農業機械(のうぎょうきかい)は、機械の一種であり、酪農業、畜産業を含む農業 の現場で、人にとって苦痛、困難、不可能なくらい重労働作業を補助、代行するもの。農機(のうき)と略される。農業機械とよく似た意味をもつ言葉として農具と農機具がある。農具と農業機械とのちがいとして、という点を指摘できる。農具と農業機械の区別は厳密なものではないが、という分類に異議を唱える人は少ない。足踏み式脱穀機や、水力や風力を動力とする精米機を農具と見なすか、農業機械と見なすか、は微妙な問題、あるいは各人の好みの問題である。農機具と農業機械のちがいは、農具と農業機械のちがいより一層曖昧である。人によっては、農業機械(農機)と農具の総称として農機具ということばを使う。軽トラックはよく農業に利用されるが(農家では資材や機材、収穫物の運搬に使われる)、これらは一般には農業機械と見なされていない。野球場の整地やゴルフ場の管理にはよく、トラクターが用いられるが、トラクターは農業機械に分類される。カントリーエレベーターのような農業用の施設を農業機械に含めることもある。播種、病害虫防除などに航空機を使用する例もあり、専用に開発された機種(農業機)もある。農業機械化促進法では、農業機械の定義は与えられていない。この法律は「農機具」、「農業機械化」、「高性能農業機械」を定義している。不思議なことには、この法律は「農機具」と「農業機械化」を定義し、「高性能農業機械」の定義に「農業機械」ということばを使いながら、「農業機械」の定義を与えていない。農業機械のなかには、車両の形態をしているものもある。これらのなかには、道路運送車両法、道路交通法にいう軽車両、小型特殊自動車、大型特殊自動車にあたるものもある。詳しくはこの記事の節「車両としての農業機械」を参照。農業機械の特徴として、車両の形態をするものが多いということが挙げられる。農業機械が車両の形態をするのは、農作業の対象である大地や植物を移動させることができないので、機械のほうを移動させて目的の作業を行うより仕方がないからである。この記事の節「車両としての農業機械」も参照のこと。農業機械は雨の中、土や泥の上で酷使されるので、ある程度頑丈、堅牢につくられる。近年まで、堅牢性の観点から電子制御や電気モーターが嫌われ、カムやリンク、ローラーチェーンやベルトによる機構が好まれる傾向があった。現在日本で発売されている乗用トラクターやコンバインは電子制御を搭載している。自動車で採用された技術の1世代、2世代前にあたる、成熟した技術が用いられる。これは、悪条件下での信頼性を優先することや、農業機械では自動車排出ガス規制やNOx規制が近年まで適用されなかったということもある。一部の農業機械は、価格のわりに使用頻度が低いことで特徴づけられる。使用頻度が低くなるのは、農作業が季節的なものだからである。特に稲作においては田植・刈取等のスケジュールに厳密さが要求され、共同利用によるコスト低減は難しい状況である。日本の本州中部の稲作農家の場合、150万円の田植機を使うのは1年に5日間、400万円のコンバインを使うのは1年に2日間、ということも珍しくない。日本では、大型のコンバインハーベスターの価格は1000万円程度であり、大型トラックや建設機械の油圧ショベル、工作機械のマシニングセンタの価格に匹敵する。しかるにコンバインハーベスターは年間数十日しか稼働せず、トラックや油圧ショベルやマシニングセンタが年間数百日稼働するのとは対照的である。一方で、畜産機械など柔軟なスケジュールでの運用が可能な農業機械は、コントラクター(作業受託組織)を利用した共同利用が近年急速に進んでいる。日本では2005年現在全国に437のコントラクターが存在し、中でも北海道等の地域では現在、農協主導で、草の刈取、デントコーンの収穫、サイロ作業、融雪剤散布作業など広範囲な作業が委託されている。農業機械には、車輪またはクローラーと言った走行装置を備え、エンジン等の動力によって自走する機能を持つものがある。この中には車両としての法的な構造要件を満たし、所定の手続を経た上で、小型特殊自動車または大型特殊自動車として公道を走行できるものがある。道路運送車両法では、農耕用の小型特殊自動車は最高速度が35km/h未満と定められ、寸法には制限がない。小型特殊自動車には車検制度もなく、税制上も有利であるため、現在、ほとんどの農耕用特殊自動車が農耕用小型特殊自動車の範囲内に収まるものになっている。中には車両総重量が7トンにも及ぶ巨大な農耕用小型特殊自動車もある。小型特殊自動車に該当する農業機械は、製造、或いは輸入業者等の事業者の任意の申請により国土交通省(旧運輸省)の検査対象外軽自動車等としての型式認定を受けることができ、生研センターの評価試験部でその機能確認が行われる。