いただきます(頂きます、戴きます)は、食事を始める際の日本語の挨拶である。「いただく」(「もらう」の謙譲語、または「食べる」「飲む」の謙譲語・丁寧語)から派生したもので、「ます」をつけないと挨拶として機能しない連語である。広辞苑は「出された料理を食べ始めるとき」と限定しているが、自分で作った料理でも言うことがある。また食事だけでなく、物をもらうときにも言うことがある。後述するように、挨拶として広く慣習化されたのは恐らく昭和時代からであり、古くからの伝統であるか疑問視される。「いただく」という語の語源は諸説唱えられてきたものの、いまだ定説はない。この語は、元来、頭上に載せる動作を指す普通語であったが、目上の人から物を賜る時に、それを高く掲げ、謹み(つつしみ)や感謝を表現して受け取ったことから、やがて「もらう」「買い受ける」を意味する謙譲語となっていった。食べ物を「いただく」という場合、改まった式の日の食事で、神の前か貴人の前で、同時に同じものを食するときに言ったもので、もともとは食物を頭か額にまで掲げていたと考えられる。中世に位階が細かくなると、人と会えばどちらかが目上であるということになり、また、相手を目上と思って尊ぶことを礼儀とするようになってからは、「いただく」機会は激増し、この謙譲用法は確立されていった。したがって本来は、飲食物を与えてくれる人、または神に対しての感謝の念が込められていたと考えられる。近年(おそらく昭和後期以降)、特に道徳やマナーなどの教育において、食材への感謝であると説明されることがある。これによれば、食材となった動植物の命を「いただい」て、自分の命を養わせてもらう、その感謝を意味しているという。仮にそうであるなら、食事の前には毎日のように使われていたはずであるが、しかし柳田らが指摘しているように、元来「いただく」は非日常的な場で使われていた言葉であった。したがって、この説は語史的には俗説である。その道徳的価値はともかくとして、歴史的観点から言葉の由来を説明するものではない。「食材への感謝」説の淵源のひとつは、浄土真宗の近年の活動にあるとみられる。それは、2009年以降の食前の言葉「多くのいのちと、みなさまのおかげにより、このごちそうをめぐまれました。深くご恩を喜び、ありがたくいただきます」、そして食後の言葉「尊いおめぐみをおいしくいただき、ますます御恩報謝につとめます。おかげで、ごちそうさまでした」にもはっきりと表れている。しかし、この改定以前の言葉は「み仏と、みなさまのおかげにより(後略)」「尊いおめぐみによりおいしくいただきました」であった。食材の命をいただくといった考えを強調するのは最近の傾向とみられる。食前の挨拶「いただきます」の発声がいつ頃始まったか関しては定かでない。1983年から始められた国立民族学博物館の共同研究「現代日本における家庭と食卓 ── 銘々膳からチャブ台へ ── 」では、当時70歳以上(1913年前後以前の生まれ)の計284人(女性259人、男性25人)にアンケートを行っており、貴重な証言を得ている。これによれば、対象者らが若かったころ、箱膳で食していた時代には、「いただきます」は決して一般的とは言い難いものであった。ほとんどの家庭において食前に神仏へのお供えがあった一方で、食前の挨拶はないことが非常に多く、またあったとしても様々な挨拶の言葉が存在した。それがやがて必ず言うようなものとなり、その文句(「いただきます」に限らない)も統一されてきたのは、軍国主義化していった時代ごろからのしつけや教育によるものであると推測されている。柳田も1946年に出版された著書に、「いただきます」が近頃普及したものだと言及している。Jタウンネットが2015年に実施したネット上のアンケートによれば、食前に「いただきます」と言うと回答した人は合計して9割を超えている。食前の挨拶としては、例えば Bon appétit!(仏、英), Buon appetito! (伊), Guten Appetit! (独)(いずれも直訳は「良い食欲を」)、Eet smakelijk!(蘭、「おいしく召し上がれ」の意) などがあるが、これから食べようとする相手へかける言葉であって、意味的には「いただきます」とはやや性格を異にする。いただきますする。 - 「いただきます」という挨拶の起源や広がりに関する先行研究をまとめ、さらに新たな独自調査を加えたもの。『日本人はいつから「いただきます」するようになったのか』という題で電子書籍化もされている。
出典:wikipedia
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