救世軍(きゅうせいぐん、)は、世界126の国と地域で伝道事業(=宗教活動)、社会福祉事業、教育事業、医療事業を推進するキリスト教(プロテスタント)の教派団体。日本では日本福音同盟に加盟している。軍隊を模した組織をとって行う活動や、クリスマスを中心とした年末に行われる募金活動「社会鍋」で有名。なお、英語の「The Salvation Army」を「救世軍」と日本語に翻訳したのは尾崎行雄である。救世軍は、1865年にイギリスのメソジスト教会の牧師、ウィリアム・ブースと妻キャサリンによって、ロンドン東部の貧しい労働者階級に伝道するために設立された。設立当初は「キリスト教伝道会」(東ロンドン伝道会)と称する超教派の伝道団体だったが、軍隊式の組織編制、メンバーの制服・制帽・階級章類の着用、軍隊用語の使用などを採用し、1878年に「救世軍」と改称した。改称に当たってウィリアムは“Not volunteer army, but Salvation army(義勇軍に非ず、救いの軍なり)”という天啓を受けたという。1880年代に爆発的に教勢が伸張し、ブリテン諸島から海外に拡大した。改称に伴い、教理もメソジスト・ホーリネス色が濃いものとなっていく。現在、救世軍は国際連合経済社会理事会 (ECOSOC) において1947年以降、特別協議資格を持つ国連NGOである。米国経済専門誌『フォーブス』の1997年8月11日号ではピーター・ドラッカーから「全米で最も効率の高い組織」として評価され、1991年と2004年にはノーベル平和賞候補に挙げられた。世界福音同盟の加盟団体でもあり、および世界教会協議会とも非加盟の提携関係にある。全世界で1万2千ヵ所近くの社会福祉施設、教育機関、医療施設を運営している。救世軍の軍旗「血と火」は「救いと聖潔(きよめ)」を意味し、救世軍のモットーでもある。日本では1895年から山室軍平らにより布教活動が行われ、廃娼運動を皮切りに、現在では医療施設や社会福祉施設の運営、他国の救世軍と連携しての内外の災害発生時の支援活動なども行っている。他に著名な信徒としては、自由民権運動家の村松愛蔵・落合寅市、ルーテル教会牧師の川瀬徳太郎、元組合派牧師金森通倫(政治家の石破茂の曾祖父)、婦人民主クラブ呼びかけ人山室民子(軍平の長女)、聖書神学者渡辺善太、ヤマト運輸元社長小倉昌男、日本聖書協会副理事長朝野洋(救世軍中将、元日本軍国司令官)、伊藤富士雄(廃娼運動活動家・ゲイ雑誌『薔薇族』創刊者で元編集長の伊藤文學の祖父)、軍平の長男山室武甫およびその妻で作家の阿部光子らがいる。当時日本領だった朝鮮半島では1908年に活動が始まり、1928年ごろに京城の明洞で、社会鍋による募金活動が始まった。1940年(昭和15年)に山室軍平中将が死去すると、憲兵隊により救世軍幹部らが取調べを受け、救世軍解散を迫られた。そこで、日本救世団と組織変更をすることになった。団長に日本救世軍士官学校校長だった渡辺林太郎が選出された。日本1940年9月23日結団式が挙行された。1941年6月に日本基督教団が設立されると、第11部として加入した。1946年9月に日本基督教団を離脱して、救世軍が再建される。ロンドン万国本営との関係を回復する。1947年2月渡辺団長が死去するが、植村益蔵少将が日本救世軍司令官に就任して再建活動を展開する。『ときのこえ』を復刊し、社会鍋、連隊制度などを復活させ今日に至る。現在の救世軍の日本での活動は、東京都千代田区神田神保町二丁目に法人本部である「日本本営」を置いている。1891年にウィリアム・ブースは著書『最暗黒の英国とその出路』を出版し、都市植民・農業植民・海外植民の三段階からなる社会改良計画を発表。10万ポンドの事業資金を公募し、大規模な社会福祉事業に着手した。救世軍は、世界本部である「万国本営」をイギリスのロンドンに置き、最高会議において士官の中から選出される単独の最高指導者「大将」によって統率される。大将の任期は原則5年(70歳定年)で、2013年現在の大将は20代目のアンドレ・コックス(前参謀総長)。なお、創設当初から男女同権の思想が強く、女性の士官も多い。過去にも女性の大将が3名選出されている。救世軍の法的根拠は、イギリス国会の個別法(Private Act of Parliament)である「規約証書」 「増補規約証書」 「1980年救世軍法」に規定され、その変更にはイギリス国会の承認を必要とする。救世軍の組織統治は、信仰面においては、十一か条の「救世軍教理」とその公式解説書である「教理便覧」に示される基準に拠り、実行面においては、「軍令および軍律」とそれらを補足する「覚書」に示される基準に拠り、監督政治を通じて行われる。