型式認定番号は、官報で告示されるほか、車体やカタログ、取扱説明書等に記載されている。認定番号の頭文字が「農0000号」と表示されるものが農耕用小型特殊であり、「特0000号」と表示される一般の小型特殊自動車とは区別される。小型特殊自動車の型式認定を受けている農業機械は、販売店が発行した販売証明書を市区町村の窓口に提出し、軽自動車税を納付して交付されたナンバープレートを車体に標示する事によって、公道を走行することができる。また、大型特殊自動車に属する農業機械は、国土交通省各運輸支局での登録・ナンバープレート交付と、2年ごとの車検を受ける必要がある。運転席があり一見して車両のように見えるが、その農業機械が型式認定を受けていないため公道を走行出来ない物があり、注意が必要である。例として、乗用田植機にも小型特殊のナンバーを交付している市区町村が見受けられるが、保安基準を満たして型式認定を受けている乗用田植機は今の所ないことから、公道を走行することができない。あくまでも市区町村が交付する小型特殊のナンバーは軽自動車税の課税標識であり、その交付が公道の走行を許可したものではないことに注意しなければならない。しかし、公道を走行しないからとナンバーの登録をしないと、固定資産税の償却資産として課税対象となる。農耕用大型特殊自動車の運転には大型特殊免許が必要であるが、農耕用小型特殊自動車はその種類により運転に必要な免許に違いがある。小型特殊自動車としての登録であっても大型特殊免許が必要な車両があるのは、免許を規定する道路交通法と車両を規定する道路運送車両法において、小型特殊自動車の定義が異なるためである。なお、大型特殊免許とけん引免許は農耕用トラクターで技能試験を行う「農耕車限定」免許を取得することができる。農業大学校などで、学生や一般の農業者が免許を取得する場合がこれにあたる。運転免許技能試験実施基準では、技能試験に使用する特例試験車として大型特殊免許では「車両総重量1,300キログラム以上の車輪を有する農耕作業用自動車で20キロメートル毎時を超える速度を出すことができる構造のもの」、けん引免許では「最大積載量2,000キログラム以上の被牽引車を車両総重量1,500キログラム以上の車輪を有する農耕作業用自動車(被牽引車を牽引するための構造及び装置を有し、かつ、20キロメートル毎時を超える速度を出すことができる構造のものに限る。)が牽引しているもの」と定めている。農耕用大型特殊自動車は、車検の有効期間を超える自賠責保険に加入する必要がある。農耕用の小型特殊自動車は自賠責には加入できないが、自動車共済などの任意保険には加入することができる。2006年4月1日に「特定特殊自動車排出ガスの規制等に関する法律(通称「オフロード法」)が施行され、公道を走行しない特定特殊自動車に対する排出ガス規制が開始された。この法律はエンジンの出力が19kw(約26馬力)以上の農耕用車両も対象となる。道路交通法において、時速35km/h未満の農業用薬剤散布車と農耕用作業自動車は特定普通自動車と定められている。農耕用車両の乗車定員は1人、運転者以外の乗車装置が有る場合は2人と定められており、最大積載量は特定普通自動車で積載装置を備えるものは1,500kg未満、小型特殊自動車で積載装置を備えるものは500kg未満と定められている。積載物を積載する場合は車体の幅を超えてはならず、車体の長さの10分の1の長さを超えてはみ出してはならないとされており、高さは車両に積載物を積載した状態で3.8m、小型特殊自動車では2.0mを超えてはならないとされている。発展途上国には、トラクターで荷車を牽引し、人や荷物を運ぶ自家用自動車のかわりに使う農民もいる。日本でも、1970年代まで耕転機に連結したトレーラに資材や収穫した農作物を載せて運ぶ光景が、農村部で多く見られた。また、兵庫県の淡路島では、「農民車」と呼ばれる自動車の部品や農用エンジンを使って組み立てた車両が人や荷物を載せて走っている。過去に運輸省の型式認定を受けた事例もあり、車両としての農業機械を考える上で、非常に興味深い。農業機械の種類は非常に多い。農業の形態が多様であり、農業の形態、季節によって農作業が多様であるため、農業機械もまた多様である。以下では、作業の種類、作物の種類、機械の形態による分類を試みる。農具と農業機械との区別は厳密なものではなく、農具から農業機械への進歩は連続的な変化であった。それでも、18世紀の蒸気機関の発明、18世紀から19世紀にかけての産業革命が農業機械の発展に与えた影響は大きい。