数式処理システム(すうしきしょりシステム、、,Formula Manipulation System,広義にはSymbolic Computation System)は、コンピュータを用いて数式を記号的に処理するソフトウェアである。コンピュータによる通常の数値計算処理では実数を有限精度の数値(浮動小数点数)で近似し、数値と演算に対して丸め誤差を許容して計算を行なうので数学的に厳密な結果を得ることが困難もしくは不可能であるのに対して、数式処理システムでは主に抽象度の高い記号列を取り扱い,可能な範囲で代数的な規則に基づきながら厳密な記号処理を行う。ただし最近では応用性と実用性の観点から、数値とその演算に対して浮動小数点数も扱える(数値・数式の)融合計算システムとでも呼べるような数式処理システムも増えて来た。また,数式処理システムに向けた計算アルゴリズムを研究する分野も数式処理(あるいは computer algebra の直訳として計算機代数)と呼ぶ。数式処理システムは、一般に次のような数式を表現、保持や演算処理できる。記号的操作には、次のようなものがある。上記以外にも、以下のような機能を持つ数式処理システムがある。多くの場合、プログラミング言語が含まれ、ユーザー自身の作ったアルゴリズムをプログラミングして組み込むことができる。言語の系統は様々で、命令型プログラミングや関数型プログラミングもあれば、制約プログラミングや論理プログラミングもあるし、4GL的なものもある。人類史上初の高級言語処理系であるFORTRAN(FORmula TRANslator)のコンパイラは、その名称に現れているように、プログラムのソースコード中に記述された数式の列を(必要ならば等価な変形や最適化を施して)機械語の列に翻訳する処理を行うものであり、数式処理システムの先駆であった。初期のシステムとして、ノーベル物理学賞受賞のマルティヌス・フェルトマンが理論素粒子物理学計算のために1963年にCDC計算機のアセンブラで開発した、同じく理論素粒子物理学(量子電磁気学、QED)計算のためにAnthony.C.Hearnが1963年にLISP上で開発したREDUCE、天体力学計算に特化したケンブリッジ大学のCAMAL、そのほかFORTRANで記述されたFORMACとPL/Iで記述されたPL/I FORMAC、などいろいろな試みがあった。(REDUCEは今でも商用版あるいは無料版が存在する。今日でもまだ例えば長大な多項式や有理式を主とする計算では価値がある。)1960年代には記号処理の側面から人工知能の研究の一環として主にLISPベースでいくつかの数式処理システムが作られた。その最も典型的な例は、MITのProject-MACの成果であるMACSYMA である。(後にDOE MACSYMAを元にして Common Lisp 上にW.Shelterによって移植して作られたMaximaは、GPLライセンスのフリーソフトウェアとして現在でも開発改良が続けられている)。数式処理研究の初期の方向性は、それまで普通に人間の手計算で行われていた(中学・高校・大学生レベルの)教科書に出てくるような初等的な数式の操作や処理方法を、(主にLISPシステムなどの記号処理系の上で)実装し実現することであった。それにより、人間が手計算で行うのに比べて非常に高速であり、しかも長大な式計算が可能となり、特に(アルゴリズムやプログラムのバグがなければ)計算結果にミスがない利点があった。しかし、次第に試行錯誤による方法の限界と計算量の観点から、より高度な数学を用いた処理の実現に向かい、しだいに普通の人間が行う(初等的で自明な)計算法や公式集に出ている規則のパターンマッチによる適用だけではなく、より系統的な(高度な)数学アルゴリズムの開発と実装へと研究の中心が推移して、それまでの記号処理、人工知能の技法、ソフトウェア技法の応用分野では無くなって今日に至っている。電子計算機が安価にかつ強力になり、また個人での所有と利用も自由にできるようになり、高度でインタラクティブなプログラム開発環境が普遍的となったことなどにより、次第に普通の数学研究者の参入が始まったことで、数式処理に高度な数学を駆使したアルゴリズムが取り入れられる傾向が加速されたといえるであろう。現在、実務であるいは教育で最もよく使われている商業版の数式処理システムはMathematica と Mapleであろう。日本で開発された国産の数式処理システムとしては、理研の佐々木建昭らによるLisp ベースの GAL、元富士通研究所で開発された(現在は神戸大学などが中心となっている) Risa/Asir、シンプレックス社の開発した数学表記のままで処理が行えるカルキング、などがある。1987年、ヒューレット・パッカードは世界初の数式処理機能を持った電卓 HP-28シリーズをリリースした。代数的な数式を入力でき、方程式を解いたり、微積分が可能であった。1995年、テキサス・インスツルメンツは数式処理システム Derive を搭載した電卓 TI-92 をリリースした。その後も TI-89 などの後継機種をリリースしている。国際会議 ISSAC(International Symposium on Symbolic and Algebraic Computation)国際会議 CASC(Computer Algebra in Scientific Computing)国際会議 SNC(Symbolic and Numeric Computation)計算機代数や記号計算の外国専門学術誌には:などがあり、また上記以外の外国雑誌誌で計算機代数や記号計算の論文が良く掲載されるものには:などがある。
出典:wikipedia
LINEスタンプ制作に興味がある場合は、
下記よりスタンプファクトリーのホームページをご覧ください。