伊勢うどん(いせうどん)は、三重県伊勢市を中心に食べられるうどん料理の一種である。また、それに使用する麺類の地域団体商標。かけうどん(素うどん)のように多量のツユに浸ったものではない。たまり醤油に鰹節やいりこ、昆布等の出汁を加えた、黒く濃厚なつゆ(タレ)を、太い緬に絡めて食べるものが主流。それぞれの店が独特のだしを用いる。太い麺は長時間かけて柔らかくゆで上げられており、具やトッピングが少なく、薬味の刻みネギだけで食べることが多い。タレはたまり醤油を用いており、色(そばつゆとは別物)は非常に濃く、塩辛いと誤解されがちであるが、見た目程の塩分はなく、概して旨味と甘みが強く、後味がまろやかである。この濃いタレの色は、たまり醤油の色である。麺は極太で、直径1cm前後のものが多い。非常に柔らかく、もちもちしており、一般的なうどんとはかけ離れた食感を持つ。そのため、博多うどんのように、柔らかいうどんが好まれる地域の人には受け入れられやすいが、讃岐うどん、五島うどんのような「コシが大事」という考え方の人には好かれない。極太麺であるために、麺を茹でる時間が非常に長く、通常のうどんが15分程度であるのに対して1時間弱ほど茹でる。コシがないと評されることも多いが、打ち立ての麺にはグルテンによるコシがあり、それを柔らかく茹であげているのであって、コシのない麺だと1時間近くも茹でると溶けてしまう。店や料理人ごとに手法は異なる場合もあるが、それぞれが伊勢うどんの特徴である表面はふんわりとしていて、中はもちっとした麺の食感を出すべく工夫している。伊勢うどんは、ゆで続けているため、すぐに提供できること、また、汁がないため、すぐに食べ終わることができる。お伊勢参りで混み合う客を次々さばくのにも適したメニューともなっている。具は、刻みネギだけか、好みで生卵をトッピングするだけという店が多いが、天ぷらやめひびを載せたものを出す店も珍しくはない。地元の人は刻みネギに伊勢かまぼこと言ったトッピングで食べることもある。また、店によっては、タレではなく一般的なかけうどんのようなつゆで提供する事もあり、数少ないが、焼きうどんを提供する店も存在する。江戸時代以前からこの地の農民が食べていた地味噌のたまりをつけたうどんを、食べやすく改良したものといわれる。もともと、農民が作っていたことから、できるだけ手間がかからず、延ばす手間がいらない太い麺と、また安く済むネギだけの具といううどんが形作られたのではないかと考える人もいるが、実際には米などの粒食が日常の食事であったのに対して、小麦を粉に挽いて作るうどんは祭りの時に手間をかけて作る、ハレの日の食事であり、最高のごちそうと考えられていた。浦田町橋本屋七代目である小倉小兵がお蔭参りの参詣客へと供するためにうどん屋を開業したのが、伊勢のうどん屋の最初と言われている。すぐに参拝客に提供できるように常に茹で続け、必要量を釜揚げしていたため、茹で時間を気にしなくてよいうどんが適していたともされる。他に、神宮へ長旅をしてきた人向け(疲労が溜まっている人向け)の食事として江戸時代に開発された料理であり、疲労が溜まった人向けなので消化が良くなるように麺が柔らかいという特徴を持つようになったのではないかという説もあるが、記録によるものではない。ミキモト真珠島には、かつて伊勢神宮かいわいのうどん店で使われていた手塩皿サイズの食器が展示されており、当時は少量の伊勢うどんを必要な分だけお代わりしていたことがうかがえる。伊勢うどんは手間がかかるため、発祥の地である伊勢市においても、1960年代頃までは店で食べるのが一般的であったが、伊勢うどんの麺の小袋化を始めた山口製麺有限会社の先代と、ミヱマン醤油合資会社西村商店の先代社長の協力により「伊勢のうどんつゆ」が開発され、手軽に自宅で「伊勢うどん」を食べることができるようになり、伊勢の多くの家庭の冷蔵庫にはうどん玉とミヱマン伊勢のうどんつゆが常備されるようになった。また子供だけでも簡単に作れることから、忙しい親に重宝され、伊勢の子供は、伊勢うどんを離乳食で食べ、自分で作る初めての料理として食べ、夜食に食べ、あるいは何にもない時にはとりあえず「伊勢うどん」を食べるというのが当たり前になっていった。なお、ベトナムのホイアンには「カオラウ」という小麦を原料とする太麺の料理があり、17世紀前半の朱印船貿易時代の伊勢商人・角屋七郎兵衛が持ち込んだ伊勢うどんをルーツとする説がある。「伊勢うどん」という名称は昭和40年代(1960年代中期以降)に使われ出したとされるが、それまでは地元の家庭では特に他地域のうどんと違う点があると意識されることのない料理の一つであった。それまでは、単に「うどん」と呼ばれ、店では「並うどん」や「素うどん」と呼ばれていたが、伊勢市麺類飲食業組合は1972年に「伊勢うどん」と呼ぶことに決め、組合員向けの献立表に記載した。その命名のきっかけには、永六輔が当地で単に「うどん」として供されていたものを「伊勢うどん」として、メディアにおいて紹介したことがあったとされる。2008年には、松阪市に本部を持つ三重県製麺協同組合が申請した「伊勢うどん」が地域団体商標に登録された。三重の名物として土産用の麺の味を守るのが目的で、伊勢市の飲食店の営業に影響するものではないという。この地方の小麦栽培では「農林61号」が主流であったが、地域産業振興の活動の中、低アミロース品種である「あやひかり」がこの伊勢うどんに向いていることが明らかとなり、1999年に三重県で試験栽培を開始、2003年(平成15年)よりは奨励品種として採用されている。両品種を使った伊勢うどん(麺)や県内産の大豆を使ったタレは三重県の地域特産品認定事業のEマークに認証されている。2015年、伊勢市の「伊勢うどん協議会」は市内の飲食店28店を「本場のこだわり伊勢うどんの店」として登録した。また、協議会では、登録点を掲載した冊子「伊勢うどんの国パスポート」を発行。登録店舗や市内の観光案内所で無料配布された。スタンプを集めると一味唐辛子や丼など「伊勢うどん」がもらえる活動を行った。神宮のある伊勢市以外にも、近隣の松阪市、鳥羽市や津市などでも提供するうどん店がある。最近では、三重県内の高速道路SA・PA(2007年時点で、東名阪自動車道御在所SA、伊勢自動車道安濃SA・嬉野PA)で供されたり、主に期間限定商品として東海地方のコンビニエンスストア(ローソンおよびセブンイレブン。セブンイレブンに関しては、夏季用と冬季用が存在し、夏季用は冷やしうどんになっている)で売られたりしている。伊勢市周辺の食料品店で市販されているゆで麺は、家庭で3-5分間茹でるだけで、柔らかくもちもちの食感が味わえるように工夫されている。また、みやげ用にゆで麺を常温でも長期間保管できるように真空パックにしてだしをつけた商品は、三重県内だけでなく、中京地区・京阪神などの百貨店や近畿日本鉄道の駅売店などでも販売されている。東京都でも新橋、銀座、渋谷、高田馬場などの個別の店では伊勢うどんを提供する例がある。
出典:wikipedia
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