乱数放送(らんすうほうそう、暗号放送、)は、ラジオ放送のうち、数字、(アルファベット通話表を使った)文字、あるいは単語等を羅列し、組み合わせた「乱数(ワンタイムパッド)」を用いて作成した暗号を人の声、あるいはそれを代替した機械でアナウンスすることによって、特定の相手に対してのみ情報を伝達しようとする様態が認められる番組または放送局の呼称である。乱数放送のほとんどすべては、発信源が不詳であり、なおかつ、それらが何の目的で発信されているか公に知られていない。また、暗号のアナウンスに様々な型式があり、周波数帯上において、絶えず現われては消えることが知られる。その多くはマニアックなBCLファンによって発見され、一定の周波数や放送スケジュールの運用が確認されたうえ、発信源、目的、設備、利用者の通信技量などについて多様な推測がなされている。イギリス、ドイツ、フランス、アメリカ、ロシア、イスラエル、エジプトなど、冷戦のような紛争を抱えた国および、これらの国となんらかの関連をもつ国からとみられる受信例がほとんどである。BCLファンは、特徴的なアナウンス形式から、これらの放送に非公式のニックネームを名付けた(後述)。1990年代以降、乱数放送の活動は微増しているとも、短波を利用した暗号放送はここ数年観測されていないともされる。一般に、乱数放送は、細かな相違があるものの、基本的な通信の書式(送信者、受信対象者を特定するために必要な情報および、伝文内容)に従う。書式がそれぞれのルールに従って暗号化されている(とみられる)ことを除けば、一般の無線通信と比べて特殊なものではない。伝送は正時あるいは30分に始まるものが多い。大抵の場合、放送の冒頭部は、その放送自身と、放送の受取人を表す何らかの種類の認証子を含んでいる。ファンが送信者の特定に利用するのは、数値やアルファベット通話表の「コードネーム」(例えば「Charlie India Oscar」「250 250 250」)、特徴的なフレーズ(例えば「¡Atención! ¡Atención!」「1234567890」)、音楽(例えば 『リンカーンシャー・ポーチャー』『マグネティック・フィールド』)、電子音などである。イスラエルの音標文字放送では、「Charlie India Oscar - 2」と放送された場合、伝文が次に続かないことが確認されている。このように、冒頭部は、後に続くメッセージの特性あるいは優先度を意味することがある。伝文の本体を放送する前に、これらの冒頭部を一定の回数繰り返すものが多い。冒頭部に、その後に送る伝文(とみられる内容)のために、組数の宣言がある放送もあり、その場合は、以降にその組と参照させるとみられる伝文内容が列挙される。組に対応させる伝文は通常4つあるいは5つの数字、アルファベットの羅列である。この場合通常、それぞれの伝文を各組について2度アナウンスすることを繰り返すか、その全体を復唱する。伝文は、一般にワンタイムパッド(=解読するための正しいキーを持っていない限りランダムに生成された文字あるいは数字から理論的に解読できないような暗号)で暗号化されていると考えられている。伝文の長さは様々であり、全ての放送について長さを揃えるもの、内容によって変化するものがある。一部の放送は、1回の伝達の間に複数の伝文を送る。この場合もちろん、それぞれの情報について上記のプロセスの一部またはすべてが繰り返される。最後に、すべての伝文が送られた後、「終わり」を意味するアナウンスで終了する。その放送が使う言語で「終わり」を意味する単語(例えば「メッセージ終わり、通信終わり」「ende」「fini」「final」「konec」など)が多いが、いくつかの放送、特に旧ソ連に起源すると考えられているものは一連のゼロ、例えば「000 000」などで終わる。他のものは音楽あるいは他の種々な音で終わる。ほとんど、搬送波は遠距離伝播が可能な短波が用いられ、電波型式は、AM、SSB、CWなどが用いられている。使われた機器については、考証上あるいは観測上、明確になっている例が多い(冷戦の間にウラル山脈の反対側で西ヨーロッパのエージェントと連絡を取っていたソビエト社会主義共和国連邦は500kW送信機を使っていたという十分な証拠があった。)。振幅変調・周波数可変のB級増幅(プッシュプル式)短波送信機が主力だったとされている。これらの放送の運用ではエネルギーコストは問題でなかったから、多相変調器やPDM変調器は使われなかった()。また、いくつかは10kWから100kWまでの出力を使っているストック短波送信機を用いていたとみられている。DRM多重通信の中で放送されるそれぞれのデータサービスは、SDC データフィールドで信号化される。そして最大2048の異なったデータサービスを可能にする11ビット固有認識コードを持っている。このデータはそのMSCデータグラムの一部として伝達される。ドイツの Welle DRM PADサービスはおよそ800ビット毎秒のデータレートを持っている。MSCラジオテキストデータは80ビット毎秒のレートにおいて送られる。エージェントへの伝達のためのフィールドでは、80ビット毎秒は十分である。一部の放送では、背景に一定のトーンが聞こえる。