髭(ひげ)は、ヒトの顔から顎の下にかけて生える毛のこと。髯、鬚とも書き、くちひげ(髭)、あごひげ(鬚)、ほおひげ(髯)で漢字を使い分ける。英語においても同様に使い分けられている。一方、日本語の「ひげ」のように3者を統括した漢字や英単語は存在しない。男性ホルモンによって発毛が促されるため、思春期以降、男性で陰毛の成長がTannerの分類で第4段階に達した頃から腋毛よりやや遅れて髭が生え始める。しかし、人種、個人により濃さにかなりの差がある。また、髭の生える理由については今もって不明である。身体の保護という説も聞かれるが、本来肉体的に保護が必要な幼年期にはひげやその他の体毛が薄く、女性にも後述の場合を除き、基本的には生えないことから俗説とされている。そのため、髭に生物学的な機能としての意味合いは薄く、特に現代においては多くの人間にとって無用のものとされる。女性でも人種によりひげが比較的濃い場合がある。病気によっても髭が生えることがあり、多嚢胞性卵巣症候群ではホルモンバランスが崩れ、髭が生えたり声が低くなるなど、男性化する。女性が髭を生やす姿は奇異の目で見られ、時にいじめや差別に発展する。他の体毛と比べると大変硬く、同じ太さの銅線に匹敵すると言われる。そのため髭を剃るときには蒸しタオルや湯で髭を柔らかくしておいた方が良い。一人当たり6,000から25,000本程度の髭があり、平均すると一日当たり0.4mm程度伸びるとされている。新モンゴロイドは髭が薄く、これは寒冷気候(冬期は髭を延ばしていると、吐息で凍結して顔が凍傷になる)への適応と考えられている。髭の有無やその容態はその人の印象に大きな影響を与える。近世以降の日本、現代の欧米やその文化的影響を受けた地域のほとんどの成人男性はカミソリ、電気シェーバー等を用いて、髭の手入れを日常的に行う。但し、顔の傷を隠すために、髭を伸ばす者もいる。アレクサンドロス3世(大王)が若く見られたいという理由から史上初めて髭をそったとする伝説もあるが、実際にはそれ以前から人間は貝殻等を用いて髭の手入れをしていたとされる。 紀元前3000年頃には銅製のカミソリを用いていたともされている。イスラムではハディースにより、あご鬚はのばしたまま、口髭は剃らずに刈ることとされる。趣旨としては異教徒のような姿をすることを避けるためであるため、西洋的な服装が普及した社会ではあまり励行されず、ウラマーを除いてはあご髭を刈ったり剃ったりすることも多い。アフガニスタンの最大民族であるパシュトゥーン人の社会などでは一般人にも遵守されることが多い。宗教弾圧を行っている中国では、様々な宗教行為を禁じる政策を実施しており、ムスリムが髭を生やすことも禁じている。近年、ISILを始めとするイスラーム過激派が活発化している中東などでは、過激派と同一視されたくないと考える男性が、髭を剃る事例もある。ユダヤ教ではレビ記で髭を損なうことを禁じており、一般に正統派ユダヤ教徒は髭を蓄えている。一方で律法の伝統的解釈には、禁じられているのは一枚刃の剃刀の使用であり、二枚の刃を用いるはさみの使用は問題ないというものもある。さらに電動シェーバーも一枚刃状でなければ許されるという敷衍解釈もある。キリスト教はレビ記も聖書に含めているものの、西方教会の多くでは髭を剃ることが多い。しかしアーミッシュやフッター派では未婚男子は髭を剃り、既婚男性は髭を伸ばす。東方教会の聖職者と修道士は髭を伸ばすことが多い。モルモン教の生活規範では、特に若い男性はきれいに髭を剃ることが求められる。シク教では創造主への敬意と教団の表象として、髭と髪は切らない。日本では、中世から江戸時代初頭にかけて、武士は髭を蓄えることは当然とされ、髭のない武士は嘲笑された。そのため、髭の薄い者(豊臣秀吉が有名)には付け髭をつけることが行われた。この髭を生やす流行は江戸時代初期まで続いた。一方、江戸幕府が安定期に入り、文治政治の時期に入ると、戦国の気風が幕府に対する謀反の心として警戒されるようになり、大名に髭を剃ることが奨励され、「風紀を乱す」として禁止されるに至った。多くの武士も髭をそるようになり、月代と髷とともに、17世紀中葉までに定着するようになった。ただし、例外的に山吉新八郎の様に、顔の傷を隠す事を理由に髭を蓄える事を仕官先から認められていたとされる事例も存在する。江戸時代には、髭を蓄えることは、降職した武士などの一種の服喪の表現であり、髭を蓄えた人間はどこかしら「卑しい人間」というイメージがあった。江戸時代の「鎖国」(海禁)体制のもとでは、。アイヌ民族が居住する蝦夷地(アイヌモシリ)は、日本から見て「蛮族の地」として扱われた。17世紀半ば以降の日本では、髭をはやさないことが文明人たる日本人の常識とされていた。そのため、当時の日本人の絵画で、髭を生やしかつ髷を結わない野蛮人としてアイヌが描かれたことは、日本人のアイヌに対する偏見や蔑視感の形成及び強化につながった。