『狂おしき華燭』（くるおしきかしょく）は、官能小説作家・千草忠夫が著した全9章構成の中篇SM小説である。本作は、雑誌「SMフロンティア」（司書房）の1977年1月号に一挙掲載された。挿絵画家は水城淳。この作品は、千草忠夫が先だって1974年2月号の「SMファン」（司書房）に発表した中篇『被虐の契り』の題名および登場人物名を新規のものに差し替え、さらに叙述の一部を改訂、原型の終盤にあたる部分を短縮したものである。改訂以前の原型については被虐の契りを参照のこと。上流家庭の箱入り娘で、かなりの美貌と教養を誇る久松雅子は、半年の恋愛期間を経て、数え切れないほどデートを重ねた恋人の柴田則人と婚約する。だがこれまで毎回のデートにて常に優しい若者だった則人は、婚約・結納が済むと雅子を汚くて狭い連れ込み宿に引っ張り込んで、まるで人が変わったように扱い、半ば強姦同然に彼女の処女を奪う。ショックを受けながらも懸命に恋人を許そうとする雅子だが、次の日、則人は大学から下校中の雅子を呼び止めて、自分の車に乗るように誘う。そして今まで秘密にしておいた恵比寿の高級マンション内にある自分の部屋に連れ込み、そこで初めてサディストの本性を現す。丸裸にされた雅子は恋人の意外な正体を知って激しくおびえ、大声で泣き乱れる。則人はその日の午後の内に、羞恥責め、言葉責め、緊縛、引き回し、吊り、鏡プレイ、鞭打ち、拘束セックス、剃毛…と、本格的なSMプレイの数々を立て続けに敢行。則人は婚約を経て晴れて自分の所有物となった雅子への調教を、マンションに連れ込んだその初日から存分に楽しむ。雅子は強烈な衝撃を受けながらも、持病持ちの母に発作が起きないようにとの配慮もこめて、恋人である則人のアブノーマルな性癖を親にも誰にも秘密にしようと決意する。やがて十日ほどの間を置いて、雅子はふたたび則人の車で彼のマンションへと拉致される。そして調教を再開される。その日の雅子は、男性自身に口で奉仕する行為を生まれて初めて学ぶ。以降は、世間的には将来を誓い合った恋人同士のデートだが、実際にはサディストの恋人からの調教という、雅子の慟哭の日々が続く。こうして雅子は婚約者の則人によって、徐々に被虐の愛に引きずり込まれて行く。やがて雅子の母親も娘の体に色気が出てきた事実を認め、雅子が則人と体の関係ができたと言い当てる。だが雅子は、自分は則人に優しく愛されているとして親をあざむく。何も知らない親の方も避妊にだけは注意するように諭し、それ以上は若い二人の愛の交歓をとがめないように務める。だが現実には現在の雅子は、毎回のデートのたびに変態的な設備と道具のひしめく則人のマンションに連れ込まれ、当の婚約者から淫らで辛い拷問（本格的なSMプレイの数々）を、相手の望むままに受けている。雅子自身はそんな現実を激しく嫌悪しながらも、一方で少しずつ、恋人に辱められていじめられる被虐の快楽を学び出し、すでに本物のマゾ女としての道を着実に歩み始めている。それからさらにまた、およそ一年近い月日におよぶ、則人と雅子の婚約期間が経過する。そしてその年の十二月の吉日、柴田則人と久松雅子とは都内のホテルで、かねてから予定通りの結婚式を挙げる。新婚旅行先である北陸の温泉宿の貸切の離れで、雅子は初夜だけは優しく愛してと願う。そんな哀願を拒否した花婿は、初夜の宿に持ち込んだ多くの異様な道具を使い、花嫁をさまざまなSMプレイで徹底的に責めまくる。そして第二の処女である雅子の肛門へのアナルセックスを要求する。則人の意図を知り、そんなのだけはみじめすぎますと泣いて抗った雅子は、肉をえぐるような激しい鞭打ちに屈服、ついにはうつぶせになって、自分で尻を掲げるポーズをとる。そして今日から夫と呼ぶ男＝則人の性器を菊花に受け入れようと観念しながら眼を閉じる。

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