このような場合、暗号化された伝文は、おそらくバーストトランスミッションのような技術を使って、トーンを変調することによって送られていて、アナウンスは正しい周波数に調整することへの手助けであるかもしれないと考えられている。乱数放送の発信源についての手がかりは、放送においての手違い、無線方向探査の結果(指向性アンテナを使用した二方位受信によっておおよその位置が把握できる)、および短波伝播の知識によってもたらされる。例えば通称「アテンシオン」として知られる放送は、かつてラジオ・ハバナ・キューバと同じ周波数で、同局の音声に混じって聴取されたことがあり、これによってキューバからの送信であることが判明した。乱数放送は、行政機関が「現場」にいるエージェントと連絡する単純かつ極めて簡単な方法として稼働していると推測されている。その推測根拠として、乱数放送はソ連8月クーデター(1991年)のような特殊、異常な政治的な偶発事象の際に、定常的に行っていた放送を、若干異なった内容に変更させたり、想定外の放送を発信したりしている。あるいは、北朝鮮の放送がそうみられるように、非合法の薬の密輸と関係があるかもしれないとか、大規模なドラッグ密売組織によって運営されていると推測する意見もある。「放送」という形をとっているのは、他国へ侵入しており、大掛かりな送受信設備を持つことができないエージェントに対して、当局が双方向の秘匿通信ができる手段が大きく限られるのが最大の理由であろうと考えられている。短波は他の周波数帯に比べ、送受信者間が長い距離で隔てられていても送受信可能である。実際に短波(特に20MHz帯以下)は数ワットの小出力で易々と地球を一周することがアマチュア無線によって証明されている。乱数放送を発信しているとみられる政府あるいは放送局は、それらの存在を認知したりその存在理由を決して明かそうとはしない。「デイリー・テレグラフ」の1998年の記事では、イギリスの貿易産業省(ラジオ放送を統制する行政機関)の報道官の次のような言葉が紹介されている。「これら(乱数放送)はご推察の類のものです。不可解に思う必要はありません。言うなれば、これらは一般消費者向けのものではないのです」アメリカではラジオの周波数帯での観測がされなくなり、同種の通信は衛星を使ったものに移行したとみられている。乱数放送はその放送の特徴により、しばしばファンによってあだ名を与えられる。例えば、MI6によって運営されていると考えられている「リンカーンシャー・ポーチャー」は、放送開始直後と放送の最後に、同名のフォークソングを流すことに由来する。「マグネティック・フィールド」は、放送の冒頭と最後に、フランスのミュージシャン、ジャン・ミッシェル・ジャールの同名の曲を流す。「アテンシオン」は、送信の始めにスペイン語で「¡Atención! ¡Atención!」というフレーズが入るためそう呼ばれる。1997年、乱数放送を録音した4枚組CD「The Conet Project: Recordings of Shortwave Numbers Stations (ザ・コネット・プロジェクト: 短波乱数放送の録音)」がイギリスの Irdial-Discsレコードレーベルからリリースされた。乱数放送の音源を使用した楽曲もある。たとえば、ステレオラブの『Pause』、ポーキュパイン・トゥリーの『Even Less』、クロマ・キー()の『Even the Waves』、ウィルコの楽曲など(ウィルコのアルバム『ヤンキー・ホテル・フォックストロット』は、そのサンプリングされたメッセージにちなんで名を付けられた)である。スコットランド出身のテクノバンドボーズ・オブ・カナダは早い時期に乱数放送に影響を受けたほか、ペル・ウブのスコット・クラウス()は乱数放送の熱心なファンで、いくつかの楽曲で乱数放送をフィーチャーした。また、DJシャドウはアルバム『Endtroducing...』でThe Conet Projectをサンプリングした。日本では石野卓球が高名なフレーズ‘Yankee Hotel Foxtrot’をモチーフにした『Y.H.F.』なる曲を発表している(ソロアルバム『CRUISE』収録)。キャメロン・クロウは、映画『バニラ・スカイ』のシーンで『ザ・コネット・プロジェクト』の一部をフィーチャーした。彼は混乱の感覚を作るために乱数放送の録音を使ったと述べた。日本周辺では、北朝鮮が乱数放送を用いて、各国に潜伏するエージェントに向けた指令を送信していることが報道等によって広く知られている。北朝鮮の通称「A3放送」(旧電波型式表記でいうA3、つまりAMを用いていたためこの名がある)は南北首脳会談が開催された2000年以来長い中断をはさみ、2016年に再開された。日本人拉致事件や、大韓航空機爆破事件に関する指令もこの放送によって行われていたという。なお、アナウンスによる乱数送信よりは、CWによるものの方が活発、大規模に観測されている。このほか、韓国、中国、台湾が積極的に使用しているとみられている。このうち、韓国発とみられる暗号放送の観測が2008年後半より活発化しているという。以下に、日本で良好に受信出来る(出来た)乱数放送についてまとめる。日本由来のものは今のところ確認されていない。。
出典:wikipedia
LINEスタンプ制作に興味がある場合は、
下記よりスタンプファクトリーのホームページをご覧ください。