ハーマイオニー・ジーン・グレンジャー（）は、J・K・ローリングの小説『ハリー・ポッター』シリーズ、およびその派生作品に登場する架空の魔女である。主人公ハリー・ポッターの親友。ホグワーツ魔法魔術学校グリフィンドール寮に所属する女子生徒で、ハリーとは同学年である。ハリーともうひとりの親友ロン・ウィーズリーと共にいつも三人で行動している。魔法使いでなく普通の人間すなわちマグルの両親の下に生まれた魔女である。そのため魔法界のならわしには疎いながらも、生真面目に努力する秀才として描かれる。仲間達を学年1位の知識量と論理的思考力で手助けする役回りである。全巻ファーストネームの「ハーマイオニー」 は、ギリシア神話の登場人物・ヘルミオネーの英語読みである（一例として、ウィリアム・シェイクスピアの冬物語にも同名の女性が登場する）。この名前は発音がやや難しく、作中ではビクトール・クラムが「ハーム・オウン・ニニー」とごまかして呼んでいる。日本語訳では作者の承認のもとに「ハーマイオニー」という表現を採用している。ハーマイオニー自身は、英語の発音が苦手な人に対しては自分のことを「ハーミー（Hermie）」と呼ばせていた。ファミリーネームの「グレンジャー」は、アメリカ合衆国で起きた労働運動「グレンジャー運動」に由来する。これは作中にも反映されており、実際にハーマイオニーは屋敷しもべ妖精のために、4巻前半で屋敷しもべ妖精福祉振興協会を設立し、運動を展開した。瞳の色は茶色、髪は茶色く量の多い縮れ毛(bushy brown hair)。栗色ではない。普段は常に4冊ほどの本を持ち歩いている他、基本的に容姿には無頓着であり、髪も手入れをしないためボサボサである。そのため、魔法薬学の授業では鍋から発生する蒸気を吸って髪が膨らんでいる。作者によれば「肌の色について言及したことは一度もない」としており、実際に作者自身が関わった舞台版のオーディションでは、ハーマイオニー役に映画版とは違い黒人であるアフリカ系イギリス人を選出した。作者がハーマイオニーについて、容姿に自信がない女の子であると語っているように、前歯が大きいことを気にしていた。しかし4巻でドラコ・マルフォイにかけられた歯呪いを治療してもらう際、前歯を本来より少し小さくしてコンプレックスを解消した。また直毛剤を使って髪を結い上げ、美しい姿を見せたところを4巻のダンスパーティの場面で描かれている。尚、映画版ではエマ・ワトソンが演じており、前歯も大きくない、ずば抜けて整った顔立ちである。（ハリーポッターと炎のゴブレッドで、同学年の女子が、ドレスで美しく着飾ったハーマイオニー・グレンジャーの姿を見て、「あれ、"ハーマイオニー・グレンジャー"⁉」と発言している。）1979年9月19日、マグルの歯科医師夫婦の間に生まれる。1991年9月1日、ホグワーツ魔法魔術学校に入学、グリフィンドール寮生となる。10月31日、ハーマイオニーには友達がいないというロンの陰口を偶然聞いてしまい、ショックでハロウィーン・パーティーを欠席。トイレに隠れて泣いていたところをトロールに襲撃されるが、ハリーとロンに救出され、以降、2人と親友になる。1992年、賢者の石を守る薬の論理パズルを解き、ダンブルドアより50点を獲得する。2年次は「秘密の部屋」事件に関してマルフォイを尋問するためにポリジュース薬を密造する。クリスマスにミリセント・ブルストロードに変身しようとするが、飼い猫の毛を飲んでしまったため、しばらく保健室で過ごすことになる。1993年、ホグワーツの「秘密の部屋」から解き放たれた「スリザリンの怪物」の正体にいち早く気づくが、直後に怪物によって石化させられる（後にハリーとロンが事件を解決。ハーマイオニーはマンドレイク回復薬によって石化状態から回復する）。3年次からは、逆転時計を使用し全科目の履修を開始する。1994年、逆転時計を用いてハリーと共にシリウス・ブラックとバックビークを救出する。屋敷しもべ妖精福祉振興協会を設立する。また同年、三大魔法学校対抗試合のためにホグワーツ校を訪れたビクトール・クラムからクリスマス・ダンスパーティーのパートナー（実質的な男女交際）を申し込まれ、彼がホグワーツを去るまで交際する。1995年、ロンと共にグリフィンドール寮の監督生に就任する。またハリーをリーダーとした「闇の魔術に対する防衛術」の学習組織を提案、ダンブルドア軍団の設立に成功する。1996年、ハリー、ロン、ジニー、ネビル、ルーナと共に神秘部の戦いに参加。途中まで優勢に戦っていたが、死喰い人の呪いを受けて気を失って倒れた。1997年夏、両親の身の安全を確保するために自分のことを忘れさせてオーストラリアに移住するようにした上で、ハリー、ロンと共に分霊箱探しの旅に出かけ、最後まで戦い抜いた。