京急2100形電車(けいきゅう2100がたでんしゃ)は、1998年(平成10年)3月28日に営業運転を開始した京浜急行電鉄の電車。2000形の後継車として、2000年(平成12年)にかけて8両編成10本、80両が製造された。主に京急線内の快特や京急ウィング号に使用される。本項では、特記のない限り各種文献に倣い、京急本線上で南側を「浦賀寄り」または「浦賀方」、北側を「品川寄り」または「品川方」、東側を「海側」、西側を「山側」と呼ぶ。編成番号は浦賀方先頭車の車両番号で代表する。また、「新1000形」は2002年(平成14年)登場の1000形(2代)、「1000形」は1959年(昭和34年)登場の1000形(初代)、「700形」は1967年(昭和42年)登場の700形(2代)、「600形」は1994年(平成6年)登場の600形(3代)を指すものとする。主に京急本線・久里浜線を運行する快特で使用されていた2000形の後継車として製造され、8両編成10本(80両)が在籍する。京浜急行電鉄の創立100周年を記念し、21世紀をかけて「2100」の形式称号が与えられた。本形式の導入により2000形は3ドア化への格下げ改造を受けて1000形や700形を置き換えたので、事実上これらの車両の置き換え用として製造されたとも言える。本形式では車内居住性の向上を重視し、コストダウンとメンテナンス低減・車両性能の向上のため、主制御器・主電動機、座席や座席表地に日本国外製品を数多く導入した車両である。車体はアルミニウム合金製で中間車は基本の連結面間距離18,000 mmだが、先頭車はこれより170 mm長い18,170 mmとした。側面の出入口は片側2扉構造で、両開き1,200 mmドア幅である。主として京急線内の快特に使用され、有料の「京急ウィング号」や「モーニングウィング」にも使用されることから、特急形車両に分類される場合もある。しかし、トイレは設置されていない。車体外板は赤、窓回りをアイボリーに塗装している。前面デザインは600形をベースとし、「都会」・「洗練」・「知的」と「スピード感」をイメージした流線型形状とし、21世紀に向かう京急のイメージリーダーにふさわしい車両を目指した。2157編成は600形606編成と同様に車体の塗装を青に変更し、「KEIKYU BLUE SKY TRAIN」(京急ブルースカイトレイン)の第2編成として2005年6月11日に営業運転を開始した。先頭車正面窓下アイボリー塗装のワイパーカバーには、形式名 (2100) がスリット状の打ち抜き文字で表現されている。これは分割併合時にスリットを通して連結器を見通せるようにしたためである。詳細については後述のバリエーションの節を参照のこと。2015年3月、2157編成は更新工事のため「KEIKYU BLUE SKY TRAIN」を退役し、代わりに同年3月10日に更新工事から出場した2133編成が2代目「KEIKYU BLUE SKY TRAIN」として就役することとなった。1500形アルミ車と600形で採用したLED表示灯は経年変化による照度低下が著しく、また電球の寿命も延びたことから尾灯・急行灯および戸閉灯が2灯の電球となった。尾灯と急行灯の位置は4次車で逆転し、それ以前の編成も変更した。行先表示器は字幕式で、当初は黒地に白文字表記であったが、その後全車両がローマ字併記の白地に黒文字表記式に変更し、さらに2015年1月 - 3月にかけて全先頭車の前面のみがLED式に変更された。車両間には新たに転落防止幌が設置された。正面のスカートは600形のものと類似した形状であるが、600形のものと比較して横幅が狭くなっている。内装のコンセプトはCasual&Free/「若者と自然のエリア」とし、メルティな乗り心地、ソフトでやさしい、深く透き通るような客室空間を演出した。車内は淡い琥珀色の大理石模様化粧板張りとし、連結面の妻壁は淡いパープル系の化粧シート仕上げとした。車椅子スペースは先頭車の乗務員室次位の扉直後に設置をしている。