信仰上および実行上の逸脱に対しては、「兵籍調査会」・「士官審査会議」・「調査委員会」が行う審査に基づいて、公務禁止・停職・除名等の規律が執行される。「教理便覧」と各種「軍令及び軍律」は、大将の権威によって発行され、随時改定される。現在の日本の救世軍は、法的には以下の2つ(かつては3つ)の法人格で活動している。2013年現在の代表者は日本軍国司令官・ケネス・メイナー大佐(在任:2016年〜)。軍国司令官の補佐役である書記長官は藤井健次大佐補(在任:2013年〜)。日本では5年に1回のペースで全国大会が開かれており(2010年、2015年など、年の末尾に0と5の付く年)、組織に関する議論や決定が行われるほか、万国本営より大将や参謀総長らが呼ばれ、大規模な伝道集会が開かれている。伝道集会の説教者には軍外の人も呼ばれており、過去には村岡花子らが説教をしている。その他、まだ信仰に至っていない求道者や、他の教団に所属するクリスチャンが客員として集っている小隊もある。又、地理的な事情(例:救世軍の小隊から遠く離れた地域に仕事などの理由で在住している)等で他のキリスト教会に集っている救世軍メンバーも存在する。出典:八木谷涼子『なんでもわかるキリスト教大事典』189-191ページよりこの言葉はWWW”(While Women Weep―女性が泣いている限り)として語り継がれている。救世軍の教理は、穏健なウェスレー派の特色を持つ11か条の信仰告白によって規定されている。礼拝にはピアノやオルガンと共に、ブラスバンドが使用される(ミュージカル「ガイズ&ドールズ」でも取り上げられた)。「軍歌」(救世軍用語。他派での讃美歌)は独自編集の「救世軍歌集」を使用。楽曲は他の教会賛美歌と重なる(日本では中田羽後編纂・翻訳の「聖歌」と日本基督教団「讃美歌」の両賛美歌集より抜粋)が、救世軍信徒による作詞・作曲の賛美歌もある。礼拝形式は一般のキリスト教会と同じく讃美歌、祈祷、説教などにより構成。必ず「証言」の時間が設けられることが特徴。洗礼や聖餐式などの聖礼典は行なわない。これは救世軍が元々超教派の伝道団体で会員は原則として全員どこかの教会で既に洗礼を受けたクリスチャンであったことや、アルコールが入っているワインを使う聖餐を忌避したことに起因するが、現在は「形式主義を排するため」と説明されている。代わりに、礼拝後に愛餐会(食事会)がしばしば行われる。洗礼は会衆の前で信仰告白を行なう「入隊式」で代替する。入隊式を済ませた隊員(兵士)は他の教団・教会でもクリスチャンと認められ、プロテスタント教会での聖餐式も本人が希望すれば受けられる。説教は単純であり、神学的理論よりも聖霊体験を重視する。礼拝の中心は「恵みの座」と呼ばれる木製ベンチでの祈りに置かれる。伝道方法、管理運営、財務、意志決定については、大将の権限によって発行される各種『軍令及び軍律』によって詳細に規定されている。神学的にはメソジストやホーリネス運動を土台とする穏健な福音派であり、リベラルとファンダメンタリズムのちょうど中間に位置する。とはいえ特定の神学理論や聖書解釈を個々の信徒に押し付けることはなく、リベラルで社会派的傾向を支持する信徒もいれば、逐語霊感説や千年王国論を支持する保守派の信徒もいる(ただし、救世軍全体の公式見解では逐語霊感説はとらず、また「キリスト教以外の宗教にも敬意を持って接し、一定の知識を得るように学ぶこと」とされている)。その一方で信徒の生活規律は厳しく、特に禁酒・禁煙は絶対とされている(これはアルコール依存症者の回復支援をしているためと、飲酒・喫煙を近代の社会悪の象徴ととらえているためである)。また、ポルノや性風俗、開放的な性生活、ギャンブル、薬物・ドラッグの摂取なども忌避する傾向にある。その他、同性愛者などのセクシャルマイノリティーに対しても非容認的態度を示す。このため、アメリカでは同性愛者の社会的権利を保障する地方自治体の条例への対立から、救世軍が地方自治体から受けていた社会福祉事業の委託契約を打ち切られ、これに対して万国本営も同様の条例を持つ地方自治体との委託契約には一切応じてはならないという方針をアメリカの各軍国に命じるという事例が発生している。士官は士官同士でしか結婚できない。このため既婚者が士官となるには、夫婦揃って士官学校(神学校)に入る必要がある。過去には士官夫妻の妻には夫の階級の後に「夫人」とつけて呼ばれていた(例: 少佐の妻は「少佐夫人」)が、1996年からは階級の異なる士官が結婚した場合、本来の奉仕年限に関わらず下級者は昇進するようになった(例: 中尉と大尉が結婚した場合、夫婦両方が大尉になる)。2001年以降は夫婦であっても階級は奉仕年限によるように制度が改訂された。例外が大将の配偶者で、中将の階級になる。社会福祉活動には極めて熱心であり、キリスト教界随一と言われる。