇杷島駅から城北線を利用して勝川駅までは相互直通することが可能な構造となっているが、城北線のホームが全駅とも1両分しかなく、全区間非電化であり、さらに中央本線の神領・多治見方面と直通するには勝川駅付近が途切れているため、すぐには不可能である。また、名古屋駅から貨物線(稲沢線)を利用して、東海道本線の尾張一宮駅や岐阜駅まで直通可能な構造でもあるが、貨物列車の利用頻度も高いため、あおなみ線旅客列車の直通運転は実現していない。
出典:wikipedia
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