『ゴジラ』は、1984年(昭和59年)12月15日に公開された日本映画で、ゴジラシリーズの第16作である。カラー、ビスタビジョンサイズ。上映時間は103分。観客動員数は320万人。配給収入は17億円(1985年邦画第2位)。ゴジラ誕生30周年記念映画でもある。『メカゴジラの逆襲』以来9年ぶりに製作された本作は、『ゴジラvsデストロイア』まで続く新しいゴジラシリーズのスタート作品ともなった。劇中では、「1954年のゴジラ出現から30年ぶりにゴジラが現れた」という設定であり、俗に昭和ゴジラシリーズと呼ばれるシリーズ第2作から第15作とはストーリーがつながっていない。そのため、本作以降のゴジラは再び人類の敵として描かれている。次作『ゴジラvsビオランテ』以降は平成期の作品であるため、本作は昭和期に公開された最後のゴジラ映画である。伊豆諸島の大黒島で巨大な噴火が発生。噴火から3ヶ月後、大黒島近海で操業していた漁船「第五八幡丸」が嵐によって航行困難となり、なぜか島へと引き寄せられていく。乗組員はSOSを発信するが、その後に消息を絶つ。一夜明け、付近をヨットで航行していた新聞記者の牧吾郎は、漂流していた第五八幡丸を発見。船内へ乗り込むが、そこにはミイラ化した船員の死体が連なっており、しかもその中にはモリやマキリなどを握っている者もいた。ようやく唯一の生存者である奥村宏を見つけたその時、体長1メートルほどもある巨大なフナムシに襲われ絶体絶命に陥るが、意識を取り戻した奥村に助けられる。奥村は、遭難の際に怪光を発して崩壊する大黒島の中から咆哮と共に現れた巨大生物を見たことを牧に語った後、海上保安庁に保護され、治療及び調査・確認のために警察病院へ入院させられる。そんな中、奥村を見舞った林田信は30年前の写真を見せ、その際の反応から奥村が目撃したという巨大生物がゴジラであることを確信し、内閣安全調査室長の辺見昇に告げる。大黒島の爆発でゴジラが目覚め、寄生したフナムシが放射能を浴びて巨大化し、今回のような事件が起きたという。報告を受けた内閣総理大臣の三田村清輝と官房長官の武上弘隆は、「ゴジラ出現の報道は国民のパニックにつながる」と考えて報道管制を敷き、第五八幡丸はいまだ遭難中、奥村は病院で軟禁状態にして、それぞれ現在も行方不明と発表する措置を執る。謎の巨大生物の特ダネをものにしようとしていた牧は報道管制により出鼻をくじかれるが、代わりに林田との独占的なコンタクトが許された。林田の研究室で手伝いをしていた奥村の妹・尚子に好意を感じた牧は、奥村がすでに救助されていながらゴジラの情報隠蔽のために軟禁されている事実を流すが、病院での兄妹の感動の再会を「取材」してしまったため、尚子の反感を買う。その頃、日本近海を航行していたソ連の原子力潜水艦が撃沈されるという事件が発生。アメリカは関与を否定したが、ソ連はアメリカの攻撃と断定し、両国軍は臨戦態勢に突入する。東西関係に緊張が走る中、自衛隊のP-3C哨戒機が捉えていたソ連原潜の撃沈された際の海面写真を分析した結果、原潜の撃沈はゴジラの襲撃によることが判明。このことを受けた日本政府は東西陣営の衝突を防ぐため、ついにゴジラ報道の全面解禁に踏み切る。その直後、静岡県の井浜原子力発電所にゴジラが出現。ゴジラはヘリコプターで現地へ赴いていた林田の目の前で原発施設を破壊し、原子炉の炉心を取り出して放射能を全て吸収すると、頭上を飛んでいた渡り鳥に吸い寄せられるように海へ去っていく。林田は渡り鳥の発する超音波にゴジラの体内の磁性体が反応して帰巣本能を刺激されたと考え、合成した超音波によってゴジラを三原山へ誘導した後に人工的に噴火させた火口へ落とすという作戦を日本政府に提案する。一方、アメリカとソ連は日本政府に対し、ゴジラへの戦術核兵器の使用を強く要請する。特にソ連は原潜撃沈の報復を主張し、アメリカもソ連に同調していたものの、三田村首相は非核三原則の立場からそれをかたくなに拒み続ける。首相の尽力で米ソによる対ゴジラ戦術核攻撃の危機は回避されるが、日増しにゴジラ東京上陸の可能性が強まる中、政府も新兵器のスーパーXをはじめとする対ゴジラ兵器や、林田の提案したゴジラ誘導作戦の準備にかかる。やがて、東京湾沖の太平洋上で北上するゴジラが発見され、東京湾のいずれかの場所に上陸必至との政府報道が流れると、東京中はパニックに見舞われた。