上意下達の軍隊式組織により高い活動効率を誇る。現在は医療福祉、老人・障害者・児童福祉、ホームレス支援の炊き出しや施設運営などが中心。災害救援の対応も早く、阪神・淡路大震災の際は、キリスト教系団体の中では最も早くボランティアを組織し駆けつけた。新潟県中越沖地震や東日本大震災の際にもボランティアが給食活動などを行っている。また、海外では医科大学や幼稚園の運営といった教育活動も盛んに行っている。募金活動の1つで年末に行われる社会鍋は季語になるほど有名。バザーも頻繁に行なっており、東京などでは専用の会場で常時開催されている。収益金は全て寄付に回される。かつては職業紹介や失踪者捜索など、現在は行政や警察が主体となっている活動も行っていた。政治との関わりを嫌い、政党の党員は士官学校に入れない。戦争などについては兵士のメンタルケアやカウンセリングには熱心だが、戦争そのものを止めるためには動かない、また、貧困についても救援物資の調達・配布には熱心だが、行政への働きかけなど貧困脱出への具体的な施策は行なわない、とされる。もっとも海外においてはイギリスやカナダの本営がイラク戦争反対や核兵器廃絶を願う信仰告白を発表するなど、若干の軌道修正が見られる。日本では戦前に山室軍平が宗教団体法に賛成した事や太平洋戦争を「海外伝道の良い機会である」と肯定的に捉えていた事、機関紙「ときのこえ」が元号表示だったり、1980年代までは皇族の誕生日のたびに祝いの言葉を機関紙「ときのこえ」の1面に載せていたため、右翼的・保守的だという評価もある。しかし、1940年に軍平の著書『平民の福音』が発禁処分となり、イギリス人宣教師と植村益蔵ら日本人士官がスパイ容疑で逮捕されたり、「皇軍以外で『軍』を名乗る組織が存在することは認められない」という理由で「日本救世団」に強制改称させられ、最終的には日本基督教団に吸収され事実上の解散状態に追い込まれたなどの経験から、実際には右翼的潮流に与することは余りない。2008年10月2日には国際社会正義委員会が軍内に設立され、社会問題についても積極的に取り組むことが表明された。日本本営は、かつてはリベラル派の日本キリスト教協議会 (NCC) (世界教会協議会〈WCC〉、エキュメニカル系)に加盟していたが、「活動内容が政治的過ぎる」と脱退。しばらく日本キリスト教連合会のみに加盟していたが、万国本営の勧めで福音派の日本福音同盟(JEA、世界福音同盟系)に加盟。しかしアジアキリスト教協議会への加盟や「世界祈祷日」(毎年3月第1金曜日)への協力など、NCCとの連携は現在も続いている。軍服調の制服・制帽の着用や軍隊調の用語の使用は外部者には一見特異に映るが、礼拝の形式・内容は一般的なメソジスト教会と同様のものである。極一部に「カルト宗教ではないのか」という誤解もあるが、キリスト教界において異端やカルトとして扱われることはなく、社会的にも宗教組織というよりはキリスト教系の社会福祉団体やNGOの一種と見なされることが多い。かつての制服は救世軍が発足した当時のイギリス軍の軍服を模したデザインであり、詰襟だった。現在は黒に近い濃紺(地域等により白・グレー・ベージュの場合もある)のシングルブレスト開襟で、男性はワイシャツにネクタイ着用、女性はブラウスの襟元に救世軍のマークのブローチ着用というブレザーに近いデザインのものとなっている(夏服として半袖または長袖のワイシャツ・ブラウスにネクタイかブローチ着用、もしくは開襟というスタイルも存在する)。士官は原則として制服の常時着用義務がある。下士官・兵士については以前は士官と同じく制服の常時着用義務があったが、現在は大会や伝道集会などを除いては「推奨」にとどめ、普段着での集会参加を容認している。制服の肩章と襟章(夏服のシャツ・ブラウスは肩章のみ)が階級章であり、士官の肩章と襟章は赤地、下士官・兵士の肩章と襟章は青地または黒地で肩章に入るマークが階級により異なる(襟章に入るマークは同じ軍国の中では全階級共通)。なお、制帽の帽章はクレスト(救世軍の紋章)を用いており、鉢巻部分には活動地域の言語で「救世軍」の文字が入っている。救世軍人が制服を着用することは「神の愛に生きる誓いの証し」という意味を持つ。また、特に救世軍発足当初の女性の救世軍人の制服着用には酒場などで伝道活動を行う際に娼婦と間違われることを避けるという意味もあった。制服は日本では需要の絶対数からオーダーメイドであり一式で8万円前後だが、発祥の地であるイギリスや活動が盛んな欧米では既製品が日本に比べて安価(日本円に換算して一式で3万円ほど)で販売されており、インターネットでの通信販売も行なわれている。
出典:wikipedia
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