7巻発売後、作者がインタビューで語ったところによると、ホグワーツの戦いの後、ハーマイオニーは両親の記憶を戻した上でホグワーツに復学、N・E・W・Tを受験した。その後、魔法省に入省。魔法生物規制管理部で屋敷しもべ妖精などの地位向上に尽力した後、魔法法執行部に異動して純血支持法の撲滅を推進したという。完璧主義者であり、登場初期は他人に対して厳しい態度を取っていたが、ハリーやロンと親しくなってからは、友情に非常に厚い一面を見せるようになる。特にハリーとロンに対しては、たとえ2人と喧嘩中であっても彼らの身を案じている。生真面目で頑固な性格であり、1巻では規則に厳格な態度を取っていた。しかし2巻で「秘密の部屋」を開いた人物を探るために自ら規則を破るなど、巻が進むにつれ目的によっては柔軟な姿勢を見せるようになり始める。ただし基本的には不正を嫌っており、6巻でハリーが「プリンスの教科書」を使って「魔法薬学」の授業で好成績を修めた時は不快感を露わにした。また目的を達成するためには非常に粘り強く、5巻ではハリーに対し「闇の魔術に対する防衛術」の学習組織の設立を説き、ダンブルドア軍団の結成にこぎつけている。用心深く、何事にも根拠を重んじる傾向が強い。作者は公式サイトでハーマイオニーについて「失敗への大きな不安と恐怖」を持っていると語っており、実際に作中、確信のない推測を口にすることはほとんどない。そのため、夢想的なルーナ・ラブグッドに反発する場面も少なからず見られる。いわゆる「本の虫」で、読んだことのある本に書かれた内容ならば、どんな質問にも即答できるほど抜群の記憶力を持つ。知らない物事や理論については本で確認するのが常であるが、それだけに自分の見識を過信している所があり、6巻では魔法薬を教科書通りに作ったにも関わらず、魔法薬に天賦の才を持つスネイプが過去に教科書へ書き加えた（ある意味では正統ではない）記述を元にしてハリーが作成した魔法薬よりも出来が悪かったことにプライドが傷ついていた。とはいえ十分以上に論理的思考力や咄嗟の判断力にも優れているのは確かであり、彼女の知恵で解決した疑問や課題も少なくなかった。優れた頭脳の持ち主ではあるが、箒による飛行訓練やクィディッチゲームなど、身体を動かすことは不得手である。勇敢さを重視するグリフィンドール生であるが、組み分け帽子が彼女の組み分けの際、所属寮をグリフィンドールにするかレイブンクローにするか迷っていたことから分かるように、英知を重視するレイブンクロー生としての資質も持ち合わせていた。実際、勉学に対する努力は惜しまず、3年次には逆転時計を使用して、授業時間が重複する科目を全て履修するといったこともしていた（心身の負担などから4年次以降は一部の科目の履修を止めており、授業時間が重複することはなくなった）。そうした努力の結果、学年1位の成績を修め続け、ホグワーツの多くの教授からその才能を賞賛された。5年次末のO・W・Lでは、受験した10科目のうちハリーが1位の「闇の魔術に対する防衛術」を除く9科目でトップの成績だった。ただしそうした努力が通じない「占い学」については「いい加減でくだらない」と嫌い、教科担当のシビル-トレローニー教授も同様である。その一方でフレッドとジョージ・ウィーズリーの悪戯グッズでも使われている魔法が優秀であれば賞賛する面もある。「死ぬことより学校を退学になることの方が悪い」と発言したことがあるほど、心底、学業成績を気にしている。彼女を前にしたまね妖怪がミネルバ・マクゴナガルに変身し「あなたは全科目落第です」と言い放ったことからもそれが窺える。なお、彼女の守護霊はカワウソであるが、彼女は守護霊の呪文を苦手としており、7巻でハリーはメアリー・カターモールに対し「この人（＝ハーマイオニー）は、この呪文だけが苦手なんだ」と語っていた。3巻では吸魂鬼に襲われたが、守護霊を作れなかったため、気を失っている。また、他にも何回か失敗している。両親は2人ともマグルの歯科医師であり（名前の記述は特にない）、ハーマイオニーは「マグル生まれ」の魔女である。兄弟姉妹についての記述は特にないが、家族について話す場面では常に両親しか登場しない（作者は「ハーマイオニーには妹がいる予定だった」と発言している）。入学当初は取り澄ました態度と授業中の過度な自己主張のせいで周囲から孤立していたが、1巻でトロールに襲われたところをハリーとロンに助けられ、それがきっかけで2人と親友になる。作中ではロンと丁々発止の会話を交わしたり、喧嘩をしては仲直りする場面が数多く登場する。ハリーとは意見が食い違うことはあれど喧嘩にまで至ることはあまりないが、衝動的な部分があるハリーに比べて理屈で考えて行動するため、いさかいが起こることはある。