また、西洋人に対する蔑称である「毛唐」も、当時の日本人からみて、髭を生やすことを「野蛮」とみなす常識を背景として作られた言葉である(ロナルド・トビ『「鎖国」という外交』小学館、2008年)。西洋では18世紀頃から、特にヴィクトリア朝イギリスで髭を蓄えることが流行し、日本でも明治時代にはその影響から地位の高い男性の間では再び髭を蓄えることが流行した。長岡外史などは、殊の外、髭を大事にしており、70cmにも達する「プロペラ髭」と呼ばれる長大な髭を蓄え、それを自慢していた。明治の高官や知識人たちが洋行しはじめた20世紀初頭になると、西洋では髭は時代遅れになりつつあるだけでなく、「下層階級」の象徴にもなっていたため、西洋の風習と思って髭をたくわえた日本人エリートたちを驚かせた。現代の文化においては、髭は無用の長物に過ぎず、相手に必ずしも好印象を与えるものでもないため、生やす者よりも剃る者の方が多い。特に中途半端な髭の生やし方は「無精髭」(ぶしょうひげ)という俗称で呼ばれ、不衛生だと感じる人もいる。高等学校段階までの大部分の学校では、髭をはやすことを校則で禁止している。また大部分の企業でも、食品製造業、飲食業では衛生上の観点という口実から、その他の業種でも接客業を中心として対外的イメージの観点から髭を生やすことを就業規則や服務規程で禁止していることが多い。但し、髭を生やすことを就業規則や服務規程で禁止していない場合、髭を生やしていることを理由に、昇格・昇給などの査定で不利益な扱いをすることや、解雇・停職・降格・減給などの懲戒処分をすることは、人権侵害という判例がある。但し、実際に髭をはやしていることで企業が不利益を被る場合にはこの限りではない。「老成」を尊ぶ儒教の影響もあり、漢民族の伝統的な美意識では、中高年の君子は立派な鬚をたくわえるのが良いとされてきた。例えば「文神」である孔子も、「武神」である関羽も、歴代の皇帝たちも、中国の塑像や絵画では、ひげを伸ばした中高年男性の姿で描かれることが多い。中国の伝統演劇である京劇では、長いひげを伸ばした役柄は「老生」ないし「鬚生」と呼ばれ(「生」は男の意)、芝居の主役を張る重要なキャラクターである。近現代の中国では、髭に対する美意識は欧米文化の影響を受け、大きく変わった。髭はヒトにおいて顔面の体毛が退化した後に、二次的に発達したものと考えられる。思春期以降に発達が始まることもこれを裏付ける。したがって、これにあたるものは他の動物にはない。しかし、顔に生える目立つ毛状のものをこう呼ぶ例はある。イヌやネコなどには口を中心とする頭部に特に長く突き出したまばらな毛が発達しており、鋭敏な触覚器として機能すると言われる。これを洞毛というが、ヒトにはこれは全くないものである。この洞毛のことをひげと言うことも多い。毛ではないひげの例としては、脊椎動物において、頭部近くに生える毛状のあるいは細長い突起物を指してひげということもある。この場合のひげは感覚器として役立っている場合が多い(ナマズ、ドジョウ、ライギョなど)。オジサンは髭の生えた魚である。ヒゲクジラの場合、先端がすだれ状になった歯を鬚と呼んでいる。節足動物では、バッタなどの昆虫の触角を髭ということがある。クシヒゲムシ・ヒゲナガゾウムシ・ヒゲナガカワトビケラ・ヒゲナガガ・ジュズヒゲムシ・ヒゲナガハナノミ・ヒゲコメツキなど、いずれも触角の特徴で名付けられたものである。触手を髭という例もある。以前は有鬚動物と呼ばれた環形動物シボグリヌム科内には、和名をヒゲムシという一群がある。また、植物のごく細い根などもひげ(ひげ根)と呼ばれることがある。ヒゲガラやアカヒゲの場合は鬚は口元の模様である。ムスタッシュ(mustache)という。鼻の下、上唇の上の部分に生えるヒゲを長く伸ばしたものである。鼻からの呼気が直接触れるので、気温が低い冬季には呼気に含まれる水蒸気が凝結してじっとりと濡れるため、始終ハンカチ等で拭く必要がある。また気温がもっと低くなると水蒸気が凍って白くなる。口髭を蝋で固めていた時代には、湯気で形が崩れないようムスタッシュカップのような専用の喫茶道具が使用された。ビアード(beard)という。サイドバーン(sideburn)という。もみあげとの線引きが難しい場所。“長いもみあげ”とかマトンチョップス(mutton chops)などと呼ばれる事もある。エルヴィス・プレスリーやルパン三世等が典型例。口の周りを囲むように生やしているもの。または、顔の周りを囲むように生やしているものを言う。顔の大部分を覆うような髭の意。「Full Beard(完全な髭)」という言い方もする。フィデル・カストロにちなんで「カストロひげ」と呼ばれる事もある。
出典:wikipedia
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