塩山市(えんざんし)は、かつて山梨県北東部に位置していた市。現在は甲州市に含まれる。「塩山」は市域南西部に位置する「塩の山(しおのやま)」に由来し、古代から「さしでの磯」(山梨市)とともに歌枕として知られる。市域は南北に長く、国道411号が南北に貫く。市南部は笛吹川・重川(富士川水系)の流域であるが、国道411号の柳沢峠より北は、多摩川の流域である。市街地は市の南部にあり、鉄道駅や市役所もここに集中している。市域には山間部を中心に縄文時代の考古遺跡が分布しており、縄文前期末の獅子之前遺跡をはじめ、縄文中期の集落遺跡では下粟生野の安道寺遺跡や中萩原の重郎原遺跡、上萩原の殿林遺跡などがあり、殿林遺跡から出土した深鉢形土器は美術的にも優れた逸品として重要文化財にも指定されている。弥生時代・古墳時代には集落の分布は山間部から扇状地域へと移行し、弥生末から古墳時代初期の西田遺跡には集落跡のほか方形周溝墓群も検出されている。甲府盆地における古墳の築造は古墳前期に盆地南部の曽根丘陵地域において展開され、古墳後期には盆地各地へ古墳の築造が拡散しているが、東郡地域は弥生時代以来の方形周溝墓の築造が引き続いた地域で、市域にも明確な古墳は見られない。古代の律令制下では山梨郡に属し、市域の大半は山梨東郡に比定されている。平安時代の集落跡は山間部や重川右岸の扇状地域を中心に分布し、大木戸遺跡などが知られる。東郡地域は古代甲斐国において在庁官人として勢力を持った古代豪族三枝氏の勢力基盤で、市域の神社などにも三枝氏に関係する伝承が残されている。平安時代後期には甲府盆地各地で荘園が立荘されるが。市域では牧荘が藤木・小屋敷から旧牧丘町域に及ぶ地域に立荘され、平安後期には甲斐源氏の一族・安田義定が牧荘を本拠とし、藤木に放光寺を建立している。義定ら甲斐源氏の一族は治承・寿永の乱において活躍するが、源頼朝の粛清により安田氏は没落する。その後、古代豪族・三枝氏の系譜を引く於曾氏が勢力を持つ。市域には古寺が多く、鎌倉時代後期の元徳2年(1330年)には牧荘主・二階堂貞藤が鎌倉から夢窓疎石を招いて恵林寺を建立した。恵林寺は多くの禅僧が入山し、甲斐国における臨済禅の中心地となった。また、康暦2年(1380年)に武田氏の寺領寄進で抜隊得勝(ばっすいとくしょう)が建立した向獄寺もあり、古刹が集中している。近世には山梨郡栗原筋に属する。25か村前後の諸村があり、江戸初期には幕府直轄領、伊丹氏の徳美藩領や旗本領に属した諸村もある。宝永2年(1705年)には全村が甲府藩領となり、柳沢藩主家時代に分知された甲府新田藩に属する諸村もある。享保9年(1724年)には甲斐一国が幕府直轄領となり、市域の全村が石和代官支配となる。また、御三卿領のうち田安家領や清水家領に属した諸村や、甲府代官支配に移行した諸村もある。生業は市域の地理的特徴から北部諸村は畑作が中心、南部諸村は稲作が中心となったほか、東郡地域で盛んであった養蚕や甲州煙草のひとつである萩原煙草の栽培、柿など果樹栽培も行われた。また萩原山の入会地での山稼ぎが行われ、黒川金山での採掘は近世初頭まで行われた。市域には江戸時代に整備された甲州街道が通るほか、青梅往還や秩父往還など武蔵国へ通じる街道が通り、口留番所が置かれたほか、助郷を務める村々もあった。また、江戸時代の甲斐国では大規模な一揆も発生しているが、寛政4年(1792年)の太枡騒動では市域の諸村でも参加者がおり、天保7年の天保騒動では一揆勢が押し寄せて打ちこわし被害を受けた。1872年(明治5年)、山梨県庁による大小切税法の廃止に対して起こった反対運動である大小切騒動には市域の24か村が参加し、県庁側による鎮圧後に首謀者は断罪された。1875年(明治8年)には県令・藤村紫朗の主導した青梅街道(青梅往還)改修工事が行われ、従来の大菩薩峠越えに代わり新たに柳沢峠越えの新道が開発された。明治期には養蚕業が振興され、1903年(明治36年)には中央本線の塩山駅が開設されると繭市場として発展し、甲州街道・勝沼宿の宿場町として栄えていた勝沼に代わり東山梨郡の中心となる。一方で、1881年(明治14年)の林野官民有区分により萩原山が官収されると、養蚕の木材需要があり、乱伐や盗伐など人的要因により林野の荒廃が進む。1907年(明治40年)に発生した明治40年の大水害では重川流域で堤防が決壊し、甚大な被害が出た。山梨県は小作地率が高く、養蚕業によって支えられた寄生地主制が成立していたが、大正9年の霜害により起こった七里村の下於曾農民組合の闘争は全県的な小作争議に発展する。戦後には養蚕が衰退する一方で葡萄など果樹栽培が増加したほか、大菩薩峠など自然資源や武田氏に関係する古刹や史跡など歴史的資源を利用した観光業へ移行している。
出典:wikipedia
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