天井部はFRP製の曲面天井構成で、補助送風機はなく、空調吹き出し口を設置するのみである。車内蛍光灯にはアクリル製のカバー付蛍光灯を使用している。床材は新造車としては初めての塗り床構造とし、ベージュとレッド系のモザイク柄としている。電動車の床面には600形と同様に駆動装置点検蓋が設置されているが、点検ブタは縁取りをなくし、床面のフラット化を図った。側窓はすべて濃色グレーの熱線吸収・複層ガラス構成とし、結露防止と空調の効率化のために全てが固定窓である。側窓は天地寸法を950 mmと大きくとり、さらに外板とフラット化を図り、側面見付けを向上させている。カーテンにはパープル系色の西陣織の横引き式プリーツカーテンを設置する。なお、全ての窓が固定式のため、非常時の換気のため、各車2台排気扇を設置している。側扉と連結面貫通扉は軽量化のためにペーパーハニカム構造を採用した。貫通扉は各連結面に設置しており、側扉については室内側は化粧板仕上げ、ドアガラスは側窓同様のグレーの複層ガラスである。各扉上部には京急初採用となるLED文字スクロール表示による車内案内表示器を設置している。料金不要の特急車両として上質なサービスを提供している。室内はオールクロスシートで、ドア間は京急で初採用となる転換クロスシート、車端部は4人掛けボックスシート(固定座席)である。先頭車の運転席背面は前向きの固定座席としており、運転席背後以外のドア前には補助腰掛を設置している。空港連絡列車に使用することを考慮し、一部の固定座席は座面を上げて荷物置場にできる構造となっている。ドア間の座席はノルウェー・エクネス社 (Georg Eknes) 製、座席表地はスウェーデン・ボーゲサンズ社 (Bogesunds) 製である。座席はいずれも瑠璃色(紺色系)に茜色(赤色)の水玉模様入りジャガード織(模様入り)で、枕カバーは一般席が赤色、優先席は灰色系で区別している。転換クロスシート部は座席を向かい合わせで用いないことを前提に間隔を詰めており、シートピッチは850 mmである。営業運転中は一方に向きが固定され、乗客による座席の転換はできない。座席の転換は空気圧による一括転換式を採用しており、始発駅で車掌のスイッチ操作により進行方向へ座席の向きを合わせる。終着駅に到着した際は、到着ホームでそのまま折り返す場合も降車扱いの後ドアを閉め、座席転換後に乗車扱いをする措置がとられている。導入直後、座席の向きを無理やり変えようとした乗客が座席を破損させる事例が生じたため、その後座席の枕カバーに「イスの向きは変えられません」と表示されるようになった。転換クロスシートは関東の大手私鉄では唯一のものである。しかし、座席に掴み手がつけられているもののつり革はドア周辺のみの設置で、通路も狭くなっている。なお肘掛と掴み手の形状は2次車増備時に改良され、その後1次車も仕様を統一した。補助腰掛は出入口と転換腰掛を仕切る壁としての役割がある。背ずりは固定されており、座面が手前に引き出してくる形状である。乗務員室からの操作で鎖錠・解錠が可能で、混雑時には固定され、閑散時は引き出して使用することができる。2007年2月から順次、座席表地(柄は従来と同様)と、同時に補助椅子使用不可ランプが2173編成と同じタイプに交換された。その後、2013年8月から行われている更新工事から、従来の物と同等と思われる表地に戻されている。乗務員室内はベージュ系の配色、運転台計器台は濃い灰色の色調である。計器盤は600形よりも60 mm低くして、特に連結時における前方下部の視認性向上を図った。主幹制御器はT字形ワンハンドル式で、力行1 - 5ノッチ・常用ブレーキ1 - 5段・非常で構成される。マスコンハンドル右端には非常時に使用する「緊急スイッチ」を新たに設置した。制御装置はドイツ・シーメンス社製の GTO素子「SIBAS32(シーバス32)」による VVVFインバータ制御を採用した。これは東日本旅客鉄道(JR東日本)E501系やE2系の一部にも採用されている。