そして自衛隊の厳重な警戒下、遂にゴジラが東京港に出現する。待ち構えていた自衛隊の航空部隊を放射熱線で撃ち落とし、陸上部隊のミサイル攻撃や戦車砲撃をものともせずに東京へ上陸する。その戦闘の最中、東京湾に停泊していたソ連の貨物船に密かに積み込まれていた地上攻撃用衛星の核ミサイル制御装置がゴジラの攻撃により誤作動し、核ミサイル発射のカウントダウンが始まってしまう。30年前の悪夢をたどるかのごとく、ゴジラは街を破壊していく。都民の避難誘導以外にゴジラへの有効な対策手段を持たない政府はスーパーXの発進を急ぐが、カドミウム弾の搭載に手間取り、いまだ発進できずにいた。新宿の研究所でゴジラを誘導する超音波発生装置の開発に苦心していた林田は、目の前にまで到達したゴジラで実施テストを行い、装置を完成させる。しかし、伊豆大島へ向かおうとした林田らは、ゴジラと自衛隊の戦闘の巻き添えによりビル内に閉じ込められてしまう。そして、ついに出撃を果たして期待通りゴジラの熱線に耐えたスーパーXは、核物質の活動を抑えるカドミウム弾を使用してゴジラを昏倒させることに成功する。林田もこの隙に伊豆大島へたどり着ければと安堵するが、カウントダウンを刻んでいたソ連の衛星が新宿のゴジラに向けて核ミサイルを発射してしまう。ソ連から自国ミサイルでは撃墜不可能との連絡を受けた日本政府は、急遽アメリカに核ミサイルの迎撃を要請する。新宿では奥村が自衛隊のヘリコプターで林田らを迎えに来るが、不安定な新宿の高層ビル街の乱気流により、林田と超音波発信装置を引き上げるのがやっとだった。残された牧と尚子は目の前で眠るゴジラと、迫り来る核ミサイルの恐怖に戦慄する。その頃、アメリカ軍が発射した迎撃ミサイルがソ連の核ミサイルを捕捉し、撃墜に成功する。新宿都心での核爆発という最悪のシナリオは回避されたが、成層圏での核弾頭撃墜により発生した高高度核爆発が電磁パルスを引き起こし、東京は大規模な停電に陥る。ようやく停電の混乱から復旧しようかと思われたそのとき、高濃度の電磁雲により発生した落雷のショックでゴジラが覚醒してしまう。再びスーパーXが応戦するが、カドミウム弾を失い通常兵器でしか攻撃の手段がないスーパーXにもはやゴジラを止める術はなく、遂に撃破される。辺りが炎の海と化す中、戦いの最中に破壊されたビルからの脱出を図っていた牧と尚子にゴジラが迫るが、時を同じくして三原山で超音波発生装置が起動。ゴジラは東京を後にして三原山へと向かい、人工的に噴火させられた火口へ咆哮を上げながら落ちていく。計画は成功したが、林田は噴煙を上げる三原山を沈黙したまま見つめていた。ゴジラに寄生していたフナムシが、ゴジラの放射性物質を浴び続けたことで巨大化した怪獣。這いずり回る際には、粘液状の物質を垂れ流す(牧吾郎が漁船「第五八幡丸」内を探索中、付着していた粘液に偶然触れ、慌ててその場にあったタオルで拭うシーンがある)。銛で突かれた程度では死なない強靭な生命力に、尾部を地面に打ち付けた反動で人間の肩の高さ程度まで跳躍できる体力を持つ。劇中に怪獣名は登場せず、単に「フナムシの化け物」か「巨大なフナムシ」としか呼ばれない。第五八幡丸の乗組員たちを襲い、彼らの銛による反撃をものともせず、体液を吸い尽くしてミイラ化させていた。その脅威から唯一逃れて潜伏中の奥村宏を発見した牧に襲いかかり、体勢を崩した彼に噛みつこうと迫るが、奥村に斧で倒される。映画本編では1匹しか登場していないが、脚本では複数(4匹 - 5匹)現れたことが奥村によって語られている。アメリカ公開版の新撮シーンでは、日本の海岸へショッキラスの死体が漂着したことがペンタゴンの軍人により語られている。また、初期稿とノベライズには群れで漁村を襲撃するシーンがあった。デザインは仁科秀昭、造形は鈴木利幸。準備稿まではゴジラに寄生する巨大なダニであった。ゴジラの寄生生物という案は、1955年に海上日出男によって書かれたシナリオ『ゴジラの花嫁?』に「ゴジラやアンギラスに寄生する巨大なノミ」として登場した以降、1970年代後半に検討された企画『ゴジラの復活』から登場し続けている。※クレジット順。役名表記は『東宝SF特撮映画シリーズVOL.1 ゴジラ』に基づく。