3巻では謎の人物からハリーに贈られてきた箒ファイアボルトの存在を独断でマクゴナガルに報告し、ファイアボルトが没収されたことに激怒したハリーとロンに避けられることになってしまった。ハリーとロンの意見が対立した場合はどちらの行動に理のあるかを考えて判断している。4巻では誤解を受けてロンと仲たがいし孤立したハリーと一緒に過ごし、6巻ではプリンスの教科書やドラコへの疑惑にのめりこむハリーをロンと同じく諌めた。7巻では分霊箱探索の旅の途中にハリーとロンが決裂した際は、当初の決意どおり旅を続けることをロンに説き、ハリーを選んだと解釈したロンに去らないよう懇願し続けた。ハリーやロンと行動を共にすることが多いせいか、同学年の女子の友人の名前はあまり聞かれない（ルームメイトのパーバティ・パチル、ラベンダー・ブラウンくらいである）。一方でロンを通じてウィーズリー家の面々とも親しく、特に姉妹がいないジニー・ウィーズリーにとっては姉のような存在である。またダンブルドア軍団結成時にはハンナ・アボットを連れてきたことから、ハンナと交流があったことが分かる。夢見がちなルーナ・ラブグッドには最初反発する姿勢が強かったが、後に友人として認めている。この他、友人としてはルビウス・ハグリッド、ネビル・ロングボトムらがいる。恋愛に関する描写はハリーやロンよりも早く登場しており、2巻ではギルデロイ・ロックハートに好意を寄せる描写が散見される。4巻ではビクトール・クラムからクリスマス・ダンスパーティーのパートナーを申し込まれ、彼がホグワーツを去った後も文通をしていた。ただし物語ではハーマイオニーがロンを異性として意識する様子が随所に描かれている。4巻ではパートナー探しで自分を申し込み対象の女性として見ないロンをなじり、5巻では女性の感情に鈍感だとロンに厳しく説く。6巻に入るとロンをクリスマスパーティのパートナーにハーマイオニーから誘い、承諾されている。そのため、ジニーやハーマイオニー自身の失言がきっかけで、怒ったロンがラベンダー・ブラウンと交際していた時期は、嫉妬に苦しんだ。ロンとラベンダーのキスを目撃した直後は、復讐心から魔法でロンを襲撃し、顔や腕に多数の引っかき傷や切り傷を負わせた。ロンへの当てつけに「コーマック・マクラーゲンと付き合っている」と発言し、コーマックをクリスマスパーティへ誘ったこともある。ラベンダーを避けるようになったロンからなにげなく「愛してるよ、ハーマイオニー」と言われた際には、茶化しながらも赤面して笑みを浮かべる。なお、作者によると6巻で魅惑万能薬を嗅いだハーマイオニーが感じた三番目の匂いは、ロンの髪のものだという。7巻ではスリザリンのロケットの悪影響を受けたロンからハリーとの仲を疑われるも、ロンがロケットを破壊した後に仲直りし、ホグワーツでの戦いの最中にはロンの言葉に感激したハーマイオニーがハリーの目の前でロンに熱烈なキスをした。映画では、7のパート2で、秘密の部屋で熱烈なキスをした。マグル生まれの魔女であることから、純血主義のスリザリン生（特にドラコ・マルフォイやパンジー・パーキンソン）とは仲が悪い。また卑劣なリータ・スキーターやドローレス・アンブリッジ、根拠のない“占い”を第一に信じているシビル・トレローニーを嫌っている。また男性たちを魅了する美女フラー・デラクール(4巻ではロンがダンスパートナーを申し込んだ)を妬視し、6巻ではモリー、ジニーと一緒になって、フラーへの陰口をロンやハリーに語っている。ホグワーツ卒業後は魔法省に入省して魔法生物規制管理部に入り、のちに魔法法執行部に勤務。私生活ではロンと結婚し、娘ローズと息子ヒューゴを授かった。なお、夫ロンの妹ジニーは親友ハリーの妻であるため、ハーマイオニーから見てハリーは義弟にあたる姻戚である。映画では『賢者の石』から登場。エマ・ワトソンが演じている（日本語版の吹き替えは須藤祐実が担当）。作品ごとにパーマや髪の色が違う他、「アズカバンの囚人」以降は髪型が色々と変化した。なお、原作では性的魅力のある人物によって接する態度を変えることもあったが、映画ではその描写はない（ギルデロイ・ロックハートを贔屓しない、フラー・デラクールをひがまないなど）。ゲームでは『秘密の部屋』までは深見梨加、『アズカバンの囚人』では氷上恭子、『炎のゴブレット』では河原木志穂が日本語版の声を担当している。舞台『"Harry Potter and the Cursed Child"』は、イギリス初演においてが演じ、オフィシャル作品としてはハーマイオニーを演じる初のアフリカ系イギリス人となる予定である。

出典:wikipedia