車内の製造ステッカーには製造会社の下に「Powered by SIEMENS」の表記がある。発車時の電動機およびインバータ装置から発する磁励音が音階に聞こえることが特徴で、このことから鉄道ファンの間では「ドレミファインバータ」や「歌う電車」、「ドレミカー」と呼ぶ者もいる。だが、回生ブレーキの失効速度が8 - 6 km/h前後と高く、同5 - 3 km/h前後であるE501系と異なり停車時には音階は聞こえない。主制御器はVVVFインバータ装置、フィルターリアクトル、断流器などを「トラクションコンテナ」と呼ばれる一体箱に収めた構成とした。また、この制御装置はベクトル制御やスリップ・スライド制御(空転滑走制御)など高い精度での電動機のトルク制御を行い、本系式の高い性能を実現している。台車は空気バネ(枕バネ)を車体に直結させるダイレクトマウント式のボルスタ(枕梁)付き台車であり、軸箱支持方式は高速走行時の乗り心地の観点から乾式ゴム入りの円筒案内式である。動力台車は「TH-2100M形」、付随台車は「TH-2100T形」と称する。さらに上下振動を減少させ、乗り心地の向上を図るため、軸バネの外側に軸ダンパを設置していたが、後年に撤去された。補助電源装置にはIGBT素子を使用した三菱電機製の150 kVA出力静止形インバータ(NC-WAT150C形)で、本形式より車内の低圧補助回路の電圧を三相交流440Vへと向上させた。電動空気圧縮機にはドイツ・クノールブレムゼ社製のスクリュー式(SL-22形、吐出量は1600 L/min)が採用され、新1000形(5次車まで)にも採用された。集電装置は東洋電機製造製のPT7117-A形シングアーム式を使用している。空調装置は三菱電機製のCU-71G形を使用し、能力は41.8 kW(36,000 kcal/h)としている。外観では装置の前後にFRP製の曲面カバーを設置し、丸みを強調したものとした。1998年から2000年にかけ、4次にわたって製造された。すべて4M4Tの8両編成で、4両 (2M2T) で1ユニットを組む。各次車における主な変更点は以下のとおりである。1998年2 - 3月に落成。この2編成のみ(白幕化当時は)方向幕の字が細かったが、機器更新の際に他編成と同じく字が太いものに交換されているほか、ドアも他の編成に揃えられた。落成時にはワイパーカバーのスリットに各先頭車の車両番号を表記していた(例:デハ2101は「2101」とスリット表記)。その後、2次車の落成時期に2次車と同様の表記方式に変更した。さらに3次車の落成に合わせて2次車とともに3次車に合わせた表記方法に変更した。1998年10 - 11月に落成。ワイパーカバーの車両番号表記を形式名「2100」表示に変更した。このため、車両番号は正面非常扉の白色部の下に4桁表示で記載された。書体は600形などと同様の「スミ丸ゴシック体」であった(1次車も同様の表記に変更)。先頭車にある車椅子スペース部において、カーテンが省略されていたが、新たに設置した。さらに乗務員室背面仕切壁を側面と同様の化粧板張りから、妻面と同じパープル系の化粧シート仕上げに変更した。また、運転席直後の椅子では、立客が寄りかかるため座席の補強をし、暖房器具を隠すカバーを設置し、転換式腰掛の窓側肘掛位置の変更など細かな改良が実施された。1999年4 - 5月に落成。非常扉側の車両番号の表記を落成当初から現行表記とした。正面非常扉にあった4桁の車両番号表記を、白色部への下2桁表示に変更した。書体はワイパーカバーの表記に合わせたものである。同時期に1・2次車もこの仕様に変更し、以後の標準となった。2000年10 - 11月に落成。急行灯を落成当初から車両の外側とした。細かな点では、座席の肘掛を灰色から紺色に変更した。本形式と新1000形アルミ車両(1 - 5次車)で採用したドイツ・シーメンス社製の電機品は、日本製の機器とは仕様が異なる点があり、特に保守面において不利な点があるなど問題点があった。