以下ノンクレジット出演者以下は海外版のみの出演1978年2月4日に田中友幸主宰の「ゴジラ復活会議」で石上三登志、白井佳夫、外山朗、西沢正史、角田健一郎、坂野義光らによって検討が行われた結果、作品担当は所健二、中河原哲治に受け継がれ、関沢新一、眉村卓、光瀬龍らによって幾つもの脚本案が発注されたが、目処は立たなかった。1978年6月から1980年秋にかけては中西隆三や村尾昭によって脚本が書かれたが、採用には至っていない。1983年8月に新宿ミラノ座で行なわれた「ゴジラ復活祭1983」が好成績を挙げたことで、東宝社内にくすぶっていた再製作気運が盛り上がり、同年12月26日に「ゴジラ復活準備委員会(G委員会)」が東宝社内に発足、新作製作への第一歩を踏み出した。G委員会のメンバーには、委員長・堀内實三取締役映画営業担当兼映画調整部長(1984年6月から映画調整部長兼宣伝部長)、副委員長・田中友幸、筆頭幹事・石田敏彦取締役映画興行担当ら当時の東宝の首脳陣が揃い、東宝全社をあげての大プロジェクトに発展していった。原点回帰を目指した「怖いゴジラ」や「ゴジラは核エネルギーを吸収する」という設定のもと、ゴジラが静岡県内に存在する架空の「井浜原子力発電所」を襲うシーンが描かれる。ゴジラの造形は高層化の著しい新宿のビル群に合わせ、体長も50メートルから80メートルへ巨大化された。顔も凶悪な初代をイメージしたものになり、鳴き声も前シリーズで甲高くなっていたものを、初代の低く重厚なものに、さらに猛獣のようなうなり声を追加している。本作では怪獣映画という路線から一線を画し、1973年の映画『日本沈没』や1980年の『地震列島』の流れをくんで災害パニック映画として描かれている。「現実にゴジラが現れた場合の対応」をリアルに表現するため、政府や自然災害など、各方面の専門家を特別スタッフとして招いている。またストーリーには冷戦末期である当時の国際情勢を反映し、日本近海におけるソ連原子力潜水艦の脅威やアメリカの戦略防衛構想などの影響、相互確証破壊の概念への言及、さらには全面核戦争への懸念および市民レベルでの核攻撃時の対処法などが散見される。特撮面では井浜原子力発電所や新宿副都心のビル群が精巧に再現されるなど、それまでのお正月映画では不可能な潤沢な予算と期間ならではの豪華なセットが組まれた。そのセット費用は井浜原子力発電所が8000万円、製作期間に2ヶ月をかけた新宿副都心の高層ビルやその他のビル数130本、電球数200個の合計で1億5000万円。有楽町セットは2つのセットより精巧に再現されており、特技監督の中野昭慶は効果的に壊れるミニチュアの素材選びにもこだわっていた。1985年の正月映画として1984年末に公開されたため、制作年や公開年の表示は1985年とされることもある。脚本には田中文雄の推薦で『蘇える金狼』や『惑星大戦争』の永原秀一が、監督には『さよならジュピター』の橋本幸治が起用された。また、本編スタッフも『さよならジュピター』の面々に1954年版『ゴジラ』と黒澤組の面々で固められ、特撮スタッフも中野昭慶をはじめとするスタッフで固められた。音楽には伊福部昭の起用も考慮されたが、伊福部の体調が悪かったため、オーディションで選ばれた小六禮次郎に決定した。歴代シリーズでも数少ない、伊福部の音楽がまったく使われない作品となった。キャスティングには田中健、沢口靖子、宅麻伸ら当時の若手を中心に、『三大怪獣 地球最大の決戦』以来20年ぶりに夏木陽介が東宝特撮映画に出演し、3人の脇を固める。ゴジラ出現に苦悩する首相には、監督の橋本と親交がある小林桂樹が起用された。その他、東宝特撮映画の常連の小泉博や田島義文をはじめ、『白い巨塔』や市川崑監督作品の常連である小沢栄太郎、金子信雄、加藤武、佐藤慶、石坂浩二、『ナショナル劇場』の常連である内藤武敏、鈴木瑞穂、織本順吉、御木本伸介、森幹太、山本清、村井国夫、橋本功、潮哲也、江幡高志らが閣僚や学者役などで特別出演している。石坂浩二は、井浜原発で最初にゴジラを目撃する男性職員を演じている。当初出演予定はなかったが、石坂が監督の橋本に「金(ギャラ)なんかいらない、ワンカットでも出ることに意義があるんだ」と直談判し、端役での出演が決まった。ゴジラが持ち上げた新幹線の乗客の1人を演じたかまやつひろしは、当時放映されていたテレビドラマ『ビートたけしの学問ノススメ』の釜田先生の衣装とアクションで登場。