全身性エリテマトーデス(全身性紅斑性狼瘡、; SLE, )とは、全身の臓器に原因不明の炎症が起こる、自己免疫疾患の一種である。膠原病の1つとして分類されている。全身性は文字通り体中どこにでも症状が起こることを意味し、エリテマトーデスは紅斑(エリテマ)症を意味し、本疾患に特徴的に生じる皮疹に由来する。英語の病名中にあるlupusはラテン語で狼の意であり、「狼に噛まれたような」と称されるSLEの皮膚症状より名づけられたものであるが、日本語と中国語で狼瘡と呼ばれる事はある。lupusの語は「CNSループス」「ループス腎炎」などで見られる。SLEの発生頻度は女性10に対して男性が1である。また発症年齢は出産適齢期と重なる15 - 40歳が好発であるため、。人種的には、アジア人・黒人が白人より多いとされる。コクラン・レビューは、ざ瘡(にきび)の治療で長期服薬されるミノサイクリンが「10万処方あたり約53症例」の割合で誘発すると報告した。服薬期間との強い関連性が示された。ミノサイクリンは、女性において最高血中濃度と時間曲線下面積が高くなる傾向がある。また、ざ瘡の有病率ピークは女性で24.4±6.6歳であり、SLEの好発年齢と重なる。膠原病の中では、関節リウマチに次いで2番目の頻度で見られる疾患である(ただし、シェーグレン症候群の軽症も含めた患者数は十分把握されておらず、実際にはそれより少ないと考えられる)。抗生物質ミノサイクリンが発症リスクを有意に高めることが分かっている。それ以外の原因は不明である。双生児研究によると、一卵性双生児では14-58%の疾患一致率を認めるが、二卵性双生児では10%に満たない。これはSLEの発症における遺伝因子の強い影響力を意味していると捉えられる。古典的遺伝マーカーとして、"HLA-DRB1"*1501が全人種で関連を認められている("HLA-DRB1"*0301は白人で強い関連を認めるが、他人種では認められない)。ゲノムワイド連鎖解析がこれまで11件行われているが、互いに指し示された領域が異なっていて明確な結論は得られない。それらのメタアナリシスによれば1、6、11番染色体上に疾患感受性遺伝子が存在する可能性がある。ヒトゲノム上のほぼすべての一塩基多型 (SNP)を網羅する研究において、HLA領域のほか、"IRF5"、"ITGAM"、"KIAA1542"、"PXK"、"FCGR2A"、"PTPN22"、"STAT4"各遺伝子や"BLK"、"TNFAIP3" 上に信頼性の高い関連が報告された。これらのうち少なくとも"IRF5"、"STAT4"、"BLK"、"TNFAIP3"などについてはアジア人においてもSLEの発症と関連するほか、アジア人において特有に認められた危険因子も報告されている。また、これらのうち"STAT4"などはSLEのみならず関節リウマチなど複数の自己免疫性疾患と関連していることが報告されてきている。今後は具体的にSLEを引き起こす過程の分子生物学的な研究、後述する多様な病態それぞれとの関連の解明、さらには治療法の開発が待たれている。最新の知見によると、ゲノムのうちの遺伝子以外の部分は遺伝子のスイッチのON・OFFに関与していると判明した。その部分が異常を起こすと、自己免疫系の疾患になることがある。一般に膠原病は、他の膠原病を合併しやすい傾向がある。もっとも多いのは抗リン脂質抗体症候群である。シェーグレン症候群も合併しやすい。そのほか皮膚筋炎・多発筋炎、全身性強皮症との合併もある。特に後者との合併は、それぞれの診断基準を完全に満たすならオーバーラップ症候群といわれるし、すべての診断基準を不完全にしか満たさないものの中には混合性結合組織病という別の疾患に診断されるものもある(この疾患が完全に別の疾患であるのか、単に各膠原病の不全型にすぎないのかは議論があるが、日本では別の疾患としてとらえられ、厚生省の特定疾患の一つに挙げられている)。通常アメリカリウマチ学会の診断基準(1982年および 1997年改定)に従って診断する。感度、特異度とも90%をこえる診断基準である。また、特定疾患の申請においても本診断基準が採用されている。