このため、導入から約10年を経て機器の更新時期を迎えた車両より順次、日本製の機器への置き換えが開始された。新しい制御装置は東洋電機製造製のIGBT素子を使用した2レベルVVVFインバータ制御装置(PGセンサレスベクトル制御・1C4M制御方式)を採用した。制御装置は従来の周辺機器一体形から制御装置本体、フィルタリアクトル等が個別設置されたものとなっている。主電動機についても東洋電機製造製の1時間定格190 kWのかご形三相誘導電動機に交換された。主電動機取り付け寸法は交換前の主電動機と同一で、駆動装置や台車の変更はない。この更新工事は京急ファインテック久里浜事業所において定期検査の前に入場させ、約2週間の工期で機器更新を行い、その後定期検査を施工して出場させている。この際車内掲示の製造ステッカーは「Powered by SIEMENS」表記のないものに変更されている。施工順序は以下のとおり。この機器更新は2015年3月の2133編成をもって全編成への施工が完了した。2013年8月15日に更新後の試運転を行った2101編成から車体更新工事が施工されている。工事内容は以下の通り。「*」表記は600形・新1000形10次車以降で採用済みのもの、「**」表記は新1000形11次車以降で採用済みのもの。2016年度は2本(16両)更新される予定とされているが、同年9月現在では2141編成を除き更新済み。2015年初頭あたりから、列車無線の変更(空間波無線(SR)方式化)を前に、新型の列車無線関係装置を乗務員室内の方向幕点検蓋付近に搭載するため、前面の方向幕の整備・交換が困難になることから、前面のみ種別・行先表示がフルカラーLEDに変更され、現在は全編成交換完了している。原則的に、自社線内の本線・久里浜線折り返しの快特として泉岳寺・品川 - 京急久里浜・三崎口間を運転する。朝は特急・エアポート急行にも使用され、平日夜間は「京急ウィング号」、平日朝は「モーニング・ウィング号」として運用される。立席定員が少ない上に2ドアで乗降に時間が掛かるため、女性専用車両が設定される朝ラッシュ時最混雑時間帯の上り列車にはモーニング・ウィング号を除き使用されない。また、午前中のみ空港線への乗り入れがあり、平日は2回、土休日は1回羽田空港へ乗り入れる。本線の堀ノ内 - 浦賀間は早朝しか運用されない。また、逗子線は定期運用はないものの、稀に事故や悪天候等による運用変更で代走として充当される。なお、大師線は4両固定編成のみしか入線できないため運用できない。当初はエアポート快特へ投入する計画があったため、先頭車は地下鉄線への乗り入れに必要な非常用貫通扉を装備するが、2扉・クロスシートという構造から東京都交通局(都営地下鉄)や京成電鉄が乗り入れを認めていないため、自社線内のみで運転されている。このため、8両編成12本96両の製造計画に対して10本80両が落成したところで車両の増備は新1000形に変更され、2100形の製造は2000年に終了した。しかし、600形(2代)からの歴代快特専用車で初めて非常用貫通扉が装備されたことで、2000形までは不可能だった快特専用車の泉岳寺乗り入れを実現し、都営浅草線列車との接続改善に繋がった。ただし10本しかないことから、車両の定期点検時には運用可能な編成が足りなくなる場合があり、その場合は3扉の1500形・600形・新1000形が代走する。京急社内で使用されている列車の車両組成を表す表には「8E」と表記される。2011年11月5日には2141編成が馬込車両検修場で開催された「都営交通100周年記念フェスタin浅草線」で展示された。本形式にとってはこれが浅草線初走行となった。本形式はイベント列車・ラッピング列車としての使用が多い。これまでに運行されたものは以下のとおりである。
出典:wikipedia
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