他の乗客が悲鳴をあげるなか、ただ1人ほほえみを浮かべていた。ゴジラから逃げ惑うエキストラとして、鳥山明・さくまあきら・堀井雄二が参加している。本編中ではさくまが大笑いしながら走ったため、大写しにならなかった。なお、写真ポスターにおける群衆の最前列の中央には、鳥山が写っている。劇中にはゴジラが有楽町を通過する際に有楽町マリオンや新幹線を破壊するシーンが存在するが、これはシリーズ第1作『ゴジラ』でゴジラが日本劇場を破壊するシーンや列車を襲うシーンとの対比となっている。また、ゴジラが住友ビルを倒すくだりは撮影中にスタッフの間から出たアイデアによるもので、本当に倒せるかを工学博士の大崎順彦に検討してもらってOKが出たため、実現した。首相役の小林桂樹が三原山火口に落下していくゴジラを見ながら涙を流すシーンがあるが、これは脚本に無く小林自身のアドリブである。涙を流さないカットも撮影されたが、監督の橋本はのちに情感に負けて涙を流すテイクを採用したことを反省したという。後年に出版された著作でこのシーンについて尋ねられた特技監督の中野は「涙を流さない方が強かったと思う」とコメントしている。海外では『THE RETURN OF GODZILLA』のタイトルで吹き替え版が公開されたが、アメリカでのみ『ゴジラ1985』(GODZILLA 1985)のタイトルで新作カットを加えて公開された。配給はニューワールド・ピクチャーズ。編集はR・J・カイザー。興行的に成功するも、批評家の反応は低かった。『ゴジラ1985』では、かつて『怪獣王ゴジラ』に登場していた新聞記者スティーブ・マーティン(演:レイモンド・バー)が再登場する。30年前にゴジラと遭遇した経緯から、スティーブがアメリカ国防総省へ招かれて再びゴジラの東京襲撃を目撃する場面が追加撮影・再編集され、いくつかの場面や効果音が短縮変更された。その後、日本でも字幕付きのビデオが発売された。原典ではソ連軍人が誤作動した核ミサイル制御装置を止めようとして殉職するが、海外版では傷つきながらも最後の力を振り絞って核ミサイルの発射ボタンを押すという正反対の行動へ改変されている。また、エンディングは「ゴジラ・愛のテーマ」ではなく、劇中音楽3曲(スーパーXのテーマ)と、アメリカで作曲されたと思われる音楽が組み合わされたものとなっている。第6回ゴールデンラズベリー賞の最低助演男優賞にマーチン役のレイモンド・バーが、最低新人賞にサイボットゴジラがノミネートされている。ドクター・ペッパーがスポンサーとなっており、当時アメリカではゴジラが登場するテレビCMが放送された。本編BGMはすべて小六禮次郎が作曲。予告編では伊福部昭の曲が使われている。公開前日の1984年12月14日には、TBSテレビで公開記念特別番組『ザ・ゴジラ・スペシャル』が放送された。映画に出演した武田鉄矢と沢口靖子が司会を務め、同じく映画に出演した小林桂樹や夏木陽介、制作スタッフがゲスト出演した。内容は映画制作の舞台裏密着に加え、ゴジラに関するクイズに当時放送中だったTBS番組の出演者が挑戦したり、ゴジラによるドッキリや、タレントがゴジラに関するコントを行なうなど、バラエティ色豊かな2時間のものであった。2008年に日本映画専門チャンネルで放送された特別番組『ゴジラが来る!』では、本作で昭和シリーズ(第2作『ゴジラの逆襲』から第15作『メカゴジラの逆襲』まで)の存在が否定されたことを(ジョークの一種として)ジョージ・オーウェルの小説『1984年』(小説の舞台でもあり、本作公開の年でもある)になぞらえ、「管理社会が情報を抹消した」などと紹介している。公開から2年後の1986年に、三原山が噴火した。本作のラストシーンは、「ゴジラが三原山の火口に誘導されて落とされ、消息不明になる」というものだったため、「噴火はゴジラのたたりなのでは?」とささやかれた。また、噴火と共に「ゴジラ岩」が形成され、三原山の名物スポットになった。なお、本作の地質学者の南による台詞に「マグマが外輪山を越えてふもとへ流れ出ることは無い」というものがあるが、現実の噴火では溶岩流出は外輪山の外側でも発生した。
出典:wikipedia
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