ヨーロッパの農業では、早くから畜力(家畜の力)、水力、風力を利用した農業機械が用いられ、改良されてきた。農業機械の発展は、農業経営の大規模化と表裏一体に進んだ。18世紀末ごろから脱穀機、刈取機がつくられるようになった。これらは当初、馬を動力として動作した。蒸気機関が実用されるようになってから約50年が経った1849年には、アメリカ合衆国のアーチャンボールト(Archambault)が農用蒸気機関車を製作した。これは脱穀機に動力を供給するための移動式の蒸気機関であった。ガソリン機関が誕生した後、1889年には、アメリカ合衆国のケース会社(J. I. Case Company)によって初めて、内燃機関を搭載したトラクターが作られた。1885年には、刈取りと脱穀を結合(コンバイン、combine)したコンバインがアメリカ合衆国のカリフォルニア州に登場した。明治時代から大正時代にかけての農業機械の導入については、府県では米作関係の調整・加工用機械が中心となった。北海道ではこの時期から各種の畜力・人力を利用した欧米の農業機械が紹介され、プラウ、ハロー、カルチベーターなどのほか、牧草用機械が一部に普及していた。動力を用いた農業機械については、大正年間に動力用石油エンジン・電気モーター等が導入されはじめたほか、1915年に北海道斜里町の農場にアメリカ・ホルト社製履帯トラクターが導入されたのがその始まりと言われている。また、耕耘機も1920年頃から輸入が開始され、岡山県では複数のメーカーにより自動耕耘機の国産化が図られた。しかし、動力を用いた農業機械の導入が本格化するのは戦後になってからである。1953年の農業機械化促進法の制定や、1950年頃からのメリーティラーの導入がそれを後押しした。トラクターは、戦後、耕耘機の普及の後を追う形で普及していった。1950年、農林省が3台のファーモール製のトラクターを輸入し、各地の農業試験場で試験を行ったのを皮切りに、1952年にはフォードソン、ランツ等のトラクターや、農業用トラクターとしても使用できる農業用ジープが輸入開始されている。1960年11月に経済審議会が答申した国民所得倍増計画の下では、上昇する生活費を確保するために農業経営の規模拡大が唱導され、農業所得の増大が見込めない農家では兼業化が加速された。農業も産業として自立することが求められ、農業構造を改善して「自立経営農家」を育成し、大型機械を導入するための「協業の助長」が大きな政策目標となった。1961年の農業基本法制定に続いて、1962年から農業構造改善事業が開始された。これは圃場整備、大型機械の導入利用、選択的拡大作目の導入をセットにして助成・融資するところに特徴があった。家計収支が上昇する中で農業経営を自立させるには面積規模の拡大、あるいは資本投下など集約度の増大が不可欠であった。これらを受け、1960年代から1970年代にかけては、トラクターの普及に伴って各種作業機、コンバイン等の輸入が急増するとともに、それらの国産機も開発され、次第に農家に浸透していった。日本の水田稲作に合った田植機やハーベスター、コンバインが開発された1960年代以降、日本では農業機械が急速に普及した。現在では水田稲作の機械化は完成の域に達したという声も聞かれる。また、1980年代から蔬菜園芸(畑作)の機械化が進展し、ダイコン、ニンジン、キャベツ、タマネギなど、生産量が大きい野菜の収穫機や、野菜苗の接ぎ木ロボット、野菜苗の移植機が徐々に普及している。現在のところ、日本で今後10年の間に急速に進歩する農業機械技術、爆発的に普及する農業機械はないと考えられ、日本の農業機械は成熟した分野であると見なされる。一方、農業機械化の進展にともなって中古農機が増加し、その処置が課題になったこと、また農機への過剰投資を避ける意味で中古農機の活用を奨励する必要が生じたことから、農林水産省は1979年に中古機械促進事業法を定め、中古農機の市場形成を促進するための常設展示場または移動展示場に対し、設置費用の一部を補助する等の対策を行った。その結果、全国に多くの中古農機常設展示場・移動展示場が開設され、一定の需要をみている。また近年では主にアジア諸国への中古農機の輸出が盛んに行われている。海外の業者の間で特に人気が高いのは日本では既に旧型となった1980年代 - 1990年代のモデルであり、電子制御等を多用した最新型に比べ構造がシンプルであることなどから保守がしやすいため、一層好まれていると思われる。日本の代表的な農業機械メーカーを以下に紹介する。
出典:wikipedia
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