2012年に改定された。2014年現在、全身性エリテマトーデス(SLE)を根治する治療法は見つかっていない。急激にSLEが増悪(「フレア・アップ」と呼ばれる)することもあれば、何も起こらない場合もある。上記の長い病変リストのうちどれかが急におこったり、急におさまったり、慢性症状となったり、中には病気としての勢いが終息した後も後遺症として残る場合がある。しかし、継続的に医療機関に受診していれば、今後新たな症状の発生を予測できなくとも、現段階で何かがおこりはじめているということについては予測することができる。また、早期治療介入によって病状をおさえ、発病後も発病前同様にそれまで通りの生活を続けることが可能となった。SLEはかつて死に至る病であったが、1950年代のステロイド系抗炎症薬(ステロイド)の登場とともに生存率、QOLのいずれにおいても劇的に改善した。本症におちいった患者は、安定していても終生少量のステロイド(プレドニゾロン)を服用しつづける必要がある。これについては、厳密に科学的または疫学的な根拠があるわけではない。というのも、本症に対してステロイドの投与をやめてみる医者などというものが存在しないからである。とはいっても、自発的に内服をやめてしまった患者の観察などにより、おそらく終生飲み続けなければいけないであろうことは国際的なコンセンサスとなっている。このコンセンサスは強力であって、たとえば他の膠原病である皮膚筋炎・多発性筋炎やベーチェット病などではステロイドをやめることは可能といわれているが、特に全身性エリテマトーデスにおいてのみ不可能であると考えられている。逆に、終生ステロイドを飲み続けていると、本症を完全におさえこんだまま一生を終えることはまれではないであろう。むしろそういったケースではステロイドの副作用(浮腫やうつ状態・白内障)が目立つことになるわけである。本症を急激に発症した最初のときと、CNSループス、ループス腎炎や血液学的異常(血小板減少など)の急激な増悪(フレア・アップ)がおこったときには、強力な治療が行われる。高用量のステロイド内服、ステロイドパルス療法、シクロフォスファミドパルス療法などが行われ、そのほか病態に応じては血漿交換や免疫グロブリン大量投与が行われることがある。また、アザチオプリン、メトトレキサート、シクロスポリンを使用する場合もある。米国ではミコフェノール酸モフェチルが、副作用が少ない効果的な治療薬として注目されている(この場合の「副作用が少ない」とは基本的にはシクロフォスファミドの副作用を対照としたものだが、さらにはステロイドの副作用をこれら免疫抑制剤の併用によって減らしたいという思惑が、現在の欧米の膠原病診療全体の趨勢として感じられる。日本でも2015年より承認された)。発熱、皮膚症状の増悪などマイナーな病勢の悪化に対しては、中等量のステロイド投与や、ステロイドの軟膏を使用することが多いと思われる。関節痛に対しては非ステロイド性抗炎症薬で様子を見ることもある。そのほか病態に応じたさまざまな生活指導が行われる。たとえば、光線過敏症がある場合には日光を避ける生活が必要となる。腎症がわるければタンパク制限などが必要となる。近年は自己幹細胞の移植による治療法が研究されており、さらにヒトゲノムの解読により新たな治療法の研究が加速している。全身性エリテマトーデスに係る治療法は今まさにブレークスルーしつつある段階との指摘もある。新しい治療法としてリツキシマブ、造血幹細胞移植が脚光を浴びている(いずれも日本国内での適応はない)。シクロホスファミド(CYC)はループス腎炎に対して効果がある。ミコフェノール酸モフェチル(MMF)はシクロフォスファミド(CYC)と同等の効果があり副作用は少ない。また、タクロリムスもループス腎炎に適応を有している。かつてステロイド薬が一般化する前(1950年頃まで)は、患者の多くは病状が急激に進行し、合併症で5年以内に死亡していた。しかしステロイドや免疫抑制剤が治療に使われるようになると、90%以上の患者が長期の寛解が得られるようになっている。
出典:wikipedia
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